俺と邪神のデュエルモンスターズ   作:水混汁

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15話 決闘部の初活動

 俺たちは体験入部期間の最終日に入部届を提出した。

「決闘部……本当に良いのか?」

「はい。決めた事ですから」

 教師すらそれとなく引き留められたが、無視して申請を通した。

 こうして晴れて決闘部の一員になったのだ。

「過去に色々あったとはいえ、体験入部期間に俺たち以外で顔を見せる生徒は居なかったな」

「んー、聞いた話を総合すると、コミュニケーションで決闘する用はともかく、大会とかの競技レベルとなると相応のパワーカード、いわゆるレアカードが必須になるわ。で、レアカード狙いでパック剥きするとなると、そこまでお金を掛けられる人は少なくなるのよね。だからこそ、デッキ強化には決闘部みたいな複数人でパックを剥いて収集したカードを保管、分配できる組織が必須なんだけど、有泰の決闘部は……」

「在庫が無いから強くもなれないってか。世知辛いな」

「僕たちのように個人で在庫が有り余っている方がおかしいんだろうね」

 そうして文芸部兼決闘部の部室に着くと。

「あ、皆、入部してくれてありがとう! これで決闘部が存続できる!」

 出会って早々、不穏な言葉が聞こえたんだが?

「……もしかして部活の認定に部員数の規定があったりします?」

「うん。最低でも部員が3人以上。だから君たちが入ってくれたおかげで今年も決闘部を継続できたの!」

 思っていた以上に切羽詰まっていた。

 というか、俺たちが来なければ廃部になってたんかい。

 学校側としては問題を起こした部活を残したくないんだろうが、流石に錦壌先輩が可哀想ではないか。

 もしかして廃部の指示が無かったのは、人数不足で解散するのを見越してたのか?

「よし、それじゃあ正式に部員になった皆の力量を計るため決闘……すると文芸部に迷惑が掛かっちゃうね」

 部室が合併しているからこその弊害。

 この瞬間を待っていたのだ。

「なら、カードショップでやりませんか? ウチの校則だと部活動に関することなら校外活動も認められていますし」

「うーん。確かに認められてはいるけれど、この近所のカードショップはそういう活動を禁止されているか、別の学校やグループの拠点になってたりしてそう簡単には……」

「実は繁華街を超えた先になりますが、玩具屋とカードショップを兼ねてる店があるんです。そこは俺の叔父さんが営業しているお店で小型の決闘場もあるんですよ。活動の許可は貰っているんで宜しければ一度は下見に来てもらえればと」

「え、そんなお店が? ……そうだね一度伺わせてもらおうかな。いつまでもこっちの都合に文芸部を付き合わせる訳にはいかないし」

 上手いことこちらの考えに乗ってくれたので、荷物を持って鶴寿に移動する。

「住宅街の傍にあるカードショップかあ。駅前じゃなくてこっちを利用しているということは皆の自宅はこの付近、ということかな?」

「そうですね。俺と真希は店のすぐ隣なんですよ。んで漣が――」

「僕はそこからもう少し歩いたマンションに住んでるんです」

「そんな感じなんで必然的に叔父さんの店に集まる形になったんですよね」

「そうなんだ。そういうのって羨ましいな」

 そんな話をしているうちに鶴寿に辿り着いた。

 店の中は相も変わらず人気が無い。

「いらっしゃいませ。鶴寿にようこそ」

 出迎えたのは叔父さんだ。

 彩鳥さんは仕事の都合ということで今日の朝に帰宅してしまった。

「お、お邪魔します! ゆ、有泰中学校の決闘部部長の錦壌実穂と申します! この度はお店をお借りしますっ!」

「うん。深弥くんから話は聞いてるよ。私としても集客に繋がりそうだから許可を出したけど、一つだけノルマを与えたいかな」

 ん? そんな話聞いてないんだが?

「ノルマ、ですか?」

「簡単な話さ。ウチの常連は社会人のせいか週末だけ来るんだけどね。錦壌さんには常連の誰か一人に勝ってもらいたい。期限は特に決めないでおこうか」

「ちょ、叔父さん!?」

 問い質そうにも含みを持った視線で止められてしまう。

「何、負けたところで許可を取り消したりしないよ。ただ、錦壌さんの本気が見たいんだ」

「私の、本気ですか」

「ぶっちゃけ、私の甥たる深弥くんに真輝ちゃん、そして漣くん。この子たちと関わるということは決闘者としての常識どころか誇りを砕かれかねないからね」

 実は仮入部初日のお邪魔した当日で三幻魔のお披露目も済ませている。

 彩鳥さんがやけに興奮していた記憶があるけど、少なくともそれからは三人一括りで扱われているのは確かだ。

「けれど、強くなりたいのなら最適な相手でもある。その代償は計り知れないけれどね」

「そ、そうなんですか?」

「正直、身内で遊んでばっかりで俺たちの実力が世間一般ではどのレベルか知らないんですよ」

「そんな私たちですが、少なくとも店長さんからは一端の決闘者レベルの太鼓判を貰ってはいます」

「この前、たまたま遊びに来た常連をボコボコにしてたしね。少し変わってるがウチの常連でもブロンズ2で上澄みの腕前はあったんだがなぁ」

「あのー店長? ボコボコにされておきながら恍惚の表情を浮かべるのは少しどころではないのでは?」

 骨董品マニアだからってああもなるものかよ。

「そんな実力を彼らは持ってるんだ。けれどプライドが許さないのなら彼らの助力を得ずに自己研鑽したってもいい。事情は聞いているしパックの学生割ぐらいは効かせてあげられるからさ。これは正直私の自己満足みたいなものさ。錦壌さんがうちの常連相手にどこまで強くなるのかその本気度を知りたいだけなんだよ」

「強く……本気で……分かりました。私は有泰中学校の決闘部部長として常連さんに勝ちます!」

 意志の籠った宣言に叔父さんは満足そうに笑みを浮かべた。

「なら、まずは彼らの実力を身をもって知るところから始めようか」

 

          ●

 

 意気揚々と決闘場に向かう錦壌先輩と真希を見送る。

「叔父さん、何であんな条件をつけたの? おまけに使うデッキまで指定しちゃってさ」

 今回真希が使うのは《ブラック・マジシャン》。

 以前、見せてもらった先輩のデッキ相手には過剰なパワーを持つ。

「錦壌さんの境遇には同情するけど、大事なのは身内の深弥くんと真希ちゃんだからさ」

 返ってきたのは予想もしなかった答えであった。

「何でそこで俺たちなの?」

「君たちは気付いてないけど、君たちは年齢の割に強過ぎるんだ。君たちに聞いた限り、錦壌さんはそこまで強くないんだろう?」

「んーいや、まぁ……」

 偉そうに他人を批評することができずに口ごもってしまう。

「その反応が答えだね。君たちは恐らく同年代でも上澄みだと私は思うよ」

「上澄みってそんな大それたものじゃ」

 ショップ大会で2勝がやっとのファンデッカーだぞ。

「君たちは変な意味で世界を知らないよね? ともあれ、適当な大会に団体戦で参加すれば高確率で優勝できるだろう。たとえ足手纏いが居たとしてもね」

「足手纏いって」

「もちろん彼女はそこまで悪辣ではないだろうけどね。けれど、君たちを利用して大会に名前を残すことはできるだろう。それに今はどんな公式大会でも入賞した時点でDPが貰えるからね、団体戦は頭割りになるとはいえ優勝した時のDPは莫大だ」

 魔が差すにはDPの価値は十分だ。

 金銭の代用可能という価値が足を踏み外し易くしている。

 その果てが転校した連中なのだ。

「だから下手に拗れる前にこうして力の差をハッキリさせた上で、彼女が部長として居られるのか素質を確かめたいんだ。折れればそこまで、強くなれば君たちを利用する理由も無くなるからね」

「……言い分は解ったけど、流石にアレは見ていられないよ」

 

「《ブラック・マジシャン》で直接攻撃(ダイレクトアタック)します!」

「ひぃ――!」

 

 錦壌先輩のライフポイントが0になる。

 この僅かな会話の間にだ。

「次は深弥くんね。使用デッキは《真紅眼の黒竜》で、それと本気でね」

「理由を聞いた上でも気が進まないなぁ」

 決闘場に向かうと真希が戻って来るところだった。

 その表情は苦々しかった。

「あー、お疲れさま?」

「うん。……なんでこういう時に限ってデッキがぶん回るんだろうね」

 決闘というには余りにも一方的な結果。

 弱い者虐めにしかならない状況は彼女も望んでいないだろうから。

「頑張って……っていうのも違うかもしれないけど」

「まあ、とりあえず本気でやってみるよ」

 真希と交代して決闘場に立つ。

「次は俺ですが……大丈夫ですか?」

 対面に立つ錦壌先輩は目に見えてやつれていた。

「う、うん大丈夫。部長として部員の実力はハッキリ確認しないといけないからね」

 明らかに空元気であるが、指摘することもできなかった。

「では連続になりますが、対戦よろしくお願いします」

「はい、対戦よろしくお願いします」

 お互いに手札を5枚引いて一息つく。

『決闘!』

 掛け声と共に決闘が始まったのだが、

 

「……では永続罠《真紅眼の鎧旋(リターン・オブ・レッドアイズ)》の効果で墓地の“レッドアイズ”通常モンスター、《真紅眼の黒竜》を蘇生します」

「そんな、やっと倒したのに……」

「そして魔法カード《黒炎弾》を発動。場の《真紅眼の黒竜》の攻撃力である2,400のダメージを与えます」

 火炎球は壁として並ぶモンスターを越えて彼女へ届く。

「あ、あぁ……ライフが……」

 

 錦壌先輩のライフは0になった。

 ここまで息苦しい決闘も中々無い。

「えっと、その、対戦ありがとうございました」

「あ、ありがとうござっ、いました……」

 もはや泣く寸前だ。

 このまま漣の相手まで耐えきれるのだろうか。

 叔父さんに視線を向けるも首を横に振られるのみだ。

 カードを片付け決闘場を後にする。

「やあ、お疲れさま。やり難そうだったね」

「ああ、うん。やり難いなんてもんじゃないよコレは」

「理由は店長さんに聞いたけど、遊戯王の価値が高まっているからこその懸念なんて思いもしなかったよ」

 そのまま漣と入れ替わる。

 そして始まった決闘だったが、

 

「《青き眼の激臨》を発動します。このカードを含んだ自分の手札・場・墓地のカードを全て裏側表示で除外してデッキから《青眼の白龍》を3体まで特殊召喚します」

「ぶ、《青眼の白龍》!? そ、それも3体……」

「3体で攻撃して僕の勝ちです」

「わ、ワンターンで負けました?」

 

 後攻を取った漣がそのままワンキルを決めてしまった。

 あのデッキはこの前使った“激臨ワンキル”のままだったか。

 乙女軸にしろカオスMAX軸にしろ結果は変わらないとはいえ、これは酷い。

 錦壌先輩も、驚けば良いのか悔しがれば良いのか分からなくて呆然としているじゃないか。

「対戦ありがとうございました」

「ありがとうございました?」

 そして二人が戻って来る。

 漣はともかく、先輩は夢見心地のままだ。

「えっと、大丈夫ですか先輩?」

「私は大丈夫……え、大丈夫? うん大丈夫。たぶん大丈夫で大丈夫なの」

 あ、駄目だ。完全に混乱しておるわ。

 目をグルグルさせている先輩を席に座らせて飲み物を用意する。

 正気に戻るまでにそれなりの時間を要することとなった。

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