俺と邪神のデュエルモンスターズ   作:水混汁

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ボチボチ作っていたのが操作ミスで投稿してしまいました。
話自体は完成しているのに消すのはアレなのでそのままにします。


5話 新世壊 《ニュー・クリア・ワールド》

 気が付けば病院だった。

 状況の把握をする間もなく巡回に来た看護師によってあれよあれよと精密検査まで行われた。

 どうやら事件から二日立っているようだ。

 俺が助けたかった彼女は事件当日に目覚め、先に退院しているとのこと。

 一日掛かりの検査の結果は特に異常は見当たらず、最も酷い傷は右手の甲の切り傷のみという有り様だった。

 今は包帯で巻かれているが、特に痛みは無い。

 そこで一段落ついたかと思えば、次は両親による説教だ。

 バッチクソに怒られた。

 次に同じ状況が有れば同じく助けに行くだろうが心配を掛けたことに間違いは無い。

 両親に叱られるのが懐かしくて泣いてしまったのはここだけの話だ。

 前回であればここで自宅に帰って入学に備えるのだが今回は違った。

「――それでは、どうして気絶したのか覚えてない。と?」

決闘(デュエル)を挑まれて勝ったのは覚えてるよ?」

 警察からの事情聴取がしつこかった。

 前回はまだ幼かったのもあり、抽象的なことしか言えなかった。

 それでも一度で済んだのだが、今回ばかりは何度も確認された。

「すいません。事件の調査が大事なのは分かりますがこの子は病み上がりなんです。時間が掛かるようであればまた後日という訳にはいきませんか?」

 あまりのしつこさに両親が苦言を呈する程だ。

「ああ、いえ、すいません。今回の事件には少々常識に欠けるというか、不審な点があまりにも多くてですね、我々としては少しでも情報が欲しかったのです。……しかし話を聞く限り、決闘を行った事実はお子さんの決闘盤(デュエルディスク)の履歴に残っています。ですが、逮捕した犯人は決闘盤どころかカード一枚すら持っていなかったんです。現時点で分かるのは“お子さんが気絶した後に何かが起きた”……ただそれだけなんです」

 警察は困ったように頭を掻く。

 俺自身も気絶しているため何が起きたのか知りたい立場だ。

 ただ一つ言えるのは、この世界では身を守る為に犯罪者と決闘を行うのは立派な手段の一つっぽい。

 警察官が決闘に至る経緯と内容を大真面目に調書を記録している事実に笑わなかった俺を誰か褒めてくれ。

 結局、何も手掛かりを得られそうにないという判断になったようで、何かあれば後日連絡するという形で事件については一区切りついた。

 両親に連れられ家に帰る頃には既に夜も更けていた。

 夕飯と風呂を済ませ、部屋に戻る。

 両親には疲れたからと言ったが、確認したい事があった。

 部屋に戻るなり、勉強机にデッキを広げる。

 その中から手に取るのは三邪神、そして《闇の支配者(ダーク・マスター)-ゾーク》のカード。

 決闘中はそういうものだと思っていたが、立体幻像(ソリッドビジョン)とはいえOCG産のカードがあれだけ禍々しい雰囲気を放つものだろうか。

 それにデュエル中の記憶はあるものの、ゾークを召喚したあたりからは何を話したかも朧気だ。

 なのにカオスソルジャーで止めを刺すところまでの流れはしっかりと覚えているのが気味が悪い。

 この世界に原作“遊戯王”の設定が混ざっているというのなら、三邪神及びゾークという存在はどれほど厄介な存在なのか言うまでもない。

 しかし見れば見るほど何の変哲もないカードだ。

 何かしらの力が籠っているようには思えない。

「闇に魂を飲まれるとか勘弁だぞ」

 そう呟いた時だった。

『アタシがマスターに危害を加える訳ないじゃん』

 明らかに自分でも家族でもない声が聞こえた。

 誰何する前に手の内にあったカードが部屋の中央へと飛んでいく。

 それを止めることはできなかった。

「カードがっ!?」

 机の上のカードだけでない、鞄や段ボールに保管していた数千枚のカード、また長年集めてきた漫画やコレクションたちも追従するかのように飛び出したからだ。

 それぞれが押し合うように一つの形を作っていく。

 色も黒く変化したそれが型造るのは人型。

 “遊戯王GX”のアニメを見ていた者ならば気づくであろう。

 この現象に酷似するのはGXの物語を締めくくるラスボス及び関するもの、つまりは――

「ミスターT!」

「誰が闇磯野かぁ!? せめてダークネスでしょ!?」

 姿を現したのは細身のワンピースのような服を纏う褐色の少女だった。

「……いや、本当に誰?」

 容姿からして今の自分と同年代だろうか。

 素材なったであろうカード群を思い返すが、彼女を示すカードは思いつかない。

 服装はカテゴリで言うならば墓守やネフティスの雰囲気が近いが、このような少女が描かれたカードは記憶にない。

「アタシとしては初めまして。そしてカードとしてはようやく会えたね。アタシはゾーク――《闇の支配者-ゾーク》であり、OCG産まれの大邪神。今後ともよろしく、マスター」

 

          ●

 

 ゾーク。

 シリーズの初代であり原点である“遊戯王”を語る上で欠かせない存在だ。

 諸悪の根源と言っても過言ではなく、千年アイテムが作られた原因となった存在である。

 一言でいえば禄でもない存在だ。

 では、そんな存在を自称する少女はどうなのか。

 警戒しながらも対話を行った結果――

「つまりお前は自身がOCGとして刷られた《闇の支配者-ゾーク》という存在であり、本来の大邪神は倒されていると……」

「そういうこと。で、『遊戯王』に関する知識はアタシの体の一部になった原作コミックや映像記録とかの関連グッツ、そしてマスターと共に遊んだカードたちの記憶で知っているよ」

 彼女の話を信じるのならば、彼女は大邪神と同じ名を持ちながら異なる存在だという。

 気のせいかもしれないが、原作の悪意に満ちた存在と比べると彼女からは悪意が全く感じられない。

「一応言っておくけど、アタシは“ルールを守って楽しくデュエル”がルールのOCG産まれだから本家みたいに悪意をどうのこうのって能力は無いよ。ただ、“ゾーク”ではあるから“闇”に関する能力は持っているし、その延長で三邪神はアタシに従属する存在になってるのさ」

 少女――ゾークの足元の影が伸び、もう一人のゾークを形造る。

 蛍光灯の灯りの下でありながら全身が闇を具現化した色合いであることから、《邪神アバター》がゾークの姿を映した姿なのだろう。

「難しく考えることじゃないさ。ホルアクティが三幻神の上位存在であるように、アタシは三邪神の上位存在であるんだよ。だからこうやって合図一つだけでも三邪神はアタシの思い通りに動く」

 ゾークが指を一つ鳴らすと、アバターはゾークの影に戻――

「おい?」

「あれ、おかしいな」

 もう一度鳴らすがアバターはゾークの影に戻る気配は無い。

 それどころか

「抱き着いてきたんだが、このままベアハッグされたりしないよな?」

「ちょっ!? 何て羨ま――じゃなくてアタシの言うことを聞けぇ!」

「――――っ」

 ゾークが引き剝がそうとするがびくともしない。

 攻撃力が常に100上回っているせいか。

 というか、体形も再現しているおかげか柔らかい感触がダイレクトに伝わってくる。

 まさかスタイルの良さまで常に上回っているんじゃないだろうな。

「ぐぬぬ、幸せそうな顔しおってからに……っ」

 結局、アバターについては諦めたようだ。

「はぁ、マスターを気に入ったみたいだね。邪神だけあって欲望に対して素直なところが玉に瑕だよまったく。まぁ少なくとも三邪神がマスターに危害を加えることは決して無いから安心しといてよ」

「この状況で安心できる要素ある?」

 頭を撫でれば素直に撫でられている辺り、大型犬を相手にしているような感覚なのだが。

「そこは慣れて欲しいとしか言えない。ただ、コイツはこんなのでも三邪神の一角だ。マスターへの呪術や精神干渉に対してはコイツらが防ぐから安心して」

「そんな物騒な単語を聞くとは思わなかったな」

「アタシだって言いたくない。けど、あの変態みたいに闇のチカラを悪用する前例があるから、用心に越したことはないじゃん」

「変態……ねぇ」

 自分が倒した不審者が思い浮かぶ。

「この世界では原作……いわゆる“遊戯王”に関する厄ネタは解決済みで心配要らない筈だけど、あの変態は明らかに何者かに指示を受けて行動していた。もしかするとこの世界を改変した元凶に繋がっているかもね」

「そういうのはフィクションとして楽しむぐらいで丁度良いんだけど?」

 一般決闘者(デュエリスト)には世界なんて重過ぎる。

「もしかしたら見知らぬ誰かが解決するかもよ? 今は手掛かりも無いし、自衛できるよう決闘の腕を磨いておくといいんじゃない?」

「そんなんでいいのかねぇ」

「それにあの嬢ちゃんも記憶が戻ったみたいだしね。仲間は多い方がいざという時安心でしょ?」

 聞き捨てならない事を言ったな。

「……嬢ちゃんって?」

「マスターが助けた娘に決まってるじゃん」

 言いたいことは数多くあったが、飲み込んで天を仰ぐしかなかった。

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