水族館跡エリアでの戦いが始まった、つうはメルヘンスケルターになり、飛翔してメルヒェンを無視して浦島太郎のもとにたどり着き、羽を飛ばしての攻撃をする。
「ふむ、どうやら俺の老化の煙のことはわかってる様子だな、だがそれだけではないぞ」
浦島太郎は釣竿のようなものをナイトメアから貰い、握る、それで飛んでくる羽を糸の先端のツリガネで打ち落としていく。
「さすがに簡単にはいかないよね、だけど!」
つうは浦島太郎の近くから竹を生やしてそれは浦島太郎を縛りつけ、老化の煙が出る箱を落とさせる
「むう、なかなか多芸のようだな、つう」
「これで終わりだ!」
つうは加速して剣を振り下ろす。
「まぁこっちも多芸なんだがね」
浦島太郎がそう言った直後、まわりの硝子がわれて水が勢いよく流れてくる。
「なっ!?」
つうもそれに押し流されて剣の軌道がずれる。
(ぐっ、息が……)
「さて、どうするかな、血式少女でも息は5分ほどか、いや、ジャックは2分持つか怪しいところかな、それに魚のメルヒェンも水の中では強いぞ」
浦島太郎は水の中でも声がつう達に届いてる、つうは後ろを向く、魚のメルヒェン達が四方八方に元気に動き、血式少女達を追い詰めていた。
(なら、その前にお前を倒せば!)
「まぁそうくるか、だけど残念ながら水を操れるわけでな」
浦島太郎のまわりに水の拳が現れて、それが縛っていた竹を壊し、つうに向かってくる。
「くそ、こんなもの」
つうはそれを切ろうとするが水なので意味がなく、羽も飛んでいかない、そのまま拳を受けて天井にぶつかる。
(がっ!?──くそ、姫──ぼくはこんなところで──)
(つう!)
気絶してしまったつうに血式少女達の意識がそちらにむく、それを狙ってメルヒェン達が襲いかかる。
「おつうちゃん!、みんな……このままじゃ……あれ、声がでる」
人魚姫はこの中でも声が出せることに驚く、しかしそんなこと気にしてる余裕はなく、考える。
「どうしよう、このままだとみんな……ジャックさんはもう気絶してるし、他のみんなもこのままだと」
「さぁどうする人魚姫、このまま俺の嫁になるかな」
「……!」
人魚姫は、近くに立っている、ナイトメアに突然噛みついた。
(──姫)
つうは片目を開いて、人魚姫を見る、それは人魚姫にナイトメアが吸収されていき、人魚姫の姿が変わっていく、それは先ほどのナイトメアと同じような姿になり、鳥籠を大きさに耐えきれず壊れる。
(これは──まるでぼくのときと同じ)
そして、ナイトメアの身体が砕けていき、下半身が魚のような尾になり、水色のドレス、そして三又の槍を持った人魚姫が立っていた。
「はぁ……はぁ……いきます!」
人魚姫は高速で水の中を移動する。
(水が入ってきて2分、後1分で浦島さんを倒さなくてはいけない……迷ってる余裕はない、だから!」
人魚姫は槍を構える、まわりの水が渦を巻き、螺旋を描く。
「……こい!」
浦島太郎も、水の拳をつくる。
「──はぁぁぁぁ!」
「おらぁぁぁ!」
水の螺旋と拳がぶつかる、その時、二人はつう達がくる前のことを思い出す。
○
「……ごめんなさい、私はあなたのお嫁さんにはなれないわ」
「──あぁ、やっぱりそうだよね、うん」
「以外と簡単に折れるんですね」
二人のその様子は、とても安らかで、これから争いが起きるとは思えないものだった。
「まぁね、だけど……酒呑童子の命令でね、人魚姫を餌にここに誘い込んで血式少女達を殺せと命令だ」
「言ってしまうんでね」
「まぁね……これは秘密にしてほしいんだけど、人魚姫、あなたが俺を殺してほしい」
「──なぜですか!、別に殺さずともローマさんみたいに仲間になれば」
「それはできない、俺は義理堅くてね、酒呑童子に救われているんだ、裏切ることはできない、だから……もし俺を終わらせる相手は、人魚姫、あなたであってほしい」
人魚姫は哀しそうに、涙を流す浦島太郎を見ていた。
「──浦島さん」
「少し話をしよう、俺にも血式リビドーに似たものがあってね、それが乙姫、そのような存在の女の人と出会いたいということが子供の頃からあったんだ」
「それが……私」
「そう、人魚姫、あなたが、俺が求めていた人なんだ、最初こそ老人に変装して血式少女に接触することが目的だった、よぼよぼの老人のことなんて解放地区にいた人からは冷たくされていたな……そんなときに人魚姫、あなたと出会った、今までより酒呑童子より優しく、真摯になって俺を助けてくれた……だから、俺を殺せる術をあなたに与えたい」
「殺す術?」
「こい」
浦島太郎がそう言うと、前にマチが倒した魚の尾が頭に生えたナイトメアが現れる。
「これは……」
「人魚姫の童話のナイトメア、これに噛みつけば、あなたらの言うナイトメアに近くに、メルヘンスケルターになれる」
「危険はないんですか」
「精神があるやつなら危険かもな、だがこいつには心がない、そう造られたからな」
「そう造られたって……」
「核さえ残ってれば生まれるからな、だがこれには本体がない、言ってしまうとハリボテかな」
確かに、このナイトメアからは危険な気配はなく、灰色の闇もない、ただそこに立っている感じだ。
「……もし、覚悟ができたら、殺ってほしい、このことは……俺達だけの秘密だ」
「──はい、わかり、ました」
○
「──ここは、いかんな、俺気絶してたのか」
浦島太郎は地面に仰向けになって、目を覚ます、水は既になく、まわりには血式少女達が囲んでいる。
「……どうした、殺そうとした相手だぞ、もっと敵意を向けてこいよ」
「できないよ、僕達が勝ったんだ、それに……」
「──あぁ、そうだな、こんな身体ではそれも無理か」
ジャックのその言葉から、浦島太郎は下半身の感覚がないことに気づく、顔を少しあげると、あるはずの足がない。これだけ大きな損壊では、再生力も間に合わない、時期に死んでいくだろう。
「それに、もう聞いてしまったよ、浦島さん」
つうもまた、悲しげに浦島太郎を見つめている。
「言ってしまったかぁ、……そっか、まぁ良いさ、もう俺も手遅れだし」
「浦島太郎、お前は本当忠義があるやつだよ、私と違って」
「ローザ、お前の決めた道だ、それをどうこう言う気にはならんよ」
「……バカなやつだ」
「酷いな──おっと」
浦島太郎の身体が砕け始めた、あと数秒で死ぬと、浦島太郎は直感する。
「……最後に、人魚姫」
「はい……」
人魚姫は涙を流しながら、浦島太郎の手をとる。
「こんなことつうの目の前で言うのもなんだけど、額にキスしてくれないか、嫌ではないなら」
「はい……」
人魚姫は浦島太郎の額にキスをする、それにつうは何も言わず、みつめている。
「あはは、最後が乙姫のキスで終われるなんて、俺は幸せな最後なんだろうな、童話よりも、本当に…」
「浦島さん」
「そう哀しそうにしないでくれ、どうせならくしゃくしゃでも笑顔が好ましい」
人魚姫は、それを聞いて、涙でひどいが笑顔を向ける。
「あぁ、いいね……そうだ、どうせ死ぬなら俺を倒した報酬を、人魚姫、耳を、もう声出すのもきついんだ」
人魚姫は耳を浦島太郎の口に近づける。
「薄暮にお前達の敵がいる、そして──」
「……本当ですか」
「嘘は言ってない──そして、最後に」
それだけ言うと、完全に浦島太郎の身体が消滅した。
『──ありがとう、俺をここまで愛してくれて』
そのような声が、人魚姫にだけ聞こえたような気がした。