昨日のクソどもを交えた役者のショーを終えた俺は、恵里からの慰めもあって心の安寧を取り戻すことができた。
なんでも、俺が抜けていた間に【オルクス大迷宮】に行くことが決まっており後から恵里に聞いて知った。というわけで今日は最も大迷宮に近い宿場町【ホルアド】に移動して王国直営の宿にいた。ちなみに南雲との2人部屋だ。厄介者をまとめたという感じだな。
そういえば、思ったよりメルド団長からの説教はキツくなかった。状況証拠やクラスメイトからの証言もあって俺に非はないと判断されたらしく、南雲も被害者として処理された。なんなら、【役者】であるにもかかわらず天職を持つ勇者の一員を圧倒的に打ち負かしたことが上層部や教会に高く評価されたらしい。この前選んだ武器よりももっと上質な武器をくれた。まあ貰えるものは貰っとくけどな。
「南雲、図鑑を読んでおくのもいいができるだけ早く寝とけ。明日は万全な状態じゃないと冗談抜きで死ぬぞ」
「うん。分かった。……ねえ篝火くん。ひとつ聞いてもいい?」
「ああ、なんだ?」
「昨日、檜山くんたちを倒したのってやっぱり天職の力?」
「そうだ」
まあ天職や技能のおかげというのは確かに正しい。
「じゃあ問題だ。どうやったと思う?ヒントは、俺は槍も剣も杖も扱ったことがないということだ」
「…………じゃあやっぱり」
ふむ、南雲はなんとなく気付いていたのか。まあ隠す必要もないからな。
「ああ、剣士や槍術師、魔術師を【役者】の技能の演技で演じただけだ」
「だけだって……でもそれはそれにふさわしいステータスがないと出来ないはずじゃ」
「演じればいい」
「ッ!?」
「その天職にふさわしいステータスを演じれば何も問題は無い」
実際は、人間の体を組み替えてそれらしい体にしただけだが。ちなみにその時のステータスがこれだ。
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篝火影二 17歳 レベル4
天職:魔術士
筋力:10
体力:10
耐性:150
敏捷:60
魔力:600
魔耐:150
技能:全魔術適正・文才・言語理解
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篝火影二 17歳 レベル4
天職:槍術師
筋力:300
体力:300
耐性:20
敏捷:200
魔力:10
魔耐:20
技能:槍術・文才・言語理解
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剣士は別にいいだろう。槍関連を剣に変えただけだ。
「篝火くんが異常ってことだけは分かったよ……」
「なかなかに心外な発言だが、まあ今はそれでいいだろう」
「南雲くん起きてる?白崎です。ちょっといいかな?」
唐突に扉の向こうから聞こえる声。どうやら白崎が来たらしい。
「俺は出ていたほうがいいか?」
「いやいいよ。白崎さんに言われたらお願い」
「あいわかった」
南雲が扉を開けるとそこには、ネグリジェにカーディガンを纏っただけの白崎の姿が。……後ろ向いとくか。興味はないけどな。
「あれ、篝火くんもいたの」
「迷惑だったら出ていようか?」
「あー……うん、ごめんね?」
「分かった」
白崎の隣を通り廊下に出た俺は不躾な気配に苛立ち忠告した。
「俺らの部屋に何か用か?」
「ひぃ!?か、篝火!?な、なんでもねぇ!!」
そう言って下賤な粗大ゴミは去っていった。
「……久しぶりに月下で寝るか」
俺は宿屋の屋根で、私の姿になってその日を終えた。
◇
「影二、起きて。南雲くんが君がいなくて騒いでるよ」
「…………恵里ですか。……おはようさん。すまん、すぐ戻る」
「おはよう影二。この前は僕が起こされたのにね」
恵里の声で意識が浮上した俺は軽口を言い合った後すぐに屋根から降りて部屋に戻った。アイツどうして俺の場所が分かったんだ?
「篝火くん!!どこにいたの?昨日、白崎さんが帰った後も居なかったから心配したんだよ!!」
何故南雲は俺に対する信頼度がこうも高いんだろうか。
「すまん。屋根に上がって月明かりを見ていたら寝てしまってな」
◇
そんなこんなで、俺たちは迷宮に足を踏み入れた。どうやら入り口でステータスプレートをチェックする必要があったらしい。俺と南雲は一瞬訝しげな視線を送られたが、国の重鎮だから何も言わなかったのだろう。
薄暗い洞窟に照明代わりの緑に輝く鉱石。どうやらこの迷宮は侵入者に気を使ってくれるらしい。ちなみに今日の俺の武器は槍と杖だ。動きやすい革鎧を選択したため走りながら槍で突き、隙があれば魔法で援護という動きができる。組まなくてはいけない魔法陣は座学でしっかりと学習済みなので問題はないし、適当な時間に魔法陣を組んで練習していたので問題はない。人間の体を維持するために地球の頃から無意識に魔力を使っていたせいか、俺との魔力伝導効率も十分いい。詠唱も出来るだけ短く出来るようになったので十分だ。……恵里には、魔術士泣かせと1発殴られたが。
そして、少し進んだ先のドーム状になった広い空間で壁の隙間から這い出てきた灰色の毛玉。
「よし、光輝たちが前に出ろ。他は下がれ!交代で前に出てもらうからな、準備しておけよ。ラットマンという魔物だが、すばしっこい以外は大したことはない。冷静にいけ!」
メルド団長から指示が飛ぶ。いよいよ魔物との戦闘かと、少し期待していた俺だが、どうやら勇者パーティーがオーバーキルをして殲滅したらしい。……アホか。
それからは魔物が出てくるたびに交代で敵を仕留めていった。俺や南雲を除く全員がこの世界基準でチートレベルなので、技術云々ではなく能力でゴリ押していた。俺?槍しか使ってないな、思ったより雑魚だったから。
もちろん、魔物を倒せば進めるという簡単な場所じゃない。そんなのだったらもっと素早く攻略が進んでいるだろう。ファンタジーでお馴染みのこういう迷宮にはもちろんトラップがある。イタズラレベルから即死レベルまでなんでもござれだ。そんなトラップにはフェアスコープというアーティファクトを使うことで対処していく。なんでも魔力の流れが見えるらしいからトラップの発見が容易らしい。……俺は実質全身が魔力だから見られたらちょいと不味いな。
もちろんこういうトラップの発見は護衛のメルド団長以下の騎士たちの仕事。俺たちがホイホイ階層を下げていっているのは一重に騎士団の力があってだろう。他の生徒がそれを自覚しているかはともかく。
「南雲、錬成頼む」
「うん、『錬成』!!」
出番がなさそうな南雲に、錬成をさせた。少しでも評価を上げるべきだと思ったからだ。お気に入りの人間への手伝いはしっかりしますとも。
南雲が地面に手をつけると、魔物付近の地面が盛り上がり全身に隙間なく地面の一部が張り付いた。そこを俺が近寄って槍で突き殺す。この繰り返しだ。
「ほう……錬成師にあんな使い方が……」
「……魔物をけしかけたのマズかったかな?」
騎士団の方々にも評価は上々らしい。俺も南雲もレベルが上がるしいいことづくめだ。
二十階層まで到達した俺たちはまた魔物との戦闘に入った。ロックマウントという、ゴリラのような二足歩行の魔物だ。どうやら擬態能力もあるらしい。こういう情報はしっかりと王宮の図書館の本で学習しているため、俺や南雲には知識がある。対処方法も覚えているため迅速に事を運ぼうとした時だ。
「グゥガガァァァァァァァ!!」
突然ロックマウントが叫び出した。それを聞いてしまった天乃河たち前衛が一瞬怯む。固有魔法の威圧の咆哮だ。魔力の乗った咆哮が相手を怯ませるらしい。
その隙を見逃さなかったロックマウントはその近くにあった岩をぶん投げた。前衛が動けないため魔法の発動を仕掛けていた後衛組がその杖を岩に向けるが、後衛組は魔法を発動できなかった。投げられた岩も擬態していたロックマウントだった。見た目がゴリラっぽいだけあって女子陣が悲鳴を上げて魔法を中断してしまった。
「仕方ない……ハァ!!」
「オラァ!!戦闘中に何をしている!!」
俺がロックマウントに切り込んでいくと同時にメルド団長も加勢してくれた。
「影二、今のはナイスだったぞ!!」
「後衛にいたんでたまたま食らわなかっただけですよ!!いいからコイツらを」
「ああ!!任せとけ!!」
2人で後衛組に近寄るロックマウントの相手をしていると、麻痺が解けたであろう前衛が戻ってきた。しかし……
「貴様、よくも香織たちを……許さない!!万翔羽ばたき、天へと至れーーー『天翔閃』!!」
「あ、こら馬鹿者!ッッッ!?影二避けろ!!」
「えっ……あがぁ!?」
光の斬撃がロックマウントに向かって放たれた。血の上った勇者にはロックマウントしか見えていなかったのだろう。その軌道には俺もいて……巻き込まれた。
クソッ……人間ベースだからマジでいてぇ……体が動かん……
「ふぅ……やったぞみん……「おい影二大丈夫か!?」……え?」
「篝火くん!!今回復を!!」
「お兄ちゃん!!」
ああ、恵里の声が聞こえる……体が動かんからそちらを向けないじゃないか……あのクソ勇者め……
「え……一体何が……」
「馬鹿者が!!ロックマウントと戦っていた影二が見えていなかったのか!!お前の技が影二を巻き込んだんだ。それにこんな場所で使う技ではない!!」
「はぁ……はぁ……」
「大丈夫篝火くん?」
治癒師2人からの治癒魔法を受けて俺の体の傷は癒された。まだだいぶ痛いけどな。
「おい……天乃河……いくら一昨日の俺が気に食わなくても、こんな場所でやり返してくるとは思わなんだ」
「ちがっ……俺はそんなつもりじゃ!!……その、すまなかった」
「自分の正義に酔うのは良いが、周りを見ろ。世界はお前を中心に回っているんじゃない」
生徒たちの空気が重い。クラスの人気者トップ2くらいの男子2人が険悪な雰囲気なのだ。仕方ない。
「なっ……だが、君だってすぐに離れればよかったじゃないか」
「何を言っている?ロックマウントの攻撃を受け止めていたのが見えなかったのか?ああそうだな見えていなかったから俺に攻撃してきたんだろうな。もしやあれか?ロックマウントじゃなくて最初から俺を狙ったのか」
いちいちコイツの言動は腹が立つ。この間だって恵里に免じて引いてやったというのにまたか。
「そんなわけないだろう!!しかし……」
「光輝くんもうやめよう!!お兄ちゃんは無事だったんだし……私に免じて……ね?」
「恵里……恵里と篝火が兄妹関係なのは知っているけど、君は篝火に脅されているんじゃないか?だから、この間から篝火を庇うようなことばかり……」
「光輝くん」
俺を庇っていた妹モードの恵里の雰囲気が変わった。おい、そんな事をすれば恵里の立ち位置が……何をやっている?
「ッ」
「それ以上は……いくら私でも許さないよ」
「……すまなかった。篝火も、ちゃんと周りを見てから技を使うようにする」
「そうしろ。仲間を殺したくなかったからな」
結果的に、また恵里に助けられたな。だったら、フォローは俺の仕事だ。
「みんなすまなかった。変な空気にさせたな。もう終わった事だ、この程度気にしないでくれ」
多少のフォローをするが……あまり効果はなさそうだな。こういうのは天乃河の役目だ。
「影二、後遺症などはないか?」
「大丈夫です。もう痛みもありませんし、それとコレを」
「む……なんだこれは?」
「このクラス全員分の情報を記したノートです。今のを見て天乃河の異常性がわかったでしょう?それを見て対応してください」
嘘だ。本当はまだ痛いし、そのノートは加筆修正しているから恵里や俺のことは最後まで書いていない。
「……感謝する。戻ったら酒でも奢らせてくれ」
「ええ、良いものを期待しています」
「よし、影二の治療も終わった。先へ進むぞ!!念のため影二は後方支援に戻ってくれ」
「了解」
誰にも気づかれないように、痛みのない演技をしながら戻る。
「大丈夫篝火くん?」
「ああ、問題はない。少し殺意は沸いたけどな」
「……演技でごまかしてない?」
「……もちろんだ」
意外と鋭いな。少し注意しておかなくては。その後、天乃河がいつも通りの演説で生徒を鼓舞した後、雰囲気が和んできた時、白崎が言葉を発した。
「あれ、何かな?キラキラしてるけど?」
白崎が指す方向には、とても綺麗な水晶が。
「ほう……グランツ鉱石か。大きさも中々で、珍しい」
メルド団長がそう溢す。説明を聞いて白崎は一瞬視線を南雲へ向けた。八重樫もその視線に気づき、お互いに苦労するな。と、目で会話をした。そんな時だった……
「だったら俺らで回収しようぜ!!」
そう言って動き出したのはクズどものリーダー格檜山。軽戦士らしく軽々と崩れた壁を登っていく。途中メルド団長から制止の声がかかるが聞こえないフリだろうそのまま登って行った。
「団長、トラップです!!」
騎士団の1人の声が聞こえたと思えば、檜山はすでに鉱石に触っていた。召喚の時のような魔法陣が足元に現れ全体へ広がっていく。
「総員退避!!早く部屋から出ろ!!」
そう叫ぶメルド団長の声ではもう間に合わない。
「……やるしかないか」
そして俺たちは光に飲まれて行った。
影二が演じるキャラの性能に制限は必要?
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いる
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いらない
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どうでもいいから続き書けよ
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もはや、他作品キャラやめて
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どうでもいいから恵里との絡みを増やせ