バカとテストと召喚獣 ~Fクラス戦記~  打倒Aクラス!   作:神護景雲

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試召戦争って書くの大変……。


死んだら何にもならないんだよ!

「うおぉぉぉっ! やってやるぜ!」

 

「Fクラスを叩きのめせ!」

 

「皆の者、怯むでないぞ! ワシら先攻部隊の仕事は前線を維持し、敵の戦力を削ることじゃ!」

 

「よっしゃあっ!」

 

 遂に俺たちFクラスの試験召喚戦争が始まった。俺は秀吉率いる前線部隊に配属された。俺たちの作戦はとある目的が達成されるまでの時間稼ぎだ。なので、俺たちの主な仕事は敵の戦力を削りつつ、中堅部隊と連携して少しでも長く前線を維持することになるだろう。

この戦いでは、召喚獣の強さは専用のバトルフィールドを作ってくれる立ち合い役の先生の科目における成績によって決まる。例えば、数学担当の先生なら数学のテストの点数が、召喚獣に反映されるといった具合だ。今回の立会人は学年主任の先生にやってもらっている。この場合、試召戦争のルール上、総合科目が勝負科目になる。

 

『Dクラス、中野 健太! 勝負を挑みます!』

 

『負けるか、Fクラスの田中 明が勝負を受けます!』

 

 早速、試験召喚勝負が始まっている。ここで戦うに当たって気を付けなければならないこと、今のフィールドなら基本的に戦力は向こうの方が上だということ。

Fクラスの中にも、科目に限れば点数の高い奴がいる。例えば、島田は数学だけならBクラスに負けない点数を持っているし、康太なんかは保健体育でいえば、この学園でも文句なしのトップクラスだ。まあ、他が酷いが。それに俺も現代国語ではCクラスにだって負けない点数を取っている。ちなみに、これらの情報は雄二がこちらの戦力を把握しているのを横から覗いて得たものだ。

しかし、これは総合点は結局のところ、向こうの方が上だ。そのためには、なるべく相手より多い人数で戦う必要がある。例えば……。

 

「佐々木! 君島がやられそうだ! 助けてやってくれ!」

 

「分かった! 召喚!」

 

 合言葉を叫んで、やられそうな君島を助けるべく俺も召喚獣を呼び出す。幾何学模様がフィールドに浮かび上がると共に、俺の容姿をデフォルメしたような召喚獣が場に現れる。その装備は剣に少しばかり小さ目な盾という至ってオーソドックスなスタイルである。

 

「喰らえっ!」

 

 召喚獣を操作して、君島を狙っていたDクラスの奴の召喚獣の胴体を横一線に斬り捨てる。

 

 

Fクラス 佐々木 亮 VS Dクラス 江頭 博人

    779点    総合   DEATH     

 

 頭上に戦闘結果が表示される。よしっ、一人撃破! こんな風に、フォローし合ったりして戦えば、Fクラスといえど簡単には落ちない。それに、Fクラスの皆、思ったより召喚獣の操作が上手い。これは恐らく、勉強もしないで遊んでばっかの奴らだから、一年の時の召喚獣の操作訓練で面白がって色々やってたやつらが多いのだろうと推測できる。何故なら、俺もそうだから。

 

『戦死者は補習!』

 

 と、ここでいきなり野太い声が挙がる。この声は……鉄人か!? いきなりの鉄人の登場に、その場にいた全員の動きが止まる。

 

「さあ、来い! この負け犬が!」

 

「て、鉄人!? 補習は嫌だぁっ!」

 

「黙れ! 捕虜は全員この戦闘が終わるまで補習室で特別講義だ! 終戦まで何時間かかるか分からんが、たっぷりと指導してやる」

 

「やめてくれぇぇぇ!」

 

 そんなやりとりと共に、Dクラスの戦死者が連れ去られていった。ふむ、これは……。マズイな。

 

「秀吉!」

 

「な、何じゃ!?」

 

「撤退だ!」

 

「な、何を言っておるのじゃ!」

 

 鉄人の補習など、最早拷問以外の何でもない。戦死する前にこの場を去ろう。

 

「ワシらの仕事は戦線を保っての時間稼ぎであろう!」

 

「死んだら何にもならないんだよ!」

 

「明久たち中堅部隊が来るまで持ちこたえるのじゃ!」

 

「バカ野郎! 援軍なんか来るわけないだろ!」

 

 今のやり取りは明久も聞いていただろう。そして奴はきっとこう言うに違いない! 全軍撤退、と。何故なら、俺でもそうするから。

 

「ほ、補習は嫌だぁっ!」

 

 ここで、Dクラスの奴が恐怖に駆られて単身突撃してきた。

 

「ッ!?」

 

 やられるか!? 一瞬そう思い、身構える。しかし、ただ動きを固めるのではなく、相手の動きを見極めることを忘れてはならない。見ると、相手の召喚獣は獲物の刀を上段に構えていた。その動きは、単調だ。

 

「いけるか!?」

 

 これなら難しい操作を必要とせずに攻撃を避けられる可能性がある。そう判断した俺は、敵をギリギリまで引きつけてから、召喚獣を後ろに思い切り跳ばせた。

 

「しまった!?」

 

 床に刀を叩き付け、無防備になる敵の召喚獣。そこへ向かって、俺は召喚獣を思い切り突っ込ませた。

 

「でやぁぁっ!」

 

「うわぁっ!?」

 

Fクラス 佐々木 亮 VS Dクラス 山本 五郎

           総合   

    779点           313点

 

 攻撃後の点数が表示される。くっ、一撃では倒しきれないか……!

 

『うおぉぉっ!!』

 

「くっ、Dクラスの奴ら、攻撃が激しくなってきたぞ!?」

 

 隣で戦っていた福村の言う通り、さっきの一連の様子を見ていたDクラスの部隊が勢いを増し始めた。その迫力にこちらの前線部隊が気圧されている。やばい! 下手すりゃ戦線が崩壊するぞ!

 

「慌てるでない! 各自、死なないように立ち回りつつお互いをフォローし合うのじゃ! 中堅部隊が来るまで持ち堪えるぞ!」

 

 ここで、秀吉の指示が届く。流石演劇部というべきか、良く通る声はこの喧騒の中でもみんなに届いたようで、自分たちのやるべきことを思い出し、少し落ち着いたようだ。

秀吉の一言で落ち着きを取り戻したことによって、勢いを増したDクラス相手ながらもしばらくの間、俺たちは戦線を維持することに成功する。

 

「先生、こっちです!」

 

 しかし、そこに一つ厄介な事態が舞い込んでくる。Dクラスの奴ら、化学の布施先生と五十嵐先生を連れてきやがった。立会人が増えれば、それだけ戦闘フィールドが広くなって一度に戦える人数が増え、早く決着が着きやすくなることになる。

 

『押せ、押し込むんだ!』

 

 敵の軍勢の後方から大きな声が飛んでくる。Dクラスの前線の部隊長だろうか。そして、戦線は段々と、その言葉通りDクラス優勢の様相を見せ始める。

 

「くっ、押し込まれてる!」

 

 少しずつ、俺たちの部隊が後ろに下がらざるを得なくなっている。証拠に、段々とフィールドの端が近づいてきている。

 

『うわあっ!?』

 

『や、やめてくれ! 補習は嫌だぁっ!』

 

 こちらから徐々に、断末魔のような悲鳴が上がり始める。俺の点数も最初は800点以上あったのが、見る見るうちに削られ、今はたった161点となっていた。

 

「中堅部隊はまだなのか!?」

 

 このままだと前線が壊滅しちまう!

 

『全軍突撃しろぉーっ!』

 

 いよいよ戦線崩壊が現実味を帯びてきたところで、今まで聞こえてこなかった声が聞こえてきた。この声、中堅部隊隊長の明久か!?

 

「前線部隊の皆よ! 状況を見つつ随時脱出し、補給に向かうのじゃ!」

 

 続けて秀吉の指示が飛んでくる。どうやら援軍で間違いないようだ!

 

「よし、離脱……!」

 

「逃がすかぁっ!」

 

 離脱しようとしたところで、Dクラスの奴が俺を狙って突っ込んできた。マ、マズイ! 完全に虚を突かれた! 相手の召喚獣は獲物を既にこちらに叩き付けようとしている。間に合わないッ!?

 

「な、何だとっ!?」

 

 しかし、本当に奇跡的なことに敵の攻撃は俺の召喚獣が構えていた盾に当たって弾かれた。俺の召喚獣も耐え切れずダメージを負ったが、それと引き換えに現在敵は隙を晒している。

 

「そこだっ!」

 

 削られた点数、そして先程一撃で倒しきれなかった経験が頭を過ぎり、今度は敵の召喚獣の喉仏、つまり急所を狙う。今までより精密な動作になる分、成功するかはイチかバチか。外せば今度はこっちが隙だらけ。やれるか……!?

 

 

 

Fクラス 佐々木 亮 VS Dクラス 中田 鉄也

           総合

    64点          DEATH

 

 運よく、俺の攻撃は命中。元々相手の点数が削れていたことも相まって、一撃で撃破することに成功した。

 

「戦死者は補習!」

 

「た、助けてぇっ!」

 

 鉄人に引きずられていく生徒を見ながら、先程の戦闘を振り返る。あ、危なかった……。

 

「勝負は時の運とは本当だな……」

 

 一歩間違えば自分があの立場だったのかもしれない。そんな風に改めて勝負の恐ろしさを実感しながら、俺は戦線を離脱するのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 静かな部屋に、鉛筆が走る音がする。戦場から一旦退避した俺たちは、雄二の指示により、消費した点数を回復するためのテスト、補充試験を受けていた。

俺たちが今回消費した点数は総合科目によるものなので、その完全回復には一々全科目を受けなければならないことになる。今回のテストの採点は世界史の田中先生、おっとりとした初老の先生で、採点が甘いことで有名だ。

 

「……」

 

 単純にメリットのみというわけでもない。確かに採点は甘いのだが、この先生は採点が遅めという特徴もある。ここで田中先生を採点者に選んだのは時間稼ぎが成功した後のある作戦のためである。

そのために、ここでは全ての科目を補充するのではなく、各自の一番得意な科目とその次に得意な科目のみを補充していくという形になっている。まあ、それでなくても基本的に全科目補充している暇などそうそうないのだが。

 

「……」

 

 俺が現在解いているのは英語だ。ここ文月学園では一般に採用されている100点満点方式のテストではなく、制限時間いっぱいなら幾らでも点数を伸ばせるような試験システムを採用している。

まあ、とはいえ、俺たちFクラスでは得意科目と苦手科目が偏ったりしない限りは大体の場合100点を超えることはないのだが。

 

「……」

 

 で、俺の英語だが……。ハッキリ言って、あんまり自信はない。現代国語が俺の点数の中では抜けてしまっているため、二番目に得意といっても英語の点数はどうしてもたかが知れてしまう。

 

『ジリリリリ!』

 

 時間終了の合図のベルが鳴る。ベルが鳴り終えると共に、俺はペンを置いた。この前に解いた現代文に関してはそれほど問題ではないものの、正直英語に関してはちょっと心もとなさが残るかもしれない。解答が回収され、採点を待つ間にしばらくの間、時間が空く。

今、戦況はどうなっているだろうか。もし戦線を突破されれば、雄二の補給待ちの消耗しきった戦力が主な部隊となってしまう。こうなれば恐らく俺たちの負けは確定的だろう。

 

「明久たち中堅部隊次第か……」

 

 何とか持ち堪えていてくれるだろうか……。明久と島田が揉めてる、なんてことになっていなけりゃいいが。

 

「ふぅむ……」

 

 そんなことを考えながら教室で待機していると、不意に採点を行っていた田中先生が声を漏らした。

 

「どうしたんですか?」

 

「おお、佐々木くん。いやね、ちょうど君の英語の採点をしていたところなんだが……」

 

 俺の解答? 何か問題でもあったのだろうか。だとしたらマズイぞ……。

 

「あの、何かおかしいところでも?」

 

「いや、ペンのインクが切れてしまってね」

 

「は?」

 

 田中先生の言葉に、一瞬思考が止まる。インクが切れた? インクが切れたって……。

 

「いや、予備のペンを持ってくるのを忘れてしまっていてね。済まないが貸してもらえないかな?」

 

 何だ、そういうことか。一瞬俺のテストの点がなかったことになるのかとひやひやしたぜ。理解した俺は、ペンケースの中から自分のペンを出して、田中先生に渡す。そんなことがありながら待つこと十数分。

 

「採点が終わったよ、佐々木くん」

 

「ありがとうございまーす」

 

 俺の補充試験の結果が出た。先生から解答を受け取り、早速点数の確認をする。どれどれ……。

 

現代国語 138点

英語 74点

 

 現代国語は問題なし。そして、英語は……ちょっと失敗したかなぁ。というかこの結果を見ながら一つ思ったのは、教師が担当外の教科採点するのってどうなんだろうな。

 

「まあ、いいや。さっさと雄二に報告に行くか」

 

 そう思い直して、雄二の下へ行く。

 

「よう、おつかれだったな。テストはどうだった?」

 

 そう言った雄二の顔は、心なしか爽やかだった。

 

「……随分晴れやかな顔だな、雄二?」

 

「ん? お前は校内放送が聞こえなかったか」

 

 校内放送……? そういえば、テストで集中している際に何かあったような。

 

「……(クイッ)」

 

「ん? どうした康太?」

 

 康太が俺の袖を引っ張る。奴が指さした先にあるのは……。

 

「録音機?」

 

 何故こんなものが学校に。

 

「……再生する」

 

『船越先生、船越先生』

 

 これは、我らがFクラス所属の須川の声か。あいつ、何だって校内放送なんか……。

 

『Fクラスの吉井くんが体育館の裏で待っています。生徒と教師の垣根を越えた、男と女の大事な話があるそうです』

 

「……」

 

 一切を了解した。いや、というより、詳しいことは分からんが取りあえず雄二の顔が清々しい理由は分かった。

 

「……お前、鬼畜だな」

 

 全てはこの男の差し金であると考えて問題なかろう。ちなみに船越先生とは、婚期を逃した末に、もうこの際生徒でも構わないと完全に開き直ってしまった哀れな女教師である。っつーかさっさとクビにしろよ。そんな危険人物。

 

「気にするな。そんなことよりそろそろ戦線が苦しくなってくる頃だ。救出に向かうぞ」

 

 雄二は言いながら、教室のある一角へと視線を向ける。

 

「その頃には姫路の補充試験も終わっているだろうしな」

 

 雄二の視線の先には、俺たちFクラスにとってまさに隠し持った凶器とも言える戦力である姫路さんがテストを受ける姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、一悶着ありながらも俺たちは明久たち中堅部隊を回収し、一旦後退して戦力を立て直すことに成功する。

え? 具体的には何があったかって? そりゃ……。窓が割れたり、スプリンクラーが壊れたり、消火器がブチ撒けられたり、島田の『彼女にしたくない女ランキング』が上がったんだよ。何が起こったか分からん? 俺だってサッパリさ。

 

「雄二、校内放送は聞こえてた?」

 

「ああ、バッチリな」

 

 尚、隣ではそんな応答が繰り広げられている。哀れ、明久よ。お前の貞操が無事であることを願っているよ。

 

「それにしても、よくあの状況で持ち堪えられたよな」

 

「うむ、全くじゃな。ワシらの前線部隊はあれほどの苦境に立たされる前には援軍が来てくれたからの」

 

「……(コクコク)」

 

「雄二、須川君がどこにいるか知らない?」

 

「そろそろ帰ってくるころなんじゃないか。それとな、明久」

 

 敵を雄二の下まで通さなかったのは戦果としては十分だろう。まあ、その代わり、色々と大事な物が犠牲になった感は否めなかったが……。

 

「あの放送を指示したのは俺だ」

 

「キサマだぁぁぁっ!!」

 

 隣では、明久が雄二目掛けて跳びかかっていた。やれやれ試召戦争中にじゃれ合うなんて仲が良いな。

 

「あ、船越先生」

 

「チイィッ!」

 

 風のようにその場を離れ、急ぎ掃除ロッカーの中へ飛び込む明久。音も立てずに隠れるその姿は忍者さながらだな。

 

「さて、バカはほっといて行くぞ、みんな」

 

 雄二が様子を見守っていた俺たちに声をかける。うむ、友人の貞操を売っておいてこの何事もなかったような態度を取れる度胸……。たまに坂本雄二という人間が本当に分からなくなるから困る。

 

「そうじゃな。ちらほらと下校し始めた生徒も見え始めたし、頃合いじゃろう」

 

 雄二の一声で待機していたFクラスのメンバーが行動を開始する。秀吉の言う頃合い。それは今から作戦を行うのに都合のよい状態になりつつあるということ。

 

「決着の時間だ」

 

 野性的な笑みを浮かべて、雄二が一歩踏み出した。

 

 

 

 

 

 

『下校中の生徒に紛れ込め! 取り囲んで多数対一の状況を作るんだ!』

 

『オウッ! じゃあ俺はこいつに数学の勝負を』

 

『なら古典で!』

 

『生物で!』

 

 雄二の指示はこうだ。試召戦争開始から時間が経ち、下校時間になった。その結果、下校中の生徒に紛れ込み、相手に悟られないように敵に近づくことが可能となった。そして、授業中の時間に比べて先生を捕まえることも容易になった。それを利用し、多数対一で確実に敵を撃墜そうというのだ。全く、よく思いついたもんだ。

 

「えっと……現国の先生は……。いた!」

 

 そして俺はというと、雄二より指示を受けて現代国語の先生を探していた。理由は単純、それによって俺がDクラスを上回る点数で勝負できるからだ。

 

「横山先生、来てください!」

 

「わっ! ちょっと、佐々木君!?」

 

 強引に引っ張って、すぐさま下校中の生徒に紛れ込み、敵を探す。……近くに、Dクラスの塚本!

 

「Fクラス、佐々木! Dクラスの塚本に勝負を挑みます! 召喚!」

 

「えっ!」

 

 完全に不意を突かれたのだろう。塚本が目を剥いて驚いたのが見える。けど、逃がさない!

 

「くっ、けど……。一対一なら! 召喚!」

 

 塚本はそう言って、自分の召喚獣を召喚した。一対一なら、か。確かに、普通ならそうだな。

 

 

 

 

 

佐々木 亮 VS 塚本 幸平

     現代国語

 138点       91点

 

 

 

 

 

「なッ……!?」

 

 塚本が信じられない、という顔を見せる。そんな彼に、俺は少しばかり顔に笑みを浮かべながら、こう突きつけてやった。

 

「何事にもイレギュラーってのが存在するんだ。よく覚えときな」

 

 俺が言い終えると共に、俺の使役する召喚獣が塚本の召喚獣を斬り捨てる。

 

「Dクラス、塚本! 討ち取ったり!」

 

 大きな声で、塚本を討ち取ったことを戦場に知らしめる。その声に呼応して、Fクラスの指揮も上がったように見える。

 

『援軍に来たぞ! みんな、もう大丈夫だ! 落ち着いて、取り囲まれないように周りに注意するんだ!』

 

 しかし、ここでDクラスに援軍が。やってくるのは……Dクラス代表の平賀! Dクラスの本隊が出陣したな!

 

「本隊の半分は坂本を取り囲め! 残りは囲まれてる奴らを助けてやってくれ!」

 

 平賀が指示すると、Dクラス本隊は素早く行動を開始した。雄二率いる本隊があっという間に囲まれてしまう。流石にそう簡単には落ちないだろうが、あれでは雄二が身動きが取りづらい。

 

「Fクラスは一度撤退しろ! 人ごみに紛れて攪乱するんだ!」

 

「逃がすな! 個々の実力ではこっちの方が上なんだ! 追い詰めるぞ!」

 

 雄二の指示に対して、平賀も指示を出す。どうする? Fクラス本隊の撤退を援護するか。それともFクラス掃討に前のめりになって手薄になったDクラス本隊を叩くか。

決めかねて、Dクラスの本隊を人ごみから伺ってみると、近衛部隊が数人ではあるが、きっちり目を見張らせているのが見えた。チッ、あれ全部はちょっと厳しいか?

 

「ん……?」

 

 考えていると、一人の人影がDクラスの本隊に忍び寄るのが見えた。あれは……明久か?

 

「向井先生! Fクラスの吉井 明久が」

 

「Dクラス玉野 美紀、召喚!」

 

 平賀へ勝負を仕掛けようとした明久だったが、結局近衛部隊にカットされてしまう。やはりFクラスらしきやつの動きは注意されている。

 

「残念だったな、船越先生の彼氏クン?」

 

「ち、違う! アレは雄二が勝手に……!」

 

「そんなに照れなくてもいいじゃないか。さ、玉野さん。彼に祝福を」

 

「わかりました」

 

 どうする。助けに入るか。そう思って一歩踏み出して、しかし留まった。何故か。勝利が見えたからだ。

 

「ちくしょう! あと一歩でDクラスを僕の手で落とせるのに!」

 

「何を言うかと思えば、彼氏クン。いくら防御が薄くても流石にFクラスの人間が近づけば近衛部隊が来るにきまってるだろう? ま、近衛部隊がいなくてもお前じゃ無理だろうけど」

 

 そう、明久じゃ無理だ。しかし、既に俺は勝利を確信している。それは……。

 

「それは同館だね。確かに僕じゃ無理だろうね。だから姫路さん、よろしくね」

 

「は?」

 

 そう、その場には姫路さんがいた。“学年次席レベルの学力”を持ちながらFクラスに配属されてしまった姫路さんが。

 

「え? あ、姫路さんどうしたの? Aクラスはこの廊下を通らなかったと思うけど」

 

 可哀想に。平賀はどうやら目の前の敵を敵と認識できていないようだ。そりゃそうだ。俺だって逆の立場なら恐らく分からない。

 

「そうじゃなくて……。Fクラスの姫路 瑞希です。えっと、よろしくお願いします」

 

「あ、こちらこそ」

 

「その……。Dクラス平賀君に現代国語勝負を申し込みます」

 

「……はぁ。どうも」

 

 

 

 

Fクラス 姫路 瑞希 VS Dクラス 平賀 源二

          現代国語

   339点             129点

 

 

 

 

「え? あ、あれ?」

 

「ご、ごめんなさいっ」

 

 Fクラス対Dクラスの、今年最初の試召戦争の幕引きだった。




読んでいただいて有難うございました。また次話でお会いしましょう。
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