Nの意志   作:徒し雅

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セイン視点を三人称に修正しました。
更に修正を加えました。


吸血姫の目覚めと現状

 この日、「月照らす城(ムーンライトキャッスル)」通称、空中宮殿は待ちに待った主の目覚めに震撼していた。

 

 謁見の間では真祖の吸血鬼127人が膝を折り、頭を下げ主君を待っていた。

 

 カツン、カツン……。

 

 ヒールを鳴らしながら美しい少女が現れる。

 少女は透き通る様な銀の髪を腰まで流し、瞳は妖しく輝くピジョットブラッド、小さな形のよい鼻、プリッとしたピンクの唇からは時折尖った犬歯が見え隠れする。

 肌は病的にまで白く、その存在を儚げに演出している。

 まだ幼さを残す顔になんとも言えない妖艶さが混ざり合う

 体は華奢で胸は小さくスレンダーだがどこか(あで)やかに見える。

 この、他に類を見ないほどの絶世の美少女こそが彼等の主にして吸血鬼の頂点の一人。

 今は無き古の帝国の姫にして、神祖の吸血鬼。

 セイン・ナイト・シルヴァリオ・ゴスペル。

 

「みな、ご苦労、(おもて)を上げろ」

 

 綺麗で心地の良い、しかし自然と(こうべ)を垂れたくなる様なそんな声が響く。

 

「おはよう、皆。待たせたな。この通り十全とはいかんが回復した。さて、我が夜王家と竜王家は転生者なる者達によって滅亡した。恐らく、夜王家は私達の他に生き残りもなく王族も私だけになってしまった」

 

 セインの顔が一瞬だけくもる。が、直ぐに余裕のある表情に戻る。

 

「これからは私が夜王家を継ぎ、ナイト帝国の皇帝を名乗る!!まずは奴らに復讐だ!そのために、これからも私に付いてきてくれるか?」

 

 セインの問いに一人の女性が答える。

 

「我ら一同、姫様と共に生き、共に死ぬことを誓った身。いかなることがあろうともお供いたします!」

 

 そして全員が「お供いたします」と続く。

 

 セインはフッと微笑んで「そうか…」と呟く。

 

「なら、改めて我が配下として任命しよう。まずは皇帝直属の親衛隊『満月』に隊長をウーノとし、以下デュオ、トリア、クアトル、クイン」

 

 先程答えた女性、ウーノを筆頭に、呼ばれた者から立ち上がり前に出て、再び膝を折る。

 

「続いて各部隊長『上弦』にルビー、サファイア、トパーズ、エメラルド、ダイヤ」

 

『上弦』はそれぞれ部下を持つ隊長格の総称で、親衛隊『満月』不在時には『上弦』が親衛隊として機能する。

 

「諜報部隊『新月』隊長ブライン」

 

「他65名を我が騎士として任命する。存分に働け」

 

 それに総勢76名の騎士が応える。

 

『全てはセイン様のために!』

 

 セインはそれを見て満足そうに頷く。

 

「セバス!」

「ハッ」

「今現在、城はどんな感じだ」

「はい、全て滞りなく動いております」

「そうか、よくやった。ならば、ブライン!『新月』で情報を集めて来い。手段は選べよ。行け!」

「御意」

 

諜報部隊『新月』が影に沈んでいき消える。

 

「残ったものは持ち場に戻り己の仕事を全うせよ、セバスは残れ」

 

セインは各々が持ち場に戻って行くのを見届け傍にいるセバスを見上げる。

 

「セバス、私はどれくらい寝ていたのだろうか」

 

 執事服を着た白髪の初老の男がセインの横に立ち、頭を垂れる。

 

「姫様、お久しゅうございます。私共が起きてから10年程でございます」

「そうか、外はどれくらい時が過ぎたのだろうか」

「少なくとも500年は経っているかと」

「まぁ私も無茶をしたものだ。と、なると奴ら転生者は人間だからもうこの世にはおらんのか……。持つ力は能力者よりも強力だったがな」

「はい、しかし、姫様がお眠りになられた後。何やら組織を作っていたようです。そして、恐らくはそこにブラッドアイとドラゴンアイがあるかと」

「そうか、やはり奪われていたか。まぁあれは王家の血筋にしか使えんし、使い方も分かるものはもう私達しかいまい。ドラグーンの奴等は生きていないようだしな。力を感じん」

「そうですな。しかし、地上には子孫がいるようです」

「ほう?ちょっと待て………。なるほど、確かに微弱ながら感じるな。ふっ、報告が楽しみだ」

「ところで、姫様。少しリハビリをされてはいかがです」

「そうだな、セバス付き合え」

「お任せ下さい」

 

 

 

 3週間後、『新月』から報告書が届いた。

 

「セバス、どうだ?」

「これは……。姫様、700年程の月日が過ぎておりました」

「700年……。どうやらかなりの寝坊をしたようだ」

 

セインは苦笑しながら「下界の情勢は?」と聞く。

 

「どうやら『世界政府』なるものが海軍を率いて世界を治めてるようです」

 

 セインは目で続きを促す。

 

「『世界政府』は170ヶ国の国が加盟している組織で、創設者は転生者共のようです。………。どうやら我々がいなくなってから海は荒れているようですね。海賊がウロウロしており、それを海軍が捕まえているようです」

「私達のことは?」

「誰も知らないようですな。しかし、歴史の本文(ポーネグリフ)とやらがあると書いてあります」

「ドラグーンの子孫については」

「どうやら子孫達はドラグーンについては知らないようですな。その代わり家名にDが引き継がれているようです」

「なら、協力を求めることはできんな。地道に支配を広げるか、『世界政府』の本部はどこだ?」

「レッドラインの魚人島側の上にマリージョアとい都市があるようで、そこが本部だそうです。ちなみに、天竜人(てんりゅうびと)という者たちが住んでおり、転生者達の子孫のようです。転生者の様な力は無いようですが、権力を全て握っているとか」

 

 ピクリとセインの眉が動く。

 

「天竜人とやらはそんなに優れた治世を保っているのか?」

「いえ、どうやら我儘し放題のようです」

 

 ふむ、と頷き。

 

「なるほど、ブラッドアイが動いているのかもしれんな。となると、王族の誰かが協力しているのか、脅されているのか。探ってみたいが、ブラッドアイの力が強すぎて感じることもできん。これは後回しだな」

 

ブラッドアイは王家の宝具、その力は王族以外には秘匿されている。また、存在の力が大きすぎて近くに同族がいても感じ取れないのだ。

 

 さて、どうしたものかとセインは考える。

(今は海賊が多くいる様だ。なら私達も海賊として表で行動して仲間を集めるのもいいかもしれない。空中宮殿に戦う兵器は搭載されていない。空中宮殿に配属していた軍艦島はすべて破壊された。ならば下界に降り、海賊となって海軍を打倒するのも一興。私達は不老なのだ時間は幾らでもある)

 

 ーーー長い長い、復讐を始めるとしよう。

 

「セバス、船を作らせろ、海賊ゴッコだ。仲間を集めて海軍を滅ぼし、天竜人を抹殺する」

「了解いたしました。一ヶ月で作らせます」

「まずは一隻、あまり飾らせるなよ。シンプルで丈夫なのを頼む」

「お任せ下さい。宜しければ視察と称して顔を他のもの達にも見せてやって下さい」

 

 セバスが部屋を出る。

 

(そうだな、一ヶ月あれば宴会しながら顔見せ出来るな。そうしよう)

 

セインは名案だとばかりに宴会の用意をするように厨房に言付けをするのであった。




書いちゃった。
セインちゃんが目覚めるまで他の人たちが外に出なかったのはセインちゃんが目覚めないと出られないし入れなくなってたからです。
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