それからか、ローザの部屋に様々な人、ほとんどが血式少女だが訪れるようになった。
「おーい!、ローザとやら!、暇そうだから遊びに来たぞ!」
ハーメルンはドアを足で開けて入ってくる、その手にはメルヒェンで作ったであろう帽子や服が箱に詰められていた。
「帰れ、ゴミを渡すな」
「こ、これはゴミではにゃい!、服だ!」
「そう……まぁいいわ、貰っておくわ」
「おう!、ここに置いておくぞ!」
ハーメルンは部屋の端に箱を置いて出ていった。
「はぁ……」
「入るわよ」
次にきたのは、グレーテルとヘンゼルだった、グレーテルはローザを見つけるとあの口角を上げて近づいてくる。
「な、なによ、怖いわね」
「うふふ、ヘンゼル兄さんから面白いことを聞いてね」
「ヘンゼルから?」
「えぇ、あなた、茨木童子が血式少女達を殺そうとしたのを止めたんでしょ」
「……何を言ってるの、私は別に」
「でも、言ってたよ、『そいつらは後にして核を取ろうって』」
「……、それが殺そうとしたのを止めたとは限らないわ」
「あら、それもそうね、ただお父さんお母さんに対しての攻撃は半身が吹き飛ぶほどだったそうじゃない、それなら赤ずきんもシンデレラも身体のどこかが骨折、あるいは欠損していもおかしくないわ」
「……私がいたぶるのが好みのやつだとは考えないのかね」
「それならさっき言った後にするというのはどう考えるのかしら、いたぶりたいんでしょ?」
グレーテルはあのてこのてで言ってくる、ローザは少し困った様子を見てグレーテルは楽しんでいるようにヘンゼルは感じた。
(あ、グレーテルの、何時もの人を困らせるやつだ)
「だから……その……」
「なに?、まだ反論はあるかし」
「グレーテル、そのくらいにしておいて」
「そうよ、敵だとしてもあまり困らせるんじゃないわ」
そこにジャックとアリスが入ってくる、ジャックの手には兎の形に切ったリンゴが乗った皿を持っている。
「あら、敵を庇うのね」
「そういうわけではないわ、もし武器を持ってないあなたが襲われたら大変よ」
「その時はヘンゼル兄さんがなんとかするわ」
「うん、僕、なんとかする」
「……はぁ、ここにいても仕方ないか、外に出るから監視役にグレーテル以外で誰か」
「じゃあ僕」
「私が行くわ」
ジャックの言葉をアリスが遮る。
「じゃあ二人でってことで、つうと人魚姫は老人の介護してるらしいし、さて……」
ローザは自分の服装を見る、この黎明に来てから入院服のままだ、このまま外に出るのは少し躊躇われる。
「……これでいいか」
ローザはハーメルンが持ってきたメルヒェンで作ったであろう服に着がえた、ぱっとみは黒いドレスだがところどころに目や口があり、不気味さが凄い。
「結局着るんだね、ローザ」
「まぁこれしかないからね、すぐに外で仕入れてくる、行くぞ」
ローザは少しぎこちないが歩いてドアを開けて出ていった、それに続いてジャックとアリスも行こうとするがグレーテルに呼び止められる。
「ジャック」
「ん?、なにかな」
「ローザのことどう見るかしら」
「そうだね……最初こそ怖い人かと思ったけど関わっていく内に根はいい人なんだなって思うよ」
「そう、それに関しては同じ意見ね、ただひとつ……ローザを襲ったでおろう薄暮、もしかしたら近くにいるかもしれないから気をつけたほうがいいわ、生かしたいならだけど」
「……わかった、気をつけるよ」
「おい!、ついてこないならこのまま行くぞ」
「待ってて!、いま行くから、それじゃあ行こうかアリス」
「えぇ、もしものことが会っても私が護るわ」
ジャックとアリスも、ローザを追いかけて出ていった。
「……ローザ、善人ではあるのに、なんで血式少女を襲ったのかしら、いや……そもそも私達はジャバウォックの目的すら知らないわ、核を生きた状態で採取する技術に、ナイトメアじみた力、姿、うふふ、興味深いわね」
グレーテルのその考えてる姿を、ヘンゼルは嬉しそうに見ていた。
解放地区、街中、いくらかのお金をフユから貰い、ローザは服屋に訪れた。
「いらっしゃ──なんですかその服は!?」
ローザの服を見た店員が驚いてこちらに掴みかかってきた。
「うん、私もそう思うよ、だから良いの見繕ってほしいな」
「かしこまりました!、ではいろいろと着てみましょう」
「え、いや、適当なやつでいいですよ」
「そんな!、そんな良いお顔とプロポーション持ってるのにもったいない!、さぁいろいろと!」
「あぁぁぁ」
そのまま一時間、ローザは様々な服を着せられた。
アリスとジャックは外で待ち、ローザが出てきた、その姿は薔薇を基調とした服で、髪もいつの間にか綺麗になっており、長い茶髪が綺麗に揃えられ、包帯が見え隠れしてるが、お姫様のような印象を受ける。
「あら、あなた意外と綺麗なのね」
「うん、綺麗だよローザ」
「そ、そう?、まぁ悪い気はしないわね、ジバル様以外で久しぶりに聞いたかも、さて、もうしばらく彷徨こうかな……ん?」
「どうしたの?」
「待ってジャック、何か聞こえない?」
アリスに言われジャックは耳をすます、どこからか子供の鳴き声がしている。
「これって……でも遠すぎてどこにいるかも」
「……まぁ、良い暇潰しになるかもね」
ローザは迷いなく走り出した、それに続いてジャックの手を引きながらアリスも走り出す。
「待ちなさい!、あなたを一人にはできないわ!」
「っ!……痛いけどまぁなんとかなる、それになんだろうな、嫌な匂いがするんだよね」
そのまま裏路地を通っていき、複雑な道を通っていくと、子供と、4人の見慣れない男達を発見する。
「さぁ、我らと来るのだ、なに、不自由はさせん、少しキツイ訓練をするだけだ」
「や、やだ!、僕はお母さんのところに帰るんだ!」
「あまりわがまま言うんじゃない、さぁはや」
「おい、何をしてるのかな」
「え?、なんだこのクソガ──」
ローザは一瞬で偉そうな男に近づき、デコピンを額に食らわせる、バチンと大きな音のあとに、男は倒れる。
「最低限の力加減だ、死にはしてない」
「こ、こいつ!、もしや血式少女か!?」
「いや!、花坂のリーダーの情報にはこんな長い茶髪のガキは無かったぞ!」
(花坂?、それってもしかして)
「じゃあ新しいやつなのか!?、くそ、覚えてろ!」
「あ、ちょっと待って、花坂ってどういう──もういない」
そう言って偉そうな男を運んで男達は去っていった、それと同じタイミングでジャックとアリスが追い付いてくる。
「お、遅かったわ──ごほ!」
ローザは少量ながら血反吐を吐く、まだ完全に回復してないため、少し無理をしていたためだ、包帯に血が滲み、助けられた子供は心配そうに駆け寄る。
「大丈夫?、お姉ちゃん」
「あぁうん、大丈夫……たぶんね、とりあえず外に出るわよ」
○
「──ありがとうございました!、娘を助けていただき!、何かお礼でも」
「どうってことないわ、ただ暇だったからってだけだし、お礼もいらないわ」
「そう言わずに……」
「……お姉ちゃん、これ」
子供はポケットから赤薔薇の髪飾りをローザに渡す。
「これは」
「うん、助けてくれたお礼!、それじゃあ!」
子供は有無を言わさず、母を連れて人波に消えていった。
「……」
ローザはその髪飾りをつける。
「……どう」
「うん、似合ってるよ」
「えぇ、良いと思えるわ」
「そう……うん、無理したかいはあったかな」
その後、ローザは視子に叱られ、しばらく外に出ることを禁じられた。