「──はい、もう歩くだけなら問題ないわよ、それでも戦闘となると悪化する危険はあるけどね」
あれから3日、救護室で傷はそれなりに回復したローザは視子の検査を経て、黎明内を自由に動けるようになった。
「それにしても回復力凄まじいわね、ジャバウォックって皆こんな感じなの?」
「まぁね、私はかなり遅いほうだけど、で、あなたが私の監視役かな、つう」
その隣に、つうが立っており、訝しげにローザを見ている、当たり前ではある、なんせ自分が一番大切な人を傷つけようとしたから。
「そうだね」
素っ気なくつうは返事をする。
そのまま救護室を出てローザとつうは廊下を歩いていた。
「まぁあなただろうとは思ったよ、さて、私に部屋ってあるのかね?」
「えぇ、一応あるよ、ここだ」
ローザと書かれた部屋のドアを開けると、そこはベッドと机だけの質素な作りの部屋があった。
「わぁ最低限、まぁそんなに長く滞在しないから十分かしら」
「で、寝るの」
「まさか、まだ昼だし、ここのところ寝たきりだったから身体が鈍っていてね、しばらくは歩くわ」
ローザは次の場所に向かう。
その道中に、かぐや姫が何か困った様子で何時も乗ってるバンブー1号が地面に降りた状態であった。
「かぐや姫、どうしたんだい?」
つうが心配そうにかぐや姫に訪ねる。
「見ての通り、バンブー1号が動かないんですの、今ハルさんもくららもいませんので……」
「……少し見せて」
ローザはバンブー1号を見て回る、下の部分を少し弄ると再び宙に浮き始めた。
「おぉ、なかなかやるますね~、ローザとやら」
「ただ浮力の制御装置が外れていたからそれを直しただけ、その程度誰でもできるわ、それじゃあ」
ローザはそれだけ言って目的の場所に歩いていった。
「……意外と世話焼きだったりするのかな」
「別にそういうわけではない、あそこにずっといられると迷惑だっただけのことよ」
ローザ自身あまりよくわかっていない、しばらくすればハルとくららが直してくれるのに、自分が直す必要はないからだ。
「ふーん」
そのまま歩いていくと、目的の場所、ロビーにやってくる、そこには人魚姫とよぼよぼな老人がいた、人魚姫は老人に肩をかしており今にも倒れそうで、大変そうである。
「姫!?、その人は」
「あ、おつうちゃん、この人また街中で倒れていたから今救護室に運ぼうと──あ」
「姫!」
人魚姫が倒れそうになったのをつうより早くローザが抱き止めた。
「そんな背では大変だろう、怪我されても面倒だ、私がこいつを運ぶ」
ローザは老人の肩をかして、そのまま救護室まで戻ってきた。
「あら、その人は……もしかしてまた表さんが倒れたのね」
視子は手慣れた様子で老人をベッドまで運ぶと、ローザのほうに向く。
「ありがとうね、ローザ、それと人魚姫さん、何時もありがとうね」
「いえ、今回は楽させたもらったので」
「おぉ、何時もありがとうなぁ人魚さん、ワシ本当に身体が弱いのなんので」
「はいはい寝ててくださいね表さん」
老人が起きようとするのを視子が止める。
「なんだ、何時も一人でやってたのか、手伝う必要なかったか」
「いえ、ローザさんが手伝ってくれたので道中おじいさんが怪我することなくこれました、感謝してますよ」
「……そうか、じゃあ私はロビーで食事してるから」
そう言ってローザはつうと共に救護室を後にした。
そして食事してるとき、3人ほどの足音をローザの耳に聞こえる。
「……それなりに元気になったようね、ローザ」
「あぁ、まだまだ戦えないけどな、確か……親指姫だったか、それと眠り姫に白雪姫」
「ん……」
「はい、白雪です」
三姉妹はローザを見た後、食事にきたのだろう、何時もの食事を貰うと、ローザと背を向けるように反対の席に座る。
「ネムと白雪を傷つけたこと、許さないから」
「そう、別に許されたいとは一度も思ったことはないけど」
「あはは、言うわね」
その親指姫の笑い声はとても抑揚が低かった、そのままローザは食べ終わると、ロビーから離れていった。
次に向かったのは屋上だった、そこにはマチと赤ずきん、そしてシンデレラがいた。
「こんなところで3人はなにを?」
「ん?、あぁ、少しボーッとしていた、悪いかな」
「いや、特に」
「あなた、動けるようになったのですわね、あなたこそここに何しに?」
シンデレラの質問にローザは答える。
「そうね、少し考えごとでもしようかと、シンデレラ、あなたは」
「……わたくしはマチ姉と同じくですわ」
少し間をおいてシンデレラはそう言った、何か隠している感じをローザはしたが言及はしないようにした。
「考えごとね……なら、あたしと同じか」
「赤ずきんだったか、あなたも何か」
ローザは赤ずきんの隣に立って話を聞く。
「まぁここにいれば耳に入るとは思うけど、あたしのお父さんってもういないんだ」
「確かあなた達はメルヒェンから生まれるんでしたっけ」
「まぁ本来の意味とは違うけどね、言ってしまうとそのお父さんって言うのはスナーク、ナイトメアの親玉だったわけ」
「……スナークね、聞いたことはある、私達ジャバウォックの前にナイトメアを支配していたやつだって」
「……一応聞いておきたいけど、別に言わなくてもいいわ、あなたに父はいたの」
「──いた、まぁその父は既にいないわ、なんせ殺したのは……人間、それも姉達、まぁその姉も村民に殺されたわけだけど」
その時見ていた赤ずきんはローザが悲しそうな目をしていたような気がした、しかしすぐに何時もの目に戻り、屋上から出ようとする。
「それじゃあ私は自分の部屋に戻るわ、ここだとゆっくりできないし、もう十分動き回ったわ、つう、あなたは部屋まで監視しにくるのかしら」
「……別にそこまでする気はないわ、監視カメラがあるしね」
「へぇそんなものが、言ってしまってよかったの」
「別に壊した時点で追放するだけだからいいわ」
「それは怖い」
「ローザ」
赤ずきんがローザを呼び止める。
「なにかな」
「……いや、何でもない、じゃあ」
「変なの」
そのままローザはつうを連れて屋上から出ていった。
○
「……やっぱりそうか」
自室でフユはある紙を見ていた、そこにはローザの血液の記録がのっており、それとある生物の記録と交互に見ている。
「……なるほど、そりゃあローザ達はナイトメアの上位か、なんせ、
「あら、やっぱりそうみたいね、おとうさんとあかあさんの血液が役に立ってよかったわ」
そこにグレーテルがやってくる。
「グレーテルか、その様子だと初めからわかっていた感じだな」
「そうね、ただ初めからではないわ、わかったのはつうが変身した時よ」
「ほう、それはまた、どうやら成功してほっとしたよ」
「……つうは元はナイトメアなのはわかっていたわ、過去、というより擬態化前のことだけどね、興味深い事例ね」
「あまりしないほうが良い、深入りは」
「……そうね、けど研究はやめないつもりよ、それはあなたでもやめろとは言わせないわ」
「そう、なら思う存分やるといいわ、研究を」
「うふふ、そうさせてもらうわ」
グレーテルは口角を大きく上げた笑みを浮かべ、フユの自室を後にした。
「……つうが成功した、ならもしかしてジャックも……?、いや、やめておこう、失敗したときが一番ダメだから……けど、試してみたいとは思ってしまうのは研究者だからかな」
フユは研究を進める、自らのため、黎明のために。