俺と邪神のデュエルモンスターズ   作:水混汁

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13話 オリエンテーション

 入学式から次の日。

 もはや懐かしいモーニングルーティンを終わらせる。

 前回よりも寝起きが良くなったのは不思議なものだ。

「おはよう」

『おはよー』

 時間を見計らって鶴寿に向かう。

 すると見慣れた顔ぶれがそこに居た。

「おはよー」

『おはようございます』

「おはよう」

『ふぁああ……はよー』

 今日、漣に憑いているのは《神炎皇ウリア》だ。

 聞けば日替わりで憑いているらしい。

 集まったところで学校へ向かう。

「今日は午前が学校案内で午後が新入生オリエンテーションだっけ?」

「うん。オリエンテーリングでの部活紹介の後は体験入部の時間になるね。基本的に役員か部活のどっちには入らなきゃいけないわけだけど、どこの部活に入ろうかな」

「最悪は名前貸しの幽霊部員が許されるところにするかー」

「へぇ、そこは学校によって違うんだね」

「そっちは違ったの?」

「そうだね。私塾に通うのが基本の子供ばっかりだから、部活は希望者だけなんだ。その代わり、部活に入るのは小さい頃から習っていたりするから必然的にレベルが高くなるんだよね」

「強豪校の強さの一端ってやつか」

 そんな話をしながら歩いていると繁華街に入る。

 鉄道も通るこの場所は近辺の学生たちが集う憩いの場である。

 中々充実しておりカードショップも集中しているため、叔父さんは新規顧客が中々増えないと嘆いていたな。

 繁華街を越えれば我らが母校たる有泰(ゆうだい)中学校だ。

 同じ制服を纏う学生たちの流れに混ざって校内へと入るのだった。

 

          ●

 

 そして時は流れて昼休み。

 懐かしの給食を食べ、皆が思い思いに過ごしていた。

 近所の小学校から進学した真希は友人が多く、あっという間に女生徒に囲まれていた。

 対する俺と漣は別の地域からの転居組。

 知人が誰もいないため、必然的に漣と固まることとなった。

 精霊組は学校探検に出発しているため不在だ。

「……学校案内に新鮮味が無い」

「あはは。僕は楽しかったけど、君は一度経験しているもんね」

「しっかし、俺はともかく漣が遠巻きにされるとはなぁ」

 漣は誰からも声を掛けられることなくボッチであった。

 原因は“翡山”という名前。

 女子生徒からは玉の輿のような視線を浴び、男子生徒からはお坊ちゃんだと敬遠された。

 だからこうして駄弁っていても遠巻きに観察されるだけだ。

「そうかい? 下心丸出しで近づかれるよりは気楽だよ? 君と紫藤さん、それに三幻魔の皆が居るから寂しくないし」

「……お前も苦労してたんだなぁ」

 金持ちは金持ちの悩みがあるらしい。

「話は変わって、部活の件だけど」

 取り出すのは一枚のプリント。

 先ほど配布された新入生オリエンテーションの小冊子だ。

 内容は紹介の順番と部活からの一言が掲載されているのだが。

「うん。誤字か何かかと思ったけれど、この世界なら無い方が不自然だよね」

決闘(デュエル)部が本当に存在してるとはなぁ。ただ、紹介が最後なのが気になるけど」

 部活紹介の順番を眺めると、頭の方こそ運動部を筆頭に、吹奏楽部などの人気の部活で固められている。

 後の方になる程、数学部や英語研究部のような特色の強いが知名度が低めの部活となっている。

 その最後にこの世界の誰もが知るデュエルモンスターズに関する部活が置かれている違和感。

 単に大トリを飾るだけなのかもしれないが、それにしては冊子の紹介スペースが小さ過ぎる。

 他の部活と共有しているとはいえ一ページの半分も無いぞ。

 野球部や吹奏楽部なんて一ページどころか見開きで埋まっているというのに。

「なんだか嫌な予感がしてきたな」

「体験入部もできるようだし、一度見ておいても損は無いかもね」

 その疑問は数十分後のオリエンテーションで氷解することとなった。

 人気で人が集まる部活はその人手を利用した派手なパフォーマンスを披露する。

 人が少なければ部活の特色を活かした紹介で強い印象を残そうとしていた。

 そんな紹介が進むごとにどんどん地味になって、遂には大トリの決闘部。

 そこに現れたのは女子生徒一人だけであった。

「し、新入生の皆さん初めまして! でゅっ決闘部です! 決闘部ではっカードや戦術の研究を行い、大会での優勝及び入賞を目指していましゅ! 初心者でも大歓迎ですっ。し、諸事情あって、部員は私一人ですがっ、その分付きっ切りで教えたりできます! 私と一緒に決闘者として研鑽していきましょう! 以上、決闘部部長錦壌(きんじょう)実穂(みほ)でした!」

 たった一人の部活紹介。

 それに対してどこか冷ややかな空気が流れる。

 それでも彼女は胸を張って紹介を終えたのだった。

 そうしてオリエンテーションが終われば仮入部の時間である。

 一度教室に戻った生徒たちが三々五々に散らばって行く。

 それを尻目に小冊子を捲る。

「あれ? 決闘部に行かないのかい?」

「ああいや、決闘部の活動場所を確認してたんだけどさ……他の部活とダブってるんだよ」

 文芸部と同じ教室が指定されているわけだ。

「この世界での遊戯王の重要性って凄まじいものだろ? それに関する部活がこんな扱いをされているっていうのが気になってさ」

 少なくともテレビでは野球やサッカー等のプロスポーツと同じ頻度でニュースが流れる。

 新聞でも似たようなものだ。

「――それについては私が説明してしんぜよう」

 横から入ってきたのは真希だった。

「小学校からの友達は良いのか?」

「あー、その辺りは大丈夫大丈夫。今度、情報収集に協力してくれたお礼はしなきゃいけないけど」

「本当に大丈夫か? めっちゃ見られてるけど?」

 教室の隅に固まっている女子がそうなのだろうが、彼女らから穴が開きそうな程に見られている。

 まあ、仲良くしていた友人がぽっと出の異性に取られれば良い気はしないだろう。

 そんなことお構い無しとばかりに彼女は俺たちの腕を引っ張った。

「さ、決闘部に行きましょう。事情は向かいながら説明するから。時間は待ってくれないわよ?」

 真希の勢いに流されるまま俺たちは教室を後にするのだった。

 

          ●

 

 部室への道すがら語られたそれは、信じられないようなものだった。

「――その結果、DPの横領が発覚した現三年生は公式決闘者の身分を永久抹消されて転校処分、除け者でノルマの為に大会に参加させられていた錦壌先輩だけが残ったのよ」

「……思ってた以上に事情が重いんだが」

「そっかDPは建前上は金銭扱いじゃないとはいえ、金銭トラブルに直結するからこそだよね。そして、この世界で公式の決闘者に成れないのは中々の罰なんだろうね」

「その錦壌先輩もDPを巻き上げられて碌にパックも剥けていないって話よ。おかげで大会は一回戦負けが当たり前だし、有泰の決闘部は地区最弱とか言われているそうよ」

「それでも決闘部を存続させようとしているんだから凄い先輩だな」

 少なくとも諦めないという一点では彼女は一端の決闘者であるのだろう。

「……ここね」

 辿り着いたのは校舎の隅ともいえる場所。

 “文芸部”の看板の下に手書きの“決闘部”という紙が貼られていた。

「お邪魔しまーす」

「あら、文芸部に用かしら?」

 対応するのは落ち着いた様子の女子生徒。

 たしか文芸部の部長だったか。

「いえ、“決闘部”の方です。錦壌先輩は居ますか?」

「あら、そっちなのね。なら今呼ぶわ。錦壌さーん」

「――はっはい! 何でしょうか!? 備品の補充ですか!? それとも資料の運搬ですか!?」

 いそいそと現れた彼女は完全に下っ端根性が染みついていた。

「いつも手伝って頂いて助かってはいるのですよ? ですが、その言い方ですと私が扱き使っているように聞こえてしまうのですが……」

「いえ、間借りさせて貰っている以上、お手伝いするのは当然ですからっ!」

 とはいえ、彼女たちの仲は悪くないようだ。

「彼女たちの用件は貴女なんですよ。決闘部部長の錦壌実穂さん」

「はぇ? 私?」

 呆然とした表情の彼女と目が合った。

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