バカとテストと召喚獣 ~Fクラス戦記~ 打倒Aクラス! 作:神護景雲
春とはどういう季節か。一般的な答えとしては、一年の始まりの季節であり、この季節を迎えることにより訪れる新しい出会い、環境に希望と期待と一抹の不安に心を弾ませる季節と言えるだろう。
しかし、この俺、文月高等学園の二年生、佐々木 亮にとっては違う。いや、違うと言っても、俺の中に期待も希望もないわけではない。新しい級友となる人物はどんな人物か、担任の教諭は誰か。そんな思いはある。ただ……。
「遅刻だぞ、佐々木」
ただ目の前に立ちはだかる怪獣を目の前に、一抹どころではない不安を抱かざるを得ないのだ。
「ん? 今失礼なことを考えなかったか」
「ま、まさかっ。そんなことあるわけないでしょう。やだなぁ」
冷や汗が背中を伝う。このゴリラ、人の心が読めるのか。
「まあいい。それより佐々木」
「遅刻してすみませんでした。西村先生」
腕を組むゴリラこと西村教諭の言葉を遮って遅刻したことへの謝罪を述べる。促されるより早く謝罪する。これは遅刻した者にとってせめてもの心構えと言えるだろう。
「まったく、お前は何度注意しても懲りんな」
ため息交じりに鉄人が言うが、その言い方だとまるで俺が遅刻常習者のようだ。聞き捨てならない。あ、鉄人ていうのはこの学校の生徒の間に流通してる西村先生の渾名ね。
「待ってください、西村先生。その言い方だと俺が遅刻常習犯みたいじゃないですか」
「一年で遅刻を15回もした人間を遅刻常習犯と呼ばずに何と呼ぶ」
どうやら俺の異議は却下されたようだ。おかしい、こんなことは認められない。
「そんなことより西村先生。俺のクラス分けの方を」
「そんなこととは何だ、そんなこととは……。ほら、受け取れ」
何か言いたげにしながら、鉄人が俺に一枚の封筒を渡してくれる。封筒の宛名の欄には『佐々木亮』と俺の本名が書かれていた。
「まあ、こんなん見なくても自分のクラスの予想ぐらいついてますけどね」
「自信ありげだな」
「逆の意味で、ですけどね」
鉄人と言葉を交わしながら封筒の封を切る。この学校では、二年生以降のクラス編成は年度末のクラス振り分け試験によって決まる。成績が良かったものは最高のAクラスや次点のBクラス。逆にパッとしなかったり、悪ければEクラスや最低のFクラスに振り分けられるといった形だ。
鉄人との会話についてであるが、俺の場合はテストの出来が酷かったのは自分でも分かっていた。予想としては、文句なし、95%の確立でFクラス。運が良ければEクラスといったところだ。
「さて、俺のクラスは、と……」
あえて軽い口調と共に、封入されていた紙を取り出す。出てきた文字は『Fクラス』。5%の望みにかける気持ちもあったが、それも見事に粉砕されてしまった。
「やっぱりね……」
「その割にはそれほど落ち込んでいないようだな」
「そんなワケないでしょう。学年最低クラスが決定したんですよ?」
「顔が笑ってるぞ」
言われて思わず頭を掻く。どうやら本心が表情に出ていたようだ。
「まあ、あのバカ達と一緒のクラスなら、それも悪くないかなとは思ってますけどね」
あのバカ達。俺の頭の中には、俺が一年の時に仲良くしていた奴らの顔が浮かんでいた。奴らはFクラスに振り分けられている。そんな確信があった。もちろん、だからといってFクラスに編成されて嬉しいわけではない。
「こっちとしては手のかかるヤツが同じクラスに集まって一苦労なんだがな。ほら、お前の新しいクラスに行ってこい。あのバカ達が待ってるぞ」
「失礼しまーす」
鉄人に頭を下げて、校舎の方へ駆けていく。さて、何はともあれ俺の二年生の生活の始まりだ。
感想、ご指摘、よろしくお願いします。頑張っていけたらいいなぁ……。