私自身、酒呑の目的には賛同している、ただ私には足りないようだ、邪魔者を排除する覚悟が、薄暮のやつらは何人か殺してはいるけど自己防衛もある、だが、私はずっと前から人殺しだ、父が殺され、姉が殺されたあの日に、私とジバル様はその村を滅ぼした、殺したんだ。
「──ローザ、聞いてる?」
「あぁうん、聞いてる聞いてます、視子さん」
「なら良かった、もう少しで完治が近いわ、だからちゃんと休むことよ」
あれからもう2週間が経つ、怪我もほとんど塞がり、走ることもできるようになった。
「うん、そうさせてもらうわ、それじゃあ」
「ローザは救護室から出ていく、ドアを開けて待っていたのはつうと人魚姫だった。
「今度もあなた達が監視かな」
「……フユから聞いたよ、あなた達ジャバウォックはナイトメアから生まれた存在だって」
「えぇ、そうだけど、だからこそあなた達より、より化け物に近いと言えるわね」
「……やっぱりあなたって」
いい人だと言うのを遮るように、爆発音が遠くから響く。
「な!?、なに!」
「ほ、報告します!、大量のメルヒェン、及びナイトメアらしき個体が解放地区に現れました!」
黎明の兵が、息をきらしてそう言った。
「ちぃ!、姫、ここでお待ちを!、今他の血式少女隊は旧河川・沼エリアに行ってる……もしかして」
「一応言っておくが私に連絡手段はない、あったらとっくに出ていってるわ」
「……信じるよ」
その言葉にローザは驚く、敵であるはずの自分を信じると、とても最初敵意を向けていた相手とは思えない言葉だ。
「本気?」
「まぁね、それじゃあぼくは解放地区にいく、姫はここで待っていて」
「う、うん」
「いや、人魚姫も連れていけ、おいそこの報告してきたやつ」
「な、なんだ」
「そのナイトメアは角が生えていたか」
「そういえば……額に一本の角らしきものがあったような」
「……茨木直属のナイトメアか、つう、私の言葉を信じるならそいつとは絶対にまとも戦わないこと、二人だけでは身が持たない、まだ覚醒体をまともあつかえてないでしょ」
「覚醒体?、あぁ、メルヘンスケルター化のことかな、そうだね、なら、なんとかメルヒェン倒しながら耐えてるよ、仲間が帰ってくるまで、それじゃあ」
つうと人魚姫は解放地区に向かって走り出した。
(……茨木直属がいるならそいつについていけば私は帰れるだろう、二人の監視がいない今なら何時でも逃げれる、だが……)
『おぉ!、ワレの服を着てくれたのか!、ありがとうにゃ!』
『あんた、案外いいやつなのね、でも許すわけではないからそこんとこわかりなさい!』
『僕は止めたりしないよ、それがきみの仲間なんでしょ』
『大丈夫?お姉ちゃん』
ハーメルン 親指姫 ジャック、そして助けた子供のことを思い出す、目をつぶり、ここにきて見たいろんなことを思い出す、そして……ローザは走り出した。
○
「はぁはぁ……やっぱりキツイものね、これは」
「おつうちゃん、もう少し、頑張ろう」
つうと人魚姫はメルヒェンを倒しながら、一本角のナイトメアにヒットアンドアウェイしながら住民を逃がしながら戦っていた。
「オレ、オマエラ、タベル、ソレガ、イバラキ様ノ、ギギ、メイレイ」
「やっぱり喋るのか」
「グギギ……チカク、ニンゲンノニオイ」
一本角のナイトメアは足が挟まって動けない母を助けようとしている、子供を見つける。
「あの子!、前にローザが助けた子じゃないか」
「お母さん!、んんん!、抜けないよぉ」
「ギギ、ウマソウ、スコシ、ハラゴシラエ」
一本角のナイトメアは子供に手を伸ばす。
「やめろぉぉぉ!」
つうは走って助けようとするが、メルヒェンに阻まれて近づけない、人魚姫も同様だ。
「くそ!、邪魔だ!」
「ギギ、ホラ、ニゲナイトアブナイ、ギギ」
「お母さん!」
一本角のナイトメアは子供を掴んだ──その瞬間、ナイトメアの腕が吹き飛び、子供のお母さんの足を挟んでいたガレキが砕け飛んだ。
「ナ、ナゼ、ケッシキショウジョ、ホトンドベツノバショ、ギギ、イルハズナイ、アイツライガイ」
「……やってしまった、やってしまったぞローザ」
「──お姉ちゃん!、あれでも……手が」
ローザはナイトメアの目の前に立って、子供を抱えていた、獣の腕をしながら。
(あーあ、気味悪く思うでしょうね、でも、私は悪意には強いから)
「お姉ちゃん……カッコいい!」
「は?、カッコいい?」
その言葉が返ってくるとは思ってなかったのか、ローザは上ずった声をあげる。
「また助けていただきありがとうございます!、ハナミ!いくわよ」
「あぁ、うん、まっすぐ行けば黎明だから」
「うん!、またね!、ありがとう!お姉ちゃん!」
ローザは子供をおろし、子供は母と手を繋いで、黎明まで走っていった。
「……はは、母も驚かんとはね、いや少し怯えていたか、それでも……まさかあんな返答とはね──私がいた村の人達も、あれくらい寛容だったら違っていたかな」
最後の言葉は小さな声で呟いた。ローザは一本角のほうに向き直る。
「ギギギギ!!、ローザ!、コレハシュテンサマニタイシテノハンギャクダゾ!、ワレラヲウラギルノカ!」
「ははは、まぁこうなるか、じゃあこの際言ってしまうか、茨木、お前のことは会ったときから嫌いだったよ」
「ギギギギギギギギィィィ!!」
一本角のナイトメアは言葉にならない奇声を上げてローザに襲いかかった。
「つう!、人魚姫!──手伝ってほしい」
「──わかった!」
二人は笑みを浮かべてこたえ、ナイトメアに立ち向かった。
○
「はぁはぁ!……持ってきて良かったトランシーバー」
マチはトランシーバーからフユから解放地区が襲われていると聞いて、急いで血式少女達と向かっていた。
「ねぇ、今黎明ってどうなってるの?」
今回の調査で加入したラプンツェルが言う。
「そうだな、少しヤバイらしい、早いところ行かないと、見えてきたぞ」
解放地区を見ると、様々な場所で燃えていた、その光景を見た赤ずきんは頭を抱えて膝をつく。
「これは……うぅ!」
「赤ずきん!」
マチが心配してると、数秒した後に、赤ずきんは立ち上がる。
「……急ごう」
「お、おう」
マチ達は解放地区に入った、そこにいたのは、まだ息があるが気絶した永久、そしてたくさんのメルヒェンの死体と、一本角のナイトメアだった。
「ナイトメア!」
「ギギギギ──クソ──コンナヤツラ──ニ」
しかしそのナイトメアの胸は大きく抉られ、そのまま地面に倒れ伏した、その後ろには倒れた人魚姫とつう、そして再び傷だらけにになっていたローザが立っていた。
「はは……また服をダメにしてしまった……これはまた入院服かハーメルンの服に着替え──」
最後に自分の名前を叫ぶ声を聞こえたところでローザは意識は途絶える。
目が覚めると、そこはローザには見覚えのある救護室の天井だった。
「またここに戻ってきてしまったね、はは」
「そうだね、今回はぼくらも一緒だけどね」
カーテンが開くと、隣につうと人魚姫がねていた。
「どっちも無理したな、途中からメルヘンスケルター使ったねつう」
メルヘンスケルター、つうの制御されたブラッドスケルター化であり、最初のローザとジバル様戦で使用した姿だ。
「まぁね、でも3分は持ってくれたよ」
「あら、起きたようね二人とも、人魚姫は軽傷だから動いているわ」
視子が前のカーテンを開いて声をかける、後ろにはハーメルンや親指姫が立っている。
「おぉ!、今回のナイトメア!、おぬしが倒してくれたそうではない!、助かったぞ!」
「あんた、意外とやるじゃない、怪我した身体で……まぁ、許しはしないけど、認めてやっても良いわ」
「そうか……はは、まぁいいかなこれで、血式少女達全員集めてくれませんか」
「?」
しばらくして、立てはするがしばらくの戦闘はできない身体になった、ローザが研究室に血式少女達を集めて、話し出す。
「じゃあまず私にとっては悪くて、あなた達には良いことから、無事私はジャバウォック、もとい
「黒月、それが君たちの組織か、でローザ、これはなにかな」
フユは一つの小瓶を見せる。
「それをどこで拾った」
「あのナイトメアの口に挟まっていたから取った、成分を調べた感じわかったのは、核と同じ成分だが、もしやこれって」
「……見たほうが早いね、それください」
「ほい」
フユは小瓶をローザに渡し、その中身をローザは少しだけ残して飲んだ、するとローザの身体から傷が消えていき、包帯がとれて、綺麗な身体になった。
「へぇ、なかなかの回復力ね、もしかして不死性に似た作用かしら」
「正解ですグレーテル、これは私達ジャバウォック、ナイトメアが服用すれば怪我を一瞬で治せるいわば核の栄養を抽出した液体、
「へぇ、それはまた興味深いわね、私達が飲んだらどうなるのかしら、私達もメルヒェンみたいなものよ」
「オススメはしない、ただ薄めれば血式少女にも安全に作用すると思う、原液だと下手したらナイトメアになるぞ、前に酒呑が人間に試したらメルヒェンになったからね」
「その、酒呑は何者かしら」
「リーダーとだけ、詳しくは口からは言えない、言えば心を取られる……まぁ言わなければだが」
ローザはいくつかの本をテーブルに置く。
「それで察して」
「これは、どれも童話ね、もしかして仲間のことかしら」
「言えないね、でも言えることはある、茨木の直属のナイトメア、あれと茨木は繋がっている、視角を共有してるって言えばいいのかな」
「──あぁ、それはもう反逆行為がバレてるわね、それで、これからどうするつもり」
「……完治してしまったからな、もう茨木もここのことはバレてる……まぁつまり、ここにいさせてはしい」
「それは良いね、マチに近い強さが仲間になってくれるのは助かる、他は?」
血式少女皆、賛成である様子で、フユは一つの服を手渡す。
「これは……」
「一応作っておいたわ、血式少女隊の制服」
「……血式少女ではないけど、まぁ
ローザはカーテンの向こうで着替え、でてくる。
「──まぁ、これからよろしく」