俺と邪神のデュエルモンスターズ   作:水混汁

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リリーサーの禁止は残念ながらも当然。
おかげでデモリッシャーに置き換える事となりました。

そして貴重なリリース要員であるリンクロスの制限は悲しみしかない。
でも、神・スライムの追加があるのでオッケーです。


4話 悪夢との決別 《終わりの始まり》

〇不審者 LP3,350 手札1枚 伏せ0枚 魔0 罠0

攻撃:ヴェルズ・オピオン:★4 攻2550 守1650 ORU1

 

 少 年 LP4,000 手札3枚 伏せ0枚 魔1 罠0

攻撃:邪神アバター:☆10 攻2650 守2650

守備:黄泉ガエル :☆ 1 攻 100 守 100

 

         ●

 

「許さない……許さないよぉ! ドロー!」

 

 痛みを憎悪に変えて男は少年を睨みつける。

 

「君のデッキは数を揃えて上級モンスターを召喚するようだねぇ。ならばオピオンの特殊召喚制限効果は意味が無いようだぁ。オピオンの効果で《侵略の侵喰崩壊》を手札に加えるぅ」

「1体のヴェルズをコストに2枚を除去できるカードか」

「発動できなくとも手札に加える意味はあるだろぅ? そしてぇ、私は《レスキューラビット》を通常召喚だぁ」

 

 フィールドに現れたのは首にトランシーバーを下げ、工事帽(ヘルメット)を被るウサギ。

 その長い耳がヘルメットを貫通している事に、安全性への懸念が生じる。

 

「場のラビットを除外し、デッキからレベル4以下の同名の通常モンスター2体を特殊召喚するぅ。私はぁ、通常モンスターの《ヴェルズ・ヘリオロープ》2体を呼び出すぅ」

 

 レスキューラビットはトランシーバーに何かを告げると地面に巨大な穴を開け、その中へ潜っていった。

 その小さな体躯からは考えられない大きな穴から、ヴェルズ・ヘリオロープが2体放り出される。

 その後、満足そうな顔を浮かべたレスキューラビットが顔を出す。

 一仕事やり遂げたレスキューラビットはそのまま穴を塞ぐとどこかへ消えていった。

 きっと次の救命活動があるのだろう。

 

「この効果で呼び出したモンスターはエンドフェイズに破壊されるぅ。が、素材にすれば関係なぁい。レベル4のヘリオロープ2体でエクシーズ召喚! 《恐牙狼 ダイヤウルフ》ゥ!」

 

 銀河の渦から飛び出すのは狼。

 ダイヤの様な艶やかで硬質な体毛を持つのが特徴的だ。

 

「流石にヴェルズ以外のカードも入っているか」

「ダイヤウルフの効果ぁ! OUを取り除き、ダイヤウルフとアバターを選択ぅ。そして選択したカードを破壊するぅ!」

 

 ダイヤウルフは体の各部からダイヤの牙を生やすとアバターへと突撃する。

 アバターも迎え撃つが、お互いに牙と槍を突き立てる結果となった。

 

「だがこの瞬間、墓地のラルバウールの効果発動! コイツが手札か墓地にある時、自分フィールドのモンスターが戦闘または相手の効果で破壊された場合に特殊召喚できる! そして、この効果で特殊召喚したこのカードは、フィールドから離れた場合に除外される。今回は特殊召喚時の効果は使わない」

「リリース要員を増やしたかぁ。ならばぁ、数を減らすのみぃ。バトルフェイズゥ! オピオンで攻撃ィ! 対象はカエルだぁ!」

「……反応(チェーン)は無い。黄泉ガエルは破壊されるが、守備表示のため戦闘ダメージは発生しない」

「黄泉ガエルの効果はぁ、アドバンス・ゾーンが存在するおかげで発動できなぁい。カードを2枚セットし、ターンエンドだぁ」

 

         ●

 

 不審者 LP3,350 手札0枚 伏せ2枚 魔0 罠0

攻撃:ヴェルズ・オピオン:★4 攻2550 守1650 ORU0

 

〇少 年 LP4,000 手札3枚 伏せ0枚 魔1 罠0

守備:妖醒龍ラルバウール:☆1 攻 0 守 0

 

         ●

 

 少年の場の邪神は消え去った。

 しかし、空は依然として黒く染まり、闇が去る気配はない。

 

「俺のターン、ドロー。……手札から《魔界発現世行きデスガイド》を通常召喚、そしてデスガイドの召喚成功時の効果を発動する。デッキから悪魔族・レベル3モンスター1体、クリッターを特殊召喚!」

 

 どこからともなく、悪魔の様な形状のフロントをした漆黒のバスがやって来る。

 バスは少年の背後で止まる。

 中にはバスガイドと思われる女性と三つ目の毛玉のようなモンスターが存在していた。

 そのままバスは乗客ごと2つの光となってリンクマーカーを形成する。

 

「そしてデスガイドとクリッターでリンク召喚、召喚条件はリンクモンスター以外のモンスター2体」

 

 点灯するリンクマーカーは左下と右下。

 

「現れろ、リンク2《I:Pマスカレーナ》!」

 

 現れるのはローラースケートを履いた少女。

 SFチックな衣装に身を包み、揶揄うように舌を出す姿は幼くはあるものの、彼女の本業は依頼によってあらゆるデータを盗み届ける運び屋である。

 この可愛らしい姿も仕事を円滑に進めるためにある、数多くある姿の一つでしかない。

 

「そして場から墓地に送られたクリッターの効果、デッキから攻撃力1500以下のモンスターを手札に加える。加えるのは《儀式魔人デモリッシャー》。そして手札のジェスター・コンフィを特殊召喚。……さて、フィールドのラルバウールは自身の効果でフィールドから離れれば除外されてしまう。だが、そのデメリットを帳消しにする方法はある。それが何だが分かるよな?」

「同じレベルが2体……エクシーズ召喚かぁ!」

 

 答え合わせを行うかのように、ラルバウールとジェスター・コンフィ、2つの紫の光玉が銀河の渦に飛び込む。

 

「その通り! 俺はレベル1のラルバウールとジェスター・コンフィでオーバーレイ・ネットワークを構築! エクシーズ召喚! 《森羅の姫芽宮》!」

 

 光の奔流から現れたのは少女。

 緑の和装に身を包み、微笑みを浮かべていた。

 少女が醸し出す雰囲気は高貴な者のそれであり、とても戦う者には見えない。

 その場に着座するものの、彼女の足を守るかのようにコンクリートの地面に桃色の花が咲き乱れる。

 

「森羅の姫芽宮の効果。オーバレイ・ユニットを一つ取り除き、自分のデッキの一番上のカードを捲る。捲ったカードが魔法・罠カードだった場合は手札に、モンスターだったら墓地に送る」

 

 彼女が手を差し伸べると、近くを漂う光玉の一つが手に飛び乗る。

 すると光玉は葉に包まれた玉となる。

 それはふわりと浮かび上がると少年の元へと向かう。

 少年が葉玉を手に取ると、ひとりでに葉が捲れ、中からカードが姿を現す。

 現れたのは葉玉と同じ緑色のカード。

 

「……捲ったのは《貪欲な壺》のため、手札に加える。そして発動! 効果で墓地のモンスター5体をデッキに戻し2枚引く。戻すのはクリッター、魔界発現世行きデスガイド、妖醒龍ラルバウール、リンクロス、アカシック・マジシャンの5体だ。そして2枚ドロー。……このままターンエンド」

 

         ●

 

〇不審者 LP3,350 手札0枚 伏せ2枚 魔0 罠0

攻撃:ヴェルズ・オピオン:★4 攻2550 守1650 ORU0

 

 少 年 LP4,000 手札5枚 伏せ0枚 魔1 罠0

E左:I:Pマスカレーナ:L2 攻 800 左下/右下

守備:森羅の姫芽宮   :★1 攻1800 守 100 ORU1

 

         ●

 

「私のターン、ドロー。厄介なアバターの効果はこのターンまでぇ。そしてぇ、フィールドのモンスターの数で相手が上回って居る場合、手札から《ヴェルズ・マンドラゴ》を特殊召喚できるぅ。そしてバトルフェイズゥ!」

「ならばメインフェイズ終了時にI:Pマスカレーナの効果を発動する! このカードは相手メインフェイズに自身を含む自分フィールドのモンスターをリンク素材としてリンク召喚を行う!」

「相手のターンにリンク召喚だとぉ!?」

 

 I:Pマスカレーナと森羅の姫宮はお互いの手を取ると共にサーキットへ飛び込んだ。

 

「俺は場のI:Pマスカレーナと森羅の姫芽宮の2体でリンク召喚! 召喚条件はカード名が異なるモンスター2体以上!」

 

 マーカーは左、右、下の3ヵ所。

 

「リンク3《トロイメア・ユニコーン》!」

 

 サーキットから飛び出すのは全てが黄色の一角獣(ユニコーン)

 その背中には機械の翼を持つ。

 

「トロイメア・ユニコーンはリンク召喚に成功した場合、手札を1枚捨てる事で相手フィールドのカード1枚を持ち主のデッキに戻す! 俺は手札の《天帝従騎イデア》をコストにヴェルズ・オピオンをバウンスする!」

「わ、私のモンスターがぁ!?」

 

 一角獣の背中の羽から放たれた黄色の波動にオピオンは成す術なく吹き飛ばされた。

 

「さぁ、フェイズの巻き戻しが発生したけど、またバトルフェイズに入るか?」

「こ、このガキィ……ターンエンドォ!」

 

         ●

 

 不審者 LP3,350 手札0枚 伏せ2枚 魔0 罠0

攻撃:ヴェルズ・マンドラゴ:☆4 攻1550 守1450

 

〇少 年 LP4,000 手札4枚 伏せ0枚 魔1 罠0

E左:トロイメア・ユニコーン:L3 攻2200 左/右/下

 

         ●

 

「このターンからぁ、魔法・罠の制限が解除されるぅ。悪あがきはここまでだぁ」

「お前の伏せカードの1枚が侵食崩壊なのは分かっている。それさえ凌げば俺の勝ちだ。ドロー!」

 

 ドローカードを見て少年は笑った。

 

「俺は場のユニコーン1体でリンク召喚! 召喚条件はリンク2以上のリンクモンスター1体! 再び現れろ、リンク1《リンクロス》!」

「そのモンスターはぁ!?」

「そしてサイバース族のリンク召喚に成功した時、墓地の《スペース・インシュレイター》を自己再生! そしてリンクロスの召喚成功した場合の任意効果でリンク素材はリンク3、リンクトークンを3体特殊召喚する」

 

 少年の場にトークンを含めて5体のモンスターが並ぶ。

 

「まぁた邪神を召喚するつもりかぁ!」

「神なのは当たりだ! 俺は3体のトークンを生贄(リリース)! 現れろ、神に仕える従属神の王! 《神獣王バルバロス》!」

 

 光の粒子を巻き上げ現れるのは王。

 獣の下半身と屈強な肉体と獅子の顔を持つ上半身。

 手には盾と長大な突撃槍を持つ。

 その異形の風貌から放たれる威圧は邪神に及ばずとも思わず平伏しかねない。

 

「そして、3体を生贄して召喚したバルバロスは相手フィールドのカード全てを破壊する!」

「な、ならばぁ罠発動! 侵略の侵食崩壊ィ! ヴェルズと名の付くマンドラゴを除外し、バルバロスとインシュレイターを手札に戻すゥ!」

 

 ヴェルズ・マンドラゴから放たれた悪意の靄がバルバロスに纏わりつく。

 振り払おうと抵抗するが、靄の増殖速度に抗えずにその身は砕けた。

 

「だが、破壊効果は適用される! 伏せている罠は破壊させてもらう!」

 

 伏せていたカードは吹き荒れる風によって破砕する。

 

「こ、このガキィ! よくもぉ……! だがぁ、伏せカードの除去は対策済みだぁ。私はぁ、破壊された《ミラーフォース・ランチャー》の効果を発動ぅ!」

「面倒なカードを……」

「セットされたこのカードが相手の効果で破壊され墓地へ送られた場合、墓地のこのカードと自分の手札・デッキ・墓地の《聖なるバリア -ミラーフォース-》1枚を自分フィールドにセットする。そしてこの効果でセットしたカードはセットしたターンでも発動できるぅ」

 

 破壊された筈のカード、それが再生されたかと思えば2枚に分裂して場に伏せられた。

 

「なら、俺は手札から儀式魔法《闇の支配者との契約》を発動する! 自分の手札・フィールドから、レベルの合計が8以上になるようにモンスターをリリースし、手札から「闇の支配者-ゾーク」を儀式召喚する。リリースするのは手札のレベル3《魔界発現世行きデスガイド》とレベル3《儀式魔人デモリッシャー》。そして墓地のレベル1《儀式魔人ディザーズ》とレベル1《クリボール》だ!」

「馬鹿なぁ!? 墓地からだとぉ!?」

「儀式魔人モンスターとクリボールは儀式召喚時に墓地から除外する事でコストにできる!」

 

 フィールドに現れる魔法陣。

 そこに燃えるは8つの灯火。

 生贄(コスト)にされたモンスターのレベルがそれを灯す。

 

「さぁ降臨せよ! 全ての闇を統べる者、《闇の支配者(ダーク・マスター)-ゾーク》!」

 

 生贄を捧げ、現れるのは支配者。

 真紅の翼はマントでもあり、その半身を隠す。

 そしてその存在が放つ力は邪神にも匹敵していた。

 

「そ、そのカードは知っているぞぉ! 大邪神ゾーク・ネクロファデスと同じ名前を持ちながら何の変哲もないただのカードォ! 一束幾らで売られているノーマルカードだとぉ!」

 

 大層な名前ではあるものの、この世界ですらショップに行けばそこそこ見かけるレベルでしかない。

 まかり間違っても邪神と同等の存在感を放つものではない。

 

「……当たり前だ。それらは本体(ワタシ)の依り代であって、普段はただのカード。本体(ワタシ)がここに宿る以上、どう調べようが意味は無い」

 

 そう語る少年の目に光は無い。

 しかし、その昏い双眼は男を見据えていた。

 

「君――いや違うぅ、お前は誰だぁ!?」

「先程、自身(ワタシ)が言っただろう? 全ての闇を統べる者だと。さぁバトルフェイズだ。闇の支配者で直接攻撃(ダイレクトアタック)、ダークフェノメノン」

 

 支配者がその手を掲げる。

 すると、その手に闇が集まり渦を巻く。

 

「な、何を考えているのかは知らないがぁ! その攻撃宣言時ィ! 《聖なるバリア -ミラーフォース-》が発動するぅ!」

 

 闇の支配者から放たれる闇の波動を光のバリアが防ぐ。

 

「このカードは相手の攻撃宣言時に相手フィールドの攻撃表示モンスターを全て破壊するぅ! さぁ砕けちれぇ!!」

 

 輝く壁が攻撃の余波を跳ね返し、リンクロスを破壊する。

 それは今までに何度も目にした光景であり、その後はがら空きになったフィールドに総攻撃を仕掛る。

 それが、今まで鉄板の流れであった。

 だから、

 

「それはどうかな?」

 

 余裕綽々な少年の表情と無傷で存在するゾークが恐ろしかった。

 

「《儀式魔人ディザーズ》を儀式コストに召喚された儀式モンスターは罠の効果を受け付けない――つまり聖なるバリアでは破壊されない」

「なっ、何だその効果はぁ!?」

 

 聖なるバリアは徐々に闇に侵食される。

 軋みを上げ、その(バリア)にヒビが入る。

 

「そしてモンスターが存在し、攻撃は無効化されないため、そのままダメージを受けてもらう」

 

 闇は光のバリアを砕き、男を襲う。

 

「がっ……ギギィイイ――!?」

 

 その身を侵す闇の波動に男は耐えきれずに吹き飛ばされる。

 

 LP3,350 → LP 650

 

 少年はその様を眺めながらゲームを進める。

 

「このまま、エンドフェイズに移行する。そしてこのタイミングで、戻されはしたものの、バルバロスの召喚に成功したため、アドバンス・ゾーンの効果を適用する。まず、セットカードの破壊は仕方ないがランチャーを破壊するとしよう。どうせ意味が無い。そして1枚ドロー。……猫か、ならば墓地から邪神アバターを手札に加える。これで処理は終わりだ。さぁ、お前の番だ」

 

 セットされていたミラーフォース・ランチャーの効果により、墓地から聖なるバリアが再セットされる。

 

         ●

 

〇不審者 LP 650 手札0枚 伏せ2枚 魔0 罠0

 

 少 年 LP4,000 手札3枚 伏せ0枚 魔1 罠0

攻撃:闇の支配者-ゾーク:☆8 攻2700 守1500

 

         ●

 

「かっ……かふっごふっ!?」

 

 余りの苦痛にのたうち回る男に少年は告げる。

 

「どうした? やる気が無いのならサレンダーしたらどうだ?」

「そ、そんな事ぉ……できるわけが……ないだろぅ」

 

 息も絶え絶えに男は言う。

 なぜならこれは闇のゲーム。

 敗者には死に等しい罰が与えられるのだから。

 震える足を押さえて立ち上がる。

 

「私のぉ……ターン。ドロー……クヒヒッ」

「何か面白いものでも引いたか?」

「ああそうだぁ。私はぁ、魔法カード《強欲な壺》を発動だぁ! 効果でデッキからカードを2枚引くぅ!」

 

 男が発動する1枚のカード。

 それはその単純で強力な効果故、公式大会で禁止されているカードであった。

 

「デュエルディスクにはレギュレーション設定がされている筈だが?」

「クヒヒッ、さっきも言ったけれどぉ、このデュエルディスクは特別性でねぇ。レギュレーション設定なんてされてないんだよぉ!」

「そうか。まぁ、その程度なら好きに使うが良い」

 

 男の堂々としたイカサマ発言に少年は眉を顰めるだけに留める。

 《八汰烏》や《ゼンマイハンター》でハンデスを強いられたり、《処刑人マキュラ》と《天使の施し》でエクゾ1キル喰らったり、征竜や十二獣の様な阿呆みたいな集団(カテゴリ)に比べれば、純ヴェルズ構築でカードを2枚引く程度可愛いものだ。

 

「……! 来た来たぁ! 自分の場のモンスターの数が相手のモンスターの数より少ない場合ヴェルズ・マンドラゴを特殊召喚! そしてぇ、手札からヴェルズ・ケルキオンを召喚! ケルキオンの効果により墓地のマンドラゴを除外しぃ! ヘリオロープを手札に加えて召喚権を使用して召喚!」

「ヴェルズでレベル4が3体……アレか」

 

 男の目論見に気付くが少年は動かない。

 動く必要がない。

 

「私はぁ、レベル4のマンドラゴとケルキオンとヘリオロープでオーバーレイィ! 3体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築ゥ!」

 

 3体のモンスターが紫色の光玉となって渦巻く銀河に飲み込まれる。

 

「エクシーズ召喚! 《ヴェルズ・ウロボロス》ゥ!」」

 

 現れるのはオピオンと同じく伝説の槍の名を冠する三つ首を持つ神竜。

 邪念に侵食されて尚、その身は気高くあった。

 

 ヴェルズ・ウロボロス:ランク4 闇属性 ドラゴン族 攻2750 守1950 OU3

 

「攻撃力では闇の支配者を超えられたか……」

「クヒヒッ、更に効果で手札に戻したいところだがぁ、知っているぞぉ! 儀式コストにした儀式魔人はディザーズだけでない事をぉ!」

 

 男は覚えていた、闇の支配者の儀式コストにはディザーズ以外にも儀式魔人が居た事を。

 

「ルールでは墓地情報は公開情報、つまり確認が可能ぉ! さぁ! 儀式魔人デモリッシャーの効果を言えぇ!」

「気付いたか、ならば言わねばな。デモリッシャーを儀式コストとした場合、その儀式モンスターは相手の効果の対象にならない。つまりウロボロスの効果も通用しない……気付かなければ効果の無駄撃ちになったんだがな」

「少年と違って腹黒いねぇ……だが、戦闘破壊の耐性は無ぁい! バトルゥ! ウロボロスでゾークを攻撃ィ!」

 

 三つ首から放たれる冷気の波動に闇の支配者は闇を持って対抗する。

 双方のぶつかり合うエネルギーは一瞬の均衡の後、崩れた。

 闇の支配者はその身で受け止めたものの、その余波は少年を傷つけるのに十分だった。

 

「チィ、ダメージを貰ったか」

 

 LP4,000 → LP3,950

 

 ダメージ自体は微量。

 しかし、その身には霜を薄く纏っていた。

 これ以上のダメージを負ってしまうと凍傷は免れない。

 

「そしてぇ、メインフェイズ2だぁ。ウロボロスの効果を発動ぅ! OUを取り除き、場、手札、墓地のどれかを対象として干渉する事ができるぅ。今回は手札のカード1枚をランダムに墓地へ送るぅ」

「ならばよく考えて選ぶのだな。アバターを選ばねばお前に勝ち筋は無いぞ?」

 

 少年は手札を掲げて男に見せる。

 その中から1枚を自動処理ではなく、男に選ばせるつもりなのだ。

 

「分かっているさぁ。次のターン、アバターを召喚されたら魔法・罠の制限でジリ貧だからねぇ……選ぶのは真ん中だぁ!」

 

 男の宣言と同時に選ばれたカードが凍って砕ける。

 物理的にカードへ干渉されてはいるが、墓地を見ればしっかりとそこに存在するのだから不思議なものだ。

 

「……おめでとう。送られたカードは邪神アバターだ」

「それは僥倖ぅ。これでターンエンドだぁ」

 

         ●

 

 不審者 LP 650 手札0枚 伏せ2枚 魔0 罠0

攻撃:ヴェルズ・ウロボロス:★4 攻2750 守1950 OU2

 

〇少 年 LP3,950 手札2枚 伏せ0枚 魔1 罠0

 

 

         ●

 

(ワタシ)のターン、ドロー」

「こぉの私の布陣は簡単に破れるものかぁ」

 

 男は嗤う。

 ウロボロスの攻撃力は高く、簡単には超えられない。

 確かに少年の手札のバルバロスならば超えられるだろうが、聖なるバリアを突破する事はできない。

 ウロボロスと聖なるバリアという2つの壁は、今までの狩りで男が信頼する鉄壁の守りであった。

 しかし、少年の表情には怯えも恐怖も無かった。

 

「……では試しに反撃といこうか、手札から《金華猫》を通常召喚」

 

 フィールドに現れるのは一匹の白猫。

 一見すると普通の猫ではあるが、その影は小さな体躯を超える程に大きく、怪しい怪猫を描いていた。

 

「金華猫の召喚に成功した時、自分の墓地のレベル1モンスター1体を蘇生できる。選ぶのは《天帝従騎イデア》だ」

 

 影の怪猫はその身をくねらせると、1体のモンスターに変化する。

 それは、どこか女性らしさのある白銀の鎧だ。

 

「そして特殊召喚されたイデアの効果もあるが、今回は使わない。EXデッキからの召喚を封じてしまうからな」

「EXデッキだとぉ?」

「そうだ。そして手札から魔法カード《死者蘇生》を発動する。墓地から蘇生するのは闇の支配者-ゾークだ」

 

 場に闇が渦巻き、闇の支配者が現れる。

 

「モンスターが3体……バルバロスかぁ!」

「残念だが違う。これから行うのは生贄(リリース)ではなくリンク召喚だ」

 

 フィールドに揃う3体のモンスターはその身を光に変える。

 

「現れろ、混沌極まるサーキット。アローヘッド確認。召喚条件はカード名が異なるモンスター3体。(ワタシ)は金華猫、天帝従騎イデア、闇の支配者-ゾークをリンクマーカーにセット。サーキットコンバイン」

 

 点灯するリンクマーカーは左下、上、右下の3ヵ所。

 

「この戦いに終止符を打て。リンク召喚、リンク3《混沌の戦士 カオス・ソルジャー》」

 

 フィールドに降り立つのは盾と剣を持つ1人の騎士。

 身に纏う鎧の全身には金の意匠が施されているものの、下卑た印象は無い。

 

 混沌の戦士 カオス・ソルジャー:リンク3 地属性 戦士族 攻3000 左下/上/右下

 

「こ、攻撃力3000だと……」

「これで、お前のウロボロスを超えた。……バトルだ」

 

 混沌の戦士は剣を構える。

 

「混沌の戦士でウロボロスを攻撃。カオスブレード」

「せ、聖なるバリアを発動ぅ!」

 

 光の壁が戦士の行く手を阻む。

 これまでに何度も男の危機を救った壁。

 しかし、男には予感していた。

 この壁に意味は無いと。

 

「混沌の戦士はリンク素材にレベル7以上のモンスターが存在すれば、相手の効果の対象にならず、相手の効果では破壊されない。そして素材にした闇の支配者はレベル8だ」

 

 その言葉を証明するかのように光の壁は切り裂かれた。

 

「壁が邪魔なら無効化すれば良い」

「ば、馬鹿なぁ!?」

 

 神竜は戦士の一太刀の元に切り伏せられた。

 

 LP 650 → LP 400

 

「ぐっ……あ、あれ?」

 

 来るダメージに目を閉じ身を構えるが、一向に痛みは襲ってこない。

 どうしたのかと視線を前に向けると眼前で白刃が煌めいていた。

 

「ヒィッ!?」

「たかだか250のダメージでお茶を濁すつもりはない」

 

 腰を抜かす男に少年は告げる。

 

「さて、混沌の戦士は2つの効果を持つ。1つは先も言った素材レベルに因る効果耐性。そしてもう1つは相手モンスターを戦闘破壊した時、3つの効果から1つを選ぶ効果」

 

 少年は指を立てる。

 

「1つ、このカードの攻撃力は1500アップする。2つ、次の自分ターンのバトルフェイズ中に2回攻撃できる。3つ、フィールドのカード1枚を選んで除外する」

 

 それは処刑宣告にも等しい。

 

「もちろん、選ぶのは2回攻撃の権利だ。さぁ、モンスターを並べないと命が危ないぞ? (ワタシ)はこれでターンエンド」

 

         ●

 

〇不審者 LP 400 手札0枚 伏せ2枚 魔0 罠0

 

 

 少 年 LP3,950 手札1枚 伏せ0枚 魔1 罠0

E左:混沌の戦士 カオス・ソルジャー:L3 攻3000 左下/上/右下

 

         ●

 

「……私のタぁーン! ……今引いた強欲な壺を発動しぃ、デッキから2枚ドロォー!」

 

 増えた手札を見つめる表情は苦い。

 

「インヴェルズの魔細胞を守備表示で特殊召喚しぃ、モンスターをセットォ……ターンエンドォ」

 

 暫しの沈黙の後、手札を全て使ってモンスターを並べる。

 男に打てる手が無いのは一目瞭然であった。

 

「なんだ、もう手詰まりか。禁止カードを使っておきながら呆気ない結末だったな」

 

         ●

 

 不審者 LP 400 手札0枚 伏せ2枚 魔0 罠0

守備:インヴェルズの魔細胞:☆1 攻  0 守  0

裏守:セットモンスター  :☆? 攻  ? 守  ?

 

〇少 年 LP3,950 手札1枚 伏せ0枚 魔1 罠0

E左:混沌の戦士 カオス・ソルジャー:L3 攻3000 左下/上/右下

 

         ●

 

(ワタシ)のターン、ドロー。……ふむ、特に出来る事は無いか。ではバトルフェイズに入る。混沌の戦士でインヴェルズの魔細胞に攻撃」

 

 魔細胞は身を固く縮めたが、白刃の前には無駄な抵抗であった。

 

「さぁ、モンスターを戦闘破壊した事で3つの効果を選択する。選ぶのは3つ目、フィールドのカード1枚を選んで除外する、だ。除外するのはそのセットモンスターにしようか」

 

 混沌の戦士が剣を振るうと空間に裂け目が生まれた。

 セットカードはそのまま裂け目に呑まれる。

 

「《ファイバーポッド(リセットボタン)》でもあったら目も当てられんからな」

 

 セットカードが裂け目に呑まれる瞬間、ヴェルズ・サンダーバードのイラストが見えた。

 

「分かり切ったことだが、念には念というやつだな。――ということで、お前の場はがら空きとなり、混沌の戦士は前ターンの効果で攻撃権を後1回有している。さぁ、決着の時だな」 

「う、嘘だぁ……こんなのあり得ないぃ……」 

「お前が今まで襲った女性は皆そう思っただろうさ。さぁ、塵は塵に(Dust to Dust)、生ゴミは処分せねばな。……やれ、混沌の戦士。そっ首撥ねて終いだ」

 

 戦士は少年の言葉に一つ頷くと、その白刃を振り抜いた。

 

 LP 400 → LP  0

 

 そうして、少年の勝利が決まった。

 

         ●

 

 ゲームが終わると同時に天は青空を取り戻し、辺りには静寂が訪れた。

「は、ハヒヒッ。ハヒヒヒッ」

 闇が晴れた後、泡を吹いて倒れる男がそこに居た。

 男の決闘盤はその姿を掻き消し、デッキだけがそこに残った。

「……何故、邪魔をした」

 闇のゲームの敗者は死にも等しい罰を受ける。

 本来ならばカード化という罰であったが、少年はその息の根を止める心算であった。

 だが、現に男は精神に深くダメージを負ったものの生きている。

 それはつまり誰かが庇ったという事。

 それが可能なのはこの場に一人しかいない。

「彼を裁くのは私たちではないでしょう?」

 答えたのは女の声。

 気絶していた筈の少女だ。

 しかし、その瞳には少年と同じく光は無い。

 その全てを見透かすような瞳は人に畏怖を与えるだろう。

「確かに彼はマスター達の人生に少なくない悪影響を与えた相手です。ですが、当人の与り知らぬ間に裁いてしまってはマスター達が心の整理を付ける機会を失ってしまいます。それだけはいけません」

「ハッ、創造神様は気配りが上手なことだ」

「OCG出身ですけどね。恐らく、本来の創造神はファラオと共に去った筈ですから」

「そして大邪神は記憶の世界で消し飛ばされた、と。ま、アタシが女人格の時点で原作と違うか。で、何をしているの」

 少女は男のコートに手を入れると何かを取り出す。

「彼女たちを救出します。幸い、このカード化は闇の力が使われているようです。なので私と貴女が力を合わせれば開放できるでしょう。――というより、彼女たちの事を忘れていましたよね?」

 ジトッとした視線を向ければ少年は口笛を吹いていた。

「はぁ、幾ら(マスター)が傷つけられたからといって、激情に駆られて命を粗末にしてしまっては嫌われてしまいますよ?」

「――うぐっ。いや、だってカード効果で間接的な傷害って小賢しいにも程があるでしょ。“ルールを守って楽しくデュエル”って言うじゃない」

「闇のゲームで何を言っているんですか貴女は……。まぁ済んだ事はもう良いです。それよりも封印カードを取り出すのを手伝ってください。早くしないと闇のゲームで妨害されていた警察が到着して説明が面倒になりますよ?」

 少女の言葉を証明するかのようにサイレンの音が近づいてくる。

「はいはい、分かりましたよっと。……同じ状況だったら絶対同じ事やってるって」

「何か言いました?」

「何でもありませんよー」

 そうして二人掛かりで男の懐からカードを取り出す。

 それから数分後、現場に到着した警官はその光景に目を丸くする。

「おいおいおい、これは一体何の冗談だ?」

 広場に死屍累々といった様子で横たわるのは行方不明になっていた女性たち。

 そしてその中央には近頃通報される不審者の特徴と一致する男。

 その傍には幼い少年少女が寄り添って眠っており、更には緊急通報の発信元は少年の持つ決闘盤からの様だ。

「……これは応援が必要だな」

 無線で状況を伝え、応援を呼ぶ。

 彼らの仕事は始まったばかりであった。




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