PSYCHO-PASS 愚者達への審判   作:リボーンズ

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episode2

「これで3人目となるが...君のやり方は些か強引な気がするがね。」

 

厚生省の本部の局長室。

そこでは局長ともう1人、例の対外政策を指揮する男、月城 由弦が対談していた。

 

「何を仰いますか、局長。皆さんだって、かの『槇島』とかいう男の確保に全力を挙げていたではありませんか。」

 

局長のことを『皆さん』と称する辺り、この男は局長とシビュラシステムの正体を知っている。

 

この槇島という男はかつての刑事課一係と浅からぬ因縁があった。

まるで演奏を指揮するように、自らの手を汚すことなく犯罪を創造し、シビュラの存在を脅かした愉快犯。

そんな彼も免罪体質者であり、シビュラシステムは彼の特異性に着目し、システムの構成員として取り込もうとした。

 

「ふっ、嫌味なことを言うな。確かに君の言う通り、我々シビュラシステムは免罪体質者という特殊な人間を取り込むことで、システムの盲点を克服しながら認識の拡張を図ってきた。」

 

免罪体質により犯罪係数を測定できないのであれば、そのイレギュラーにシステムの運用を委ねれば良い。

そうすることでイレギュラーな存在は表の社会から消え、システムは新たな価値観を得る。

 

「でも、『鹿矛囲』の出現はあなたたちシビュラにとっても大きな痛手だったはずだ...。」

 

月城は、やや意地悪めいたような笑みを浮かべながら局長を見る。

 

「確かに、鹿矛囲 桐斗という男の出現は我々に打撃を与えた。個人ではなく集団としてのPSYCHO-PASS。彼にそれを問われた時に、我々がクリアな存在となるよう、構成員の多くを廃棄したのだからな。」

 

「そうですね。つまり、僕がやっている免罪体質者狩りっていうのは、要は構成員の補充なんですよ。」

 

「それにしては焦りを感じるのは我々の勘違いかな?」

 

局長の指摘に含みのある笑みを浮かべながら、月城は席を立った。

 

「2度目となる『幸福の輸出』。万全な態勢で臨みたいでしょう?それだけです。」

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

刑事課零係に充てられた部屋。

零係は他の係とは違い、通常の出動要請はない。

ただひたすらに、月城の進める対外政策の土台を固めるのが現在の任務である。

 

「ああぁ、暇だぁ!!!」

 

凛翔の部下である執行官の1人、周が喚く。

係の指揮を務めるのが監視官、それに従い対象を追跡するのが彼ら執行官である。

執行官は監視官と違い、その犯罪係数が規定値を超えた潜在犯である。

ただ一つ許された社会活動として、犯罪者を駆り立てる役目が与えられている。

まさに、獣を狩るための獣。

 

「喚くな周。今はまだ役目は少ないが、いずれこの暇な時間が恋しくなる日が来る。」

 

凛翔は軽くあしらいながら、街頭スキャナーの様子をモニター越しに確認する。

零係の追跡対象である免罪体質者等、そう易々と見つかるわけでもなく、こうしてスキャナーに計測された色相の、僅かな違和感から目星をつけていくしかない。

 

「ところで監視官、いずれ我々は海外勤務になるとかならないとか、そんな噂を聞いたのですがご存知ありません??」

 

コードネーム ハウンド2こと流川 藍夏(るかわ あいか)がそんな話を持ち出した。

 

「えぇ、俺ら海外勤務なの!??危なっかしい所じゃないといいけど....。」

 

「一体どこからそんな噂が...。まぁ、我々の特務の中には国外の物も含まれるということだけは伝えておく。」

 

周がげっそりした表情を浮かべたのと対象に、藍夏は目を輝かせた。

 

「なるほど!だから霜月課長、外務省からあれこれ口出しされてたんですねぇ。」

 

どこから得たのかわからない情報が藍夏の口から出てくるのは慣れたものである。

思わず溜め息が出そうになるのを堪えながら、凛翔はモニターに目を戻す。

 

おや、と凛翔はスキャナーの奇妙な計測を見逃さなかった。

 

「おい、これどう思う?」

 

2人の執行官をモニターの前に集め、例の計測結果を示す。

 

「2人の反応、1人は急速に色相が悪化していながら、もう1人は極めて低い数値に留まってますね。」

 

「こりゃあ、免罪体質を後ろ盾にして好き放題やってるパターンですかね、監視官?」

 

周の言う通り、中には自らの免罪体質を理解しながら、それを特権のように扱う人間がいる。

今回がそうであるとも限らないが、人の少ない場所であるのと、藍夏が言った通り不自然な計測が見られたことにより、可能性としては十分にあり得る。

 

「現場に向かう。ハウンド1にも至急連絡を。」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

「これ以上こっちに来ないで!こ、公安局に通報するわよ!」

 

夜の工場区。

追い詰められた女性が、迫り来るナイフを持った男に向けて決まり文句を発していた。

 

「残念だなぁお嬢ちゃん。俺は何をしても色相がクリアだ。ここであんたを犯して殺しても、シビュラは俺を裁けない!!」

 

現に、彼の色相はクリアであった。

それを認識した女は、恐怖に震え上がる。

同時に自分の色相がストレスで悪化していることにも気がついた。

 

「ここで公安局を呼んでみろ?悪化した自分の色相を公安局に見せてみろよ!取っ捕まるのはお嬢ちゃん、あんたの方だ!」

 

助けも呼べない。

このまま黙って、男に命を握られるしかない。

その恐怖から、彼女の色相は急激に悪化。

 

犯罪係数は100を超えてしまっていた。

 

男の勝ち誇った笑い声が響く。

 

「無能な公安だよなぁ、お嬢ちゃん1人救えない。そして、俺みたいな存在が好き放題できるこの世界、恨むならシビュラを恨みなよぉ!!」

 

その瞬間、男は急に体を捩り、回避行動を取った。

男のいた場所には石レンガのような物体が直撃。

 

「っ!危ねぇな!!!」

 

「残念、はずれ!」

 

工場区のコンテナの上から覗いていたのは、執行官である周だった。

現行犯とはいえ、その場で犯人に石レンガを投げつける辺りは、流石潜在犯というだけはある。

 

「おい、殺したらどうする!」

 

「大丈夫ですって監視官。わざと外しときましたから!」

 

そんな周の自由な行動はさておき、凛翔はドミネーターを抜き、男に照準を合わせる。

 

「公安局だ!身柄を拘束させてもらう!」

 

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