機動戦士ガンダムZZ 第31.5話 「ピラミッドの謎」 作:J・バウアー
Ⅰ
青の部隊との交戦を切りぬけたガンダムチームは、アーガマとの合流地点であるメルリル湖を目指していた。
「ねぇジュドー、あの大きな三角形、な~に?」
メガライダーにまたがるZZのコクピットの中でジュドーの膝にちょこんと座っているエルピー・プルが、怪訝そうな顔をした。
「あれは…なんだっけな?」
学校で歴史の授業をまともに受けたことがない彼は、他の仲間に助けを求めた。
「ビーチャ、前方の構造物は何だ?」
「そんなの、俺に聞くな!」
ZZの後ろにまたがる百式に搭乗しているビーチャは、学校でも居眠り王の異名を持つくらいだ。明らかにジュドーは人選を誤った。そこに、Zをウェイブライダーに変形させ、上空を飛行しているルー・ルカが、通信回線に割って入ってきた。
「あんたたち、ピラミッドも知らないの?」
「ピラミッドって?」
ジュドーは素朴な疑問を投げかけた。
「ずーっと大昔、この地域を治めていたファラオ、つまりは王様なんだけど、その人たちの為に作られたお墓よ」
「えらい大きな墓なんだなぁ」
「あのお墓の中には、死んだファラオに捧げるために、たくさんの宝物が埋められているらしいよ」
「お宝だって!?」
目を輝かせたのはビーチャだ。やっぱり金目のものに目がないらしい。その彼の期待は、次のルーのセリフで粉みじんにされた。
「残念ね。すでにたくさんの泥棒さんに盗まれて、ほとんど無くなってしまってるわ。盗まれなかったお宝は、全部博物館に納められているから、もう中にはなにもないはずよ」
「なんだ、それならそうと言えよ」
「でも、ピラミッドの中を見ることはできるはずよ。ねぇジュドー、この辺で休憩にして、ピラミッドの中でも見てみない?」
「そうだなぁ、エルたちはどう思う?」
ジュドーは通信回線をメガライダーとMkⅡにつなげ、モンドとエルにピラミッドのことを話した。
「いいんじゃない。何だか疲れてきたし、探検気分を味わえそうだから、おもしろそうじゃん。なあ、イーノ」
「う、うん。そうだね…」
「ジュドーがいいって言うのなら、私は別にかまわないよ」
というわけで、一行はピラミッドの中を見学することになった。
「ねぇジュドー、」
「ん、なんだ?」
「お風呂あるかなぁ」
プルの屈託のない笑顔を見て一瞬ジュドーはひるんだが、何とか表情に出さずに済んだ。
「しばらくお風呂は禁止!」
「ひど~い。ジュドーのバカぁ」
しばらくジュドーは無言だった。
Ⅱ
モビルスーツに乗ったままピラミッドを見に行くわけにはいかない。そこで、近郊にモビルスーツを隠し、見張りを立てることにした。
「さて、誰にする?」
ジュドーはざっと皆の顔を眺めた。ルーから未発見の宝があるかもしれないという話を聞いたビーチャとモンド、そしてエルは行く気まんまんだ。プルは相変わらず、お風呂に入りたいとぶつぶつ言っている。そしてイーノは…
「ジュドー、僕は残るよ」
いまいち気乗りしていないイーノが、見張り役を名乗り出てくれた。すんなりと決まったので、ジュドーはほっとしてイーノの肩を軽く二度たたいた。
「見張りをやってくれるのか、イーノ。助かる」
「それじゃ、行こうぜ。お宝が俺たちを呼んでいる」
モンドの掛け声で、イーノを除いた全員が出発した。
しばらく歩いていると、それほど大きくないピラミッドが見えてきた。手前に掘建て小屋があり、そのそばにはラクダに乗っている砂漠の民がいる。彼はプラカードを持っていた。
「なになに、『ようこそセルケト王のピラミッドへ!ガイドを承ります』だって。どうする」
「宝捜しにきたのに、ガイドを雇ってどうするんだ」
ジュドーの言葉にビーチャが反論した。しかしエルがたしなめる。
「だ~か~ら、さっきルーが言ってたでしょ、お宝なんか残ってやしないって!あるかどうかも分からないお宝を捜しまわった挙句、ピラミッドの中で迷子になったらどうすんの」
「でもよう、もし宝が見つかったら、ガイドにとられてしまうかもしれないぜ」
「お黙り、ビーチャ!命には替えられないでしょ」
「エルの言う通りだ。ガイドさんに道案内してもらおう」
そういうとジュドーはガイドさんたちのいる方へと歩き出した。そのあとをルーとプルが追う。
「おじさん。ピラミッドへ案内してよ」
ジュドーの声にガイドは反応しない。そっぽを向いたままの態度にルーはカチンときた。
「ちょっと、あんたたちガイドなんでしょ。何とか言ったらどうなの?」
「はい、セルケト王のピラミッドでよろしいでしょうか?」
ジュドーのときとは打って変わって、ガイドは人懐っこい態度を示す。態度があまりに急変したものだから、ルーは目をパチクリとさせた。
「そ、そうよ。6人だけど大丈夫?」
「ヤローのガイドはしたくないけど、かわいい女の子たちがいるから引きうけるよ」
「あ、ありがと、ホホホ」
ガイドのおじさんがイヤらしい目つきをしているから、ルーはたじろいでしまった。そこで代わりにジュドーが交渉に入った。
「おじさん、いくら払えばいいの?」
あいかわらずジュドーを無視するガイド。あきれて肩をすくめたジュドーの代わりに今度はプルが話を切り出した。
「ねぇ、このあたりにお風呂な~い~?」
「やめろプル!ここで風呂の話をするんじゃない!」
あわててジュドーが制止する。ガイドの表情が危なくなったからだ。
「とってもいい豪華なお風呂があるよ。何だったらおじさんが背中を流してあげようか」
さすがにプルもガイドの態度に危険を感じたようだ。ジュドーの背中に隠れてしまった。
仕方ないので、ルーが再び交渉に入った。
「で、ガイドさん。いくら払えばいいの?」
「お代はいらないよ。わしら政府に雇われているから」
「そ、そう。それじゃお願いね」
そういえば、サハラ砂漠の西にピラミッドなんてあったかしらと、ルーはふと思ったが、特に気にすることなく、ガイドやみんなとともにセルケト王のピラミッドへと向かった。
Ⅲ
ジュドーたちはピラミッドの奥へと進んでいた。通路は狭く、何とか二人並んで歩けるかどうか。両側の壁はどこまで続くのかと思わせるくらい高い。
「ねえ、この石、モビルスーツで積んだの?」
プルは壁に手をあてて、ジュドーを見やった。だが答えたのはルーだった。
「これを作ったのは大昔だから、モビルスーツなんてないの。人の手で積んだのよ」
「うっそ~。ぜんぶ?」
「ぜ~んぶそうよ」
「すっご~い!」
やがて下へと続く階段に出くわした。どこまで続くか分からないくらい長い。
「だいぶ下まで続いているみたいだな…」
つぶやくジュドーの左脇からモンドが顔を出し、階段の下を見やった。
「なんだかお宝がありそうな雰囲気だね」
「おいモンド、早くいこうぜ!」
ガイドを押しのけビーチャとモンドは階段を駆け足で降りていった。
「二人ともまちなさ~い!」
「ちょっとエル、先に行かないでよ」
エルとルーがあとを追う。ジュドーも追いかけようとしたが、誰かに腕をつかまれた。プルだ。
「なんだかきもちわるい。ぞくぞくする…」
「どうした。幽霊でも見たか」
「そんなんじゃない。なんだか…変なの…」
「どうかしたかい、おじょうちゃん?」
ガイドがプルの顔をまじまじと見つめた。あわてて飛びのくプル。
「い、いっや~!は、はやく行こ、ジュドー」
「ん、ああ」
プルに腕を引っ張られ、ジュドーは階段を降りていった。
しばらく降りていくと階段は終わり、通路となっていた。その先には大きな扉が見える。
「遅いじゃないかジュドー!この扉重たいんだ。はやくこっちに来て力を貸してくれ」
ビーチャとモンドが扉にとりついている。開かないらしい。エルとルーは観戦モード。最後の男手であるジュドーはビーチャたちとともに扉を押し始めた。
「ぬおおおぉぉぉぉ!」
「がんばれジュドー」
「もう一息よ、がんばってジュドー」
「ジュドー、がんばれ、ジュドー、がんばれ!」
エルとルーとプルはひたすら応援。扉を押しながらビーチャはモンドの顔をうかがった。
「むわーたジュドーばっか。おれたちだってがんばってるんだから、すこしは応援してくれてもいいじゃねえか。なあモンド」
「まったくだ。おれたちのどこが悪いっていうんだよ」
「…顔か?」
「そんなこというなよ。おれ自信なくなってしまう」
「まさか、お前、自分の顔に自信持っていたってのか?」
「そうじゃないけど、だったらビーチャはどうなんだよ」
「そりゃ、俺は悪くないって思ってるぜ」
「お前、その自信過剰、グレミーそっくりだぜ」
「おいモンド、言っていいことと悪いことがあるんだぜ」
「お前ら、何ブツブツ言ってるの。しっかり押せよ」
ジュドーに注意されてビーチャとモンドは一斉にジュドーを睨みつけた。
「分かってるよ!!」
ゆっくりと扉が開いた。そしてそこには…
後編につづく