俺と邪神のデュエルモンスターズ   作:水混汁

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二話連続投稿です。


12話 ピカピカの1年生 ※周回二度目

 人生を逆行してから色々イベントが立て込んでいた。

 正直お腹一杯であるが、人生において大きなイベントがやってきた。

「またこうして中学校に通うことになるとは……」

 (おろ)()ての制服を身に纏い、学校を目指して歩く。

 胸ポケットのネームプレートには“祁ノ内(きのうち)深弥(しんや)”と黒字で刻印されていた。

「私は正直嬉しいわよ。前は楽しむどころじゃなかったから」

 隣を歩くのは女子の制服を身に纏う幼馴染だ。

 ネームプレートの“紫藤(しどう)真希(まき)”という文字が当時の旧懐を呼び出す。

「あー確かに。二年の半ばまでは男性恐怖症が一番酷かった時期だもんな」

 先日倒した変質者の被害に遭ったばかりだ。

 肉体的な被害は無かったとはいえ、その精神に深い傷跡が刻まれていた。

「外に出るには家族か深弥が居ないと駄目だったからね。おかげで学校の登下校は深弥が付きっきりで担当してくれたよね。あの頃はゴメン……友達と遊びたかったでしょ?」

「自分がやりたいからやってただけだって。確かに面倒だなって思う時はあったけど、別に嫌いじゃなかったしな」

 というか真希が付きっきりだったからか、恐怖症が落ち着き始めた三年に上がるまでは男子からは距離を取られてたしな。

 本当に友人と言えるのは高校の頃からだ。

 それを当人に言う必要が無いから言わないが。

「なら今日の入学式から心機一転、中学校生活を楽しむとしようか」

「うん。前回はお互いに免除されていたけど、部活はどこかに入部しないとだもんね」

 過去の陰鬱とした歩みは無く、新生活への希望の足取りがそこにあった。

『あらあら、甘酸っぱい青春を謳歌してますなぁ。……アタシたち忘れられてないコレ?』

『ふふふ、そうやってイチャイチャできるのも今の内ですよ。私たちの力を以ってすれば日々の登下校をエキサイティングで飽きさせない工夫を――』

 ……背後の二人には後で構ってあげるとしよう。

 

          ●

 

 数十分の道のりの末、正門に辿り着いた。

「初めての、そして久しぶりの母校にとーちゃく」

「到着だー」

 正門周辺は入学式ということもあり、新入生とその家族でごった返している。

「えっと、確か正門近くの――」

 見渡せば俺の両親と真希の両親を見つけた。

 向こうもこちらに気付いたようで近づいてくる。

「時間通り着くことができたか」

「うんうん。二人だけ登校できたようだね」

 感慨深く頷く父親ズ。

 二人きりの登校したのは、男性恐怖症の真希が通学可能かのお試しであった。

 確かに過去は酷いものではあったが、果ては大学を一人暮らしをしながら通えるぐらいには改善しているのだから問題なぞある訳が無い。

 正門前で家族写真を満足するまで撮る。

 こういう行事で父親が燥ぐのはどこの家庭も似たようなものらしい。

「さ、もうすぐ教室で点呼が始まるわよ」

「先に体育館で待ってますから」

 家族に送り出され校内へと向かう。

 その道半ばだ。

「……ねぇ、深弥。アレって」

「気付かない振りしてたんだから最後まで我慢するぞ」

 実は学校近くからソレ(・・)を視界の端には捉えていた。

 ただ、下手に関わりたくないからスルーしていたのだ。

 周囲の誰もが騒がないあたり、アレは俺たちのみが見えているのだろう。

「でも凄い見られてるわよ?」

「そっか……」

 それは校舎を軽く超える巨躯を持つ。

 青が混じる浅黒い肌、凛々しい瞳を持つ少女。

 青の兜に赤に金のフレームが施された鎧。

 右手は金の籠手、左は赤の竜の首。

 腰から下は蛇の様に伸び、赤と金の鱗で守られていた。

 そんな自分のターンに攻撃力が10,000になり、戦闘で破壊されない容姿であった。

 というか教育機関(アカデミー)と組み合わせちゃいけない存在だろ。原作的な意味で。

『おやおや、アタシのマスターのハレの日に無粋な。邪神体になって怪獣大決戦してやろうかしら?』

『私も出ましょう。大邪神と創造神のタッグの前に敵はいませんよ』

「まずは落ち着け」

「敵意はないみたいだし相手の出方を待ってみようよ」

『…………』

 こちらを見つめていた推定《混沌幻魔アーミタイル》はそれ以上の反応もせずにその姿を消した。

 何だったかと思えば人の流れに逆らってこちらに向かう人影が見えた。

 それは同年代であり新入生らしき少年。

「え、アレって」

「何でここに?」

「やあ、“令和ぶり”って言えば良いのかな? 君たちが無事のようで良かったよ」

 ホッと胸を撫で下ろす彼はあの日、共に爆炎に呑まれた友人であった。

「確か地区――いや、県が違うんじゃ」

 彼と出会ったのは現在地から離れた高校のことだった。

「元々こっちに引っ越す予定自体は昔からあってね。前回は中学の卒業タイミングだったけど、今回は親に頼んで小学校の卒業タイミングで引っ越してもらったんだ」

「私としては友人が増えて嬉しいけど、良かったの? 中学時代の友達とか居たんじゃ?」

「……まあ、親しくさせてもらった知人は居たよ」

「分かった。お前が構わないのなら良いんだ」

 彼のネームプレートに刻まれた“翡山(ひやま)(れん)”。

 その“翡山”という大企業の名前に並々ならぬ苦労をしていたようだ。

「ところで見えてるよな?」

 後ろに浮かぶ大邪神と創造新を指差す。

「ああ、何の因果かしっかりと。君たちは一人づつなんだね」

「一人づつ?」

 その疑問を問おうとすれば、

『へぇ。マスターの大事な友達っていうからどんなのかと思えば、中々やりそうじゃん』

 背後からニュッと現れるは笑みを浮かべる褐色の少女。

 金色の骨のような鎧と背中からは金の骨子から半透明の膜を張った皮羽を持つ。

 鎧と言っても要所しか隠していないので痴女も同然だ。

『な、なんというメスガキの波動……っ。マスター、こいつは分からせ甲斐がありますよ!』

『何という肌の露出具合……これは相当な覚悟を決めていますね』

 俺たちのパートナー精霊がおかしいのはいつものことなので放置だ。

「えっと、その色合いからして貴女は《降雷皇ハモン》かしら?」

『せいかーい。流石OCGプレイヤー、あっさりバレちゃった』

「アーミタイルじゃなくて《降雷皇ハモン》単体で現れたってことはまさか……」

「ご想像の通り、《神炎皇ウリア》と《幻魔皇ラビエル》がそれぞれ独立しているよ」

 漣が指差す先には。

『つまんなーい。帰って寝たーい』

 校舎の屋根の縁に座る赤の鎧を纏い、赤い皮翼を持つ色白の少女が居た。

 上半身こそ立派な鎧であるが、下半身は裾の長い黒の前掛けで隠すのみだ。

 自身の身長と同等の長さを持つ三つ編みの髪を抱えていた。

『我儘言ってないで、マスターの友人に挨拶しますよ』

 その横に立つのは暗い青紫の肌を持つ少女。

 青の皮膜と鎧、そして尾を持っており露出度合いでいえば一番マシだ。

 話し合いでは埒があかなかったのか、赤の少女を尾で巻き上げてやってきた。

『初めまして、マスターのご友人』

『んあー、初めましてー』

 この三人が漣に憑いた精霊なのだろう。

 あの日、発売された三幻魔ストラクを買っていたし。

 それにしても中々特徴のある面子である。

「あの爆発に巻き込まれて過去に戻った訳だけど、君たちも同じ状況かと思って早めに引っ越したんだ。一種の賭けだったけどこうして会えた」

「俺も会えて嬉しいよ」

 元の世界を知ってるだけじゃなく、ある程度遊戯王の実力を持った味方。

 これほど頼りになる者も居ない。

「積もる話はあるけど、立ち話もなんだし中に入ろうよ」

「そうしたいけど、私たちのクラス発表をまだ確認してないの」

 教室の組み分けが発表されている掲示板は新入生で混んでいた。

 確認するだけで一苦労だろう。

「それなら僕が確認しておいたよ。三人とも同じクラスだね」

 漣の案内の下、俺たちは自分の教室へと向かった。

 

          ●

 

 クラスメイトは過去と全く同じという訳ではなかった。

 それでも何人か見知った顔が居た。

 再度仲良く成れるかは別として何だか安心した。

 担当教師の挨拶もそこそこに入学式を行うこととなった。

「えー、皆さんはこれから有泰(ゆうだい)中学校の一員として――」

 基本的に静かに座っているだけでよいのだが、精霊たちにとってはそうではない。

『フハハハ!』

 校長が長話をする壇上に大邪神の姿をしたゾークが居た。

 それもしっかり歩く十八禁の方だ。

 恐らく俺の精霊であるゾークの変身体なのだろうが、何してるのだか。

『貴様らの最後の希望すら、我が闇の力によって打ち砕いてくれるわ!』

『《防御輪》!』

 輪に繋がれた4枚の盾が回転し、ゾークの攻撃を防いだ。

 何か見たことある光景だな。

『お前は……ええい! 邪魔をするなぁ!』

 ゾークによって吹き飛ばされる黒の人影。

 アレはアバターの変身なのだろうか、長身でコートの裾が広がっているシルエット。

 多分、海馬瀬戸なんだろう。

 というかアニメでホルアクティが登場した回じゃん。

 本当に何してんの?

『……相棒、皆。来たぜ!』

 ゾークといい海馬といい、すっごい聞き覚えのある声なんだが?

 アバターって声帯まで真似できるんかい。

 姿が黒一色になること以外は完璧じゃん。

『今、ファラオの名の封印は解かれた……我が名は“アテム”!』

 やだ、すっごい見覚えのある光景。

 というか暇だからって名シーンの再現をしてるんじゃないよ。

 遠くの女子席から噴き出す声が聞こえたぞ。

 そりゃあんなの観たらそうなるって。

『ゾーク……友の結束が今、神を呼び覚ます!』

 ゾークと相対する様に三幻神が現れた。

 こっちは色付き……というかある意味ホンモノじゃねぇか。

『フハハハッ、何度やっても同じこと三幻神など我が敵ではないわ!』

『そして今、(ファラオ)の名のもとに……神を束ねる!!』

『――っ!?』

 三幻神が赤青黄色の3色の光となり、一つの白の光へと収束する。

『《光の創造神 ホルアクティ》!』

『ホ、ホルアクティ……っ!』

 現れたのは創造神の姿のホルアクティ。

 そこまで再現するんかい。

『闇よ……消え失せろ!』

光創生(ジェセル)

『お、おのれぇ――!』

 そのまま爆散したんだが、生きてるよな?

『――こうして大邪神は名も無き(ファラオ)――アテムによって倒され、世界に光が戻ったのでした。めでたし、めでたし』

 ナレーションはまさかの《幻魔皇ラビエル》である。

 落ち着いた子だとは思っていたが、こういったおふざけに合わせられる程度にはノリが良いようだ。

 というか誰が見てんだよこの舞台劇。

『――!』

 体育館に拍手が響く。

 思わず背後を確認するが、在校生で拍手する者は居ない。

 音は彼らの上からだ。

 幾つも浮かぶ、光の球。

 恐らくデュエルモンスターズの精霊。

 ゾークたち程ハッキリとは見えないが、その存在は確かのようだ。

 ……流石に精霊界に関わることは無いよな?

 カードの精霊に纏わるエピソードは良くも悪くも大事になりやすい。

 アニメでは良い話で終わるものもあれば、地獄の様な体験を得るエピソードのどちらも存在していた。

 ゾークを始めとした三邪神の守護があるとはいえ、進んで関わりたいとは思えない。

 ……一切関わらないというのは無理なんだろうな。

 舞台上でカーテンコールを始めたゾークたちに精霊たちが盛大な拍手を送る。

 そんな光景を眺めていると、遠くない内に関わりそうな予感があった。

 

          ●

 

 その後、家に帰って自分の決闘者IDの情報を眺めていた時だ、

「何かDPが増えてるんだけど?」

 具体的には5000程。

 直近で決闘した覚えは無いのだが。

『あ、それ? 入学式で舞台劇をやった時のお捻りだよ』

 原因は浮かびながらアイスを食べている大邪神であった。

「お捻り?」

『流石に事情があったとはいえDPをドカ食いしたのは悪かったからさ。暇潰しと罪滅ぼしを兼ねてやったんだけど、野良精霊って意外とDP持っててさ。ホルアクティとラビエルで仕分けても5000DPも手に入ったんだよね』

「DPって電子ポイントじゃなかったのか?」

『正確には決闘で生じるエネルギーを数値化したものだよ。基本的には決闘場とか決闘盤から何処かに転送される分がポイントとして返ってきている形だけど、精霊はエネルギーのまま保持できるんだ』

「へぇ。つまりお捻りで貰ったエネルギーをポイントに変換したってことか?」

『うん、そんな感じ』

「なら、お前たちが50,000DPをドカ食いしていたのは何でだ?」

 事情があるとは言ってたが。

『ふふふ、いつかのお楽しみだよ。というか、ご破算になる可能性もあるから期待しないで待ってて。ただ、悪いことにはならないから』

「ふーん。なら結果が出たら教えてくれよ」

 少なくとも悪意を持った行動でないのなら、厳しく追及することもないだろう。

 その結果とやらが出るまで待つのも良いだろう。

 そう考えてベッドに入る。

 明日からの学校生活に思いを馳せて夢へと旅立った。

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