翔る空は蒼く   作:海 寿

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第8話「零戦・隼レース 前編」

 

 

 雲ひとつ無い天気の良い昼下がり、第二羽衣丸内にある駐機場でノボルの愛機『零戦二二型無印』を見つめる一人の男がいた。他の戦闘機には目もくれず、この紅い零戦を見ていた。

 パッと見ればその機体がどんな整備をされてきたか、だいたい見当はつく。この零戦二二型はかなり大事にされている。細かいところを見てもきちんと整備が行き届いているのがわかった。

 

???「ええ整備されとる機体やなぁ。」

 

 ボソッと独り言を呟いくと、膝をパンッと叩いて搬出作業を始めようとしたその時・・

 

 

 

 

 

 ノボルがヤマダ班長!と叫び走っていってしまった。滅多に無いことだが、ノボルが我を忘れて飛んでいってしまうともう何もできない。大人しくついていくのがこれまでの経験からの最善策。ゆっくりと後をついていく。

 突然名前を大声で呼ばれたヤマダは目を丸くして驚いたが、すぐに優しく微笑みノボルを出迎えた。

 

ヤマダ「2年ぶりくらいか?どうした急に。」

 

ノボル「えっへへ〜、立派になって戻ってきましたよヤマダ班長!!」

 

ヤマダ「よせっ!抱きつくなっ!わかったから!」

 

 ノボルの零戦に向かって歩いていると、なにやらノボルがツナギを着た男に抱きついてる。もしかしてあのツナギの男がヤマダ班長なのか。というかノボルのヤツそんな趣味してたのか。

 

リューヤ「ノーボールー?」

 

ノボル「ひゃいっ!」

 

 満面の笑みがこちらを向いているが、目元は一切笑っていない。普段見せる事の無い表情が余計に迫力を増す。ヤマダ班長らしき人もちょっと引き気味。ノボルは何事もなかったかのように平静を装っているが明らかに不自然だ。数秒の沈黙の後、普段の表情で話し始める。

 

リューヤ「すみません、うちのノボルが失礼なことを致しました。なんとお詫び申してよいか。」

 

 深々とお辞儀をし、相方ノボルの無礼を詫びる。

 

ヤマダ「いえいえ、そんな。失礼ですが貴方は?」

 

リューヤ「申し遅れました、私、戦闘機レーサーをしているリューヤと申します。」

 

ヤマダ「タネガシ整備班班長のヤマダです。いやぁ、突然訪問してくるとは思いませんでしたよ。」

 

ノボル「い、一応イサカ組長にはアポ取ってるのでご心配なく。。あ、イサカ組長こんにちは。」

 

 なかなか戻ってこないヤマダに痺れを切らしたのか、イサカがやってきた。

 

イサカ「なかなか戻ってこないから心配したぞ、ヤマダ。それから久しぶりだな、ノボル。お前の噂はよく耳にするぞ。頑張っているそうじゃないか。」

 

ノボル「ええ、お陰様で。」

 

ヤマダ「すまなかった。それにしてもわざわざこんな所まで来たのはワケありだろう。」

 

ノボル「ええ、実はですね・・・」

 

 と言うと、ノボルは一枚の紙を取り出した。その紙には零戦と隼の間に交差した白黒の旗の絵が描かれていた。

 

イサカ「コレは最近話題になってるインノで流行りのレースか…!!」

 

ノボル「そうです!これに参戦してもらいたいなぁと思いまして。」

 

 通称『零戦・隼レース』。イジツでたくさん流通している零戦や隼を使ったレースで、ビギナーからプロまで幅広い層をターゲットにしたエアレースである。幅広い層をターゲットにすることでエアレースの振興に繋げる目的もある。レース形式はタイムトライアル方式をとっており、で誰もが分かりやすいように工夫がされている。また、参戦するのが比較的容易などいろんな街で話題になっていた。

 

ヤマダ「ふーむ。これに出て何なるんだ?」

 

ノボル「僕の整備した機体とヤマダ班長の整備した機体でレースをすれば、僕がどれだけ立派になったか一目瞭然かなぁと。宣伝とかにもなりますからね!」

 

ヤマダ「俺に勝とうっていうのか?いいぜ、受けて立とうじゃないか!」

 

イサカ「ヤマダ、私も出場していいか?」

 

ヤマダ「勿論だ。ついでにリューヤ君と言ったか?君も出ないか?」

 

今まで蚊帳の外だったリューヤに突然話を振られる。

 

リューヤ「い、いやっ、僕一応プロですよ?」

 

ヤマダ「なーに、心配いらないさ。イサカはこう見えても零戦のワンメイクレースじゃ何度も表彰台に登ってるからな?」

 

リューヤ「御見逸れいたしました。」

 

 

 そんなわけでヤマダ、イサカ、ノボル、リューヤの4人の参戦が決まった。レースの話題で盛り上がっていると、一人の男がヤマダに話しかけた。

 

??「あの、ヤマダ班長。」

 

ヤマダ「リキヤか。どうしたんだい?」

 

リキヤ「あのーそろそろ運び出しませんか?残ってるの、この零戦と隼だけですよ」

 

一同「 ア″ッ…。」

 

 

 副官のサダクニさんから大目玉を食らったのはいうまでもない。

 

 

 

 

翌朝

 

 リューヤが目を覚まし時計を見ると9時を少し過ぎたところ。いつもは爺やに起こされていたので寝坊してしまう。ノボルに何か小言を言われるなぁと考えつつ朝食をとり、窓の外を見るとちょうど真っ赤な隼と金星発動機の轟音を轟かせながら零戦が離陸していくところだった。おそらく零戦・隼レースの書類を運んでもらうための特急便だろう。

 レースは明後日。昼過ぎには出発して夕方ごろには着く予定である。

 格納庫に下りると既にノボル達はインノへ向かう準備を進めていた。

 

ノボル「遅いぞー!さっさと準備したら出発するんだかんなー!」

 

リューヤ「すまねぇ!」

 

 既に格納庫では出発の準備が始まっていた。機銃に弾を込めたり、機体に増槽を付けたり。各々が自分の作業をしている。それを横目に見つつリューヤも隼で出発する準備に取り掛かる。

 ホ103に弾を補充し終えるとちょうどヤマダが来た。ガラガラと台車を押しこちらに向かってくる。台車にはなにやら丸みを帯びた円筒形のものがのっている。増槽だ。

 

ヤマダ「本来は零戦用の増槽なんだが、途中で切り離してこっちに向かってきてると思ってな。夜中に加工して用意したんだ。」

 

リューヤ「…ッ!ありがとうございます!」

 

 早速隼の翼下に2つ、ヤマダからもらった増槽を取り付けた。

 

ヤマダ「さ、こいつをつけたら落下点検だ。ちゃんと切り離せないと大変だからな。」

 

 増槽は切り離せないと空戦時に大きな的となり、弾が当たれば中の気化したガソリンに引火し一瞬で火達磨に。また、切り離すことにより増槽の分の軽量化も可能だ。故に切り離すことができないと危険である。

 ヒョイと隼に乗り込んだリューヤは、切り離しのレバーを引き増槽を切り離してみる。

 

ガコッ!ボスッボスッ…

 

 問題なく増槽は切り離せた。あとは燃料を入れて出発するだけだ。

 

 時刻は11時を回り、いよいよ出発となる。タキシングで滑走路に向い、整列する。教えられた無線のチャンネルにあわせ、聞こえてるか確認をとる。

 

リューヤ「ゴホン、あーこちらリューヤ、こちらリューヤ。聞こえてますか?」

 

イサカ「問題ない。」

 

ヤマダ「バッチリ聞こえてるぞ」

 

ノボル「大丈夫だ!では、インノへ向かいましょうか」

 

 そういうと、イサカの零戦二一型AI-1-129とヤマダの零戦五二型61-120が先行して空へ上がった。それに続いてリューヤとノボルも離陸する。

 

 離陸してからしばらく無言が続いたがノボルが話を切り出した。

 

ノボル「班長はてっきり五四型のような馬力がある発動機を積んだ零戦で行くかと思いましたよ。」

 

ヤマダ「バカ言え、命を乗せて飛ぶんだ。好きな機体で行くのは当然だろう?それにこの機体はイサカがプレゼントしてくれたんだ。」

 

イサカ「ふふふ、私とレミでプレゼントしたのさ。あの時のはしゃぎ様は昨日のことの様に覚えているぞ。」

 

ヤマダ「…やめてくれ」

 

リューヤ「お二人ともお熱いですなぁ☆」

 

 そうこう話しているうちにインノへは何事もなく到着することができた。いつもであれば、空賊の1つや2つ見つけてもおかしくはないのだが、今日に限っては見かけなかった。

 

 滑走路へ下りると割り当てられた格納庫に案内される。タキシングで移動してると見覚えのある雷電が飛行前の点検をしていた。ヨシナガである。改めてチラシを見直すとそこには、ヨシナガがデモンストレーションで飛行すると書いてあった。

 本戦に参加しないとはいえ、イジツエアレースの二大レーサーがこの零戦・隼レースに関わるとなれば騒ぎになるのは間違いない。

 

 格納庫は2機でひとつの格納庫を共有する。それぞれリューヤノボル、ヤマダイサカと分かれた。イジツエアレースでも使われるこの格納庫は、とても広々としている。

 格納庫に隼を止めると同時に場内アナウンスが辺りに響いた。

 

実況「皆さん、今日はお集まりいただきありがとうございます!」

 

実況「いよいよ本番が明日に迫りました、零戦・隼レース!!今日は前日祭ということでこの方がゲストで来てくれました〜!!拍手でお迎えください!!」

 

実況「イジツエアレースでお馴染み、ヨシナガ選手です!!」

 

ヨシナガ「どうも〜、ヨシナガですー!」

 

 ステージの横からヨシナガが現れた。いつものフライトジャケットを着て、ゴーグルは首にかけている。

 

実況「えー、早速ですがヨシナガ選手にデモフライトを行ってもらいましょう!」

 

ヨシナガ「ふっ、イジツエアレース五連覇した男のフライト。篤と見るが良い!」

 

 すると実況から鋭いツッコミが入る。

 

実況「あれー?でもヨシナガ選手、昨シーズンは新人のリューヤ選手に敗れましたよね?」

 

ヨシナガ「うっさいわ!それよかとっとと始めっぞー」

 

 そう言い終わるが早いかステージを降り、愛機の雷電に乗り込んだ。雷電は既にエンジンは回っており、暖気も済んでいつでも離陸できる状態になっていた。タキシングで滑走路に出るとスタート合図のフラッグが大きく振られる。と同時にヨシナガは雷電のスロットルを開けぐんぐん加速していく。

 

 今回のデモフライトは本番と同じコースを飛ぶことになっている。離陸し最初のエアゲートの間を通り抜け十数個あるターンを抜けた後、最初に通ったエアゲートを再び通り抜けるまでがコースとなる。

 

 迎撃機故の直線番長の雷電だが、流石はイジツエアレースを5連覇しただけのことはある。ヨシナガはエアゲートすれすれのターンを決め、雷電の限界性能を引き出す。失速しそうな速度まで落ち込んでもチューンナップされた火星発動機はそれを許さない。観客の視線はヨシナガに奪われた。

 

 あっという間にゴールのエアゲートをくぐり抜け、ヨシナガによるデモフライトが幕を閉じた。タキシングでステージ脇まで移動し、風防をガラッと開けると歓声に包まれた。

 

ノボル「なんか、イジツエアレースの本戦とは雰囲気が変わってたな」

 

リューヤ「俺に負けた後なんか吹っ切れたみたいでよ、オフシーズンなのにめちゃくちゃ練習してるって噂だぜ?」

 

ノボル「そうか」

 

リューヤ「なんでももう1機練習用のデチューンされた雷電を購入して練習してるみたいだ。」

 

ノボル「人は変わるんだねぇ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日

 

 早朝から降っていた雨は止み、空を覆っていた雲はどこかに行ってしまった。インノ上空はとても晴れた気持ちの良い空のようだが、雨上がりのためか風が強く吹きつけている。今日のレースにも少なからず影響してきそうだ。

 

 今回行われる零戦・隼レースはイジツ・エアレースのレース形式とは違いタイムトライアル形式でレースが行われる。また、過去のレース結果や年齢などを考慮しプロクラス、ジェントルマンクラス、アマチュアクラスの3つに分けられる。

 プロクラスは公式レースへの参戦や優勝したことがある選手がエントリーすることになっている。リューヤとイサカがこのクラスに当てはまる。

 そして、ジェントルマンクラスは50歳以上のベテランレーサーが該当する。かつてイジツエアレースやヴァンキッシュレースで名を馳せたレジェンドパイロット達が多く参戦しているクラスだ。

 最後にアマチュアクラスは過去レースに複数回の参加経験があり入賞圏内に入れなかったものや、レースに初めて参加するものが該当し、ノボルやヤマダがこれに当てはまる。

 このクラス分けにより、4人の直接対決は実現しなかったがノボルとヤマダによる師弟バトルが現実となった。

 

ヤマダ「どんな組み合わせになるんかと思ったが、ノボルと一緒の組になるとはな」

 

ノボル「へへッ!これで僕がどんだけ成長したか証明できますねぇ!」

 

ヤマダ「おう、言ってくれるじゃねぇか!容赦はしないから覚悟しとけよ?」

 

ノボル「もちろんですよ!僕のこと見縊らないでくださいよ?だてに一番近くでリューヤのフライト見てたわけじゃないんですから」

 

イサカ「ふふ、ヤマダのやつ楽しそうにしてるな」

 

リューヤ「楽しみにしてたであろう師弟対決ですし。あ、今日はよろしくお願いしますよ」

 

イサカ「そうだな、お手柔らかに頼むよ。」

 

 格納庫前に戦闘機を並べ、フリーフライト前の少しの時間でワイワイ話していた。

 零戦・隼レースには予選が存在しない。その代わりに本番前に1時間のフリーフライト時間が設けられている。このフリーフライトの時間に機体のチェックやコースの確認が行われる。

 フリーフライトの後は本番のレースが行われる。レースは単純に指定されたルートを一番速く飛んだパイロットの勝利となる。

 ワイワイ喋っているとあっという間にフリーフライト時間の10分前になった。エンジンに火を入れ、フライト前の点検を手早く済ませるとフリーフライト開始の合図が出された。続々といろんな塗装が施された零戦や隼が空に舞い上がる。ヤマダとイサカは周りに倣って空へと上がる。

 フリーフライトではクラス分けは行われない。一見スタート時にゴタゴタが起きると思われがちだが、レーススタッフの的確な誘導でレーサー同士が衝突することなく空へと上がれるのだ。

 

 一方リューヤとノボルはまだ離陸していなかった。飛行機乗りとしては一人前だがレース初心者のノボルにリューヤがレクチャーしていたからだ。

 

リューヤ「基本はこんな感じだ。あとは次のターンへのアプローチを意識しながらターンできれば更にいい。まぁ、あとはお前さん次第だな。」

 

ノボル「頑張ってやってみるさ。」

 

リューヤ「根性に頼るのは良くないが、俺が先飛ぶから後ろから付いて来てみな。百聞は一見にしかず、ってユーハングのことわざもあるしな。」

 

ノボル「わかった。やれるだけやってみるさ。」

 

 そう言うが早いか、リューヤとノボルは愛機に飛び乗ってタキシングで滑走路に出た。レーススタッフの合図を待ち、コースへと飛び立った。

 

 スタートゲートをくぐるとリューヤはスロットルを全開にし一気に加速していった。プラクティスとは思えない速さで左右にロールさせ、綺麗にターンを決めていく。負けじとノボルもついていくがやはり離されていく。

 ノボルの愛機、零戦二二型は横幅こそ二一型と同じ12mだが、エルロンバランスタブがついているので若干ではあるがロールが早くなっている。しかし、隼の11メートルにも満たない横幅によって生まれるロール性能にはさすがに敵わない。

 ターンを4つ程抜けるといなくなっていたと思ったリューヤの隼が見えた。わずかにバンクしたのが見えたので慌てていつも使っている無線チャンネルに合わせる。

 

リューヤ「聞こえるか?零戦の強みってなんだと思う?」

 

ノボル「ああ、そりゃ旋回半径の短さだね。」

 

 ノボルは即答した。

 

リューヤ「では逆に、苦手なことはなんだと思う?」

 

ノボル「ん?横幅が長いことに起因するロールの遅さかな。」

 

リューヤ「じゃあどうすればそのロールの遅さを解決できると思う?」

 

ノボル「うーん、なんだろ…。」

 

 整備に関することならすぐにわかるのだが、いかんせん初めてのレースだ。すぐにわからないのも当然かもしれないが、ヒントを教えてくれるのは有難い。

 

リューヤ「それが分かればヤマダ班長に勝てる確率はグッと上がるぜ。」

 

 そう言うとプツリと無線が切れた。リューヤの隼はあっという間に小さくなって気付くとタキシングで格納庫へ向かっていた。地上から見てるだけでは分からないことも多いが、実際に一緒に飛ぶとプロの凄さがよくわかる。ノボルは改めてリューヤというプロレーサーを再認識した。

 

 フリーフライトは残り40分。

 

 その後、何十周かコースを回り格納庫の前に戻ってきた。ノボルが零戦から降りるとリューヤは隼の機体を磨いていた。機体の表面を磨き上げることによって表面の凸凹が減り、空気抵抗を減少させることができるからだ。

 

リューヤ「よお、上手く飛べたか?」

 

ノボル「いやぁ、あのアドバイスがよく分かんなくて。ずっと考えながら飛んでたからタイムは微妙だよ。」

 

リューヤ「そいじゃ、コースインする前にもアドバイスしたと思うが内容は覚えているか?」

 

ノボル「速く飛ばす基本だっけ?」

 

リューヤ「いや、その後だ。」

 

ノボル「ええと、たしか『次のターンへのアプローチを意識する』だっけか」

 

ノボル「あっ!!そういうことかっ!!」

 

 突如何か閃いたのか脱兎の如く、愛機の零戦二二型へ向かって走り出した。リューヤもやっと気付いたか、と言わんばかりに隼のエンジンを再始動させ滑走路へと向かった。

 

 フリーフライトは残り15分。

 

 その頃、ヤマダとイサカは支給された弁当を仲良く食べていた。フリーフライトの前半をフルで飛んでコースを覚え込み、コース攻略について話しながら食べている。

 

イサカ「ここの右に180度回るところ、左に振って大きく回り込むより、インメルマンターンで反転して降下すればいいと思うが。」

 

ヤマダ「早めにフラップを出して小さく回るのもアリだと思わないか?」

 

イサカ「それでは速度が落ちてしまわないか?」

 

ヤマダ「それもそうだな…。」

 

 悩むヤマダを横目にイサカはアホウドリの唐揚げをつまむ。食べようとしてふとヤマダを見ると泣きそうな目でこちらを見ている。

 

イサカ「…どうした?」

 

ヤマダ「それ、美味しかったから最後に食べようと残しておいたのに…」

 

 するとイサカはヤマダに口を開けるように促す。

 

イサカ「ほら、お前にやるよ。口を開けろ。」

 

 ヤマダがあーんと口を開けると唐揚げが放り込まれた。イサカは美味しそうに食べるヤマダを微笑ましく見ていた。

 

ヤマダ「お、おいひいうぇス!!」

 

イサカ「ふふ、喋るなら飲み込んでからにしてくれ。」

 

 いつまで経ってもアツアツな2人である。一方、ノボルはレーシング飛行に慣れてきたのか徐々にタイムが良くなっていった。時折前を飛ぶリューヤに肉薄する勢いでターンを回ってみせ観客をどよめかせた。

 

 

 

 そしてフリーフライト終了の空砲が鳴った。

 

 

ドーン!ドーン!!ドーン!!!

 

 

 最後の最後までタイムアタックをしていたノボルが格納庫に戻ってくるとフリーフライトのタイムが掲示された。クラス毎に分かれてタイムが書かれていた。

 プロクラスは大方の予想通りリューヤが全体のベストをマーク。あわや大会記録更新する好タイムであった。対するイサカは、そのタイムからコンマ5秒遅れで2番手タイムをマークした。一方アマチュアクラスではノボルがクラス3番手タイム、ヤマダはクラストップのタイムを叩き出し、零戦の整備士としての意地を見せた。

 

ノボル「あー、フリーフライトだけどヤマダ班長には及ばなかったか」

 

ヤマダ「フリーフライトであっても簡単に負けるわけにはいかないぜ?」

 

 師匠の壁はとても大きい。しかし本番はこれからである。フリーフライトではなく本番のが重要だ。

 フリーフライトの結果を見て肩を落としたノボルにリューヤは元気つけるかのようにヤマダにこう言った。

 

リューヤ「ノボルはさっきコツを掴み始めていました。案外侮れませんよ?」

 

ヤマダ「おぉ、言ってくれるじゃねぇか!なぁイサカ!」

 

イサカ「ふふ、我々も負けるつもりでここに来たわけじゃないからな。」

 

 タイムでは負けているイサカも気合は十分だ。ヤマダと練り練りした作戦でリューヤに勝負を挑む。

 

 そしていよいよ零戦・隼レース本番の時間となった。まずはアマチュアクラスからタイムアタックが始まる。

 師弟対決、ヤマダとノボルによる戦いの火蓋が切られた…!!

 

 

 




今回はヤマさん(5145/A6M5)よりヤマダとイサカをお借りし、三次創作という形で物語を進行させていただきました。ヤマさんありがとうございます^^
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