俺と邪神のデュエルモンスターズ   作:水混汁

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追記:マスターデュエルで確認したらマディスと呼ぶ者、どっちも効果発動できましたので、修正しています。
ありがとうマスターデュエル!


19話 部長の意地:前

 倒れていた少年から話を聞いて俺たちは事態を把握した。

 原作でもあったようなカードのカツアゲが実際に行われていたというのだ。

 そして部長は少年のカードを取り戻すために不良に勝負を挑んだとのこと。

「一応、部長のデッキは戦えるレベルにはなってるけど……」

「うん、まだ回し足りてないんだよね」

「けれど、ここは部長を信じるしかないよ」

 

          ●

 

 ターンランプが点いたのは男だ。

 

「ちっ、先行か。攻撃できねぇな」

 

 悪態を付きながらも男は手札を切る。

 

「《レスキューラビット》を召喚するぜ」

 

 現れたのは安全ヘルメットを被り無線機を首からぶら下げた兎。

 攻守は共に低い可愛らしい姿のモンスターだ。

 以前の私ならば無警戒どころか侮ったであろう。

 けれども、こういったモンスターは厄介な効果を持っていたり、デッキの初動であるパターンが多い。

 後輩から実戦形式で何度も教わったのだ。

 

「《レスキューラビット》の効果! コイツを除外してデッキから同名の通常モンスター2体、《ヴェルズ・ヘリオロープ》を呼び出すぞ」

 

 瞬く間に邪悪な騎士が並び立つ。

 レベル4で攻撃力1950という高水準の性能を持つモンスター。

 下級通常モンスターの最大攻撃力が2000という事実を考慮すると十二分に脅威だ。

 

「……でも、それで終わらないよね」

 

 高攻撃力のモンスターが並ぶのは脅威だが、ただ並べるだけで優位を取れるかといえばそうではないのが決闘なのだ。

 

「俺は場の《ヴェルズ・ヘリオロープ》でオーバーレイ! 2体の闇属性モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築! エクシーズ召喚! 《ヴェルズ・タナトス》!」

 

《ヴェルズ・タナトス》:★4 攻2350 守1350 ORU2

 

 星の海から姿を現すのは落ちた神馬に騎乗する王。

 その威容から放たれるプレッシャーに思わず一歩下がってしまう。

 

 現れたモンスターに反応したのは当事者だけはなかった。

『うっわ。薄っすらと匂うなって思ってたらコレかぁ』

『……間違いなく、出処は同じでしょう』

 邪神と創造神が顔を顰める。

「おい、まさかあのヴェルズって」

『間違いなく“支援者”が用意したものだろうね』

「ということは、あの男は手先ってこと?」

『いえ、恐らくカードをどこかで手に入れたのでしょう。精神への汚染も見受けられますから、使う程によろしくないことだけは確かですが』

『成る程、あれが噂の支援者のカード。実物を見たのは初めてですが、聞きしに勝る汚らわしさですね。純粋な闇が我欲で濁りきっていますし、少なくともマスターに近づけることはしたくありませんね』

「ラビエル……アレって精霊視点じゃ汚物扱いなんだ」

 そんな外野の様子に気付かない程に錦壌実穂は集中していた。

 

「チッ、先行なら蹂躙できたんだがな。俺はカードを2枚セットしてターンエンドだ」

 

          ●

 

 不良 LP4,000 手札2枚 伏せ2枚

攻撃:ヴェルズ・タナトス:★4 攻2350 守1350 ORU2

 

〇錦壌 LP4,000 手札5枚 伏せ0枚

 

          ●

 

 エクストラモンスターという強敵が立ったまま渡されるターン。

 以前の私なら絶望していた盤面だ。

 けれど今は違う。

 寄せ集めではない、戦うためのデッキがある。

 

 ……とはいえ、勝てるかどうかは私のドロー次第なところがあるんだよね……。

 

 決闘盤に収まるのは後輩たちが用意してくれたカードで組んだデッキ。

 私が所持していたカードなんて数枚しか入っていない。

 昨日も何度か回して練習したが、デッキに認められたとは思えない。

 現に手札には現状の打開に繋がるカードが無い。

 投入比率から考えても低い確率なのに。

 けれども、これは負けられない戦いだ。

 

「私のターン。……お願い。私に力を貸して! ドロー!」

 

 引いたカードは――

 

「……っ!」

「おいおい。ビビってんのか? ならさっさとサレンダーしてカードを渡しな!」

「……違うわ」

 

 そう、胸の内にあるのは恐怖ではない。

 

「考えていたのよ。貴方を倒す算段を!」

 

 デッキが応えてくれた喜びだ!

 

「んだとぉ?」

「私は手札から魔法カード《おろかな副葬》を発動! デッキから永続罠カード《ナチュルの神星樹》を墓地に送るよ!」

 

 少し前までは《おろかな○○》と名の付いたカードの有用性が分からなかった。

 デッキから墓地にカードを落とす。

 墓地に置いたところで何の意味があるのか全く見向きもしなかった。

 

「そして《ナチュルの神星樹》は墓地に送られた場合、デッキから神星樹以外の「ナチュル」カード1枚を手札に加えることができる! 私が選ぶのは《ナチュル・パンプキン》!」

 

 《ナチュルの神星樹》のように場だけではなく、墓地に行くことでも効果を発揮するカードを能動的に発動することができるのが強みだったのだ。

 コンボが前提ではあるものの、このデッキにおいては有用なサーチカードに変化するのだ。

 

「手札に加わった《ナチュル・パンプキン》を通常召喚! 《ナチュル・パンプキン》は召喚成功時に手札からナチュルと名の付いたモンスターを特殊召喚できるんだ。おいで《ナチュル・ナーブ》」

 

 カボチャと木の葉の精霊が場に並ぶ。

 

「更に場のナチュルが効果を発動したターン、手札の《ナチュル・ハイドランジー》は特殊召喚できる!」

 

 大小様々なモンスターが3体並んだ。

 これだけ多くのモンスターを並ばせたのは始めてだ。

 そして《ナチュル・ナーブ》は相手の罠に強く出れるモンスターであるが、レベル1のチューナーモンスターでもある。

 レベル4のパンプキンとレベル5のハイドランジー。

 どちらとシンクロ召喚するかで今後の戦略の方向性は大幅に変わる。

 

 ……モンスターは1体、魔法・罠ゾーン(バック)は2枚。うーん、高攻撃力モンスターの頭数を減らしてまで《ヴェルズ・タナトス》を単体で残したんだよね。効果は知らないけれど除去を受けても本体かバックのカードで対応できるってところかな。

 

 自分なりに盤面から意図を読み取れるようになったのは大きな成長だと自負する。

 後輩たちは私の地力だと褒めてくれたが、後輩たちの協力が無ければ淡々とカードを切るだけの決闘者になっていただろう。

 

「……決めた! 私はレベル4、《ナチュル・パンプキン》にレベル1《ナチュル・ナーブ》をチューニング! 林海を守護せし神獣よ! 立ちはだかる魔を嚙み砕け! シンクロ召喚! おいで、《ナチュル・ビースト》!」

 

《ナチュル・ビースト》:☆6 攻2200 守1700

 

 深緑の獣毛と木造の鎧を纏う虎。

 このデッキにおけるエースの一角だ。

 

「っは、御大層な口上の割には攻撃力が足りねぇじゃねぇかよ」

「良いんだよ。ナチュルは速攻を掛けるデッキじゃないからね。カードを2枚伏せてターンエンド」

 

 そう、ナチュルは仲間と協力することで真価を発揮するのだから。

 

「ここでナチュビ? パルキオンで殴った方が良くないか?」

「うーん。多分《ヴェルズ・タナトス》の未知の効果を警戒したんじゃないかな? セットカード次第だけどナチュルならある程度対応できるだろうし」

「後はこれまでの経験だね。負け続けたせいで攻め気が弱い部分があるよね」

 

          ●

 

〇不良 LP4,000 手札2枚 伏せ2枚

攻撃:ヴェルズ・タナトス   :★4 攻2350 守1350 OU2

 

 錦壌 LP4,000 手札1枚 伏せ2枚

攻撃:ナチュル・ビースト   :☆6 攻2200 守1700

守備:ナチュル・ハイドランジー:☆4 攻1900 守2000

 

          ●

 

「何を考えているか知らないが、雑魚を並べるだけなら俺の勝ちだな」

 

 ドローしたカードを見て口端を上げる。

 

「まずは手札の質でも高めるとするか。魔法カード《手札抹殺》を発動するぜ」

「てっ手札抹殺って、そんなレアカードを!?」

「良いだろ? そこらの雑魚が持っているより、俺の方が有効活用できるからな」

「っ、ということはそのカードも誰かから奪ったんだね!」

「負けたヤツが悪いんだよ! さあ手札を入れ替えな!」

「――っ」

 

 互いに手札を入れ替える。

 

「俺のデッキはさっさとケリを着けろって言っているな」

「私はそう簡単にやられたりはしないよ」

「はっ、それはこの後分かることだ! 俺はセットしていた罠カード《侵略の波紋》を発動! ライフを500払い、墓地のレベル4以下の「インヴェルズ」モンスター、《インヴェルズを呼ぶ者》を蘇生するぜ」

 

 現れたのは昆虫のような羽を生やす異形であった。

 なまじ人に近い姿は嫌悪感を誘発する。

 

「今、罠カードを発動したね? それによって手札の《ナチュル・ロック》の効果発動! デッキの上から1枚墓地に送ることで自身を特殊召喚できる!」

 

 ナチュル・ロック :☆4 攻1200 守1200

 

「チィ、今引きか。まあ雑魚が何匹並ぼうが構わねぇ。《インヴェルズを呼ぶ者》をリリースし、手札の《インヴェルズ・マディス》をアドバンス召喚!」

 

 上級モンスターの召喚の為に光となった呼ぶ者は消え去る間際に奇声を上げた。

 その声は断末魔ではなく、その名前通りの役割を果たしたのだ。

 

「この時、マディスと呼ぶ者の両方の効果が発動する! まず《インヴェルズを呼ぶ者》の効果! 呼ぶ者をリリースして「インヴェルズ」のアドバンス召喚に成功した時、デッキからレベル4以下の「インヴェルズ」モンスターを呼び出すことができる! 来い! 《インヴェルズの先鋭》!」

 

 インヴェルズ・マディス :☆5 攻2200 守0

 インヴェルズの先鋭   :☆4 攻1850 守0

 

「続いてマディスの効果! ライフを1000支払うことで墓地の「インヴェルズ」モンスター、《インヴェルズを呼ぶ者》を蘇生させる!」

 

 インヴェルズを呼ぶ者  :☆4 攻1700 守0

 

「バトルフェイズ! さあ、総攻撃を喰らいな!」

「そうはさせない! 永続罠《ナチュルの神星樹》を発動するよ! 場の植物族・地属性モンスター、《ナチュル・ハイドランジー》をリリースしてデッキからレベル4以下の昆虫族・地属性モンスター1体、《ナチュル・スティンクバグ》を特殊召喚!」

 

 光に消える紫陽花の中から現れたのはカメムシに似た姿のモンスターだ。

 

「そんな雑魚に何が出来るってんだ! 《インヴェルズの先鋭》ぇ! 踏み潰せ!」

「――「ナチュル」モンスターが攻撃対象になった時、《ナチュル・スティンクバグ》をリリースすることで攻撃を無効にしてバトルフェイズを終了させる!」

 

 危険を感じた《ナチュル・スティンクバグ》は小さな体躯から液体を噴き出した。

 その液体は外敵からの防御のために分泌されるもの。

 そんなものを真正面から喰らった《インヴェルズの先鋭》としては溜まったものではない。

 刺激臭にのたうち回りながら自身の場へと戻る。

 漂う悪臭に仲間のモンスターもどことなく距離を取っているようにも見える。

 

「ナチュルの結束力は馬鹿にできたものじゃないでしょ?」

「チッ、だが無駄な抵抗でしかねぇ。このままターンエンドだ」

 

          ●

 

 不良 LP2,500 手札1枚 伏せ1枚

攻撃:ヴェルズ・タナトス   :★4 攻2350 守1350 ORU2

攻撃:インヴェルズ・マディス :☆5 攻2200 守0

攻撃:インヴェルズの先鋭   :☆4 攻1850 守0

攻撃:インヴェルズを呼ぶ者  :☆4 攻1700 守0

 

 

〇錦壌 LP4,000 手札0枚 伏せ1枚

攻撃:ナチュル・ビースト   :☆6 攻2200 守1700

守備:ナチュル・ロック    :☆3 攻1200 守1200

 

永罠:ナチュルの神星樹

 

          ●

 

 これまでの経験と努力が結実している姿に後輩たちは盛り上がる。

「いける……いけるぞ。頑張れ! 錦壌部長!」

「先鋭の効果が怖いけど、引き次第では十分に捲れそうだね」

「うん。僕たちからしても勝ち目は十分にあるように見える……けれど、精霊的には違うみたいだね」

 決闘者の視線で観戦する彼らに対し精霊たちはどこか訝し気な視線を不良に向けていた。

『あのヴェルズカードたちも臭うは臭うんだけど……アレはオマケでしょうね。本命となるカードがある筈』

「ヴェルズがオマケ?」

『はい。先の状況からして恐らく精霊にもダメージを与える程の何かがある筈です』

「それが決闘で発生したというなら、カードとしてデッキに投入されている可能性が高いわね」

『感覚からして、1から作り上げたのではなく、恐らく既存のカードに手を加えていますね。いわば書き換え(チート)カードだと思うのですが』

「彼の態度からして特殊勝利の類じゃないだろうけど。……そうだ。君、ちょっといいかい?」

 分からなければ知る者から聞けば良い。

 先程、決闘に負けた少年ならば知っている、そう考えた。

 翡山は少年に問い掛ける。

「え、えっと何でしょうか?」

「何で敬語? 同年代だよね?」

 少年の心はどこか彼らと距離を置いていた。

 無理もない。

 助けに来てくれた錦壌なる少女の後輩であることは見ていれば分かる。

 ただ、観戦での会話が奇妙であった。

 普通に会話をしていたかと思えば、突然黙り込んだり、過程を省いて結論に飛んだりするのだ。

 カードの精霊が見えぬ一般人たる少年としては、どこか奇妙で恐ろしいものにしか見えない。

 だが、不良の彼よりは善性であることは分かるので無視することはしなかった。

「まあいいや。さっきの彼との決闘で変なカードを使われたりしなかったかい?」

「変なカード、ですか?」

「うん。すっごい強力だったり、反則だろソレ、ってカード」

「うーん――侵略の何たらって魔法カード?」

「あーうん、それも強力なんだけど……あ、決闘の決着になったカードは何だったかな?」

 その質問には直ぐ思い当たるものがあったらしい。

「ああ、それなら――」

 少年が語った1枚のカード。

 それはOCG出身の決闘者が反応するのに十分だった。




インヴェルズの効果処理がマジで怖くてしょうがないです。
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