「ん……」
なんかすげえフワフワのベッドに寝かされていた俺は身を起こす。
あー頭痛い。俺は確か…レミリアとの闘いにあっさり負けて…それで…いや気絶させられたのか。あの一撃はマジでヤバかった。
「あら?起きたようね」
ガチャリと。扉を開けながら入ってきたのは青色の髪の幼女。少しニヤついているようにも見える。なんか腹立つな。
「ああ、起きたよ。療養場所の提供あんがとさん。それで?なんの御用で?」
「あら、露骨に態度が悪くなったわね?取り敢えず話をしに来たのよ。だからその微弱な殺気を消しなさい」
「へいへい。わかったよ。で?話を進めてくれ」
「ええ、そうね。私も暇な訳じゃないし。じゃあ端的に言うわ。
“合格”よ。貴方をこの紅魔館で雇うことにするわ」
「おいおい、随分と採用が早いな?まだ料理の味も掃除の腕も見てないのに?採用条件が甘すぎるんじゃないか?」
「うふふ、安心していいわよ。私は滅多なことじゃ人を雇ったりしないから。貴方はかなりの特例よ?て言うか、料理も掃除も別に困ってないの。だって咲夜が1人でもできるし、妖精メイドも沢山いるしね。貴方を雇ったのはそんなところじゃないの」
「へえ。是非聞いてみたいもんだね。その俺を雇った理由ってんのをさ?」
「簡単よ。私が貴方に求めているのは“強さ”ただそれだけ」
「……何故強さを求めるか聞いたら答えは返ってくるか?」
「ええ、返してあげるわ。簡単なことよ、
“私の家族の安全のため”ただそれだけよ」
「ッー!……家族の安全を思うんだったら妹を見捨てたりなんかはしないと思うんだが?」
「さっきも説明したと思うけれど、私がいくより貴方に任せた方がいい結果になる運命だったから私はフランの元へは行かなかった。
妹に傷をつけたくなかった。それだけでも家族の安全のために動いたと言えると思うけれど?」
コイツの言っている事は正論だ。自分が解決する方法は相手を傷つけることしか出来ないが、他人に傷つけずに解決する方法があるならば、その他人に任せる方が合理的なのはわかっている。わかっているのだが、コイツからはそんな思いを感じられない。家族ではあるけれど、まるでそこまで大事ではないようなコイツの言動がどうにも俺は気に食わない。
「そもそも貴方が何故そこまで拘るのかがわからないわ。なんとかなったんだからいいでしょう。結果的に誰も傷つく事はなかった。この結果だけでいいのよ」
「まあ確かにお前の言っている事は正しい。そこに疑う余地はない。だけれど、お前からは本当にフランが大事だという気が感じられない。
お前は俺がもしいなかったらフランを切り捨てて自分を守ったんじゃないか?」
「切り捨てる、ね。まあそうかもね。私はもし貴方がフランを止める運命が見えなかったら、私はフランを最悪の場合殺してでも止めていたわ」
「それで良く家族のためだとかー「だけど」
「貴方が言っていた事とは決定的な違いが一つある。それは、妹を切り捨ててでも守るのは自分じゃない。私に仕えてくれる従者やこの館に住んでいる友人。その沢山の私の“家族”を守るために私は妹を自分の手にかけたでしょうね」
「多くの家族を守るために一人の家族を捨ててもいいって言うのか?」
「そうよ。私は迷って沢山の大切なものを失うぐらいだったら、迷わず一つを切り捨ててでも沢山の方を選ぶ。私はそう考えているわ」
「それはただのお前のエゴだ。その一つを失って悲しむ人もいる。先にいかれる人の苦しさを知らないから言えることだ」
「ええ、そうよ。これはただの私のエゴ。沢山失いたくないという身勝手で周りのことよりも自分のことを考えたエゴよ。でもそう言っても貴方の誰一人として欠かさせない、という考えだってただのエゴでしょう?いや、貴方のはエゴとは言わないかもしれないわね。
誰も傷つくことのない平和で、幸せで、理想的なただの幻想。そんなものは捨てた方がいいわ。現実を見なさい?」
「んだと。結果的に今回は誰も傷つくことのなかったじゃねーか。幻想なんかじゃない、そんな理想的な結果は作れる!自分次第で!」
「貴方展開的な理想を騙るタイプね。確かに今回は理想的な結果になった。でもそれはたまたまに過ぎない。もし貴方が今日ではなく明日この館に来ていたら?もし私がすぐにフランを止めに行って彼女を切り捨てていたら?考え出せばキリがない。そんなくだらない幻想を見るのはやめなさい。この世の“平和”や“理想”には必ず犠牲や諦めは必要なものなのよ。というか、貴方今凄く矛盾したこと言っているのわかってる?」
「は?どこが矛盾しているって言うんだよ!?俺は正しいことを言っている筈だ!」
「はーー。貴方って随分ガキなのね。いい?貴方の言っている“全員を守って誰も傷つくことのない結果”は正直運要素が大きすぎるの。
そんな確証もない理想論で動くより、確実性を持って止めるのが一番いいの。今回で言えば家族のためを思うんだったら真っ先に妹を殺すなり傷つけて戦意を折るなりするのが一番いいわけ。だってそうでしょ?中途半端にどちらも助けようとするより、即決で切り捨てて助けた方が合理的だし、その躊躇によってさらに傷つく人が増えたら目も当てられないでしょ?今回だってそう。貴方みたいに傷をつけずに止める手段がないなら、直ぐに殺してでもフランを止めるのがフランの為にもなるのよ?」
「何が為になるってんだ。攻撃されてんのにそんなわけないだろ!」
「今回のフランの状態わかってる?自我を失った状態で暴れて続けて、危うく咲夜を殺しかけたのよ?だったら殺す前に殺してあげるのも愛でしょう」
「ふざけんー「この話はもう終わりにしましょう」
「貴方は取り敢えず此処で働いて貰うわ。と言っても、仕事はないけどね。フランの相手を主にしてくれると嬉しいわ。あと偶に私と弾幕ごっこをしましょう。それでいいわ」
は?なんだそのクソニートみたいな条件は。俺は前世でも趣味が家事ぐらいしかなかった上に、かなりの仕事好きだった。夏休みがバイト一色で埋まるレベルで働いてた。だから暇な潰し方なんてわからん。
その条件は絶対に阻止しなければ…
「待ってくれ。流石にその条件は俺が嫌だ。だから、俺を執事として雇ってくれ。いや、雇ってくれませんか?お嬢様」
「あら、貴方敬語そんな自然に仕えたのね。そう言われても、さっき言った通り仕事なんてないのよ?」
よし!執事路線なら働かせて貰える!そしてコイツは確か、早苗さんが俺を紹介してるときに一番興味を持った項目はー
「いや、私めはこれでも、家事はなんでも出来ると自負しております。それとお嬢様はプリンがお好きなのですよね?僭越ながら私は料理においては自信があり、お菓子作りも得意でして、必ずお気に召すプリンが作れるかと」
「へえ?かなり自信があるようだけれど、私はプリンにはうるさいわよ?」
「ええ、絶対を約束致します。ですから、私を執事として雇って頂けませんか?」
「いいわ!そこまで言うならやってみなさい!貴方を執事として雇いましょう!」
やったぜ。
てれてれてってってってー!
輝は職を手に入れた!社畜レベルが一上がった!
「そうと決まったら咲夜に話を通さなくちゃね。貴方は此処で待っていなさい。あ、今日から此処が貴方の部屋だから。後で咲夜に館を案内してもらいなさい」
レミリアは扉を開けてこの部屋を出ていく。コイツとは価値観とかは合わなそうだが、雇い主だ。そんな態度を出したらダメだよな。
するとレミリアは振り返って俺に告げる
「あ、忘れてた。フランを助けてくれてありがとう。姉として心から感謝してるわ。それに、あの子のあんな笑顔久しぶりに見たわ。これからもフランをよろしくね。偶に構ってあげてよね」
その瞳には、慈愛と悲壮が宿っていた。
1週間以上投稿開いちまったぜヒャッハァァァァァ!!!!
マジすんませんした。
マジで筆が進まなくて…次回は頑張って早めに更新するんで許してください。
今回はキーワードと伏線ぶち込んだ回。だから輝視点オンリー。
お嬢様の本格的なカリスマブレイクはもう少し待ってて♡
いつも通り、高評価、お気に入り登録、感想くれると嬉しいです。
では、また次話で。