ありふれない家族が世界で最も幸せに   作:ゼノアplus+

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暗躍

【36】

 

 

〜時は遡る〜

 

 

「……聞かせてくれ」

 

「まずは私の正体からなのですがね?」

 

「篝火だろ。お前が変わる瞬間を見てたから分かってんだよ」

 

「ふむ、ならばいいです。ちなみに地球にいた頃からですし、生まれた時からこうです」

 

「……」

 

 

やはり清水は物わかりがいい。隠れオタクだから異世界とかそういう知識を持ってるのも助かる。

 

 

「この世界はファンタジーです。それは貴方も承知でしょう?」

 

「だから今こうして体験してんだろ!!」

 

 

少しヒステリックに叫びがちなのが欠点だな。まあ気にしないけど。

 

 

「世界の破壊、興味ありません?」

 

「ッ!……それは、どういう……」

 

「この世界での物語はいわば成り上がり系です。集団の中の相対的な弱者が虐げられ、そして……」

 

「力を持って……復讐する……」

 

 

おや、清水は復讐系を好むのかな。残念ながらそんなものは興味がない。

 

 

「まあ復讐に走るのかは作品によりますが、力を手に入れチーレムが基本です。貴方が思い描いた自分の未来もそんな感じでしょう?」

 

「あぁ……この力があれば、俺はもっと上手くやれるはずなんだ!!」

 

「いや、無理でしょう?」

 

「……え?」

 

「闇術師。ダークな力は確かに逆張りした主人公のような力です。でも、今の貴方はどうですか?離反し、敵と手を組み、魔物を使って同族を殺す。それがまさか主人公のような行動だと本気で思っているのですか?」

 

「ッ!?……たし……かに……」

 

 

ようやく気づいたらしい。テイムでモンスターを刺激したり、魔王軍に入った人間が同族を殺したりなんていう作品は山ほどあるが、それはあくまで物語の『主人公の視点』だから許され、好かれる。

 

 

「今やこの世界の主人公のような存在は天之河です。彼に味方するものは大勢います。さて……貴方が主人公になるにはどうすればいいでしょう?」

 

「………天之河を殺す?」

 

「短絡的ですねぇ……それは敵を作るだけです。ほら、今までのオタク知識を活かしてください」

 

「…………………ッ、おい……()()()主人公にならないといけないのか?」

 

「クククッ、気づきました?そんなもの、どうでも良いのですよ」

 

 

清水は長考の末に目を見開いて顔に喜びの感情を浮かべながらニヤけた。

 

 

「結果的に世界を救えればいい……いや、物語をちゃんと終わらせたらいい……だったら……自分が主人公の物語にすればいい……?」

 

「正解。他人が作った脚本なんてクソ食らえ……自分で作った自分だけの脚本で主人公になればいい。どうです、乗りますか?」

 

「……頼むよ」

 

 

…………

 

………

 

……

 

 

 

「主様……一つ、聞いてもよろしいでしょうか?」

 

「いいぞ」

 

「主様は、この世界が嫌いですか?」

 

 

ベルが聞いてきた。

 

 

「いや、むしろ好ましいな。単純な実力社会だし、教会なんぞ今すぐにでも潰せる。残る面倒な要素はエヒトだけだが……まあそれはハジメが殺すから問題はない」

 

「そう……ですか」

 

「南雲が……?ッ、まさか……なあ篝火、もしかして……この世界も物語か?」

 

 

話を聞いていた清水が重ねて問いかけ、そして真理に気づいた。

 

 

「ほう……やはりお前は物わかりがいい。そうだ、俺はお前達の地球よりもう一つ上位の地球出身、いわゆる神様転生者という奴だ」

 

「ッ…………ありがとう篝火」

 

「ああ?どういうことだ?」

 

 

世界の真実を説明すれば急に清水が礼を言ってきた。その意味がわからず俺は思わず逆に聞いてしまった。

 

 

「わざわざお前が俺を助けたってことは、俺は元々さっきの要領で死ぬ予定だったんだろ?」

 

「ああ、そうだが?」

 

「だったら篝火は……俺の命の恩人だ」

 

「人じゃないが?」

 

「言葉の綾だよ……その、なんで俺なんだよ。俺達に『原作』があるんだったら、主人公は……南雲だろ?そっちを頼ればいいじゃないか」

 

「???」

 

 

ベルが話についていけず困惑しているが少し我慢してもらおう。()()()今の清水から先ほどのようなヒステリックさが消えたからだ。少し気になる。

 

 

「なるほど道理だ。だが、それじゃあダメなんだよ清水。お前の言う通りハジメは主人公だ。しかし、俺の最終目標は愛する人を幸せにすること。その条件の最大難易度として神エヒトの討伐がある。が、コレをやるのはハジメだからな。アイツには『原作通り』やって貰わないと困る」

 

「……つまり、この先死んで登場予定も無い俺が抜擢されたと」

 

「まあそれもある。だが、それ以上にお前の魔法に魅力を感じたからだ」

 

「……負けたぞ、俺は」

 

 

清水の洗脳能力ははっきり言って神がかっている。いや、神に召喚されたのだから確かに言葉通りだ。それでもどのような状況下であろうとティオさんクラスを従属させられるのは美味しい。しかも俺が演技してわざわざ出張る必要もなくなると言う点も魅力だ。

 

 

「馬鹿か、相手は主人公様だぞ。それを差し引いたらお前は強い。間違いなく強い。俺が保証してやる」

 

「……ははっ、それもそうか」

 

 

急に清水が寝転ぶ。その顔は先ほどまでの憎悪に満ちていない、清々しい表情をしている。

 

 

「なあ篝火、教えてくれよ。俺が死んだ後、この世界はどうなる予定なんだ?」

 

「……さあな」

 

「え……知ってるんじゃねえの?」

 

「俺が存在して、ベルが存在して、お前が生きてる時点で、もうどうなるか分からない。ここからは未知の領域だ。俺達が引っ掻き回すんだからな」

 

「………ふふ、ふはははは!!最高だよ篝火。お前と出会えてよかった」

 

「俺もお前が生きててよかった」

 

 

俺と清水は固く握手をする。

 

 

「せいぜい頑張って俺を使ってくれよ、オリ主様。俺が主人公になる物語を見せてみろ」

 

「馬車馬のようにこき使ってやるさ、()原作死亡キャラさん。人生の主人公は自分というが、だったら地球で苦労しない。この世界でこそお前は輝く」

 

 

コマとして用意したはずなのに、なかなかどうして気に入ってしまった。コレで人格が壊れていたら尚良いけど……まあいいだろう。俺の全ては恵里のためにあるのだから些細なことだ。

 

 

「あの……主様。今更なのですが、どうやってこの人を助けたのですか?あの状況では確実に死んだように見えましたが……」

 

 

何も事情を知らないベルがそう問いかけてきた。タネも仕掛けもございます。

 

 

「ああ、あの時確かに清水は死んだ。まあとある『個性』で作った2人目だけどな」

 

「あれはビビった。なんでいきなり真っ黒な篝火がトゥワイスになるのかとかなぁ……心臓に悪い」

 

「個性……トゥワイス……?」

 

 

俺はあの時、清水の目の前で『僕のヒーローアカデミア』の『トゥワイス』というキャラを演じた。この作品にはだいたいの人に特殊な能力『個性』が備わっている。その中でも自分が詳細なデータをイメージした対象を複製できる個性の『二倍』を使用。清水の複製体を作りハジメ達の元まで連れて行った、というわけだ。ヒロアカの世界に限らなかったらこの能力はやばい。やろうと思えばエヒトですら二倍に出来る。

 

 

「篝火ってチート過ぎるよな」

 

「生まれ持った才能を存分に活かしているだけだ。さて清水、お前の力は確かに必要だ。だが決定的にお前に劣っている物、なんだと思う?」

 

「またクイズかよ……ステータスだろ」

 

「そうだ。そしてここに簡単に強くなれるアイテムがある」

 

 

俺は宝物庫から真のオルクス大迷宮産の魔物の肉を取り出した。毒抜きをしていない、濃い魔力が詰まった物だ。

 

 

「ッ!!……いや、代償は?」

 

「とてつもなく苦しい。死んだほうがマシだと思うほどの激痛が身体中を駆け巡る。そして、この『神水』がなければそのまま死ぬ」

 

 

さらにハジメからもらった予備の神水も取り出す。どうせ俺は使わないから別にコイツに使っても問題ない。ベルもそんじょそこら程度のやつにダメージを負わせられるわけもない。

 

 

「……うん、死ぬはずだったんだ。ここまできたら……なんだってやってやるよ!!……うっ、がぁぁぁぁあああああ!?!?!?」

 

 

達観したような目で俺から肉をひったくりかぶりつく。一瞬不快そうな顔をした後、ハジメに聞いていたような激痛が清水を襲っている。

 

 

「ベル、少しずつ神水を飲ませろ。俺は……いえ、私は清水君を治療するから」

 

「分かりました」

 

 

俺は『白崎香織』に擬態する。ん?誰がこの世界の誰かに擬態できないと言った?やろうと思えばハジメだって演じてみせるさ。ヒロインズにはバレる気がするがな。愛の力で……

 

 

「『廻聖』『周天』『焦天』『譲天』」

 

 

過剰なほどのヒールにリジェネ。そして俺の魔力を一部譲渡することにより、遠隔で魔力操作を開始。清水の体内でうまく循環するように魔物肉の魔力と俺の魔力、清水の魔力を混ぜ合わせる。

 

 

「はぁ……はぁ……うえっ……きっつぃ。なんこれ……南雲の奴、いつもこんなことを……」

 

「おめでとう清水。ステータスプレートでも見てみたらどうだ?」

 

 

すぐに擬態を戻し、問いかける。見るからに疲弊している清水が懐からステータスプレートを取り出し血を垂らしてその数値をチェックした。

 

「……はぁ…はぁ……ッ!?……すげぇ……魔物の肉食うだけでこんなに伸びるのか……?」

 

「普通は死ぬがな」

 

 

見事体の崩壊を耐え切った清水は、ハジメのように髪の色が変わってはいない。少しなだけ流した俺の魔力を、遠隔の魔力操作でうまい具合に馴染ませ循環させたからだ。

 

 

「それとだ清水。ハジメを思い出したら分かるだろうが、本来はその激痛がなん時間も続く。あの白髪はストレスで色素が抜けている。幸いお前に同じ症状は見られなかったが……俺が多少細工をしただけだ。安心しろ」

 

「ははっ、ありがてぇ。こんな歳で白髪はやだよ」

 

「お前、それハジメの前で言ってみろ」

 

「やだね。まだ死にたくない……死んだけど」

 

「さて、準備も整ったし行くか」

 

「……どこに?」

 

「ホルアドだ」

運命の分岐点(勇者パーティー救出後の主人公)

  • ハジメ達についていく(恵里離脱)
  • 王都に帰還(ベル離脱)
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