俺と邪神のデュエルモンスターズ   作:水混汁

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マスターデュエルのサービス開始前に始まった今作ですが、当時とここ最近の投稿での読者の反応がエグイレベルで違うんですよね。
マスターデュエルの影響の大きさを実感しています。


10話 神対邪神 後編

「俺のターン、ドロー! ……まぁ、お前だよな」

 

 引いたカードを一瞥した彼は不敵な笑みを浮かべた。

 

「来たようね。最後の邪神が」

 

 真希ちゃんの言葉に彼は笑みで返す。

 

「俺は自分の墓地の《貪欲な壺》とそっちの墓地の《光の護封霊剣》を対象にして発動。その2枚を除外して手札の《カクリヨノチザクラ》を特殊召喚する」

「なら、チェーンして《光の護封霊剣》の効果を発動するわよ。除外することでこのターン、相手は直接攻撃を行えないわ。……あまり意味は無いけれど《サンダー・ボルト》みたいな除去カードが無いとも限らないしね」

「ククク……有ったら良かったんだけどな。とにかく《光の護封霊剣》が先に除外されたとはいえ《カクリヨノチザクラ》は特殊召喚されるぞ」

 

 現れたのは先日、決闘盤の起動テストで召喚したモンスター。

 あの日のカードが入っているということは、不審者を撃退したデッキがこれだったのだろうか。

 邪神という強力なカードを使いこなす彼の姿に相対したであろう不審者に同情する。

 

「そして場の《バトルフェーダー》と《カクリヨノチザクラ》の2体でリンク召喚! 召喚条件はモンスター2体! 出てこい《スペース・インシュレイター》!」

「《リンクロス》には繋げさせない! 罠カード《黒魔族復活の棺》を発動! 私の場の《ブラック・マジシャン》と《スペース・インシュレイター》を墓地に送り、墓地から魔法使い族・闇属性モンスター1体――《混沌の黒魔術師》を場に特殊召喚!」

「ぐっ、そりゃ読まれてるか。 だけどまだ手はある! 手札の《ジェスター・コンフィ》の効果で自身を特殊召喚! そのまま《ジェスター・コンフィ》1体を素材に《リンクリボー》! そしてサイバース族リンクモンスターがリンク召喚されたことで墓地の《スペース・インシュレイター》がリンク先に蘇生。更に《リンクリボー》を素材に《リンクロス》をリンク召喚! 召喚成功時に素材にしたリンクモンスターのリンク数だけトークンを生成する」

「あちゃー。結局、並べられちゃったか」

 

 妨害を受けたにもかかわらずモンスターを並べる手腕は流石だ。

 そして3体揃ったということは、

 

「3体を生贄に! 降臨せよ、《邪神アバター》!」

 

 それは黒の太陽であった。

 漆黒の闇を固めた球体でありながら(くら)き光を放つという矛盾。

 “地上に降臨した神の化身(アバター)”という名前通りの存在であった。

 

「アバターの攻守は互いの場で最も高い攻撃力を持つモンスターを常に100上回る。そして召喚に成功した場合、相手ターンで2ターンの間は魔法・罠の効果を発動できない」

「厄介な封殺効果だね、まったく」

 

 球体はその姿を場で最も高いモンスター――《オベリスクの巨神兵》と同じ姿に変えた。

 闇のまま形だけの模倣だが、その戦闘力は本物を上回る。

 

「バトルフェイズ! アバターよ、オベリスクを粉砕しろ! ダークネス・ハンド・クラッシャー!」

 

 神の化身が放つのは闇を纏う剛拳。

 巨神兵が同じく剛拳で迎え撃つも、その拳ごと粉砕されてしまう。

 

「くっ、オベリスク……っ」

 

 超過100ダメージが入る。

 そして、これこそが決闘(デュエル)が始まって初めてダメージが通った瞬間であった。

 また、《オベリスクの巨神兵》が破壊されたことで次に高い攻撃力を持つモンスター、《混沌の黒魔術師》の姿へと姿を変える。

 

「このままターンエンドに入り、《アドバンス・ゾーン》の効果が発動する。まずセットカードを破壊する」

「くっ、《ダーク・ホライズン》が――っ」

「続けてドローとサルベージ効果を処理して俺のターンは終わり」

「いえ、まだよ。《混沌の黒魔術師》の効果、特殊召喚に成功したターンのエンドフェイズに墓地の魔法カードを1枚、《ソウル・チャージ》をサルベージさせてもらうね」

「流石にそれは無法が過ぎません?」

「4000ライフの環境じゃ流石に暴れられないから」

「そっちのライフは5900もあるじゃないスか……」

「オシリスは大変美味しかったです。んじゃターンを貰ってドロー。何も出来ないしモンスターを全て守備表示にしてターンエンド」

 

 強力なモンスターこそ並ぶものの、アバターを前にしては壁にしかならない。

 

「守りを固めたか。なら壁モンスターを削るとしよう。俺のターン、ドロー。……そりゃここまで来たらお前も出たいよな。俺は通常魔法《ワン・フォー・ワン》を発動し、デッキからレベル1モンスター《儀式の供物》を特殊召喚!」

「儀式の……まさか!」

 

 真輝ちゃんは深弥くんの目的に気付いたみたいだ。

 

「手札から《儀式の下準備》を発動! デッキから儀式魔法《闇の支配者との契約》とその儀式魔法カードに名が記された《闇の支配者(ダークマスター)-ゾーク》を手札に加える!」

「私が言えた義理じゃないけど、中々に重いデッキを使うわね」

「いや本当言えない義理だな。んじゃ、儀式魔法《闇の支配者との契約》を発動。レベルが8以上になるようにモンスターをリリース――する必要があるけど、《儀式の供物》は1体でコストを賄える。さあ大トリだ! 《闇の支配者-ゾーク》の降臨!」

 

「ここでゾーク?」

 《闇の支配者-ゾーク》は……いや儀式モンスター自体が比較的流通量の多いカードだ。

 基本的に儀式モンスターは儀式魔法とセットで運用するため、片方のみしか手に入らないデュエリストが売却することが多い。

 その中でゾークはギャンブル要素の強い破壊効果と高い攻撃力を持つ。

 が、一回り低い攻撃力でありながら同じレベル・属性・種族で確実な破壊効果を起動できる《終焉の王デミス》が存在している。

 相場でいうなら堅実さが評価されるデミスの方が高値で販売されているのが常だ。

 実際、うちの店にもどちらもセットで在庫がある。

 この重大な場面で用いるということは彼が信用する一枚なのだろう。

 

「《闇の支配者-ゾーク》の効果を発動! サイコロを振り、出た目で効果が決まる!」

「ここでその効果使うの!?」

 

 場にサイコロが飛び出す。

 その出目は、

「出目は“1”! 相手フィールドのモンスターを全て破壊する効果! さあ壁モンスターを薙ぎ払え! ゾーク・インフェルノ!」

 

 ゾークから放たれた闇の波動が真輝ちゃんのモンスターを爆散させていく。

 モンスターが全滅した場を眺める真輝ちゃんは苦笑していた。

 

「“6”が出たら自分のモンスターが全滅するっていうのに……よくやるわ」

「当人がやる気満々だからな。マスターとして見せ場の一つは作ってやらないと。さあ、ゾークとアバターでダイレクトアタック! ダークフェノメノン!」

 

 ゾークとその姿を模したアバターが真輝ちゃんに襲い掛かる。

 合計攻撃力は5500、通れば大打撃だ。

 

「私は墓地の《超電磁タートル》を除外することでバトルフェイズを終了させるわ!」

「序盤に捨てていたの忘れてなかったか……ターンエンド」

「保険を用意しておいて良かったわ。私のターン、アバターの縛りがキツイわね。モンスターを1体セット、カードを1枚伏せてターンエンドよ」

 

 一見すると苦し紛れにも思えるターン。

 けれど、深弥くんは油断する様子もない。

 このターンから彼女の魔法・罠の使用が解禁されるのだから。

 

「壁を増やしたか。俺のターン。ゾークの効果は……使わなくてもいいか」

「チキッたわね?」

「み、見せ場は作ったから……じゃ、バトルフェイズに入ってアバターでセットモンスターに攻撃!」

「罠カード発動、《マジカル・シルクハット》! デッキから選んだ《マジシャンズ・クロス》と《死者蘇生》の2枚の魔法カードと、攻撃対象モンスターを裏守備でシャッフルし再セットするわ」

「ぐぬぬぬ。姑息なことを……攻撃対象は俺から見て真ん中。そしてゾークで右だ!」

 

 指定されたセットカードに闇の衝撃破が襲い掛かる。

 真ん中は《死者蘇生》、右は《マジシャンズ・ソウルズ》……当たりであった。

 残ったカードはバトルフェイズの終了と共に破壊された。

 

「……残念。けれど、このターンは生き延びたわ」

「しぶとすぎるだろ。1枚カードを伏せてターンエンドだ」

「私のターン……ふふふっ」

 

 どうしたものか引いたカードを見て無邪気に笑い出したではないか。

 深弥くんも疑問符を浮かべて首を傾げていた。

 

「ごめんごめん。ゾークが活躍するからこっちもやる気を出したみたい。なら私もマスターとして見せ場の一つも作らないとね」

「そのカードの見せ場は俺が負け確になるんですが?」

「うん。つまりはそういうこと。――魔法カード《ナイト・ショット》を発動。対象は唯一のセットカード」

 

 伏せられていたカードがどこかから撃ち抜かれ破壊された。

 破壊されたカードは罠。

 

「《神の宣告》ね。除去して正解だったわ」

「ピンポイントで除去札引くなよ……」

 

 これで深弥くんの魔法・罠(セット)カードは無くなった。

 しかし、戦闘面では神をも上回る《邪神アバター》と、素で高い攻撃力を持つ《闇の支配者-ゾーク》が並ぶ。

 並みの決闘者(デュエリスト)なら心折れる場面だ。

 けれど真輝ちゃんは楽しそうに笑みを浮かべていた。

 

「これで邪魔はされないわね。私は魔法カード《ソウル・チャージ》を発動! 5体のモンスターを蘇生して5000ライフポイントを失うわ!」

「それを止めたかったのにぃっ!」

 

 深弥くんの嘆きを他所にモンスターが並ぶ。

 真輝ちゃんを守る様に立ち上がるのは黒魔術の師弟と混沌の魔術師。

 そしてその両翼を担うのは天空竜と巨神兵だ。

 

「私は黒魔術の三銃士を生贄に! 《ラーの翼神竜》を降臨!」

「三幻神の揃い踏みか……」

 

 文字通りの太陽が降臨した。

 遍く全てを照らし暴く太陽の化身であった。

 球体で現れたそれは攻撃力・守備力共に“?”表記であったが、場に降り立つと攻守は0を示した。

 

「ラーの攻守は召喚時に100になるように支払った分のライフになるけど800にしたところで恰好もつかないから払わないわ」

「そりゃ戦闘目的で呼んだ訳じゃないしなぁ……」

 

 何度も行われている二人だけが通じるやり取り。

 その光景を眺めていると不思議な出来事が起きた。

 《邪神アバター》の攻守は最も高い攻撃力を持つオベリスクを参照しているにもかかわらず、その身を球体へと戻してしまう。

 黄金と漆黒の球体。

 これまでの邪神の姿を思えば《邪神アバター》は《ラーの翼神竜》の対存在なのだろうか。

「こんな光景を見れるとは……」

 光と闇。

 相反する存在が相対するこの光景に思わず感嘆の声を上げてしまう。

 デザイナーとしての意見を聞こうと紗綾に視線を向ければ、

「…………」

 ただただ、感涙するだけであった。

 彼女だけでない。

 兄貴夫妻も紫藤夫妻も、その光景に言葉を失っていた。

 

「……わざわざ三幻神を並べたということは、あるんだろう? あのカードが」

「うん。この勝負は私の勝ちだね」

「ふっ……今回は負けを認めよう。――というか邪神の強化は何時になった来るんですかね!? サポートカードの1枚くらい刷ってくれよ!」

 

 盤面では劣勢のままに勝利宣言をする真輝ちゃん。

 深弥くんは穏やかに受け入れた……受け入れたよね、うん。

 

「さあ、ゲームエンドよ。私は場の三幻神を束ねる!!」

 

「い、一体何を召喚しようとしているんだ!?」

 三幻神が場から消える。

 多大なコストを掛けて召喚される三幻神、それを3体リリースしたのだ。

 その正体は皆目見当もつかない、つくわけがない。

 

「《光の創造神 ホルアクティ》!」

 

 ……俺たちは光を見た。

 慈愛に包まれるような温かな光を。

 攻撃力、守備力は共に“?”。

 だが、場に降臨しただけで《邪神アバター》と《闇の支配者-ゾーク》は光によって掻き消されてしまう。

 

「このカードは場の3種の幻神獣族をリリースした時に特殊召喚ができる。そしてこの特殊召喚は無効化されず、特殊召喚に成功した時――私は決闘に勝利する」

 

 召喚に3体のモンスターを必要とする三幻神。

 それら3体を必要とする、余りにも重い条件の特殊勝利効果だ。

 しかし、一度この光景を目にしたならば、それだけの価値があると断言できよう。

 

光創生(ジェセル)!」

 

 こうして前代未聞の神同士の戦いは幕を閉じたのだった。

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