犬上小太郎(偽)の往く、なんか違うネギま!世界   作:谷原きり

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一万文字とか書ける気がしないっす


幼少期と言っても原作が既に幼少期

半妖スペックや前世知識を生かすことで俺にかかずらわされることが少しは減った母ちゃんではあるが、それでも忙しいことには変わりない。パートで金を稼ぎ、安アパートで子供と二人で暮らす。産後間もない体への負担は大きい。

 

というかだ。そもそも母ちゃんが若すぎる。パートに出す履歴書を見たが、15。中卒かと思うがしかし、俺は聞いた。実はうちの母、14。

父たるクソ妖怪に拐われたのが13。その後俺を身籠って、クソ親父は産まれるや否やすぐにどこぞへ消えた。

 

マジでクソ過ぎる。これでよく恨みとかなく俺に愛情注げたな、聖女かよ。俺の母ちゃん。

 

とにかくこんな環境じゃあ母ちゃん死んじまう。そこで考えた。

 

とにかく今は疲労を少しでも減らす。そのために、気とか使った治療ができないか、と。

 

ネギまにおける不思議エネルギーは三つ。魔力、気、二つの混合である感卦の気。

原作において犬上小太郎は気を主に使っていた。ならば俺にもその適性はあるはず。

そして何より、気とはいわゆるオド、体内の生命エネルギーであると説明されていた。これで持って、少なくとも母の疲労回復程度出来ないかという考えである。

 

まぁまず気の扱いでつまづいたんだがな!

 

前世はただの売れない役者である。ダンスとかアクロバットとか練習はしたが波動拳とか出せる世界の住人ではなかったわけで。

それでも気の存在を知っているというのは大きなアドバンテージになったのか、数週間で気はなんとか使えた。

最低限の気の感知と肉体強化は出きるようになった。

 

そんでもって愕然とする。母の気がかなり弱っている。

 

俺の気は半妖ではあるが、まだ一歳の子供だ。それが弱々しいと感じるならば、倒れる一歩手前なんだろう。

奮起した。うちに金はない。倒れたら病院にかかることも出来ない。そんな崖っぷちで倒れたら、本当に死んでしまう。

 

尻に火がついた俺は、僅か一日足らずで気による簡易回復を習得した。術式とかのムダはアホみたいにあるだろう。とりあえず今はこれでいい。

 

帰ってきたフラフラの母ちゃんに、申し訳ないが食事を用意してもらい、入浴を済ませ、眠るタイミングで簡易回復を使う。頑強な俺の体はもうベビーベッド(手作り)を使う必要がない。一緒に寝たいと我が儘を言って、回復をかけるのだ。俺の気が減っていく=俺の生命力が減る訳だが、伊達に半妖ではない。ちゃんと飯食って寝ればどうにでもなるのは実証済みだ。

 

「小太郎…あんた温いね…」

「ん、かあちゃんもぬくい」

「ふふ、そっか」

 

翌日、青白い顔だった母ちゃんは、少しましな白い顔で出ていった。

 

「よっしゃ」

 

出掛けるギリギリまで母ちゃんにしがみついて回復しただけあって、俺の気は既にレッドゾーン。出ていった五分後には、気絶するように眠りについた。

 

 

 

数ヶ月経つと、母ちゃんの肌が健康的な赤みを取り戻していた。

ニキビや肌荒れもなく、健康そのもの。

多分、回復のおかげだろう。ニキビを見つけた時に、回復の気を集中的に当てている。翌日にはツルツルの玉のお肌だ。

 

取り敢えず、喫緊の問題はどうにかなった。毎日の回復で、気の扱いには慣れてきたし、次の問題。

 

金がない。

 

まだ十代半ばの少女が住むにはこの安アパートは良くない。最低限の鍵、風呂トイレ共用、六畳一間の部屋。

 

どうにかならんかと考えたり部屋のものを弄るうちにヤバイものが出てきた。

 

玉手箱に入った大量の小判。

 

どう考えてもこんな場末のアパートに似つかわしくない財宝。蓋を持った手が震える。

どうしたのかと母ちゃんに聞けば、

 

「お父ちゃんがね、あんたのために、ってくれたんよ」

 

なるほど。ろくなことしないクソ野郎かと思えば、最低限のことは気を回したらしい。

しかし残念、評価は上がらない。何でって?こんな小判十代の少女が売れる訳ないだろう。下手すりゃ誘拐監禁や強盗の餌食だ。やっぱりクソ野郎だった。

 

とにかく、これの処理をどうにかせねば。こんなところ(非力な少女と幼児二人暮らし)にこんなもの(大量の小判とかいう厄ネタ)があれば、不味いことが起こる気しかしない。

 

結局、この玉手箱を処理出来たのは三年後。俺が気による変化術を身に付けてからだった。

 

原作でもあった、年齢詐称薬。アレの効果をどうにか気で再現できないかと頑張った。

気は、使い方次第で長瀬楓の用いた影分身のように実態ある分身なども作れる。この分身、粘土細工のようにある程度弄れるのだ。なので、自分の体にそのこね繰り回した分身を被せることで我流変化の術を体得。

我流変化術のお陰で、通常の幼児を偽ることも、逆に変身も可能。これにより、何となく裏っぽい(魔力とかやたら感じる)質屋に漸く行けた。

 

けれども、因果とやらはあるのだろうか。

 

「いらっしゃーい。査定か買い取りか知らんけど」

「…!取り敢えず査定を頼むわ」

「はいはい」

 

偶然訪れた質屋のカウンターに居たのは、和服に大きな丸眼鏡、つり目の少女。

恐らくは、天ヶ崎千草。修学旅行編の黒幕。

 

今はかなり幼げの残る少女だが、何となくキツネっぽいあの感じのままだ。

 

何でこんなところに、と考えるも、魔法使いも麻帆良で先生やってたりするのだ。陰陽術師が副業で質屋やっててもおかしくはない。

それに天ヶ崎千草の両親は、魔法世界の大戦で失われたとか。この店は、その遺産なのかもしれない。

 

「こいつや」

「んー?お、ざくざくやん。これどこで?」

「聞かんといて。んで、足がつかんように流したいんやけど、いくら?」

「ず、随分せっかちやな。んー…ほんなら、出所不明やし…前金で千やね」

「前金?」

「うちに今纏まった金ないんや。すぐに用意出来るんはそれだけ」

「解った。それで」

 

面食らったように目を瞬かせる。

 

「…ええん?口約束なんよ?」

「はようこんなん売っ払いたいんや。邪魔やねんこれ」

「ふーん…」

 

札束をぽいぽいと積む千草。じろじろと興味深そうに見てくるのに緊張する。

最後に手形を置いて、

 

「一月したらその手形持ってきぃ。お金用意しとくからな」

「おう」

 

風呂敷に包んでさっさとその場を後にする。その背中越しに声が掛かる。

 

「今度はその…ようわからん変化を解いて来ぃや?」

 

…見抜かれていた。

ネギまにおける天ヶ崎千草は、それなりに優秀な能力を持ち合わせているようではあった。自身の魔力(呪力)を大幅に上回る近衛木乃香の魔力を制御し、仮にも鬼神たるリョウメンスクナの封印を解除・操るという凄まじいことを仕出かしている。マンガではギャグチックな描写やその後のエヴァの大活躍、フェイトの強キャラ感で霞んだが。

 

それにしたって、見た感じ十代半ば…母ちゃんと同い年くらいだろう少女に見抜かれるとは。これでもかなり 完成度を高めたつもりだったのだが。

 

出会ってしまったのは仕方がない、怪しまれないように…なんて考えていたが、してやられた。

ため息を吐いて、あのボロアパートへと帰る。10日の後、俺たち親子はやっとまともなマンションに移り住んだ。

 

 

余談だが。

 

変化を解いて天ヶ崎千草に手形を渡した際、中々に形容しがたいすっとんきょうな声を上げて驚いてくれた。

その上でちゃんと金を渡し、飴を渡し、心配そうに見送りまでするという後の悪役らしからぬ姿まで見せられた。

意外と、優しいのだろうか…?




独自設定・解釈を多用しています

■犬上佳奈子(17)
名前を出す機会がないため母ちゃんとしか表記されないママ少女。ちょっぴりつり目の濡れ羽色な髪をポニーテールにした小柄な女の子。
クソ妖怪の狗族に惚れてしまったはいいが、小太郎を授かって産むや否や仕来たりとかで放り出される。最近生活が落ち着いてきて、冷静になってみると狗族のクソさ加減に気付いて愛が消え去っていた。
小太郎が普通ではないことは知っていたが、半妖ならそんなもんかと勘違いしていた。最近薄々気付いてきた。それでも我が子が可愛くてしょうがないらしい。

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