ありふれない家族が世界で最も幸せに   作:ゼノアplus+

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ファフニールの宝物

ユエさんがオリジナル魔法で魔物を駆逐した日から、何ごともなくフューレンに到着した。到着後にユンケル氏と一悶着あったが、ユンケル氏の商魂をしっかり見せつけられただけだった。

 

俺たちは冒険者ギルドで依頼完了の報酬を受け取り、カフェで軽食を取っていた。その際、リシーという案内人を雇い共に軽食をとりながら話を聞いていた。……と、いうのはハジメたちの話で、俺はベルの要望で露店を回っていた。

 

 

「主様、あれはなんでしょうか?」

 

「ん?……ああ、アクセサリーを売っている店だな。少し見るか?」

 

「主様が良いのならぜひ」

 

 

ベルの見た店に行ってみると、主にペンダントや指輪などを取り扱う店の様だ。なんでもこの都市の有名な錬成師が加工した品を使っているらしくそこそこ値段がする。払えない額ではないが、ちょっと奮発するか。

 

 

「いらっしゃいませ。おや、綺麗なお客様が見えるとウチの店も活気が出ていいですな」

 

「ありがとうございます」

 

「自慢の従者なんでな。ご主人、オススメの品はあるか?」

 

「ふむ……こちらの方への贈り物ですかな。これは腕がなります……こちらなど如何でしょうか」

 

 

初老の店主が見せてくれたのは、真紅の鉱石が美しく光る首飾り。流石はベテラン、たった少しの時間でベルによく似合う物を探してくれる。

 

 

「ほぅ……しかし、これはなかなかの品だろう。俺たちのような客に出して良い物なのか?常連に見せるべきでは……」

 

「ほっほっほ。貴方は宝石の価値が分かるお方なのですな。確かに、これはそういう一品です。しかし、だからといって手を抜くようであればそれはもう私は宝石商失格でしょうな」

 

「……なるほど」

 

 

どうやら、この店主はなかなかの人物らしい。周りの店の店員が俺たちを見て笑みを浮かばせているし、ここらでは割と有名な人なのだろう。ふとベルに視線を向けてみれば、店主が見せてくれたのは宝石をまじまじと見つめている。気に入ったのだろうか?

 

 

「ベル、気に入ったのか?」

 

「ッ……いえ、主様の瞳の色と同じだなと思いまして。なんでもありません」

 

 

俺の言葉でハッと反応し真顔に戻ったが、少し物欲しそうな目線を向けている。……今の俺は黒目のはずなんだが……ああ、元の姿でか。確かに真紅の瞳だが……そんなに気に入ったのか。

 

 

「ご主人、これを頂こう。おそらくこれだけあれば足りるはずだが……」

 

「ふむ……ええ、大体ちょうどですな」

 

「あ、主様ッ!!流石にそこまでは……」

 

 

金を店主に渡すが、ベルは驚いた様子で俺に問い詰める。

 

 

「ベル、気に入ったのなら素直に言ってくれ。出来る限りなら叶えるから」

 

「しかし……わたくしばかり……「おいそこの女」……ッ?」

 

 

ベルの言葉を遮り、後ろから声をかけてくる男の声。とっさにベルを俺の背でガードし振り向けば、人相の悪そうなガタイのいい男と、いかにも悪事を練るのが得意そうな眼鏡の細身の男が立っていた。周りの客や店員たちは少し引き怯えた表情を見せている。

 

 

「……誰だ?」

 

「おや、口の利き方がなっていないガキですね。私は、ミン男爵家の執事、ニロ・ニーロと申します」

 

 

どこぞの代表的なゆるキャラが登場する物語の細い奴を想像する名前の男が恭しく礼をした。

 

 

「おい……アイツ、黒のレガニドの双子の弟の……」

 

「ああ、レガードだ……兄と同じ黒ランクの……アイツ、気の毒だな。レガニドじゃなかっただけまだマシだけどよ……」

 

 

ヒソヒソと聞こえてくる声に耳を傾ければ、どうやら相当な実力者らしい。黒ランクとは、冒険者のランクで言うと上から3番目、つまり俺よりも2つほど上だ。

 

 

「そんな高貴な方が、俺たちみたいな一介の冒険者になんのようだ?」

 

「単刀直入に申しますと……そちらの女性を渡してほしいのです。我が主人が、貴女を御所望なので」

 

 

どうやらこの世界の貴族にも、権力を傘に切るクソ野郎はいるらしい。確か、ミン家とはここでハジメにちょっかいをかけてきた豚野郎の家系だった気がする。……じゃあいいか。

 

 

「却下だ。ベルは俺の従者、他の奴に渡す予定はないな」

 

 

ベルが離れたいと言わない限りはな。

 

 

「ふん……生意気な小僧ですね。レガード、この小僧は殺しても構いません。あちらの女性は出来るだけ無傷でお願いしますよ」

 

「分かりやした。ただ、殺しは不味いんで動けない程度にしときやすぜ」

 

 

意外と良心的だった。仕事はきっちりこなすけど必要以上はしないタイプか?

 

 

「すまんね坊主。こう……弱い物いじめのような真似は好きじゃねえんだが、これも仕事だ。諦めてくれや」

 

 

腰から、海賊が持つようなサーベルを抜き、俺に構えるレガード。仕方がないと思いつつ、俺も鞄から取り出すふりをしながら【撃鉄】を両手に装備した。

 

 

「ご主人、少し離れていてくれ。ああ、その首飾りは大事にしてくれよ?後で買わせていただくからな」

 

「主様、わざわざ貴方の手を煩わせずともわたくしが……」

 

「ベル、見ていろ」

 

「ッ……はい」

 

 

威圧気味にベルに言ってしまった。後でご機嫌とりでもするか。

 

 

「レガード……だったか?冒険者としての先輩にこんな態度で済まないが、状況が状況なのでな。一撃で決めさせてもらおう」

 

「はん……何をいっt…ゴッハァ!?」

 

 

レガードが見えないような速度で近づき顎に向けて綺麗にアッパーを決めた。運が悪ければ舌をかんでいるが、そうではなさそうなのでいい。白目を向いて気絶しているレガードを横目に、ニロとやらに向き直る。

 

 

「…………で?誰が、誰をどうするって?」

 

「っ……ミン家に手を出したこと……後悔しますよッ!!」

 

「ふざけるなよゴミが。貴様……ファフニールの宝物に手を出したような物だぞ?その無駄に整った顔を醜くされたくなければさっさと消えろ。コイツへの依頼料を払ってからな?」

 

「……チッ仕方ありませんね……とでも言うとっ……ぅ」

 

 

不意打ちで蹴りを入れてこようとしたニロ、どうやら執事ではあるがそこそこ戦えるらしい。まぁ……相手が俺じゃなければな。当たる瞬間に頭を小突くと簡単に気絶した。……脆い。

 

 

「はぁ……終わったぞべ……ル?どうした?顔が赤いが……まさかアイツらに何か盛られたか?」

 

「へッ!?……い、いえ、問題ありません。主様、ありがとうございました」

 

「ああ、ブルックの奴らはそんなにしつこくないしノリが良いだけだったが、普通はこんなもんだ。ベル、お前は美人なんだから気をつけておけ」

 

「分かりました」

 

((((((あれ、今のは照れないんだ?))))))

 

 

「そこ、何をしているのですか!」

 

 

どうやらギルド職員がやってきたらしい。この雰囲気を変えるにはいい人物が来てくれた。数人は気絶しているレガードとニロの元へ、数人は周りへの事情聴取、1人は俺たちの元へ。

 

 

「申し訳ありませんが事情聴取にご協力願います」

 

「了解した……仲間がいるのだが、連絡を取ることは可能か?」

 

「はあ……そうですね。よろしければお名前を、冒険者ギルドにいればお伝えしておきますので」

 

 

ギルドって、この世界で最も規律が整ってていい場所だよな。気が効くし。

 

 

「南雲ハジメ、ユエ、シア・ハウリアの3名だ。白髪に眼帯、左腕の義手をしている男に、金髪の美少女、珍しい髪色をした兎人族だ。みれば一髪でわかる……と、何か問題でも?」

 

「いえ……つい先ほど、同じような状況で事情聴取行うためにご足労いただいた方々の特徴と一致していまして……」

 

「なら本人だろう。そっちの被害者は大丈夫か?アイツのことだ。半殺しどころか、再起不能の可能性まである」

 

「ハハッ……正しくその通りですねぇ……全く、貴方はまだ穏便にすませたと言うのに」

 

「……仲間がすまない」

 

 

どうやら過剰防衛をしたらしい。この職員の目が一瞬濁るほどにはストレスを植え付けられたらしい。気づかないうちに1人の胃が死にそうだぞハジメ!!……知るか、って一蹴するだろうけどな。

 

 

「皆さん!お見苦しいものをお見せしてしまい、さらに謝罪しかできないことも含め申し訳ない」

 

「ご迷惑をお掛けしました」

 

 

2人揃って周りの人たちに謝罪する。

 

 

「良いってことよ!!それより兄ちゃん、カッコよかったぜ!!」

 

「ああ、良いもん見せてもらった!!」

 

「ヤバイ……惚れたかも」

 

「私は濡れたわ!!」

 

 

返ってきたのは罵詈雑言ではなく何故か、賛辞だ。同じ暴力なのがな。……最後のやつは出てこい。物理的に天国へ逝かせてやる。

 

 

「……ふっ、行くぞベル」

 

「はい、主様」

 

 

そのままギルド職員に案内され、冒険者ギルドへと向かった。あっ……あの宝石買えなかったな。しかも金も置いてきてしまった。……結局金を失っただけか。ちきしょう……

 

 

「お待ちくださいな」

 

「……ッ!?どうされましたか?」

 

 

聞こえてきた声の方を向くと先ほどの宝石商の店主が小走りでやって来ていた。ギルド職員はその店主の姿を見ると驚愕した表情で、姿勢を整えた。

 

 

「お客さん、忘れ物ですぞ」

 

「おお、これは失礼。わざわざすまない」

 

 

どうやら俺が回収し忘れた金を持ってきたらしい。多少ちょろまかしておいても迷惑料としてでいいのだが……

 

 

「いえいえ、それと中のものはほんのお礼ですのでお気になさらずお受け取りくださいな」

 

 

中に入っているもの?お礼?そんなに特別なことをした覚えはないんだが……身にかかる火の粉を振り払っただけだしな……

 

 

「はぁ……?まあ、くれると言うのならありがたく頂いておこう」

 

「ほっほっほ、お達者で〜」

 

 

数分後、俺たちはギルドに到着した。ここも清潔感があって良い印象だ。

 

 

「こちらへどうぞ。フューレン支部支部長イルワ・チャングがお待ちです。お連れさまはすでに中にいらっしゃいますので」

 

「案内ありがとう。失礼する」

 

「失礼します」

 

 

案内された扉を開け、中に入るとイケメンな青年とハジメたちが話をしていた。

 

 

「よぉ影二、遅かったじゃねえか」

 

「ちょっとな。まあそれはいい、今何の話をしているんだ?」

 

「依頼を受けるか受けないかって言う話だ」

 

 

ハジメによれば、北の山脈地帯の異変を調査しに行った冒険者チームの捜索らしい。ハジメとしては明らかに受けない仕事だろう。

 

 

「へぇ……で?どうする?」

 

「受ける方向で話を進めてたんだよ。条件付きでな。ちょうど交渉も終わった……って時にお前らが来た感じだな」

 

「では問題ありません。主様、そうでしょう?」

 

「ああ、そっちに任せる」

 

 

俺やベルは交渉系は得意ではないからな。そういうのはハジメに任せておくべきだ。

 

 

「そういや、ハジメは何ていうやつに絡まれたんだ?」

 

「んなもんいちいち覚えてねえよ。貴族の豚とその護衛だな。黒らしい」

 

「こっちはそのお豚さんの家の執事とその護衛の双子の弟だった」

 

 

面倒事はお互いしっかりやってくるんだな。

 

 

「さて、じゃあ行くか。あ、ステータスプレートはもう一枚追加って事で頼む。もう話は終わりでいいな?」

 

「ああ……ウィルの件。本当によろしく頼む」

 

 

マジで話しなかったな俺。いや別に興味ないし問題ないけど。ベルも何をしに来たのか分からない感じだ。

 

 

「主様……わたくしたち、完全にタイミングが悪かったですね」

 

「言うな……悲しくなるから」




「そういえば主様、あの店主が言っていたお礼って何でしょうか?」

「そういえば見ていなかったな……ってこれは……」


中に入っていたのは、俺たちが見ていた真紅の首飾りだ。しかし、チェーンが付いていなくてブローチに加工されている。……あの人、あの短時間で『錬成』したのか?めっちゃ重鎮なんだろうな。


「ベル。こっちを向いてくれ」

「え、はい……主様!?」


ううむ……ちょっと付けにくいな……真正面からの方がやりやすいと思ったんだが……


「どうかしたか?」

「いえ……その、顔が……いやなんでもないです」

「よし、出来た!」

「ふぇ!?……あ、これは……綺麗」


胸元にブローチをつけてあげた。うむ、よく似合っている。全く、あの店主には本当に感謝しないとな。


「よく似合ってるぞ」

「……ありがとうございますぅ」


何故シア語になっているのだろうか?

檜山と光輝の生殺与奪は君達にあるのだ!

  • 檜山殺
  • 光輝殺
  • 両方殺
  • 両方不殺
  • クラスメイトも一緒に……殺?
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