バトルスピリッツ Over the Rainbow   作:LoBris

12 / 21
 LoBrisです

 ついにこのサブタイトルにも決着……したのですが、何を間違えたか、1.75ターンほどしか書かないはずなのに、過去最高の文字数を更新してしまいました。
 約0.75ターンの描写に16000文字超というのが既におかしかったのですけどね

 そして、これを書いている今、午前4時30分頃です。ちょっと夜が明けかけているからか、窓の外から小鳥の声が聞こえてきています

 深夜テンションで書いた、約28000文字。
 時間のある時に読んでいただければと思います。


第11話 問題児が神世界から来るそうですよ? その3

 ホルスの起こした「革命」は成功した。だから、ホルスは今、「エジット」の新たなる盟主として立っている。

 

 少し頭が堅いとはいえ、これまで先導してきた創界神(グランウォーカー)4名を失ったエジットは、目に見えて規模が小さくなった。

 だが、このまま時代の流れに呑まれて滅びゼロに還るよりは、たとえひとつだけであろうと、残せるものが多いほうが良い。ホルスとしては、小さくなっても独立した勢力となるのが望みだった。規模が小さくなっても、再び一から築き上げていけばいいのだから。かつてラーが、不毛の砂漠から「エジット」を興し、繁栄へと導いたように。

 

 だが、「革命」を果たしたホルスを、永い悪夢から覚めたエジットを待っていたのは、あまりにも残酷な仕打ちだった。

 

 対等な友人として歩んでいくはずだった「オリン」──その最高神ゼウス、否、ゼウス=ロロが裏切ったのである。

 

 理想と現実は大きく乖離した。

 ホルスの望みに反して、エジットは完全なる属領の扱いを受けることとなる。彼に残されたのは、空虚な「最高神」の席のみ。

 

 その時のゼウス=ロロは、とうに“歪められて”いた。しかし、彼の娘にしてオリンの知将であるアテナですら、そのことに気づけていなかった。ゼウス=ロロが理想を歪められた存在であることに気づき、その元凶を探し出すべく動いていた女神も、悟られないように秘密裏に動く必要があった。オリンではなくエジットの創界神、部外者ともいえるホルスがそんな事情を察することができなかったのも、当然の道理だ。

 

 だが、このことがきっかけに、ホルスの中に迷いが生まれた。

 エジットの独立を保ちつつ、他の勢力とも歩み寄れる未来を標榜していたはずだ。そのために、過激派の身内を裏切りもした。その結果が、このざまだ。

 

 ──これでは、まるで、「オリンにエジットを売った」も同然ではないか!

 

 

 さらに、追い打ちをかけるように、ゼウス=ロロ一派との交戦中、“あの事件”が起きた。

 同じくエジットに属する創界神・アヌビスの裏切りである。

 

 そもそも、彼は、今は亡きラーの側近で、ホルスとは同期。傍からは「ライバル」と言われるような関係性だった。反逆されることくらい、想定できたはずだ。ホルスは、ゼウス=ロロという大敵に気を取られていて──ついでに、自身の鳥頭もあって──内に潜む小さな影に気づけなかったのである。

 

 アヌビスが率いているのはスピリットだ。それも、300という、そのすべてが精鋭ということを加味しても、神が率いる軍勢としてはあまりにも小さすぎる規模である。だというのに、彼らは、アルティメットとの力量の差など関係ないと言わんばかりの勢いと実力を伴っていた。不意打ちだったとはいえ、たった1柱の創界神の謀反によって、自軍どころか、友軍であるトトの軍までもをズタズタにされたほどだ。オリンの“とある伏兵”が助太刀に来なければ、崩壊も時間の問題だっただろう。

 

 

 神世界の時流に乗って、他の勢力に歩み寄れるエジットを築く。そんな大志を抱いて革命を起こしたというのに、実際はどうだろうか。

 信じた相手からは裏切られ、自身の属する勢力の内側でも不和を招いた。きっと、アヌビスが謀反の際に見せた異常な勢いの裏には、ホルスが最高神の座に就いてから抑圧してきた憎悪があったに違いない。

 

 

 

(何やってんだ、オレ……)

 

 先程、アヌビスのことに触れられたホルスは、暫し思考に耽っていた。アヌビスが、ゼウス=ロロの計略をトリガーに反乱を起こしたのはたしかだ。が、内憂を放置していたホルス自身にも非がある。

 

 そして、そのゼウス=ロロを裏で操り、間接的にアヌビスが謀反を起こすよう仕向けた張本人が、今、目の前にいる。持てる限りの敵意を込めて、正面を向くと──

 

 

 

「何やってんだ、あいつ?」

 

 何かがおかしかった。

 

 マミのフィールドに、並々ならぬ妖気のようなものを纏った剣が突き刺さっている。ここまでは普通だ。

 剣身や(つか)が白骨で装飾されており、鍔の部分には何か怪しげな赤い物体が蠢いているが、そこまで気にするほどのことでもないし、気にしてはいけない。この剣の使い手を知る者が見れば「まあ、あいつのことだし」と口を揃えるだろう。

 

 問題は、剣が突き刺さっている位置。

 なんと、ディオニュソスから1mも離れていない、超至近距離である。今にも彼の肌を刃が掠めてしまいそうなところに、突き刺さっていた。

 

「何のつもりかな?」

 

 ディオニュソスが、ゆっくりと使い手の方を振り返った。

 

「言っても聞かないなら、身を以てわからせるしかないかなと思って。欲を言えば、貴方の脳天にぶつけるつもりでした」

 

 その使い手──マミは、毅然とした態度でこう言った。

 

「やれやれ。勝ち気なお嬢さんだ」

 

 彼女の狼藉を、ディオニュソスは溜息ひとつで不問にした。至近距離に突き刺さった剣が浮かび上がる。

 

 どうやら、マミは、神話(サーガ)ブレイヴ・[冥府神剣ディオス=フリューゲル]を、ディオニュソスの脳天目掛けて召喚していたようだ。たしかに、直接合体(ブレイヴ)させる形で召喚すればこういうことも可能ではある。実行するかどうかはともかくとして。

 フィールドで、ミュジニー夫人が「何ということを……!」と言うように、文字通り「怒りに震えて」いた。ガタガタと、震える骨が音を立てる。

 

「怖っ……」

 

 ツバサがホルスの思っていたことと全く同じことを呟いた。

 普通は、いくら苛ついたからといって、相手が外道だからといって、「鞘から抜いた剣を脳天に落下させる」という発想に至るだろうか。いや、ない。

 その異常な暴力性を「勝ち気」で済ませるディオニュソスもディオニュソスである。ソウルコアの結界内で受けた傷は、勝敗がついて結界が消えれば癒えるとはいえ、当たったらどうするつもりだったのだろうか。ホルスとしては、ぜひ一度は脳天に命中してほしいものである。常に余裕綽々で、一発以上は殴りたくなるような薄ら笑いを浮かべているディオニュソスには、一度のもならず何度でも痛い目に遭ってほしい。

 

「系統:「神装」を持つブレイヴの召喚によって、ディオニュソスに《神託(コアチャージ)

 

 そして、ディオス=フリューゲルの、ネクサス合体(ブレイヴ)時効果・【神域(グランフィールド)】発揮。このネクサスにコアが3個以上置かれている時、ディオニュソスの【神域】でコアが0個になっている自分のスピリットすべてを最高Lvに」

 

 ディオス=フリューゲルの剣身から放たれる、紫色の闇の波動。それが、骸に宿る仮初の命を強化する。波動を浴び、高揚し騒ぎ立てるように、ラス・カーズがガシャガシャと骨の音を鳴らした。

 

「──そして、[冥府骸導師オー・ブリオン]を召喚!

 系統:「無魔」を持つコスト3以上のスピリット召喚によって、ディオニュソスに《神託》」

 

 紫煙と共に現れたのは、黒い襤褸を纏った、背の高いスケルトン。これもミュジニー夫人と同様に、ディオニュソスのフィンガースナップと同時に、ゆらりと動き出した。虚ろなはずの片眼に紫の光が宿り、鋭い歯を見せ嗜虐的な笑みを作る。

 

「もう我の化神を喚ぶ気かい? 見かけによらずガツガツしてるねェ」

 

 オー・ブリオンを見て、マミのやろうとしていることを察したのだろう。ディオニュソスがにやりと笑った。

 

「こんなに早く仕掛けたくなったのは、半分以上貴方のせいなんですけれど……あと、一言多いですよ」

 

 マミは心底面倒臭そうに返すと、フィールドに向き直る。きっと、この問題児には何を言っても無駄なのだろう。だが、彼の読みは当たっている。なぜなら、オー・ブリオンの召喚時効果は──

 

「召喚時効果で、自分の手札/トラッシュにある、カード名に「冥府」を含むコスト8以上のスピリットカード3枚までを、1コストずつ支払って召喚!

 手札から[冥府三巨頭クイン・メドゥーク(RV)]を、そして、トラッシュから──」

 

「冥府」の名を冠する大型スピリットの踏み倒し。

 先のターン、ディオニュソスの《神託》によって、トラッシュには彼の化神たる「冥府神王」が落ちている。

 

 配下たる冥府三巨頭が1柱、クイン・メドゥークと共に、早くもその姿を──

 

「あむっ!?」

 

 現さなかった。

 というか、召喚しようとしたマミが不意に間の抜けた声を出し、困惑している。

 

 ついでに、冥府の強者たちを喚び出そうと魔術を行使していたオー・ブリオンも、突然のことにビクッと動きを止める。急停止した際に、露出している胴体の骨がガラガラッと音を立てた。

 

「なんか、口が勝手に動きそうになったんだけど……!?」

 

 ツバサは「ああ、なるほど……」と苦笑した。彼にも「バトル中、口が勝手に動きそうになる」という経験には覚えがある。ホルスの力を授かった化神、ゲイル・フェニックス・ホルスを召喚する時、いつも勝手に口が動いていた。それも、抗いようもないくらい自然に。でなければ、あまり自分に自信がないツバサが、わざわざあんな大仰な口上をつけるようなことはしない。

 

 思えば、リョウが[聖刻神機ジェフティック=トト]を召喚する時も、ガイが[砂海嵐神タイフォーム]を召喚する時も、アンジュが[星天使女神イシスター]を召喚した時だって、そういった口上がついていた。彼らの場合、様になっていたので、観客からしても違和感はなかったが。

 

 創界神もまた、自身の化神に愛着を持っているようで、きっと特別な存在なのだろう。それこそ、使い手の口が自然と動いてしまうくらいの神威を秘めているのかもしれない。

 

 マミが間の抜けた声を出したのは、口から零れだした言葉を無理に呑み込んだからだろう。

 

「どうしたんだい? 我の化神を喚んでくれるんだろう?」

 

 ディオニュソスの声音は、僅かに催促しているように聞こえた。さすがの彼も、使い手が零れだした言葉(のりと)を呑み込むとは予想していなかったのだろう。……尤も、「面白そうな子を見つけた」と言わんばかりに、使い手を見る目が細められているが。

 

「そのつもりだった、けど……っ!」

 

 意図せず口が動きかけるという怪現象に、マミは辟易としていた。だが、それ以外にも惑う理由はある。ツバサが今まで見てきた創界神たちは、若干性格に難があるとはいえ、皆がそれぞれの正義を持っていた。

 

 だが、今回は話が違う。己の愉悦のために、数々の創界神を股掌の上に玩んだ、神世界の問題児。その化神の召喚と共に紡ぎ出される言葉は──きっと、ろくなものではない。ツバサも、マミも、そう考えていた。

 

 そんな軽い膠着状態を破る声は、場外から。

 

「『デッキはデッキ、使い手は使い手』だ。目黒がそう信じている限りは、な」

 

 底に響くようなバリトン。今まで黙っていた、ガイの声だ。

 

「……? あの、どういうことですか?」

 

 マミが、ぱちぱちと目を瞬いた。

 

「使っているデッキのカードや戦術と使い手の人格が一致するとは限らない、ということだ。目黒がそうだと信じている限り、自然と出てくる言葉もお前自身のものになると思うぞ」

 

 静かながらもはっきりとした、力強い励ましの言葉。最後に「頑張れ」と付け加えて以降、ガイは何も語らなかった。

 

「私自身の言葉で、か……」

 

 すぅ、と深呼吸して、マミはトラッシュに置いてあった1枚を手に取る。唇が勝手に動く。だが、もう怖くない──そんな気がした。

 

「不屈であれ! 不浄なまでに、不滅であれ! たとえその身が骸になろうと、抱いた正義が虚ろになろうと、止まらず退かず、道を斬り拓けっ!! [冥府神王カヴァリエーレ・バッカス]、召喚っ!!」

 

 そして、紡がれた祝詞は、あまりにも勇ましく、泥臭い。紛れもない、マミ自身の言葉だ。

 

 奈落の底から現れたのは、4本の腕と血のような色の4枚羽を持つ、全身を鎧で包んだ騎士。ディオニュソスの化神・[冥府神王カヴァリエーレ・バッカス]だ。顔の部分は影が落とされており、表情は伺いしれない。どんな眼差しをしているかもわからない。

 

 カヴァリエーレ・バッカスと同時に、冥府三巨頭が一柱であるクイン・メドゥークもまた、オー・ブリオンの魔術で召喚された。これまた4本の腕を持ち、脚部は大蛇の尾を持った、異形の女性。

 

「系統:「無魔」を持つコスト3以上のスピリット召喚によって、もう一度、ディオニュソスに《神託》

 

 さらに、オー・ブリオンの効果で2体召喚したことによって、デッキから2枚ドロー!」

 

 他の冥府のスピリット同様、ディオニュソスのフィンガースナップで命を吹き込まれ、戦士たちが動き出す。だが、カヴァリエーレ・バッカスは沈黙を保っていた。顔が見えないため、相変わらず何を考えているのかわからない。ひとつわかることがあるとすれば、化神の割には、ディオニュソスと性格があまり一致していないことだ。

 

 一方、クイン・メドゥークは、敵陣をしっかり見据えると、右下の腕に湾曲刀を現出させた。他の冥府のスピリットたちのような相手を舐め腐ったような態度ではない。ゆったりと構えているようでいて、威圧感を放っている。作家や貴族ではない、戦場に生きる存在であるがゆえに、天空の勇士たちへ敬意を込めて。

 ツバサのフィールドにいるファラ=ニクスと、クイン・メドゥークの目が合った。若き鳳凰は、臆さず高らかに鳴き声を上げる。クイン・メドゥークは、若く勇敢なアルティメットを見て、満足げに首を縦に振った。

 

「冥府のスピリットにも、マトモなやつがいたんだな……」

 

 ホルスがボソッと呟いた。ようやく、明確で明快な戦意と礼儀を持った戦士が現れたのだ。沈んでいた気分が上がってくる。

 

「アハハハッ! 元気がいいねェ──そこの鳳凰クンがメドゥークと死合うことはないだろうに」

 

 そして、一瞬で下げられた。

 ディオニュソスが、ファラ=ニクスを嗤っている。せっかく勇ましい戦士と相まみえたというのに、創界神がこれだから台無しだ。

 

「なんで! こう! いちいち煽るのっ!?」

 

 痺れを切らしたマミが、丁寧語もかなぐり捨てて、ディオニュソスを叱った。もちろん、もう彼の反省は期待していないが。叱責に乗っかって、ファラ=ニクスも小さな足で地団駄を踏み、喧しく鳴き出す。マミのフィールドでも、クイン・メドゥークが、ジロリとディオニュソスを睨んでいた。

 

「本当のことを言ったまでなんだけどなァ。それとも、大きすぎる希望を抱かせておいたほうが面白かったかい?」

 

 反省を期待していないとはいえ、マミの想定する「最悪」を超えた返答だった。

 

「それはっ……!」

 

 だが、言い返せない。事実、ファラ=ニクスは、BP勝負を待つまでもなく除去できてしまうのだから。勝ちに行くにあたって、これは避けられない道だ。マミにはカードの効果がわかっているから、それも理解していた。

 

「ホルス、どういうことだ……?」

 

 効果を知らないツバサには、やりとりの意味がわからない。おそらく既に知っているだろうホルスに質問した。

 カヴァリエーレ・バッカスは8コストの大型化神。それだけでもう、嫌な予感しかしない。

 

「あいつの化神カヴァリエーレ・バッカスは、コアが0個の時に完全耐性を持つ。そして、アタック時にフィールドのコアを3個リザーブへ置いて、消滅した数だけ相手のライフを奪うし、今なら──」

「今、後攻2ターン目だよな? なんで当たり前のように完全耐性持ってて、コアシュートのついでみたいに最大3点ライフバーンできるやつが出てくるんだ? しかも、なんかまだ何かありそうな口ぶりなのは気のせいだよな?」

 

 何がひどいかというと、今はまだ後攻2ターン目であるということ。ディオニュソス配置時の《神託》でカヴァリエーレ・バッカスが落ちた際、化神が出てくるまでのカウントダウンが始まったという思いで構えていたが、次のターンになって早速出てきてしまった。しかも、雑に強い効果を詰め込んだような性能である。

 

 ツバサのフィールドには、コア1個のキジバトゥーラと、コア2個のファラ=ニクス。

 これが意味することは──

 

「バーストをセットして、アタックステップ!

 カヴァリエーレ・バッカスでアタック!!」

 

 顔のない騎士が駆け、赤紫色のストールが靡く。4本ある腕のうち2本に、それぞれに片手剣を携えて。

 

「アタック時効果で、フィールドのコア3個──キジバトゥーラのコア1個、ファラ=ニクスのコア2個をリザーブへ! そして、消滅したスピリットの数だけ、相手のライフをリザーブへ!!」

 

 まずは、剣を一振り。それだけで、キジバトゥーラとファラ=ニクスの命が、各々の肉体から切り離される。

 

「……ぐあっ…………!!」

(ライフ:5→4)

 

 そして、彼らの「斬られた」感覚は、ツバサの身体にも伝えられた。不意に胸に、身を裂かれるのではないかという激痛が襲いかかる。身体の内側からの攻撃ともなれば、回避どころか、構えの取りようもなく、いつもより悲鳴が大きい。

 ライフを代償に、シールドがひとつ、自ずと砕け散る。このシールドは、フィールド内で受ける攻撃であれば、勝手に展開されてダメージを肩代わりしてくれるようだ。

 

「くそっ、全滅させられたのはいいとして……いや、良くないけど……! 内側からダメージとか予想つくわけないだろ…………!?」

 

 体勢を立て直しながら、ツバサはフィールドに視線をやった。スピリットとアルティメットは全滅。そこにはホルスしか残っていない。

 

 対するマミのフィールドには、今アタックしているカヴァリエーレ・バッカスのほかに、スピリットが4体。彼ら、全員が最高レベルだ。ついでに、痛がるツバサを見て、オー・ブリオンとラス・カーズが呵呵と笑っていたし、ミュジニー夫人もくすくすと忍び笑いしていたのが気に入らない。声もなく表情の変化も乏しいスケルトンたちが嘲笑しているとわかるというのも不思議だが、カラカラと骨を震わす音がするのでわかってしまうのだ。

 

「アハハハッ! 痛かったかい? だけど、まだ終わりじゃないんだよねェ」

 

 そして、やはり彼らの神も、相変わらず愉しそうに嗤っている。いや、「相変わらず」というか、ツバサとしては、もはや「ここまで来ると、もう生きてるだけで愉しそうだよな」とさえ思えてきている。見習おうとは微塵も思わないが。

 

 だから、ディオニュソスの態度については諦めている。彼の前で感情的になっても、さらに弄ばれるだけだろう。今、気がかりなのは、「まだ終わりじゃない」という発言だ。

 

「これ、かなりヤバくないか……!?」

 

 ホルスが咄嗟に振り向いた。視線の先には、コアが4個置かれたリザーブ。

 

「正直、申し訳ない気がするけど……それでも、やっぱり私は『勝ちたい』から! 遠慮はしないよ!

 

 カヴァリエーレ・バッカスの【冥界放】発揮! ディオニュソスのコア3個を私のトラッシュへ置いて、相手のリザーブのコア最大5個までをトラッシュへ!!」

 

 騎士の剣舞は終わらない。仕える神から力を吸って、ツバサのリザーブのコアまでもを微塵に切り裂く。ガラスの割れるような音が、フィールドに響いた。生命の器である肉体のみならず、生命力の源であるコアそのものを斬るという離れ技。冥府神王の通った後には、生命の息吹すら残らない。その様は、まるで、敵陣までも冥府に変えてしまうようだ。

 

「使えるコアが0個って、嘘だろ……!?」

 

 空になったリザーブを見て、ツバサは愕然とした。

 ホルスには【神技(グランスキル)】を1回使うだけのコアがある。だが、その効果の都合上、デッキから爪鳥を喚び出すための1コストと、彼らを維持するためのコア1個、最低でもコア2個が必要だ。コア0個では、どうにもできない。

 

 カヴァリエーレ・バッカスのアタック時効果は、これでようやく終わり。

 だが、マミのフィールドで、ミュジニー夫人が変わった動きを見せていた。具体的に言うと、先程まで持っていなかった、ドレスと同じ紫色の扇子を広げている。

 

「まだあるのかよ……!? こっちにはもう失うものがないぞ!?」

 

 ツバサに再び嫌な予感が走る。フィールドはホルスを除いて全滅。使えるコアも0個。これだけで既に満身創痍だというのに、これ以上どこを攻撃されろというのだろうか。

 

「まだあるじゃないか。手札が、6枚も」

 

 うろたえるツバサを見て、ディオニュソスの口許が弧を描く。そこから発せられた声には、可笑しみが混ざっていた。

 

 ミュジニー夫人が扇子を振りかざす。それと共に放たれた黒いエネルギー弾がツバサの手札1枚を撃ち抜いた。[天空双剣ホル=エッジ]が空中で砕け散る。

 

「あっ、ちょっと!?」

 

 それを見て、マミが素っ頓狂な声を上げた。

 

「えっと、ごめん……ミュジニー夫人Lv3の効果で、系統:「無魔」を持つ自分のスピリットの効果で相手のライフが減ったとき、相手の手札が3枚以上なら、自分は、相手の手札1枚を内容を見ないで破棄……した。うん」

 

 自由奔放な冥府のスピリットの振る舞いのせいで、事後報告である。

 

「あっ、はい……じゃあ、ライフで」

 

 あまりの事態に、そのノリを引き継いで、ツバサもライフで受ける旨を宣言する。そもそもコアがなければ何もできないので、緊張を保てていようがいまいが、結果は同じだっただろう。

 

 が、カヴァリエーレ・バッカスは単体でダブルシンボルなので──

 

「……いっつぅっ!?」

(ライフ:4→2)

 

 心の準備を忘れ、平時の2倍の痛みで、正気に戻った。間は抜けているが、いつもより悲鳴が大きい。狂気の化神による斬撃で正気に戻るとは、何とも皮肉なことだ。

 

「2点受けてコアが2個……今ならオレの神技を支えるが…………」

 

 ホルスが、マミのフィールドをちらりと見た。カヴァリエーレ・バッカスのアタックは切り抜けたが、クイン・メドゥーク、オー・ブリオン、ミュジニー夫人、ラス・カーズ──計4体が回復状態で控えている。しかも、クイン・メドゥークはダブルシンボルだ。

 ホルスの【神技】を使うにしても、コア2個では、せいぜい1体召喚するのが限界だ。召喚したスピリットでクイン・メドゥークを止めるにしても、残り3体のアタックが控えている。ツバサのライフは残り2なので、ブロッカーが足りない。

 ツバサが既に[三十三代目風魔頭首ヤタガライ]を手札に加えているのは知っているものの、その【アクセル】はコスト6・軽減3。全滅し、フィールドにホルスのシンボルしかない今の状況では、使いたくても使えない。万事休すか──

 

「けどっ……ライフ減少によって、バースト発動! [天空の覇王ロード・ドラゴン・バゼル]!! こいつをバースト召喚!!

 系統:「爪鳥」のコスト3以上の召喚によって、ホルスに《神託》!」

 

 だが、ツバサの声で、ホルスの懸念は消えた。

 

[天空の覇王ロード・ドラゴン・バゼル]。遥か昔に活躍した、とある覇王の師にして親友である英雄龍が、共に駆けた覇王の創界神化に伴い、蘇った姿だ。

 その際、ホルスと共闘することになり、天空の力を得たという。「天空」の名と、系統:「爪鳥」がその証だ。

 

 カヴァリエーレ・バッカスのアタック時のライフバーンを受けた直後は、使えるコアを0にされ、無理にバーストを発動させる旨味がなかったが──今なら、召喚につなげられる。

 

「召喚時効果で【旋風:1】を発揮! クイン・メドゥークを重疲労状態に!!」

 

 そして、召喚時効果で、クイン・メドゥークを重疲労させる。誇り高い冥府の女戦士が、ない片膝をついた。が、目はツバサをしっかり捉え、ニヤリと、好戦的に笑っていた。「そう来なくてはな」と言わんばかりに。

 

 召喚されたロード・ドラゴン・バゼルは、Lv1でBPも低いとはいえ、ブロッカーになれる。これで、回復状態の3体のうち1体をロード・ドラゴン・バゼルで、別の1体をホルスの【神技】で召喚したブロッカーに防がせれば、このターンを凌げる。

 

「首の皮一枚だな……」

 

 ホルスは、安堵の溜息を吐いた。

 これがスピリットやアルティメットの破壊/消滅を条件としたバーストだった場合、バースト発動のチャンスを失っていたところだ。そのままゲームエンドに持ち込まれる可能性が十分にあった。

 

「おや? 早く帰りたかったのではなかったのかい?」

 

 ディオニュソスが、興味深そうにツバサを見ている。無気力で臆病に見えたツバサが、試合時間を延ばして、牙を剥いてきたのだ。元々彼の反応を愉しんでいたディオニュソスとしては、そのほうが面白いし、弄り甲斐があるというものだった。

 

「そりゃあ、早く帰りたいけどな……それじゃあ先輩の試し切りの相手としては不足だろうし…………いや、この際はっきり言わせてもらうけどなぁ…………!」

 

 疲れきった口ぶりと声色のツバサが、言いかけた建前を呑み込んで、

 

「お前みたいなのに舐め腐られたまま素直に終われるほど、俺もチキンじゃないんだよ!!」

 

 大きな声で言ってのけた。ツバサには、神世界の事情はわからないし、興味も湧かない。今までに飛び交った固有名詞が何を指すのかもわからないし、結局ディオニュソスが何をしでかしたのか、ちんぷんかんぷんである。だが、自分や相棒(ホルス)が弄ばれたままで終わるのは、気に入らなかった。自分たちの苦渋に満ちた表情を堪能するディオニュソスの嗤い声も、骸たちが嘲る時に鳴らす骨の音も、耳障りだ。

 

 それに、ツバサは神世界について知ろうとも思わない分、現実世界、即ち目の前のことをよく見ている。だから──マミの気遣いが尽く踏みにじられている様も、見ていて不愉快だった。これは、決して正義感や、思春期らしい異性に対する関心から来るものではない。単純な“快”・“不快”の問題だ。

 

 尤も、ツバサが奮起したところで、ディオニュソスはくすりと微笑むだけだ。彼にとっては、観察対象が少々イレギュラーな挙動を見せただけのことなのだろう。少しだけ悔しい。

 

「さて……攻め手は足りなくなったけれど、ここからどうするつもり?」

 

 平時の調子は崩さずに、ディオニュソスは、使い手の采配を催促した。どうしろとも言わない。勝敗にさして興味があるわけでもなく、ただ単に、意外に強気な一面を持つ少女がどのように動くか、試していた。フラッシュで頭数が増えることなど、端から期待していない。何せ、使えるコアが少ないのは、こちらとて同じなのだから。というか、布陣を整えるのにすべてのコアを費やしたので、今は0個だ。

 

「バゼルはBP6000、ホルスさんの【神技】が1回分、使えるコアは2個……それなら!」

 

 マミは、オー・ブリオンのカードに手を置いた。

 

「アタックステップは継続するよ! オー・ブリオンでアタック!」

 

 そして、それを横にする。彼女は元から紫属性の使い手ではあった。が、そのデッキは、赤属性を混ぜ、指定アタックでボードコントロールを図る、わかりやすく攻撃的なもの。一見おとなしそうに見える彼女のバトルスタイルは、意外と押せ押せだ。この状況で、ひとつでもライフを削るべく、フィールドのシンボルも、ホルスのコアも減らすべく、並べたスピリットたちを総攻撃させる。

 

 オー・ブリオンが、骸骨頭の意匠を凝らした杖を振った。彼の足元から立ち上った紫煙が、地面を這いずって、ツバサのフィールドへ立ち込める。

 

「BP12000か……ライフで受ける!」

(ライフ:2→1)

 

 オー・ブリオンのBPは12000。ロード・ドラゴン・バゼルの実に2倍であり、到底超えられないことを見越し、ツバサはライフで受けた。

 

「……うっ…………! 」

 

 煙を吸ってしまったような苦しみがツバサを襲い、ライフのコアが1個、砕け散った。これで、ライフは残り1。もう、後がない。

 

「次に、ラス・カーズでアタック!

 アタック時効果で、ターンに1回、召喚時効果と同じ効果を発揮!!」

 

 ラス・カーズが、宙に文を紡ぐ。召喚された時は1行だけだったが、今回は横に2行。

 上の1行は、召喚時と同様の、神を喚ぶ呪文。

 下の1行はやがて、今にも飛ぶ鳥を地へ堕としてしまいそうな紫電へと変じた。

 

 デッキからオープンされたのは、[冥府骸導師オー・ブリオン][旅団の摩天楼][冥府秘術ネメシス・リープ]。

 

「系統:「天渡」を持つオー・ブリオンを手札へ! さらに、ラス・カーズの効果でオープンされた[冥府秘術ネメシス・リープ]は手札に加えられる! そうした時、ボイドからコア1個を自分の創界神ネクサスへ!!」

 

 引きは上々。2枚目のオー・ブリオンと、マジック・[冥府秘術ネメシス・リープ]が手札に迎えられる。さらにおまけで、ディオニュソスにコアを追加した。

 

 ロード・ドラゴン・バゼルの直上から、紫電が落ちてくる。

 

「ラス・カーズはBP4000……そのアタックは、バゼルでブロック!!」

 

 しかし、「冥府作家」なんて御大層な肩書を持っていようが、ラス・カーズはゴッドシーカーの一種。ディオス=フリューゲルの【神域】下にあるため最高Lvになっているとはいえ、紫属性の小型スピリットのBPなどたかが知れている。

 

 ロード・ドラゴン・バゼルはBP6000。執拗に狙い撃たれる紫電を華麗に躱しながら肉薄。翠の剣尖が、ラス・カーズに向かう。

 

「フラッシュタイミング!」

 

 だが、どちらのコアも枯渇したこの状況で、マミがフラッシュ効果の使用を宣言した。

 ギリギリの状況にあるツバサとホルスは「んんっ!?」と度肝を抜かれ、顔を見合わせた。一方、ディオニュソスも「ほぅ?」と視線をマミの方へ寄せている。

 

「マジック・[ビクティム]! フラッシュ効果で、ラス・カーズをBP+2000!」

 

 マミが切ったのは、紫のマジックカード・[ビクティム]。スピリットの召喚を補助するメイン効果を主な用途とするマジックカードだが、フラッシュ効果は単純なBPバンプだ。

 かなり旧いカードのセレクトは、復帰勢のマミらしいと言えるか。

 

「び、びくてぃむ……!? けど、コアはどこから…………あっ!?」

 

 ツバサは、旧世代からの不意打ちに動揺した。何せ、使えるコアが1個もないのに、BPバンプするマジックで奇襲をかけてきたのだ。

 だが、トラッシュにおちていく[ビクティム]のカードと、マミのフィールドを見て合点が行った。

 

「コアがなくても、シンボルは十分にあるからね! [ビクティム]はコスト4に対して紫軽減が4個。0コストで使わせてもらったよ!」

 

 驚いた表情のツバサに、マミがウィンク。

 

 これで、ラス・カーズのBPは6000。ロード・ドラゴン・バゼルと並んだ。翠の刃がラス・カーズの胴体に触れるのと同時に、マジックの支援を受けたラス・カーズが散り際に急いでもう一発呪文を放つ。

 

 ラス・カーズの身体を構成する骨が細切れにされ、直後、破壊した相手への呪いのように、紫電がロード・ドラゴン・バゼルの身を焼いた。BP勝負の結果は、引き分けだ。

 

「刺し違えてでも討ち取ったか……本当に、勝ち気なお嬢さんだ。あの作家先生が覇王と刺し違えるところを見せられるなんてねェ」

 

 焼跡を眺めて、ディオニュソスが呟いた。

 

「倒せる相手は、とにかく倒して道を拓く──私はそういう人なので」

 

 マミの口ぶりは相変わらず冷たく、神世界の問題児に対しても塩対応。が、言っていることがだいぶ逞しいため、その冷たさが凛々しさに昇華されている。

 

 フィールドの外で、「お前、いい後輩を持ったな」と、セトがガイに──やけににんまりと笑いかけている。

 

「うん」

 

 ガイは、セトの意図を察することもなく。相槌を打つだけだが、彼が新しくできた、あまりにも強い「後輩」を見る目は、とても澄んでいて晴れやかだった。

 

「合格。案外、お前とは相性が良さそうだ」

 

 ディオニュソスの紅い爪先が、口元を撫でた。

 

「はぁ!? どこをどうしたらそうなるの!?」

 

 マミが悲鳴のような声をあげた。ディオニュソスに関しては、言動が言動なので、そうなるのも無理はない。

 

「おやおや、つれないねェ。能力的な相性は良いと思ったんだけれど」

 

 ほとんど拒絶に近い反応をされようと、ディオニュソスは平常運転だ。

 

 だが、実際のところ、彼の能力は──そう考えると、ホルスには何となく納得できた。できてしまった。

 

(冥府のやつらって、ああ見えて、やってることはダブシン並べて殴る・ブロック制限するし、ブロックされても殴るってことなんだよな……)

 

 例えば、もし、あと1つでもディオニュソスのコアが多ければ、ツバサたちは負けていただろう。こっそり胸を撫で下ろす。

 

「ああ、でも……もし、お前が性格面でも仲良くなりたいと言うのなら喜んで。こう見えて、我は『来る者拒まず』って質なんだよねェ」

「断固お断りしますッ!!!」

 

 それにしてもこの酒神、自分が一般的にどう思われているかをきっちり理解したうえで、使い手を弄りにかかっている。字面だけは好意的な辺り、彼なりにマミを気に入っているのだろうか──そうだとしても、単純に「使い手として」か「弄り甲斐のある玩具(おもちゃ)として」かでことは変わってくるのだが。

 

 対するマミは、全力で拒絶。今まででいちばん、声量が大きい。逃げるように、最後のアタッカーのカードに手を置く。

 

「とにかくっ! ミュジニー夫人でアタック!!

 

 アタック時効果はないけど、そっちは更地! ホルスのコアは使い切ってもらうよ!!」

 

 ミュジニー夫人が、纏ったドレスと同色の扇子を振りかざす。きっと、彼女の武器なのだろう。

 華麗に見えるが、ミュジニー夫人もまた、ディオス=フリューゲルの【神域】による強化を受けている。

 

 Lv3、BP9000。

 ホルスの【神技】でブロッカーを呼べるとはいえ、残されたコア2個のうち1個を召喚コストに使う分、コアを1個しか置けない。いかにアルティメットといえど、最低LvでBP9000を上回るものは大型のみだ。

 

 だが、今はマミの思惑に乗ってやるしかない。このアタックを通せば、負けてしまうのだから。

 

「……フラッシュタイミング! ホルスの【神技:4】を発揮! デッキの上から3枚オープン!」

 

 ツバサは、祈る気持ちでデッキの上から3枚を捲った。できれば、Lv3でBP9000を上回る大型アルティメットが来てくれれば、と。

 

「頼む! オレたちを助けてくれ!!」

 

 ホルスの口笛が、遠い天にまで響いた。

 デッキから捲られたのは、[天空双剣ホル=エッジ][天空勇士セメン・バード]──

 

「っ…………!」

 

 3枚目のカードを見て、ツバサは息を呑んだ。見間違いだと思った。だが、カードに描かれた、機械的な武装、輝く(くれない)の羽は、どう見ても──

 

 

 

 創界神ホルスの化神・[天空鳳凰ホル=アクティ]そのものだ。

 

 

 

「……その中の系統:「爪鳥」を持つカード1枚を、1コスト支払って召喚できる」

 

 良い意味で驚き、高鳴る胸を落ち着ける。化神のカードを掴むと、例によって、唇が勝手に動いた。

 

「あの日見た太陽へ向けて、決して焼けない翼と、鉄の勇気を友にして、舞い上がれっ! [天空鳳凰ホル=アクティ]!! 召喚!!」

 

 太陽の光を受けて、紅の翼を燦然と輝やかせながら、ホル=アクティがツバサのフィールドへ飛来する。

 

「ホル=アクティ! 来てくれたんだな! もしかして、あっちが油断する時を狙ってたのか?」

 

 自分の化神の登場に、ホルスはご機嫌だ。彼につられるように、ホル=アクティが高らかに鳴き声をあげた。

 

「アルティメット……!? ライフ1で、他のスピリットやアルティメットもいないのに…………!?」

 

 ツバサとは真逆の意味で、マミも声を上げて驚いていた。

 

 何せ、ツバサの残りライフは1。スピリットもいない。そんな状況から大型のアルティメットが出てきたのだ。復帰したてのマミにとって、アルティメットとは、他のスピリットやアルティメットの存在やライフの数を召喚条件とするものだ。中にはライフ3以下を条件とするものや、エジットの天使たちのようなライフ6以下を条件とするものもいるが、どちらかといえば彼らのほうが少数派である。

 

 その驚愕はあまり間違っていない。召喚されたホル=アクティも「自分の爪鳥スピリット/アルティメット1体以上」を召喚条件としているアルティメット。更地となったツバサのフィールドには、降り立てないはずなのだ

 

「それが……ちょっとズル臭いけど、ホル=アクティはオープンを介して召喚される時、召喚条件を無視するんです」

「そうそう。それが、天空の爪鳥(とり)たちの強さだからな! いつでも駆けつけてくれるんだ!!」

 

 ツバサの注釈に、ホルスが機嫌良く乗っかる。

 どんな窮地だろうと、颯爽と駆けつける──それが、ホルスが統べる天空の勇士たちの強みだ。

 

「そのアタックは、ホル=アクティでブロック!!」

 

 ホル=アクティが、ミュジニー夫人へ襲いかかろうと、ツバサのフィールドから飛翔する。

 

 Lv3のホル=アクティはBP10000。

 ギリギリだが、ミュジニー夫人のBPを上回っていた。

 

「このタイミングで化神、か。彼も潰すのかい?」

 

 明らかな逆転の予兆を前にしてなお、ディオニュソスは笑みを崩さず、使い手の采配を促す。

 

「潰したいのはやまやまけど、2枚目がないし……ラス・カーズの時に使わないで、こっちで使っとけばよかったかな……?」

 

 が、マミの手札に2枚目の[ビクティム]はなかったようだ。

 

 互いにフラッシュはなく、バトルが続行される。

 

 貴族の女とはいえ、ミュジニー夫人も素直にやられるほど殊勝ではない。振りかざした扇子からは、瘴気の風が吹き、ホル=アクティにとっての向かい風となった。それは、化神の進行すら阻むほどの暴風となって、ホル=アクティが近づこうとすればするほど、彼の身体が侵されていく。ディオス=フリューゲルによる強化を受けているからだろう。今の彼女は、たしかに、化神とほぼ互角に渡り合っていた

 

 だが、ホル=アクティは負けない。猛禽類に似た鋭い眼をカッと開いて、飛行速度を急上昇。力任せに向かい風を振り切った。その勢いを保ったまま、ミュジニー夫人の小さな髑髏頭を脚でしっかり掴み、ポキリと、首から切り離した。おまけに、脚で掴んだ髑髏の頭は、鼻から上が爪で握り潰され粉砕──

 

「いやいやいやいや!? いくらなんでもエグくないか!?」

 

 あまりの光景に、ホル=アクティを出した側であるはずのツバサがぶったまげていた。

 それに反してホル=アクティは、自陣に凱旋するなり「どうだ! 見たか!」と言うように鳴く。

 

「やれやれ……淑女(レディ)に対して酷い仕打ちだ」

 

 蛮行を窘めるような口振りで、ディオニュソスがわざとらしく肩を竦めた。

 

「その『淑女(レディ)』を戦わせてるのは、どこのどいつだ……」

 

 言っても聞かないのだろうけど、と、ホルスは溜息を吐く。

 

 だが、先程散ったミュジニー夫人は、ディオニュソスの【神域】の原理を「理解したうえで、身体を委ねている」とのこと。そして、彼の「支配する気はさらさらない」「やりたいようにやらせてやったほうが、見ていて愉しい」という発言を鑑みると──ぞっとした。

 冥府のスピリットたちはおそらく、たとえ貴族や作家といった身分の者であろうが、自ら進んで狂気の神に身を捧げ、彼の手駒となるのである。態度を見るに、クイン・メドゥークやカヴァリエーレ・バッカスはそうでないにしろ、そうした傾向の者が一握りであることに変わりはない。それほどまでに、スピリットたちを惹きつける──否、狂わせる魔性は、下手な洗脳より恐ろしい。

 

(なんというか……使い手がいろいろと“強い”やつでよかったな…………)

 

 ホルスは、その「いろいろと“強い”」使い手であるマミの方を、ちらりと覗いた。

 

 当の本人は、まさか自分がそんな高評価を受けていることなど知る由もなく、

 

「……ターンエンド」

 

 緊張した面持ちで、ターンエンドを宣言していた。

 

 次のターン、ツバサのリフレッシュステップで、減らしたコアが戻ってくる。対するマミには、使えるコアが1個もない。今は、バーストだけが頼りだ。

 

○マミのフィールド

・[冥府骸導師オー・ブリオン]〈0〉Lv3・BP11000 疲労

・[冥府三巨頭クイン・メドゥーク(RV)]〈0〉Lv3・12000 疲労

・[冥府神王カヴァリエーレ・バッカス]〈0〉Lv3・BP16000 疲労

・[冥府神剣ディオス=フリューゲル]

→[創界神ディオニュソス]〈5〉Lv1

・[旅団の摩天楼]〈0〉Lv1

バースト:有

 

 

 

 ──TURN 5 PL ツバサ

手札:7

リザーブ:7

 

「よし、回ってきた……!」

 

 コアもブロッカーもない絶望的な状況を打開し、ツバサは一息吐いた。

 

 ライフの数は1対4。大きく差をつけられてしまったが、今のマミには使えるコアがない。背水の陣なのは相手も同じなのだ。ならば、コアが戻ってくる前に攻めきるのが得策だ。

 

「メインステップ

 2体目の[ゴッドシーカー 天空鳥キジバトゥーラ]を召喚!

 系統:「爪鳥」のコスト3以上の召喚によって、ホルスに《神託》!

 

 召喚時効果で、デッキの上から4枚をオープン!」

 

 先攻1ターン目と同様の愉快な囀りが、再びツバサのフィールドから聞こえてくる。オープンされたのは、[天空鳥ナイルバード][天空翠凰ファラ=ニクス][創界神ホルス][小凰ニックス(RV)]。

 

「[創界神ホルス]と、系統:「界渡」を持つ[小凰ニックス(RV)]を手札へ! 残りは、ファラ=ニクスを上にしてデッキの下へ。

 

 そして、手札に加えた[創界神ホルス]をそのまま配置!」

 

 2枚目のホルスと、ゴッドシーカーのようなサーチ効果をもつ[小凰ニックス(RV)]を手札へ迎え、前者をすぐさま配置。2枚目のホルスのカードから溢れた力が、最初に場に出ていたホルスに吸収されていく。

 

「へぇ、2枚目ってこんな感覚なんだな! まるで『自分2人分』ってくらいの力が湧いてくる!」

 

 単純に、自分が持っている力が2倍になったような高揚感に、ホルスの声も弾む。

 

「よかった……ホルスが増えたらちょっとホラーだし、手に負えないし、どうなるかと…………」

「おい!? それってどういう意味だよ!?」

 

 当の使い手は、ある意味ヒヤヒヤしていたようだが。

 

「そういう感じなんだ。よかったぁ……ひとりいるだけで手に負えないのに、増えたら阿鼻叫喚だし」

 

 一方、マミも、ツバサと同様、胸を撫で下ろしていた。たしかに、「手に負えない」という意味では、彼女の側のほうが深刻である。

 

「酷いなァ。パートナーにそれはないんじゃないのかい?」

「だっ、誰がパートナーですかっ!?」

 

 噂をすれば、その「手に負えない」張本人であるディオニュソスが口を挟んでくる。

 それに対するマミの台詞はベタに見えるが、手札を持っていない方の手で拳を握っていたので、ツバサは見なかったフリをした。

 

「[小凰ニックス(RV)]を召喚!

 系統:「爪鳥」のコスト3以上の召喚によって、2枚のホルスにそれぞれ《神託》!

 

 召喚時効果で、もう一度デッキの上から4枚をオープン!」

 

 続けて、サーチカード効果を持つ[小凰ニックス(RV)]を召喚。

 ふわふわした薄緑の羽毛に包まれた鳳凰の雛。まだ足も羽も小さくて、よちよち歩きだ。けれど、キジバトゥーラに続くように、可愛らしい鳴き声で囀ってみせた。それに気づいたキジバトゥーラが、ニックスの囀りとリズムを合わせてやる。より強い仲間を呼ぶための、小鳥たちのセッション。ホルスも、小気味いい鼻歌でこっそり参加していた。。

 デッキからオープンされたのは[天空の双璧イネブ・ヴァルチャー]2枚と、[天空の覇王ロード・ドラゴン・バゼル][天空双剣ホル=エッジ]。

 

「[天空の双璧イネブ・ヴァルチャー]を手札へ!

 残りは、上から、ホル=エッジ、イネブ・ヴァルチャー、キジバトゥーラの順でデッキの下へ」

 

 捲られた中で、アルティメットは1種のみ。その1種[天空の双璧イネブ・ヴァルチャー]を手札に加える。

 

「ホル=アクティをLv4に上げて、バーストセット。

 

 アタックステップ!

 いけっ、ホル=アクティ!!」

 

 いかにコアブーストの得意な緑とはいえ、フィールドを全滅させられた直後では、シンボルも少なく、フィールドの立て直しは難しい。メインステップでの召喚はサーチ効果を持つスピリットだけに留め、ホル=アクティのアタックに移る。

 小鳥たちの応援歌を背中に受けて、ホルスの化神は飛び立った。

 

「アタック時効果で、デッキを上から3枚オープン!」

 

 ツバサがメインステップでアルティメットの召喚を行わなかった理由は、もうひとつあった。

 ホル=アクティのアタック時効果で、デッキを3枚捲る。

 

 捲られたのは、[創界神ホルス][天空勇士ハルシエシス][ゴッドシーカー 天空鳥キジバトゥーラ]

 

「[天空勇士ハルシエシス]が自分の緑1色のアルティメットの効果でオープンされたとき、ボイドからコア1個を自分のリザーブへ!

 

 そして、ホル=アクティの効果で、その中の系統:「爪鳥」を持つ[天空勇士ハルシエシス]を、1コスト支払って、Lv4で召喚! 不足コストはホル=アクティとキジバトゥーラから確保して、前者はLv3、後者はコア2個のLv1にダウン」

 

 ホル=アクティの効果は、ホルスの【神技】とよく似た、デッキからの召喚効果。

 ホル=アクティが雄々しい鳴き声を上げると、それに応えて爪鳥のアルティメットが助太刀に馳せ参じた。[天空勇士ハルシエシス]。比較的最近ホルスによって見出された、新入りの天空勇士である。新入りと言うと弱い印象を受けるかもしれないが、そんなことはない。若く、やる気と勢いに溢れた、前途洋々なルーキーである。今も、まるで先輩を慕う後輩のように、ホル=アクティの隣へ駆け寄っていた。

 

「そして、この効果でアルティメットを召喚したとき、相手のライフ1個をリザーブへ!!」

 

 だが、ホル=アクティの効果は、召喚するだけに終わらない。アルティメットを喚んだ時に、相手のライフを奪うことができるのだ。

 召喚されたハルシエシスが、ホル=アクティの前に出て、羽ばたきによって旋風を巻き起こす。巻き起こされた風は刃のように鋭く、マミのライフ1点を切り裂く。それは、物語の中の「鎌鼬」を彷彿とさせた。

 

「うっ……! 仲間を喚ぶだけじゃなくて、攻撃まで…………!?」

(ライフ:4→3)

 

 強く引っかかれるような感覚を胸に受け、マミはホル=アクティたちが飛ぶ空を見上げた。

 

「それ、先輩が言えたことじゃないですよね……? 1点しか取らないだけ、むしろこっちのほうが優しい気が」

 

 だが、ツバサは忘れていない。前のターン、カヴァリエーレ・バッカスのアタック時効果で、フィールドを全滅させるついでにように、ライフバーンされたことを。消滅させられた片方がアルティメットだったから1点ダメージで済んでいたし、ライフバーンできるかどうかは相手依存だが、その分、素でダブルシンボルで、使えるコアも減らし、完全耐性まで兼ね備えているというのだから、とんだバケモノである。

 

「さらに、【界放】! ホルスのコア3個を置くことで、ホル=アクティは回復する!!

 

 これでアタック時効果の処理が終わったので、系統:「爪鳥」を持つアルティメットのハルシエシス召喚によって、2枚のホルスにそれぞれ《神託》!」

 

 だが、ホル=アクティは、【界放】で回復ができる。ホルスのコアが続く限り攻撃を続けることができ、その度にアタック時効果で爪鳥の仲間たちを喚ぶ。

 

 仲間との連携による、一気呵成の総攻撃。それが、爪鳥たちの強さだ。

 

「いくぞ、ホル=アクティ!」

 

 ホルスの呼びかけに応じて、ホル=アクティが奮起し、回復する。空を翔ぶ彼の姿は、こころなしか気持ちよさそうに見えた。

 

 さらに、この効果による召喚では《神託》を行うことができる。ややこしいことに、発揮のタイミングは【界放】によるコアの移動よりも後。それでも、次なる【界放】やホルスの【神技】に繋げられると考えると、馬鹿にできない恩恵だ。

 

「アタック時の効果は終わったね。それなら、こっちも……ライフ減少によって、バースト発動! [冥府貴族バロン・ド・レスタック将軍]!!」

 

 だが、マミもまだ音を上げない。コアがなくても発動できるバースト効果で食らいつく。

 

「バースト効果で、スピリット3体のコア3個──キジバトゥーラのコア2個とニックスのコア1個を相手のリザーブへ! 2体が消滅するから、私のリザーブへ2個、コアブースト! そして、バースト召喚!

 系統:「無魔」を持つコスト3以上のスピリット召喚によって、ディオニュソスに《神託》!」

 

 通常、バースト召喚したスピリットの維持にもコアが1個必要だが、開かれたバースト[冥府貴族バロン・ド・レスタック将軍]は「冥府」の名を冠するスピリットだ。ディオニュソスの【神域】によって、Lv1コストが0になっている。

 

 ワインレッドのコートを纏い、頭部が少々角張った骸の将軍は、愛剣で容赦なくキジバトゥーラとニックスを切り裂いた。小鳥たちの歌が、断末魔に変わる。突然響いた断末魔に、ホル=アクティがびくっと急停止し、後ろを振り返った。

 

「あっ、このっ……! せっかく楽しそうに歌ってたのに!!」

 

 そして、ホルスの対応はこれである。この創界神、実は歌が好きらしい。

 

「だいたい、なんでスピリットばっか狙ってくるんだよ!? 本命は他にいるはずだろ!?」

「いや、アルティメットには触れられない効果なんて星の数ほどあるんだし、そこはこっちとしては大助かりなんじゃないのか……?」

 

 だが、ホルスはただ、小鳥たちの歌を止められたことに怒っていたわけではない。違和感を感じていたのだ。バトルの面では、こちらが有利をとれるとはいえ、露骨なまでに本命(アルティメット)に触れない、冥府のスピリットたちに。

 バースト召喚されたバロン・ド・レスタック将軍は、スピリットからしかコアを外せないがために、キジバトゥーラやニックスといった小型のスピリットを攻撃するのみであった。

 それよりも露骨だったのが、カヴァリエーレ・バッカス。アタック時にスピリットとアルティメットの両方からコアを外せるものの、消滅した体数に応じたライフバーンはスピリットにしか対応していない。

 

「たしかに、アルティメットに対応していない効果はたくさんある。オリンにある『デルポニア』の兄妹も、アルティメットとの戦闘を想定しておらず、エジット(こっち)のアルティメットに歯が立たなかったというのも、記憶に新しい」

 

 ホルスは、フィールドの外にいるセトの方にちらりと視線をやった。彼は、オリンに属する世界のひとつ「デルポニア」を巡った戦の当事者だ。

 

「だが、ラーと密約を交わし、エジット(オレたち)を利用していたお前が、『アルティメットとの戦闘を想定していない』というのは無理がある。

 ──そうだろう? どこまでも、舐めた真似をしやがって…………!」

 

 セトから視線を逸らし、ホルスはディオニュソスを睨んだ。

 ホルスの冷たい視線を受けて、ディオニュソスの口元が歪められる。まるで、「その答えを待っていた」とでも言わんばかりに。

 

「半分正解ってところかな。こう見えて、我も時々ドジを踏んだりするんだよねェ」

 

 軽口を叩くような話しぶり。真剣な表情をしているホルスに全く萎縮しないどころか、嘲っている。

 

「たしかにアルティメットは敵に回せば厄介だけど、“倒す”なんてナンセンスな方法に拘ることはないだろう? 最初から手駒(みかた)にしてしまえばいいだけのこと」

 

 冥府のスピリットが露骨にアルティメットに触れない理由。それは、彼らの神であるディオニュソスが、「そもそも、エジットを手駒としてしか認識していなかったから」であった。“敵”とすら認識していなかったのだ。

 

 エジットの盟主である創界神ラー共々、神世界にて駒にされたセトが、心底面白くなさそうな顔をしていた。

 

「何か言わないのか?」

 

 そんなセトへ、ガイが、こっそり耳打ちした。

 使い手だからこそ、普段は直情的なセトが怒りを抑え込んでいることが異常事態であると察したのだ。

 

「……これは、ホルス(あいつ)の戦いだ」

 

 セトは、ガイと目を合わせもせず、それだけ答えた。

 観ていて、聞いていて腹立たしいが、視線はバトルフィールドから逸らさない。

 

「──だが、ラーと相反する思想を持つオレたちまでは手元に置けなかった。そんなところか?」

 

 まだ、ホルスの怒りに火は点かない。

 ディオニュソスの手駒になっていたのは、当時エジットを先導していた侵略路線の者のみ。ホルスには直接関係のないことだし、言ってしまえば、これはラーの過失なのだから。

 

「アハハハハハハッ! 大正解! お前のお陰で、アルティメットが敵に回る羽目になってしまったからねェ。仕方がないから、意趣返しも兼ねて、遊ばせてもらったけれど……」

 

 ディオニュソスは、己の誤算すらも愉しげに語る。ついでに、ゼウス=ロロを通してエジットに行った悪辣が「遊び」であったことも。今もなお、ホルスに真実を教え、彼に屈辱を味わわせて遊んでいる。

 

「──エジットって、不穏分子を放置しておくのが趣味なのかい?」

 

 婉曲的に“あの事件”を掘り返し、ホルスの心にできた小さな傷を抉るような問い。挑発に乗るのは非常に癪だった。が──

 

「黙れッ!! お前が、エジットを語るな……!」

 

 ホルスはここで憤らずにはいられなかった。

 ラーが最高神であった頃のエジットにおいて、ホルスはまさに「不穏分子」といえた。慎重ながら大胆なラーのことだから、イシスによる擁護がなければ、ホルスは早々に切り捨てられていた可能性が高い。だから、これは、自らの立場と愛情で板挟みになりながら、そっとホルスを守ってくれていたイシスへの侮辱だ。

 

 そして、ホルスが、虚ろな最高神の座に収まり、見逃してしまっていた「不穏分子」──創界神アヌビス。ホルスは、彼のことを責めきれない。自身が元は反逆者で、抱いた理想を抑圧してきたから、反逆者(アヌビス)の気持ちはわかってしまうのだ。

 

 だというのに、当時は、ゼウス=ロロという強大な敵に気を取られ、アヌビスのことを“認識してすらいなかった”。今さっき語られた「敵とすら認識されていなかった」という屈辱を味わわせていたのである。

 反逆する分には、自らの思想を悟られていないほうがよい。だが、反逆する側としては、「自分の思想が歯牙にもかけられない」ということが屈辱であり、反逆の要因になるのだ。

 

 今のホルスに反論はできない。が、ここまでエジットを馬鹿にされて黙ってはいられなかった。新しい、エジットの最高神としても、創界神である以前に、エジットの住民としても。

 ホルスの怒りに応えるように、ホル=アクティが再び飛翔する。

 

「やっぱり、そこを突かれると弱いんだねェ、エジットの創界神は。まあ、見たいものは十分見られたし、もう終わりでも構わないよ?」

 

 ディオニュソスも、ホルスの、ひいてはエジットの屈辱を堪能し終えたからか、軽い調子でとどめを促した。

 

「まあ、このままだと、終わるのはお前のほうなんだけどねェ」 

 

 ──なんてことはなかった。

 

「は……? 何を言って…………っ!」

 

 一見ハッタリに聞こえる発言を怪訝に思い、ホルスはフィールドを見回した。そして、気づく。重疲労し、膝をつきながらも、骸たちに呪いの力を与え続ける、冥府三巨頭が一柱、クイン・メドゥークの存在に。

 

 彼女が骸たちに与える呪いの力──【呪滅撃】は、破壊された時に、相手の(ライフ)を奪い復活する(厳密には「フィールドに残る」効果だが)。

 

 ツバサのライフは残り1点。先程バーストで召喚されたバロン・ド・レスタック将軍にブロックされ、彼を破壊すれば、文字通り“呪い殺される”。

 

「はぁ……あのなぁ…………」

 

 だが、ここで、ツバサがようやく口を開いた。盛大な溜息と共に。

 

「お前ら、話が長すぎるんだよ……!!」

 

 今まで置いてけぼりを食らった、その怒りをぶちまける。

 彼には、クイン・メドゥークによって付与される【呪滅撃】と、回復状態のバロン・ド・レスタック将軍らを踏まえたうえで、勝算が見えていた。 

 

「こっちのバーストがないなんて、一言も言ってないだろ!」

 

 それは、このターンにセットした、とあるバーストのおかげ。

 

「スピリットの消滅によって、バースト発動! [天空の双璧イネブ・ヴァルチャー]! Lv2でバースト召喚!!

 

 系統:「爪鳥」を持つアルティメットのハルシエシス召喚によって、2枚のホルスにそれぞれ《神託》!」

 

 小鳥たちの仇を討ちにやってきたのは、天空勇士の古参・「天空の双璧」の片割れである巨鳥イネブ・バルチャー。その登場に、新入りであるハルシエシスは、黄色い声をあげる。

 

「召喚時効果で、将軍とオー・ブリオンを重疲労状態に!」

 

 大きな翼が風を喚び、バロン・ド・レスタック将軍とオー・ブリオンに膝をつかせた。

 

「助かった……ヒヤヒヤしたぞ、本当」

 

 ホルスは胸を撫で下ろした。

 

 これで、マミのフィールドにブロッカーはいない。BP比べに持ち込まれなければ【呪滅撃】の発揮も望めない。

 

 これで、チェックメイト──

 

「それなら……! フラッシュタイミング!」

 

 ──というわけにもいかなかったようだ。

 マミの凛とした声が、待ったをかけた。

 

「マジック・[スクランブルブースター]!

 このバトルの間、自分のスピリット/アルティメット1体は疲労状態でブロックできる! カヴァリエーレ・バッカスを指定! ホル=アクティをブロックして!!」

 

 カヴァリエーレ・バッカスが、所謂「疲労ブロッカー」となって立ち塞がる。

 完全耐性を持っている彼は、ほぼ除去不可能だ。

 

「嘘だろ……!?」

 

 突然の疲労ブロッカー化による奇襲に、ツバサは声を上げた。

 

 ツバサのアタックステップ開始時点でマミのリザーブにはコアがなかったはずだ。しかし、ホル=アクティによるライフバーン、バロン・ド・レスタック将軍のバースト効果によるコアブーストによって、なんとか3コスト分のコアを捻出していたのだ。 

 

 ホル=アクティの翼を、剣が掠めた。

 道を阻んだカヴァリエーレ・バッカスを乗り越えんと、ホル=アクティが向き合う。化神同士の死合の始まりだ。

 

 共にBPは16000。何もなければ、相打ちは必至。だが、カヴァリエーレ・バッカスも系統:「無魔」を持ち、クイン・メドゥークによって【呪滅撃】を付与されている。相打ちになれば、その瞬間に【呪滅撃】が発揮され、ツバサの最後のライフを砕かれるだろう。

 

 カヴァリエーレ・バッカスの剣舞を、ホル=アクティは紙一重で躱していく。が、4本腕の騎士は、空を翔ぶ敵相手に隙を見せない。より高く飛べないよう、巧みな剣裁きでホル=アクティを牽制。思うように見動きがとれないホル=アクティは、彼の領域である空へ飛べない焦燥に駆られながら、脚で応戦する。髑髏頭を首から切り離し握り潰せるほどに強靭なそれは、カヴァリエーレ・バッカスの鎧にも少しずつ傷をつけ、身体を地面に叩きつけんとする。

 鎧を砕けば、敗北に至らしめる呪いが零れだす。だが、だからといって、ただでやられるわけにもいかないし、スピリットやアルティメットたちは、良くも悪くも手加減が苦手なのだ。

 

「まだだっ! フラッシュタイミング!」

 

 だが、まだ死合は終わっていない。

 

 その隙に、ツバサは、1枚のカードを提示した。

 

「【アクセル】! [天空勇姫ネフェルス]! 不足コストはイネブ・バルチャーから確保して、こいつはLv3にダウン。

 重疲労状態のクイン・メドゥークを、手札に戻す!!」

 

 疲労状態のスピリット1体を手札に戻す効果の【アクセル】を持つ、爪鳥のアルティメット・[天空勇姫ネフェルス]。

 

 カヴァリエーレ・バッカスは完全耐性を持っているから除去できない。だが、クイン・メドゥークは除去できるし、【呪滅撃】もバウンスには無力だ。

 

 ツバサがフィールドを見据える眼は、まさに獲物を狙う鷹の眼のよう。去り際にそれを目にしたクイン・メドゥークは、「良い顔をしているな」と言うように、ゆったりと首を縦に振っていた。

 

[天空勇姫ネフェルス]は、バウンス効果発揮後に1コスト支払って召喚できるが、彼女の召喚条件は「自分のライフ2以上」。ツバサのライフはもう1しかないため、召喚は叶わず、通常の【アクセル】と同様に、手元へ置かれた。

 

「ツバサ! そういうのは、ブロックされる前にやってくれよ! 負けるんじゃないかってビビったんだからな!?」

 

 ホルスが、笑いながらツバサを叱りつける。カヴァリエーレ・バッカスにブロックされる前のフラッシュタイミングでクイン・メドゥークを除去しておけば、ここまで慌てさせられることもなかっただろうに。

 

 とはいえ、これで、ホル=アクティも大手を振ってカヴァリエーレ・バッカスを倒すことができる。敗北要因が消えたことで勢いづき、カヴァリエーレ・バッカスの牽制を振り切って、空へ飛翔。一度空を翔べればこちらのもの。天空より、翠の風を呼び出し、それを追い風に急降下。その中途で、無数の鋭利な風の刃がカヴァリエーレ・バッカスを斬り裂いた。

 だが、カヴァリエーレ・バッカスは、ホル=アクティと一度たりとも目を離していなかった。猛スピードで接近してくるホル=アクティの脚が、首から頭部を攫う──その直前に、斬撃が一閃。ホル=アクティの双翼が防具ごと胴体から斬り離されるのと、カヴァリエーレ・バッカスの頭がホル=アクティに狩られるのは同時だった。

 

 カヴァリエーレ・バッカスは、頭があった場所から闇を零しながら、紫煙と共に爆散。纏った防具ごと翼を斬られたホル=アクティも、無防備な状態で地に墜ち、力尽きる。

 化神同士の死合は引き分け(ドロー)に終わった。

 

「クイン・メドゥークはいないから、もう【呪滅撃】は発動しない! そして、お前にはもうコアがない!

 ──この勝負、オレたちの勝ちだ!!」

 

 あまり主張しない使い手に代わって、ホルスが勝利を宣言する。その額には、冷や汗が数滴。先程まで、カウンターを食らって負けかけるところだったのだから、珍しくツバサよりも肝を冷やしていたのだ。

 

「はぁ……あと一歩、届かなかったなぁ……!」

 

 マミが、悔しそうに苦笑する。

 

「でも、ありがとう。最後まで相手してくれて」

 

 だが、ネガティブな感情は、汗と一緒に拭って、ツバサに微笑みかけた。

 

「やっぱり、バトルって、勝っても負けても楽しいんだなって。こんなになったのに……燃え尽きるまで戦えて、本当に楽しかった!」

 

 彼女は、島に来てから相手を探せず、バトスピから離れていた。けれど、きっかけひとつで勇気を出して、仲間にも恵まれて、思い出したのだ。全力でぶつかり合う、身体も心も熱くなるような昂りを。現に、コアが切れるまで、最後まで貪欲に勝利に食らいつき続けたマミの顔には、熱い汗が滴っている。

 ……その「きっかけ」であり「こんなになった」原因には、あえて触れないでおくが。

 

「それなら、よかったです。これで、やっと帰れる……!」

 

 女子から心からの感謝と微笑みをもらっても、ツバサは相変わらずこの調子だが。緊張が解れ、クイン・メドゥークを睨んでいた時のような鷹の眼が、くしゃりとほぐれた。

 

「……よし、決めるぞ。

 イネブ・バルチャーでアタック!」

 

 もう誰も阻むことのない空を、イネブ・バルチャーが悠々と翔んだ。

 

「うん──ライフで受ける」

(ライフ:3→1)

 

 マミは、しっかりと頷いて、イネブ・バルチャーのアタックをライフに刻んだ。

 

「ううっ……!」

 

 ダブルシンボルのダメージを耐えるため、マミはしっかりと地べたを踏みしめる。

 彼女の残りライフは1。イネブ・バルチャー単体では、トドメを刺しきれない、が──

 

「[天空勇士ハルシエシス]のLv4の効果で、系統:「爪鳥」を持つコスト5以上の自分のアルティメットのアタックによって相手のライフを減らしたとき、さらに、相手のライフのコア1個を相手のリザーブに置く。

 

 先輩、最後のライフをいただきます」

 

 古参の天空勇士に導かれたように、新入りの天空勇士が、間髪入れずに追撃に来た。既にマミの眼の前まで飛んできていて、勢い良く、シールドへ突撃する。

 

 彼女の最後のライフが貫かれ、赤光の結界が解ける時、

 その傍らにいたディオニュソスは、勝敗には目もくれず、真向かいに立つホルスを見ていた。

 

「あぁ、愉しかった」

 

 ぽつりと零れた言葉は、当事者とは思えないほどに軽く。

 結局のところ、彼は観劇者にしかなれないのである。

 

 

 

 

 

 あのバトルから数日後。

 

「気に食わねぇ」

 

 セトが、カウンターテーブルに肘を突いて、むっすりとした顔をしていた。

 

「いや、そうは言われても、オレが店員になってるんだから仕方ないだろ……」

 

 彼の隣には、長い黒髪を後ろでひとつに結わえたホルス。この店で採用されてから、平日の昼勤で働き始めた彼は、白いポロシャツと黒いギャルソンエプロンを早速着こなしていた。セトのオーダーである唐揚げをカウンターテーブルに置いてから、ふぅと溜息を吐く。

 喫茶店で唐揚げが出るというのも不思議な話だが、そこにツッコんではいけない。ここは、そういう店なのだ。

 

 現在、時刻は16時過ぎ。彼らの使い手が、ようやく放課後を迎えた頃だ。

 

 ツバサは、相変わらず図書室で自然科学の本を読んでいるか、外へ動植物の観察にでも行っているのだろう。

 

 一方、普段はバトスピ部の部室に直行しているはずのガイは──

 

「待たせたな、セト」

 

 なんと、居酒屋、もとい喫茶店に直行。店のドアから、セトへ声をかける。

 

「おっ、もう来やがった。気合入ってんなぁ」

 

 使い手の姿を見るなり、セトの機嫌が元に戻った。荒々しい彼も、なんだかんだでガイのことは気に入っているようだ。からかうように、相棒へ笑いかける。

 

 ホルスはほっとした。単にセトに難癖をつけられるだけならいいのだが、店員として彼と接している時にそれを言われると、客からのクレームと化するのである。そんなセトも、「お客様は神様」だとか持ち出してこない辺りはまだまだ優しいのだが。

 

「目黒なら大丈夫だと信じているが、やはり心配だからな」

 

 どこか機嫌良さげなセトに、ガイは微苦笑した。彼がこの店に直行したのは、飲食に来たからではない。用があるのは、その上の階だ。

 

「だいったい何なんですか、その爪はっ!!」

 

 上方から、聞き慣れてきた女声が聞こえてくる。半ば、悲鳴に近いが。

 

「おー、やってるやってる」

 

 セトはニヤニヤしながら、天井を見上げ、

 

「あいつら、本当にやる気なのか……?」

 

 ホルスは二度目の溜息を吐いた。

 

「……行ってくる」

 

 ガイはすぐに踵を返し、階上に向かう。何か後輩の役に立てれば嬉しい──今は、ただそれだけを胸にして。

 

 

 

 いろいろあったが、結局、神世界の問題児(ディオニュソス)の処遇は以下のようになった。

 

 ひとまず、起こしてしまった責任をとらなければいけないのと、監視を兼ねて、目黒家で預かることに。

 

 そうなると、他の創界神同様、生活費が必要になってくるわけで。だが、こんなのを野放しにしてしまうのもまた、不安がある。ゆえに、ホルスの「こいつだけはやめとけ」という声も無視して、

 

 本当に、「採用」する羽目になった。

 

 そもそも、悪い意味で自由すぎるディオニュソスがそれに応じるかという話なのだが、これが意外と簡単にクリアできたのである。なぜなら、顕現した創界神の身では「身分証明書がない=酒を買えない」からだ。

 ……字面はアルコール中毒者のそれだが、真面目な話である。創界神とはアイデンティティが最も重要とされる存在。酒神が酒を飲めないというのは大問題なのだ。よって、なんとか同意を引き出すことに成功、したの、だが──

 

 

 マミの部屋の出入り口から、鼻孔を刺激する独特な匂いが漂っていた。アセトン臭というものらしいが、ガイにそんな知識はない。明らかな異臭を不審に思い、マミの自室の戸をノックする。

 

「失礼。入ってもよいだろうか?」

 

 すると、あまり間を開けずに、

 

「あっ、青葉君! うん、大丈夫だよ。ちょっと除光液臭いけど」

 

 じょこうえき。ガイにとっては聞き慣れない言葉が聞こえてきた。「ふむ……」と首を傾げる。だが、悩んでいても仕方がない。ゆっくりと、戸を開いた。

 

 足元に、フライパンが落ちていた。

 

「……………………?」

 

 さすがのガイも、謎のフライパンを目にして、眉が「し」の字に近い曲がり方をした。

 

「ごめんね、散らかってて。ちょっと、ディオニュソスに除光液を塗ろうとしてて──」

 

 マミはそう言っているが、部屋から異臭がして、フライパンが落ちているというのは、「散らかっている」というか、それ以前の問題なのではないか。ガイは訝しんだ。

 

「とんだじゃじゃ馬娘がいたものだねェ」

 

 困惑を隠せないといった表情のガイの肩に、ディオニュソスが片手を置いてきた。艶のある低音が、くすりと笑う。

 

「……一体、ここで何があった?」

 

 ガイは溜息を吐いた。先程の、階下にまで聞こえたマミの叫びからして、なんとなく「またディオニュソスが何かやらかしたか」と目星がつく。

 

「おや? もしかして、また我のせいということにされているのかなァ?」

 

 しかし、その予想は外れていたようだった。「酷いなァ」と、ディオニュソスがわざとらしく肩を竦める。

 

 そうなると、消去法的に、この軽い惨状を作ったのは──

 

「あのっ……青葉君、これは、その…………」

 

 マミが、ガイから目を逸らしていた。顔が、かあっと赤くなっている。

 

「いやはや、いくら爪を手入れしていないからって、まさか10年前の除光液を出されて、ちょっと逃げようとしたら脳天にフライパンが降ってくるなんて思わないよねェ! アハハハハハハッ!!」

 

 が、ディオニュソスは、マミのことなどお構いなしに──いや、見兼ねたうえで、真相をバラしてしまった。

 

「ああああああああっ!! このっ……! 何バラしてるんですかっ!!」

 

 顔から火が出たマミが、落ちていたフライパンを拾い上げ、振り下げるまで、2秒もかからなかった。恥ずかしさで狙いが粗くなっていたため、今回は躱されていたが。

 

(それは笑うところではないような……?)

 

 フライパンで脳天を殴れば、打ちどころが悪いと死ぬはずだ。

 いかに創界神とはいえ、こちらの世界に顕現するのは「劣化コピー」だし、身体は人間と同スペックである。打ちどころを間違えれば、普通に死ぬので、笑いごとではない。

 

(それを叱るのに使う目黒も目黒だが……いや、まさか…………)

 

 ガイは、マミに「これでよかったのか」と聞いた時のことを思い出した。彼女は「一応、勝算がないわけではない」と答えていたから安心していたが……その勝算が「フライパンで頭を殴る」だったのではないか。

 ……ガイは、だんだん自分が何について思考しているのかわからなくなってきた。「む、む、む……」と唸らされる。これが「狂気」というものか。

 

 ひとまず、今、マミに言えることは──

 

「目黒。フライパンはさすがに威力が高すぎるからやめておこうか?」

 

 

 

「狂気には狂気を」とでもいうべきか。こうして、際限のない爆発力を持った少女と、果てのない狂気を孕んだ問題児の、奇妙なタッグが爆誕したのであった。




 ここまで読んでくださり、ありがとうございます。


Q. なんでバゼルとかスクランブルブースターとか入ってるの?
A. そのほうが面白いからです

Q. バトスピは対話とはいえ、話しすぎでは?
A. 私もそう思っています


 最後の最後、完全に深夜テンションの産物と思うじゃないですか? 普通にプロットどおりなのですよね。

 女子キャラがいい子ばかりなので、ひとりくらい「おもしれー女」がいてもいいのではないかと思って、いろいろな意味で強い子にした結果がこれです。

 マトモな人間に手綱を握られるような推しは解釈違いだったのもあったので(←)、これはこれでよく出来たのではないかと思っています


 さて、次回は兼ねてから予告していました、ブラストさん作『バトルスピリッツ -7 guilt-』とのコラボ回となります。
 架空バトスピ小説の大先輩の作品とのコラボというのは少し緊張しますが、だいぶ難産だった今回を書ききったことをバネにして、良いものを書き上げられるよう頑張ります!


 では、また次のお話でお会いしましょう

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。