「あんた……その目、血式少女なの!?」
赤ずきんの問いを、怪腕の少女は赤ずきんをじっくりと見たあと、首を縦に振り、笑顔で質問に答える。
「うーん、我輩は血式少女という名称は似合わんな、なんせ……我輩達はジャバウォック、ナイトメアの上位に位置する、いわゆる看守長だな」
「ジャバウォック……?」
赤ずきんの疑問にマチが答える。
「あぁ、アリスの童話に出てくる怪物の名前か、それで?、看守長様はマチ達を捕らえるためにきたのかな」
「……うむ、一番強いのはオヌシか、気配でわかるぞ、とりあえず──センテヒッショウ!」
怪腕の少女は大きく跳び、マチにその両手の怪腕を握りしめて、振り下ろす。
「いきなりだなおい」
マチは2本のマッチでそれを防ぐが床が耐えきれず、崩れ落ちる、そのまま怪腕の少女とマチは下に落ちていく。
「シンデレラ!赤ずきん!、ジャックとアリスを逃がすことだけ考えろ!」
それだけ言うとマチは奥深くに落ちていき、見えなくなった。
「「
そのまま落ちながらマチと怪腕の少女は戦っていた、しばらくして地面に降りると、二人は退いて、息を整える。
「ふぅ……なんなんだお前は」
「ふむ、そうだな、我輩自身の名前は言ってなかったのであったな、我輩は茨木童子!、酒呑童子の右腕なり!」
「ふむ、茨木童子に酒呑童子か、童話は羅城門の鬼、酒呑童子はそのまま酒呑童子の血式少──いやジャバウォックだったな」
「あぁ、言ってなかったが我輩は酒呑様にここを任されている身、そして一番に闘争!、ここにおれば血式少女に釣られて来ると思ったまでよ」
「そいつはまた、あと」
「まぁ待て、我輩は話すだけというのは好かん、思う存分、チワキニクオドル闘争!、始めようか!」
そう言うと茨木童子は地を蹴り、マチに接近して、その怪腕で殴る、それをマチはマッチで受け止めた。
「戦闘狂か、面倒なやつだな、本当に」
場面は変わり、シンデレラと赤ずきんは先ほど空いた穴を覗いていた、底が見えないほど深く、もうマチの声は聞こえてこない、このまま帰ってこないのでは、そんな不安感がシンデレラと赤ずきんにはあった。
「マチ、また1人で、いや今回は、いや前も相手が悪いけど」
「ど、どうしましょう赤ずきんさん」
「決まってるわ、あたしはマチのほうに行く、シンデレラはジャックとアリスを連れて──いや、ついでにここの人達も脱出させて逃げて」
「な!?、わたくしも行きますわ!」
「ジャックは戦えないし、アリスも戦闘は初心者、今二人を任せられるのはあなただけなの、お願い」
それはシンデレラへの信頼してのことだが、シンデレラは自分では足手纏いになる、あの怪腕の少女を見たときそう思えた、何時ものネガティブ思考ではあるが、事実でもあることをシンデレラは理解している。
「……わかり」
「それなら僕達も手伝うよ、赤ずきん シンデレラ」
赤ずきんが出口のほうに振り返ると、そこにはつうと人魚姫が立っていた
「あんた達!」
「わたし達、フユさんの命令で来たわけだけど、結構大変そうですね、赤ずきんさんは安心して行ってください、ここはわたし達3人でなんとかします」
「──ありがとう!人魚姫 つう」
人魚姫の言葉を聞いて安心して、笑顔でお礼をいった。
「貸しだからね、赤ずきん」
「えぇ、わかってるわ、それじゃあまた後で!」
そう言って赤ずきんは穴の中に飛び込んだ、見えなくなった辺りで、つうはジャックを見る。
「あ……あなたは──っ!?」
ジャックはつうを見ると頭をおさえて苦しみだす、それを見たアリスは急いで駆け寄る。
「ジャック!?」
「ぐぅぅぅぅ!……つ…う?」
数秒頭をおさえていたがそれが治まるとジャックはつうの名を呼んだ。
「──そうか、
つうは悲しそうな顔と声でジャックを見ながらそう小声でつぶやいた、すぐに顔を戻し、アリスの顔を見合わせる
「とりあえず、メルヒェンを倒さないと、アリス、手伝ってくれるかい」
「あぁ、それでしたら先ほどわたくしがもうほとんど倒してしまいましてよ」
つうがシンデレラのほうを向くと、そこにはメルヒェンの半数を倒しきっているシンデレラの姿があった、他のメルヒェン達は恐れて、何体か逃げ出している。
「ははは、こっちのシンデレラは本当に強いね」
「こっち?、それはどういうことですのジャックくん」
「いや……なんでもない、アリス、僕達は囚われている人達を解放しにいこう」
「わ、わかったわ」
「ぼくらも行こう、姫、シンデレラ、ここは任せていいんだね」
「この程度のメルヒェンなら楽勝ですわ、行って下さいまし」
「ありがとう、シンデレラ」
ジャックはそう言って独房の奥に駆けだしていった。
「おほほ、よくてよジャックくん……そういえばわたくしあなたにお名前言ったかし──」
既にジャック達は奥に進んで遠くにいた、ため息を漏らし、シンデレラはメルヒェンの相手に専念する。
○
「ふむふむ……なるほどなるほど、その姿はメルヒェンの、ジェイルの力を濃く具現化した姿と、いわゆる強化形態か」
「ははは!、その通り!、それにしても考えながらとは本当にヨユウシャクシャクで恐い女だ、実力の半分も出しておらんのに」
「それを言うならお前だって話ながら戦ってるな、全力では無いんだろ」
二人は一進一退の高いレベルの攻防を繰り広げていた、そこに一人の少女が姿を見せる。
「こ、こりゃー!、おぬしたち何をしておるのかー!」
少女は褐色の肌、長い銀髪に黒いマントと大きなメルヒェンの死骸から作ったであろう帽子を被っており、自分の縄張りを荒らされて怒っている様子だ。
「あれ、お前の仲間か?、茨木」
「残念ながら違うな、マチ」
「ぬぬぬ、おにゅしたち!、出ていかぬと言うなら!」
少女が手から光線を放とうとした瞬間、少女の顔の横をマッチが掠める。
「……少し黙っていてくれないか」
「ひえ──わ、わかったぞ」
少女は腰が抜け、地面に座り込む。
「はぁ……やはりマッチでは決定打にならんな、さてどうするか」
「はぁぁぁ!」
マチが決めあぐれていると、上から赤ずきんの声が聞こえ、ハサミが茨木童子に飛んでくる。
「な、なんだ!?」
咄嗟のことで茨木童子はそれを避けたが避けた先にマチがおり、そのハサミをマチは持ち、思いっきり横に振るう、ハサミは茨木童子の左腕を切り飛ばし、鮮血がマチにかかる、それをマチは舐めるがあまり美味しくないらしく吐き捨てた。
「別にうまくはないのな、やはり血式少女と同種か」
「ははは──やるな、やるではないか貴様ら」
茨木童子は切られた左腕を押さえながら、後退する、そこに赤ずきんが降りてくる、赤ずきんはマチのほうに駆け寄ると、無事なことを確認すると茨木童子のほうに向く。
「はぁ……よかった、無事みたいね、さて、そこにいるやつ、どうする」
「茨木童子っていうらしいな、さてどうするか、メルヒェン以外を殺すのはやりたくないが」
「──ユダンタイテキであったな、ふふふ──腕はそちらにやろうではないか!、7日後、必ず取りに行くから待っていろ、ははは!」
茨木童子は地面を右腕だけで壊し、砂ぼこりを起こす、はれた頃には茨木童子の姿はなく、切られた左腕だけが残された。
「逃げたか、一応拾っておくか、ん?」
切られた左腕を拾おうとすると、怪腕だった腕は普通の腕に変わる、いや戻っていった。
「ふむ、戻せるわけか、これは来られてもすぐにわからないかもな」
「マチ、何か聞いたのかしら」
「まぁいろいろとね、戦いながら……さて、そこの少女をどうするかだが」
マチは再び少女のほうに向くと、大きく足を開いて、腕組んで偉そうにしながら大きく口を開く。
「ワレはハーメルン!、魔王ハーメルンでありゅぞ…であるぞ!」
「ハーメルン、うん?──まさかハーメルンの笛吹
童話と性別が違うことに驚く、しかし茨木童子も元が男であることからそういうものだと理解する。
「ワレは女であるぞ、お嬢」
「いや、わかってるよ──お嬢?」
「いかにも!、凛々しい立ち姿!、無敵の強さ!、ワレはおぬしをお嬢と呼ぶと決めたぞ!」
「はぁ……そう、まぁいいかな、とりあえずさっさとここからでるか」
「おぉ、出口か、それならワレが知って」
「いや、落ちてきた穴があるからそっちから行く、赤ずきん、ハーメルン」
マチは茨木童子の腕を懐にしまい、右にハーメルン、赤ずきんを左に米を抱えるように抱える。
「ま、まさかお嬢──」
「あはは、やっぱりかー」
「舌噛むからしゃべるなよ、行くぞ」
マチは出せる力を全力で込めて落ちてきた穴のほうに跳躍した。
「にょわぁぁぁぁぁ!!」