俺と邪神のデュエルモンスターズ   作:水混汁

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ポケモン小説が煮詰まったので息抜きに書いちゃいました。
原作キャラの活躍シーンって難しい。

※4月17日 大幅に追記修正いたしました。 4話に分割して再投稿させていただきます。
 修正前をお読みいただいた方には、乱文状態での投稿でお目汚ししてしまい大変申し訳ございませんでした。

この話は転移前となります。
次話投稿は夜8時を予定しております。


1話 終末世界 《エンド・オブ・ザ・ワールド》

「お疲れー」

「お疲れ様ー」

「今回はそこそこ行けたね」

 互いに労うのは男女三人組。

 彼らが居るのは通称カードショップと呼ばれる店。

 その目的はそこで開かれる(カード)(ゲーム)の大会への参加だった。

 大勢の人が詰め掛けていた会場だったが、大会も終わった今となっては閑散としていた。

「なー、帰る前にガチャ回して行かないか?」

 三人の中でとある男が指をさすのは千円ガチャだ。

 一箱五枚入りで、内容物はテーマやカテゴリで纏められているようだ。

 が、気軽に回すには躊躇する金額である。

「うーん、今日は引き運も良かったし回そうかな」

 肯定するのは女だ。

 大会でいい成績を残せたからか上機嫌だ。

「ボクはパスかな。三幻魔のストラク買ってお金が無いし」

 もう一人の男は拒否する。

 まるで女性のような華奢な体つきをしているが、仕草や服装から男であると分かる。

「それじゃあ回すぜ」

 そう言うと男は財布から3枚の紙幣を取り出す。

「え、3回も回すんだ。今月は金欠だって言ってなかった?」

「大丈夫だ、問題無い。さっき買ったパックで高額レアが当たったからな。あぶく銭なら使っちまう方がいいだろ?」

「いや、貯金したほうがいいんじゃないの?」

 そんな男たちの会話に女が手を打つ。

「そうだ。私も今日使わないカードを売りに来たんだった! ちょっと売ってくる!」

 用事を思い出した彼女は何枚かのカードを手に、買い取りカウンターへと駆けていった。

 そんな後ろ姿に男達は苦笑する。

「全く、昔から変わらないな」

「そうだね。……そして君もだね」

 ため息を吐きながら彼は言葉を続ける。

「何時になったら関係を彼女と進めるんだい?」

「ぐっ……」

 痛い所を突かれたのか男の言葉が詰まる。

「ボクたちも、もう二十歳を超えたいい大人だ。変わっちゃいけないものもあるけれど、変わらないといけないものもあるだろう?」

 その瞳は真剣だった。

「……中学校の入学直前、ボクと君達が出会う前の事件は知っているし、その事で君達がお互いに負い目がある事も知っているよ。でも、男という存在にトラウマを持つ彼女に今一番近いのは君だけなんだ」

「いや、でも――」

 抗うかのように言葉を放つが、

「もっといい相手が居るかもって? 居たとしてそれは何時になるんだい? それにそんな人間が現れるまで君は彼女とこの関係を続けるの? そんなの勿体ないよ」

 彼は男の胸に拳を当てた。

「かつて彼女に懸想していた身としては、有象無象の男よりも君が捕まえてくれた方がよっぽど納得できるんだよ」

「…………」

 男は答えられない。

 言葉は軽いが、拳に込められた圧は本気である事を如実に伝えていたからだ。

「おっ待たせー。中々良い金額で売れたよ。……あれ? 何この空気?」

「ん、何でもないよ。それよりホラ、ガチャ回すんでしょ?」

「変な二人……ま、いっか。いよぉし、セブンスワンを連続で引いた今の私なら奇跡のドローだってできる気がする!」

 意気揚々とガチャマシーンに向かう彼女に彼は着いてく。

「今すぐにとは言わないけど、あんまり待たせてあげないてよ?」

 耳打ちするように紡がれた言葉。

 その言葉を男は噛みしめる。

「そうだよな。俺も怖がっている場合じゃないよなぁ」

 男が見つめるのは自身の右手の甲に刻まれた傷跡。

 それは男にとって悔恨の証であり、女にとって自責と悪夢の証。

 まるで獣の爪で引き裂かれたかのようなその古傷が妙に疼いた。

 

          ●

 

「という訳で勝負よ!」

「どういう訳だ」

 ガチャマシーンの前で声高らかに宣言されても男には理解できない。

「ふっふっふ、簡単に言うとこのガチャをお互いに3回回して、排出カードの総価格が高かった方が勝ちって事よ」

「ああ、そういう事か。――ふっ、ならば受けて立とう! 俺の運命すら呼び込む引き運に勝てると思うなよ!」

「真の決闘者のドローは必然! さぁ勝負よ!」 

 瞬く間に6枚の紙幣がマシーンに飲み込まれていく。

 その代わりに小さな紙箱が6箱排出された。

 二人はそれぞれ3箱づつ手に持って開いていた近くのテーブルに座る。

 そして横で見ていた男に二人して目を向ける。

「え、これ流れ的にボクが進行役をするの? まぁいいけれどさ。それじゃあ同時に開封して確認しようか。まず一箱目どうぞ」

 その声掛けに二人は一つ目の箱を開封する。

「私は(ミレニアムレア)のエクゾディアパーツ5枚。新しい方の9期とはいえ一枚200から400ぐらしたような……」

「俺はUR(ウルトラレア)ネクロフェイス、同じくUR封印の黄金櫃、(ノーマル)の魂吸収、SE(シークレットレア)のマクロコスモス、(レア)のグランドクロスの計千円ちょっとか。当たりっちゃ当たりだけど除外してアドを取れってか」

「いやぁ、初手から大分面白いねぇ」

 横から見ているだけなら大分面白い、当人にとってはどうかは知らないが。

「それじゃ2箱目いってみようか」

EX(エクストラ)含めた絵札の三銃士が5枚、イラスト違い入りで全部最高のレアリティだけどそんなに高くないのよねぇ。高く見積もっても700円くらいかしらね……なんだか、楽しくなってきたわ」

「まぁ、こういうのがガチャの楽しみだよなぁ。お、Rの神縛りの塚三枚にテラ・フォーミングとメタバースか。今だとどれも200から300ぐらいだから……これまた千円ちょっとか。Sinや自縛神と相性が良いんだよなぁ」

 二人は引いたカードを机に並べ、それぞれの価値を査定する。

「えーと、エクゾディアを平均価格300円として、絵札の三銃士は――」

「フィールド魔法関係は制限のせいで相場が荒れがちなんだよなぁ」

 そうして計算された総計は、

「どっちも二千ちょっとね。大分どころか結構良心的なガチャでびっくりだよ。余裕持ってお金持って来ればよかったな……」

 大分軽くなった財布を思い出し遠い目になる。

 そんな彼を置いて二人は最後の紙箱に手を掛ける。

「勝負は互角、この開封が明暗を分ける! 運命のラストターン!」

「フン、最後に勝つのはこの俺だ! 行くぞ!」

 蓋を開け、中のカードを手に握る。

 しかし、まだ中身は確認しない。

「今の私は神すら呼び寄せる! シャイニング――」

「ならば俺は神を超えてみせる! ディスティニー――」

 そして二人は高らかに叫ぶ。

『ドロー!』

 引いたカードを確認し男は笑みを浮かべる。

「俺が引いたのはVジャンプの三邪神! そして《闇の支配者-ゾーク》とその召喚用儀式カードによる“大邪神ゾーク・ネクロファデス”セット! もう値段よりもネタ的な意味で俺の勝ちだろコレ!?」

 遊戯王のファンとしてはこれ以上ないネタだ。

 というかどうしてこんなセットを用意したんだこの店は。最高じゃないか。

 もはや値段で負けようと悔しくはない。

 ある種、成し遂げた偉業に満足する男。

 そんな男に対し、女は不敵な笑みを浮かべていた。 

「それはどうかな」

「ひょ?」

 男の表情が崩れる。

 なぜならその言葉は逆転に至る名言であったからだ。

「さっき私は言ったわよね。『今の私は神すら呼び寄せる』と」

「ま、まさか……っ」

 男の頭に浮かぶ予想。

 ありえない、そう断言するには女の瞳は確信に満ちていた。

「私が引いたカードは同じくVジャンプの三幻神! そしてラー別形態の二枚!」

「嘘だろ!?」

 値段のみならず、ネタとしても超えられてしまった。

 敗北の二文字を突き付けられた男に女は追撃を掛ける。

「更に! お守り代わりにしている《光の創造神ホルアクティ》を並べ、今ここに邪神を退ける光は降臨した! 光創世(ジェセル)!!」

「ば、馬鹿なぁ――?」

 ある種の原作再現までされた男は机に突っ伏す。

 今ここに勝者と敗者が決まったのだった。

「……なぁにこれぇ」

 突如として始まった茶番劇に彼はそう呟くことしかできなかった。

 

          ●

 

「ふっふっふー、儲けた儲けた。丁度持っていなかったし、これを機に神を投入したデッキでも作ろうっと」

「神のカードって集めようとすると意外と高いし見つかんないもんな」

「それ以前にそもそもの使い勝手が――」

『それ以上いけない』

 そんなやり取りを行っているのは駅のホーム。

 黄昏時のオレンジに染まるそこは人で埋まっていた。

「折角の休日なのに帰宅ラッシュかよ」

「まぁ、今日は駅近辺の全カードショップで大会が開催されたからね。確か令和元年最後の大勝負って名目だったかな?」

「それも私達みたいに遊戯王だけじゃなくてヴァンガにデュエマ、WIXOSS、ヴァイス、ポケカ、MTG、他エトセトラって話だしね。多分殆どのカードゲーマーがここに集まっているんじゃない?」

 見渡す限りの人の波。

 向かいのホームも背後のホームも人で埋まっている事を考えると相当な人数だろう。

 そんな中、彼らは会話をしつつもスマートフォンを捜査していた。

「じゃーん、どうよ神をフル投入したこの新デッキは?」

 女はスマートフォンの画面を二人に見せる。

 画面には多数のカードが描かれていた。

「いや、デッキメーカー使ってるからって構築早くね? って思ったらコレ何時もの黒魔術師デッキにぶち込んだだけじゃん」

「ブラック・マジシャンはサポート豊富で使い回せるけれど、ホルアクティ抜きでもやっぱり重いね」

 それを見た二人の反応は鈍い。

「本当は電磁石やアンデットを主軸にした方が回るんだろうけれどさ。そこは王様リスペクトって事で、ね?」

「まぁ、ファンデッキとしてはそこは重要だよな」

「モチベーションは大事だもんね。さて、次はボクの番かな?」

 二番手に差し出されたスマートフォンの画面にも、同じようにカードが描かれていた。

「それって三幻魔のデッキ? 新規サポートが増えた分、大分使い勝手が良くなったわよねぇ」

「重要な三幻魔はピン刺しか? 三箱買ったんだから複数積まないのか?」

「そこはホラ、原作リスペクトって事でね。あとは二人の神のカードもピン刺しでしょ。それに合わせた方が切り札感があって良いじゃん」

 そう言って彼は手に持ったビニール袋を揺らす。

 その中には三つの箱が収まっていた。

「確かに切り札っていいよね」

「いい……」

 口数少なくもその理解に頷く二人に彼は満足げな笑みを浮かべる。

「さて、これで残るは君だけだよ。三邪神デッキを見せてよ」

 水を向けられた男は意味深な笑みを浮かべて言う。

「ふぅん……まだ完成してないんだなこれが」

 男が見せるスマートフォンの画面は半分以上が空白であった。

(オフィシャル)(カード)(ゲーム)化で弱体化の上、専用サポートも無く、新規カードも来ず、儀式カードまで加えてどう構築すればいいんだって話なんだが」

「悪魔族で闇属だから汎用サポートを使えるでしょ。後はリリースを多用するから冥界の宝札やアドバンス・ゾーンとかで手札ソースの確保とか?」

「あとは適当にリンク2を出して少し前のパックで出たリンクロスに繋げれば3体のリリース要員は確保できるよね。あとは金華描で天帝従騎を蘇生しても3体並ぶよね」

「防御札にバトルフェーダーと儀式にも使えるクリボールも良いわよね」

「なら金華描に合わせてワン・フォー・ワンやワンチャン!? も有りだよね」

「それなら同じレベル1のラルバウールも使えば邪神のサーチもできるわ」

「ヴィジャムも単体だけじゃなくて、方界降世からの3体召喚で防御とリリース要員を兼ねて面白いかも」

「上級モンスターは邪神だけじゃなくて原作に合わせてバルバロスで除去も狙えるわね」

「EMディスカバー・ヒッポや八咫御先で召喚権を増やすのができるのもいいんじゃないかな?」

 二人のアドバイスによって空白が目に見えて埋まっていく。

「……わぁ、あっという間にできちゃったぞ」

「折角の神縛りの塚関係はサイドデッキに回しちゃったけれどね」

「メインもエクストラもサイドもみっちり埋めたねぇ」

「差し替える場合、真っ先にその候補になるのは儀式関係なんだよなぁ」

 満足げに三人は画面を眺める。

「全員デッキが完成したところで次はいつ集まる? 大学だと遊戯王は遊びにくいし、来週にするか?」

「そうねー、特に予定も無いし私は大丈夫よ」

「残念だけどボクはパスかな。前から予定していたお客さんが家に来るから対応しないといけないんだ」

「え?」

 男は疑問に思う。

 以前に彼の予定を聞いた時、そんな話を聞いた覚えがないからだ。

「えー、それは残念」

「ゴメンね。その日は二人で楽しんでおいでよ」

 男に向けるその顔は笑顔であったが、目だけは笑っていなかった。

 ……お膳立てはしてあげたからね。

 その意図は男に痛いほど伝わった。

 ここまでお膳立てされては応えない訳にはいかない。

「……ああ、そうするよ」

 覚悟を決めたことを伝えると、彼は一つ頷いた。

 女の与り知らぬところで物事は進み。

 彼女がその意志を知るのは一週間後になる……筈だった。

「うおっ!?」

「キャッ」

「な、何!?」

 突然の轟音と共に地面が揺れる。

 それは地震などで決してない。

 何故なら彼らは見てしまったからだ。

 粉塵を巻き上げ、自分たちに迫りくる爆炎を。

 彼らはそれが何なのかを理解する間もなく、その意識を失くした。

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