ありふれない家族が世界で最も幸せに   作:ゼノアplus+

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トラップの先の激闘

光の奔流が収まると全員が生きていることが確認された。しかし目の前にはとてつもなく大型の魔物。

 

 

「まさか……ベヒモス……なのか!?」

 

 

メルド団長がそうこぼした。図書館の資料にはなかった。

 

 

「全員、入り口に向かって……これはッ!?」

 

 

ベヒモスと呼ばれた大型の反対側、どうやら入口があるらしいその方向では地面に1メートルほどの魔法陣が無数に現れ、俗に言うスケルトンのような兵士を呼び出した。それも大量に。

 

 

「囲まれたか……どう考えても骨どもを退かせる方が良いな」

 

 

メルド団長がパニックになっている生徒や騎士団に賢明に指示を飛ばしている。仕方ない……トラウムソルジャーと呼ばれた骨の兵士を目の前に俺は突っ込む。

 

 

「一番槍行きます!!お前ら、死にたくなかったらついてこい。あと前衛組は手伝え!!」

 

 

槍を持ち俺は前に出る。この槍は魔力を具現化し、突くと魔力を放出できるアーティファクトだ。その力で俺の正面一直線のトラウムソルジャーは一網打尽にされていった。

 

 

「影二か、単独行動を叱るべきだろうが、今は助かる!!お前たち、影二に続け、突破するぞ!!」

 

 

幸いにも後ろのベヒモスとやらは騎士団の人達が抑えている。今のうちに突破しないと未来はないだろう。イメージ……いや演じるのはそうだなぁ……『アルスラーン戦記』の槍使い『ダリューン』だ。

 

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

「篝火のやつすげぇな!!これなら!!」

 

「うん!!助かるかも!!」

 

「そこを退け!!俺は……行かねばならんのだ!!」

 

 

本来ならば体もダリューンにしなければならない。だが、今は皆の目があるからダメだ。ドッペルゲンガーである俺は不定形であり、どんな姿にもなれる。それを演技でステータスを演じ、性格やその腕前まで演じれば完璧なのだ……伊達に地球でアニメなどを見ていたわけではない。こういう、アニメのキャラでさえ姿形、さらには能力や口調、性格まで演じることができれば俺が負けることはない。

 

 

「戦士たち!!無理に倒す必要はない、ここは橋、倒せないと感じたら奈落に突き落として進め!!」

 

「「「「「「おおーーー!!!!」」」」」」

 

 

生徒の士気も高い。このまま騎士団が加わればすぐに撤退できるだろう。

 

 

「むッ……はぁ!!」

 

 

大量のトラウムソルジャーがこちらへやってきた。恐らく指示を飛ばしていることから集中攻撃するつもりなのだろう。

 

 

「俺には効かん!!」

 

 

気分はアルスラーン戦記無双。その手の槍でひたすらトラウムソルジャーを屠り続けた。

 

そうして数分、騎士団も参加し俺たちはトラウムソルジャーの軍勢を突破して入り口に戻ることができた。後ろのベヒモスはどうやら勇者パーティーとメルド団長、南雲で押さえていたらしい。

 

 

「はぁ……はぁ……俺は加勢に戻る。お前たちはトラウムソルジャーを少しずつ減らしながら待機しておいてくれ。騎士の方々、宜しく頼むぞ!!」

 

「なっ、篝火くん!?」

 

 

動け俺の体、恵里を死なせたくないのなら。

 

 

 

 

 

 

「メルド団長、騎士団及び生徒の退避が完了した。加勢する!!」

 

「影二?その喋り方は……いや、今はいい。お前たち、離脱するぞ!!」

 

「南雲、もう少し抑えられるか?」

 

「これ以上は……ちょっと厳しいかも」

 

「分かった。あとは任せろ」

 

 

メルド団長が勇者たちに指示を飛ばし攻撃を浴びせながら少しずつ下がらせる。メルド団長は後ろのトラウムソルジャーをぶった切っていて少しずつだが退避ができている。

 

さて、次は魔法だ。ここで演じるべきは、ベヒモスを倒せるような火力ではなく足止めができる程度の魔法。『痛いのは嫌なので防御力に極振りします』の魔法使い『フレデリカ』

 

 

「南雲、引いて!!」

 

「え、う、うん!!」

 

「『多重炎弾』!!」

 

 

槍を収め杖を取り出す。魔法陣からは一昨日使った火球よりも多くの火球。1発1発が火球と同性能、そしてそれを多重に詠唱できるスキル『多重詠唱』が有れば足止め程度はできる。

 

 

「影二、退路が開けた!!突破するぞ!!」

 

「了解〜。『多重障壁』」

 

 

流石に結界師である谷口鈴には劣る強度の障壁だが、『多重詠唱』で重ねればベヒモスの攻撃も受けることができる。

 

 

「よし、後衛組は遠距離魔法準備!!坊主と影二が離脱したら一斉攻撃で足止めしろ!!」

 

「南雲、急ぐよ!!」

 

「篝火くん、さっきからその喋り方は……」

 

「いいから急いで!!」

 

「はい!!」

 

 

俺と南雲は走る。ステータスを少し敏捷にも振ったので足も早く、南雲の手を引いて到着しようとしたその時、

 

 

「今だ、撃て!!」

 

 

多すぎるほどの魔法がベヒモスに向かい飛んでいく。これならっ……と思った刹那、一つの火球が急に軌道を変えた。

 

 

「南雲!?」

 

「がぁ!?」

 

 

火球が命中した南雲はベヒモスの方へ吹っ飛び戻された。やっぱり起こったか……あのクズゴミ。やりやがったな?

 

その時、ベヒモスが怒ったとばかりに攻撃を始めた。その衝撃は凄まじく橋の崩落はおそらく免れない……いや崩れ始めた。

 

 

「ガァアァァァァアァァ!!」

 

「なにッ!?」

 

 

南雲は、もう橋の崩落に巻き込まれて落ちて行った。これは別にいい。どうせ強くなるために必要な手順だ。だがベヒモスは最後の抵抗とばかりに、崩れていた岩の一部をこちらに飛ばしてきた。……恵里のほうに向かって。

 

 

「ッッ恵里!!」

 

「…………え?」

 

 

衝撃音……そして土煙が舞う。

 

 

「影二!?」

 

「恵里ちゃん!?」

 

 

正直……意識が朦朧としている。なにが起きた?恵里は無事なのか?そして俺の耳に聞こえてきたのは……

 

 

「えいじぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!」

 

 

奈落に向かって落ちているであろう俺に向かって、泣き叫びながら手を伸ばしている大好きな少女の姿だった。

 

 

ーーーあぁ…………よかった…………頑張れよ…………恵里ーーー

 

 

言葉になっていたかも、声に出ていたかもわからないが、俺の意識はそこで途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

〜三人称視点〜

 

 

南雲ハジメと篝火影二が奈落に落ちた。

 

それを見ていた生徒たちや騎士団は言葉を失い絶句している。そんな中で二人、大声を叫び続けているのは……

 

 

「南雲くん!!南雲くん!!助けないと……!!」

 

「えぃじぃ……えいじぃ……なんで……なんでぇ!!」

 

 

今にも奈落に向かって駆け出そうとしている白崎香織と崖のすぐ近くで蹲り、泣きじゃくっている中村恵里だ。

 

 

「香織ッ、ダメ!!死ぬ気!?」

 

「香織、辞めるんだ!!南雲と篝火はもう無理だ!!」

 

「無理ってなに!?南雲くんは……南雲くんはまだ助けられる!!今行かないと!!」

 

 

香織は八重樫雫や天乃河光輝に羽交い締めにされながらも抵抗している。

 

 

「エリリン……危ないから離れよう!!」

 

「影二……影二……」

 

「お、おい中村。ここまで崩れたらヤバイ早く戻ってこい」

 

 

谷口鈴と坂上龍太郎は、崖のすぐ近くで動かない恵里に近づき避難させようとする、が動かない。

 

その間に、メルドは香織の元へ来て手刀で気絶させた。

 

 

「……中村恵里、影二に守られた命を無駄にしたくないなら、早く地上に戻るぞ!!」

 

 

メルドは恵里の元にもやってきて無理やり上を向かせ言った。

 

 

「………………はい」

 

「メルドさん、そんな言い方!!」

 

「光輝、今は早く地上に戻らないと」

 

 

強い言い方をしたメルドに光輝が抗議しようとするが雫に止められ、意識を別に向ける。

 

 

それからの行動は早いようで遅かった。クラスメイト2人の死、それを目の当たりにしながら未だに死の恐怖を募らせてくる迷宮からは脱出ができない。新たに発見した仕掛けなどで迅速に二十階層まで戻ってきたが、最後までベヒモスの足止めを行った南雲、トラウムソルジャーの軍勢にいの一番に突っ込み生徒たちの道を切り開いた篝火。どんなに勇気があっても、どんなに強くても死んでしまうということを知ってしまった生徒たちの精神的ダメージは計り知れない。

 

生きたい、そんな必死の思いで生徒たちは地上を目指す。いざ地上に着いたという時、皆はとてつもなく喜んだ。一部、クラスメイトの死をずっとひきづっている者たちを除いて。

 

 

 

 

 

 

ホルアドのとある宿屋、その多くの部屋では空気が重い。オルクス大迷宮から帰還した生徒や騎士団が寝泊りしているからだ。大体の生徒が、話しているか寝ているか、そんな中で1人の男が宿を出て町の一角の目立たない場所で膝を抱えていた。

 

 

「ヒヒヒ……これで雑魚の南雲はいなくなった……雑魚のくせに調子に乗るから……天罰だったんだよ。俺は間違ってない……白崎のためだ……」

 

 

南雲ハジメを奈落へ突き落とした犯人、檜山大介は自らが行った行為を正当化していた。

 

そんな時だった。後ろから話しかけてきた1人の少女。

 

 

「お前が……やったんだ。異世界最初の殺人がクラスメイトねぇ……なかなか挑戦的じゃん」

 

「だ、誰だッ!?」

 

 

そんな声に振り返った檜山が見たのはクラスメイトの1人、中村恵里だ。

 

 

「なっ……お前、どうしてここに!?」

 

「別になんだっていいじゃん。それよりも人殺し野郎、今どんな気持ち?恋敵をしっかり始末したと思ったら、一緒に他の人も奈落の底に突き落としちゃったってどんな気持ち?ねぇ教えてよ?」

 

 

恵里は完全に無表情だ。そこには演技も何もない正真正銘の中村恵里がいた。

 

 

「それが……お前の本性か?」

 

「質問しているのはこっちだよ。別にどうだっていいじゃないか。影二がいなくなったに比べればさ……ああもうなんでこんな時にいなくなっちゃうかな。言ってくれたじゃないか影二……協力してくれるって。なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで僕を守ってくれるんだよえいじぃ……君がいないとぼくはぁ……ぼくはぁ……」

 

 

髪を掻き毟りながら恵里は呟く。

 

 

「く、狂ってやがる……」

 

「狂う……?ああそうさ、僕は狂ってる、壊れてる、言い方はなんでもいいけど。そうだよ。でもそれの何が悪いの?人間……誰しも隠しておきたいことの一つや二つはあるもんね?影二はそんな僕を認めてくれたよ。……どう思うかな。僕が君の事を言いふらしたりしたら。特にあの子が聞いたら、ねぇ?」

 

 

口を開ければ影二、と言い続ける恵里に恐怖を覚えた檜山は後退りながら恵里の話に耳を傾けている。

 

 

「誰も信じるわけがないだろ!?そんな事……」

 

「僕が言っても?」

 

「ッ!?……それは」

 

 

無理である。小悪党として知られている檜山よりも、スクールカースト最上位に位置する天乃河グループに所属している恵里の影響力は計り知れない。

 

 

「脅す……つもりか?」

 

「脅すぅ?あはははは……人聞きが悪いじゃないかぁ。とりあえず、僕の忠実な手駒になってもらうよ。……影二がいなくちゃ光輝くんを手に入れても仕方がないのに……よりによってこんなやつだなんて」

 

「そんなの……」

 

 

いっそこいつもやるか?そう思い始めた檜山だが、悪魔の囁きが聞こえてくる。

 

 

「白崎香織が君のものになるかもしれないのに、そんなこと考えちゃうんだぁ……へぇ?」

 

「なに?……どういう意味だ!!」

 

「僕は光輝くんが欲しい。影二のためにも……でもその光輝くんは香織に夢中でねぇ……君が香織を手に入れたら結果的に僕は光輝くんが手に入る確率が上がる。本当だったら南雲くんにこの話を通そうと思ってたのに……影二と一緒に君が落としちゃうから!!ああもう君のせいで計画に変更を利かせないといけない点が多すぎるんだよ!!いいから黙って僕に従え!!僕は降霊術師、君を殺してから操り人形にすることだってできるんだよ!!」

 

 

大声で狂気的に捲し立てる恵里だが言っていることは最もだ。

状況的には。

 

 

「…………し、たがう」

 

「なんて?影二は、人にものを言うときははっきり言えって言ってたよ?」

 

「お前に……従う!!」

 

 

苦渋の表情で決断した檜山に恵里は嗤う。

 

 

「アッハハハハハハ!!それはよかった。僕もわざわざクラスメイトを告発するのは面倒だったしねぇ?まぁせいぜい僕の役に立ってくれよ人殺し。影二を巻き込んだ分はしっかり働いてもらうよ!!」

 

 

悪魔の契約だ。恵里が去った後、檜山は再び膝に顔を埋めブツブツと呟き出し始めた。




(死ぬわけがないじゃないか、あの影二が……なんたってバケモノなんだから……でも、もし本当に死んじゃったら……)


とある部屋では、恵里が涙を流していた。


(なんで……なんで……あの日からずっと……影二は僕のことを守ってくれて……)


思い出すのは、恵里と影二が悪魔の契約をしたあの日。


(…………えいじぃ……寂しいよ)


今の恵里に出来るのは、失ってから気づく想いを自覚しながら、布団の中で心に従って自分を慰める事だけだった。

影二が演じるキャラの性能に制限は必要?

  • いる
  • いらない
  • どうでもいいから続き書けよ
  • もはや、他作品キャラやめて
  • どうでもいいから恵里との絡みを増やせ
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