第1回
元街道エリア、そこはもとは人で賑わい、歓声が行き交っていたが、謎の生きた監獄、通称ジェイルによって侵食され、今は人ではなく、ジェイルの怪物 メルヒェンが行き交い、人の歓声は拷問による悲鳴に変わっている。そんな場所に3人の少女がそのメルヒェンに倒しながら奥に進んでいる、顔色一つ変えずに、本来なら簡単に勝てる相手ではないのに。
彼女達は血式少女隊、人を越えた身体能力を持ち、如何なるメルヒェンも殺していく特別な存在。
「はぁ……くそ暇なんだが」
猫背でため息を吐いているのはマチ、血式少女隊筆頭である、炎のように真っ赤なポニーテールを揺らし、背中には二本の身長ほどあるマッチを装備している。
「マチ、あんたは対ナイトメアの切り札なの、メルヒェン程度に労力は割けないわ、なに、この赤ずきんに任せておきなさい!」
大きな黒い本体にピンクの刃の大きなハサミを振るいメルヒェンを倒しながら喋っているのは赤ずきん、マチと同じ20歳ではあるが、マチよりも長く黎明、血式少女が所属する組織にいるため、血式少女隊の隊長のような存在である、フードを被り、猪突猛進が目立つが、慎重な一面も持つ。
「そうですわね、この程度ならわたくし1人でもなんとかなりそうですわ、マチ姉はゆっくりとしていてくださいまし、これでもわたくし強くなっておりますわ」
左右非対称のヒールなような形の具足でメルヒェンを蹴り殺しているのはシンデレラ、マチとは反対の青い長い髪を耳の上辺りを結んでおり、しっかりしてるように見えるが、迷ったり掃除ができるなど、見た目とは真逆の一面を持つ。
「それもそうか、獅子は兎狩るのも全力って言うし……あ、兎来た」
目の前に兎のメルヒェンが現れる、それは消えたと思うほどの速さでマチに近づいていく。
「あ?」
「ギギ!?」
軽くマチが睨むと、兎は身震いをして急旋回して逃げていく。
「ついにメルヒェンにも恐れられちゃうかー」
「マチ的には良いぞ、雑魚をいちいち相手する必要なくなるし」
「お二人とも、そろそろ目的の場所ですわよ」
シンデレラの言うとおり、ここが独房エリアとも言われる所以の独房が見えてくる。そこにはたくさんの人達が囚われており、マチ達を見ると檻を揺らして助けをこう声が響き渡る。
「おい!、そこの人!、どうか、どうか俺を助けてくれ!」
「まずは私がさきよ!」
「いやワシだ!」
「うーん、五月蝿いな、赤ずきん シンデレラ、スプレー用意して」
「わかったわ」
「わかりましたわ、ではどの独房からいきますの?」
「そうだな……時間かけすぎても危険だし、別れて」
「「ダメ」」
シンデレラと赤ずきんの声が重なった、二人は前にマチが危険になったことがあり、あまり1人にはしたくないのだ。
「ま、だろうな、じゃあ時間かけてやってこうか、みなさんとりあえずこれかけてから助けるので、もうしばらく待ってろ」
そのまま数十分、スプレーの血を人達にかけていく作業になった。
そんな時、マチは一つの牢に目が止まる。
「おっと、懐かしい顔がいるな」
そこには濃い青色の髪の少年とピンク色のボブカットの両サイドに黒いリボンを付けた少女がいた。
「ん?……あんた、マチか?」
「覚えてくれて助かるよ、マモルにヒカリちゃん」
「……改めて言うが、あの時、砂糖をわけてくれて助かったよ、マッチを貰うことが条件ってのがよくわからんかったがな」
マチは基本的に人の顔と名前は忘れない、マチが18の頃にシンデレラと赤ずきんを連れていろんな場所に行ってた時、たまたま二人と遭遇し、甘いものが欲しいと言うからマチはここでは貴重な砂糖をわけた、甘いものは血式少女にとってメルヒェンの血液があるから問題ないのだ。
「すまんな、まぁマチには無用な産物とはいえマッチ渡すと心が楽になるんだ。さて、こんな雑談するために来たわけではないんだがな、ヒカリちゃん、我慢してくれ」
マチは手に持っていたメルヒェンの血を濃縮したスプレーをかける。
「おい!、ヒカリに何をかけた!」
「メルヒェンの血だよ、同族探し中なんだ、さてヒカリちゃんは違ったわけだけど、本来なら目がピンク色になると思うんだが」
「目がピンク色?、それなら隣のやつがそうじゃないか?」
「──なるほど、情報感謝だ、後で出してやるからそこで待ってろ」
「最後に一つ、ここの看守長みたいな少女には気をつけろ。すぐにわかるとは思うがお前でも勝てるかどうか」
「ふむ、まぁ本当にやばかったら逃げるさ、」
そう言ってマチは隣の独房を見る、そこには水色の髪の少年と黒いボブカットの少女が身を寄せあっている、少女のほうはピンク色の目になっており、少年の腕には血が出ている
。
「おー、いたいた血式少女、アリスちゃんでいいかな」
「あ、あなた何者!?、私は確かにアリスだけど」
「急になんなんだ!、あんたは誰だ!」
「これは名乗り遅れた、マチは」
「え!?、血式少女!」
赤ずきんはマチを押し退けて、アリスを見る、ピンク色になってるのを確認するとハサミで檻を切断する。そしてそのままアリスを抱えて行ってしまう。
「ちょ!、あなたもなに!?、ジャック!──」
「──もう見えない、さてジャックくんだったか、いや本当にマチの連れが迷惑をかける、マチはマチだ」
「いったいなんなんですか……、アリスは何故連れていかれたんだ」
「とりあえず無事だよ、そういえば腕に血が出ているが怪我では無さそうだがどうしてだ?」
「あぁ、これ、僕の血をアリスが舐めると落ち着くんです」
(ふむ、落ち着くか……これは研究者ではないが面白いな)
「ジャックくん、お前も連れていくぞ、しっかり掴まっていてくれ」
「え?、うわぁぁぁ!?」
マチはジャックをお姫様抱っこすると、地面が割れるほどの速力で駆けていく、それに追随してシンデレラも走っていく。
「おや、その子はどうしてマチ姉が運んでいるんですの?」
「あぁ、面白いやつだからな、それにアリスちゃんが叫んでいたんだ、大事な子だと思ってね、お、見えてきたな」
出口付近までくると、そこには赤ずきんがアリスと言い争っているのが見える。
「だから!、早くジャックのところに戻して!、ジャックがいないと私は……」
「あぁもー、わかったよ……て、その子来たみたいだよ」
「ジャック!」
「アリス!」
二人は出会うと、ジャックはマチが降ろすと、すぐにアリスに駆け寄り、抱きついた。
「……はぁ、赤ずきん、あまり先走るなと何回言えばいいんだ?」
「ご、ごめんねマチ、あたしつい嬉しくてまわりが見えなくなっちゃった」
「まったく、赤ずきんさんは本当にダメですわね」
「うう……」
赤ずきんがしょんぼりしてると、先ほどの独房エリアの方角から足音が聞こえてくる。
「ダメじゃないか、大切な囚人が逃げては」
「……赤ずきん、戦闘準備だ」
「うん、わかってる、アリス、いきなりで悪いけど、これ持って」
赤ずきんは大きな剣を渡す、それをアリスは軽々と持った。
「わ、私剣なんて持ったことないわよ!」
「大丈夫、ちゃんと戦えるから、シンデレラ」
「わかってますわ、ジャックくんはわたくしが護ります」
「……来るぞ」
先ほどの声の主が、数十のLサイズメルヒェンつれて現れる、姿は人間そのものだ、しかし両手は化け物のような大きな腕、それはピンク色に濡れ、頭部からは2本の角が出ている。
「……マジかよ」
そして最もマチ達が驚いたのは、その目がピンク色になっていたことだった。
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