ありふれない家族が世界で最も幸せに   作:ゼノアplus+

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役者の力

あの、ステータスプレートを見た日から早くも2週間がたった。

 

俺は今、得物の手入れをしている。剣にナイフ、メリケンサックに伸縮式の棒。いろんなタイプの武器を俺は扱っている。役者なのにな。相変わらず訓練は継続しているが、現在は休憩時間。天乃河は休憩も取らずひたすら剣の練習をしている。アホか、ただの人間が休憩もなしに訓練をしていたらバテるまでの時間が短くなるだけなのにな。

 

 

「……あの」

 

 

全く、どいつもこいつも力を手に入れて浮かれている。例えどんな力を得ても使いこなせないと意味がないというのに。ちょっと器を手に入れただけでもう強い気分か。器を満たすほどの水……経験と努力を怠ればその先に待つのは死のみだ。

 

 

「……ねぇ?」

 

 

なんで図書館には誰も来ない。あれか?俺の力さえあればどんな敵でも一撃必殺とかそういう事を思ってやがるのか?ふざけやがって……そういうのはまともな知識を得てから言いやがれクソ野郎ども。南雲をボコしてる暇があるなら特にな?

 

 

「お前もそう思うだろ南雲?」

 

「さっきから話しかけてるのに何を1人でぶつぶついってるの篝火くん!?ていうか怖いよ!!」

 

「図書館ではお静かに願います」

 

「あっはいすいません」

 

 

怒られたのは南雲だ。俺は謝らなくてもいいだろう。

 

 

「はぁ……ねぇ篝火くん。なんでここにいるの?」

 

「いいだろ別に。細かい魔物の生態とかは授業では教えられないんだしな。お前もそういう目的だろう?」

 

「いやまあ……そうなんだけど」

 

「何もここで武器の手入れをしなくてもいいでしょ?図書館だよ?」

 

「司書が何も言ってこないのだから問題無い。別に汚してるわけじゃ無いしな」

 

「はぁ……分かったよ。ってそろそろ訓練の時間だ」

 

「ん、少し遅れてから行く。先に行っててくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

俺が訓練場に着いたときには南雲や檜山たち4人組の姿はなく、すでにそれは始まっていた。

 

 

「うぐッ!!あがッ!?」

 

 

少し向こうから聞こえる南雲の悲鳴。ここで聞こえるのだ、他の奴らが聞こえていないはずがない。敢えて無視をしているのだろう。地球の時でもそうだったしな。

 

 

「おい、これはどういう状況だ?」

 

「あ、篝火くん。それが……」

 

 

俺が全体に向かって問いかけると、園部という女子が恐る恐る話しかけてきた。どうやら檜山が連れていったらしい。

 

……やはり人間は人間か。

 

 

「ありがとう園部。誰か、剣と槍と杖を貸してくれないか?無かったら訓練用の模造品でもいい」

 

「ここにあるけど……どうするの?」

 

「少し、おいたが過ぎるようだからね。……説教してくる」

 

「無茶だよ!!その……篝火くんは」

 

「役者だからか」

 

「ッ……うん」

 

 

自主練をしていた大半が俺を見ている。

 

 

「はぁ……みんな、少し着いてこい。いいものを見せてやる」

 

 

はっきり言っておくが、俺はクラス内でのカーストでいえば天乃河たちに次ぐ。そういうふうに演技して仕組んできたからな。だから多少のステータス的な問題もなんとかなるんだ。

 

 

俺たちが南雲の元へ向かうと檜山共4人が南雲を囲んでおり、白崎が南雲の治療をしていた。

 

 

「か、篝火!?なんでここに」

 

「それだけ大声でやってりゃ聞こえないわけないだろう。何をしていた?」

 

「な、何って、南雲のやつに訓練をつけたやってただけだ!!何にも悪いことはしてねぇよ!!」

 

「そ、そうだそうだ!!」

 

 

言い訳も甚だしい。

 

 

「なるほど……だったら俺からもお前らに訓練をつけてやろう。今日は大サービスだ」

 

 

そう俺がいうと、檜山たちが急に態度を変えた。

 

 

「篝火が……?俺たちに……?役者のお前がか!?アッハッハ!!笑わせんなよ!!無理に決まってんだろ。戦闘系でもない、戦闘系の技能も持ってない、ちょっと魔力と敏捷が高いだけのお前が?……舐めてんのかテメェ」

 

 

檜山が高笑いしながら俺にまくし立てる。どうやら南雲の避難は終わったらしい。

 

 

「なるほど、足が速いから戦えると思われては面倒だ。そうだなぁ……俺はここから一歩も動かないでやるよ。とっととかかってきやがれ三下」

 

「ちょっ!?篝火くん、無茶だよ!!」「やめたほうがいいって!!」

 

 

後ろで見ているだけの奴らがそう言う。

 

 

「黙って見ててくれないか?」

 

 

そういうと、全員が黙る。

 

 

「ハン……死んでも知らねえからな!!ここに焼撃を望むーー『火球』!!」

 

「ここに風撃を望むーー『風球』!!」

 

 

取り巻きの……中野と斎藤が火と風の初歩的な魔法を放つ。両サイドからは残りの近接組も走ってきている。

 

 

「なるほど、そうやるのか。ここに焼撃と風撃を望むーー『風火球』」

 

「「「「「「えっ!?」」」」」」

 

 

俺が放ったのは2人の魔法陣から放たれた二つの魔法を纏めてコピー……いや、演じただけだ。

 

 

「なんでアイツが魔法を!?」

 

「おい避けろ中野!!」

 

「「うわぁ!?」」

 

 

俺の『風火球』は奴らの魔法を飲み込んで爆発。奴ら自身にはなんの外傷もない。

 

 

「同時に魔法を発動してどうする?お前らには数の有利があるというのに、わざわざ火力で押す必要があったのか?いやないな。交互に魔法を撃つことで詠唱の隙を互いにカバーし、俺に反撃の隙を与えないようにするべきだ」

 

「テメェ!!魔法使いでもないくせに偉そうなことを!!」

 

 

近づいてきていたうちの1人、近藤は槍使い。そのリーチの長さを生かして檜山より先に攻撃しにきたのだろう。だが甘い。俺は杖をその場に捨て腰にさしていた木製の槍を取り出した。もちろん近藤は実践用の槍だ。

 

 

「お前はもっとダメだ。槍特有のリーチの長さを生かそうとする点はいい。だが、リーチが長いということはその得物も長い。取り回しが難しく、攻撃も大振りなのだから軽戦士である檜山と同じタイミングで切りかかってくるべきだったな」

 

 

槍使いらしい、真正面からの突き。俺はそれを槍の先端を斜めに当てることによって逸らし逆側を思いっきり腹に当てて吹っ飛ばす。

 

 

「なんっ……がァ!?」

 

「「「「「「うそぉ!?」」」」」」

 

 

これも原理は簡単、槍なんぞ使ったことのない俺だが、槍の達人を演じ切っただけだ。もちろん役者として。

 

 

「チィ!!たかが役者1人に何をいいようにやられてんだよ!!このイキリ野郎がっ!?」

 

「お前は最悪だな。軽戦士の利点はなんだ?軽装備だからこそできる、高機動だろう?であるのに真正面からの突撃。お前は突っ込むことしかしないタイプのサイか?」

 

「ぅ……ぐっ……」

 

 

今度は槍を捨て、木製の剣を抜き刃の部分すら使うことなく剣の柄だけで気絶させた。

 

 

「ぜ、全滅……」

 

「篝火くん……凄い」

 

「本当に、一歩も動かなかった……」

 

 

先に言っておくが今のは別に演じてない。素の能力のままだ。わざわざ演じる必要もないくらいの雑魚だ。

 

 

「…………自らの技術も持ち合わせていないくせによくもまぁ人に訓練をつけてやろうと言えるよなぁ?笑わせてくれる」

 

「うぐっ……」

 

「南雲、こいつらに与える制裁は?」

 

「え……どうして僕?」

 

「今回最も被害を受けたのはお前だ。証人はここにクラスのほとんどがいる。白崎も見ていただろう?」

 

「う、うん」

 

 

完璧だ。あとはあの勇者様が出張ってこなければ……だが」

 

 

「何をやってるんだ!!」

 

 

来たか。

 

 

「これは……どういう状況?」

 

「実は……」

 

 

白崎が、今やってきた八重樫や坂上、天乃河に事情を説明する。

 

 

「そう。つまりは自業自得ね」

 

「なっ……俺たちは、篝火の奴に一方的に……」

 

「言い訳すんなって。そういうお前らは南雲を一方的にボコしてたってことだろ?」

 

「うぐっ……それは……」

 

 

八重樫、坂上は状況を正しく見ているようだ。坂上……自分で考えること出来たんだな……すまん。正直馬鹿にしてたわ。

 

 

「だが篝火、やりすぎだ。何もここまですることなかっただろう!!檜山たちだって、いつも不真面目な南雲をどうにかしようとしかもしれないだろ?」

 

「…………は?何を……言っている?」

 

「聞けば南雲は訓練の休憩時間はいつも図書館に篭りっきりだそうじゃないか。俺なら少しでも強くなるために休憩時間も鍛錬をするよ。それに比べて南雲はそうした努力をしていない!!それを見かねた檜山たちが矯正しようとしたかもしれないじゃないか!」

 

「……あ、そうだ!俺たちはそのつもりだったんだ!そうだろお前ら?」

 

「もちろんだぜ」「うんうん」「当たり前だ!」

 

 

こいつら……言うに事欠いて……

 

 

「だったら俺はどうなんだ?俺も休憩時間は大抵図書館にいるんだが?」

 

「君は檜山たちに勝ったんだろ。つまりは、休憩時間外に努力をしているということだ。何もおかしくないじゃないか?でも檜山たちは同じクラスの仲間だ。もっとやり方があった筈だ!!」

 

「……………………」

 

 

恵里の方をチラっと見ると、心配そうな顔をしている。……分かった。恵里に免じてここは引こうか。

 

 

「分かった。白崎、八重樫、坂上、メルド団長への報告はお前らに任せた。俺は少し頭を冷やしてくる。……チッ」

 

「え、ええ。その、本当にごめんなさい……」

 

「お前が謝ることじゃない。訓練再開までには戻る」

 

「おい篝火、まだ話は終わって……」

 

「お前にはあっても俺には無いんだよ。恵里に感謝するんだな」

 

 

クソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソが……

 

たかが人間の分際で……たかが……

 

 

「落ち着きなよ。影二」

 

「ッ…………恵里か」

 

 

少し歩いた先で立ち止まっていたら恵里がやって来た。

 

 

「……ごめん」

 

「なんで恵里が謝る?」

 

「僕の……想い人だから、何も言わずに引いてくれたんだよね?」

 

「……アホ言え。さっきの一悶着にお前は何も関係ない。逆に、あんな現場を見せてしまってすまない」

 

「でも……」

 

「今は戻れ。……いや、戻っていただけませんか恵里?今の()はあまり冷静ではないのですよ」

 

「ッ……分かった。でも、ちゃんと休んで。例えカイブツでも、無敵でも不死身でもないんだから」

 

「ええ、分かっています。それと、天乃河やあのクソどもが居ないタイミングでクラスの方々に、私が謝罪をしていたと伝えてください。ロクでもない現場を見せたと」

 

「了解。……じゃあ、また後で」

 

「ええ」

 

 

恵里は行ったようですね。

 

……天乃河の側についてやっていればいいものを。どうして私などに。

 

…………さて戻りますかね。多少は冷めました。

 

 

「メルド団長からドヤされるだろうな。まあ仕方ない」

 

 

俺ともあろうモノが、あの程度で演技を乱してしまうとは……まだまだ未熟か……

影二が演じるキャラの性能に制限は必要?

  • いる
  • いらない
  • どうでもいいから続き書けよ
  • もはや、他作品キャラやめて
  • どうでもいいから恵里との絡みを増やせ
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