異聞・ハイスクールD×D 辺境武宝惑星・地球 矛盾せし真実持つ英雄 作:グレン×グレン
ドクサリア・ネットワーク。彼らが全世界に対して宣戦布告してから、二か月と少しが過ぎた。
地球という星を一つの政権で統一する事を宣言した彼らは、たったそれだけの時間で世界中にその力を見せつけた。
二か月の間ほぼ毎日、世界の各地で大規模な軍事衝突が起きていた。
それは世界各国の軍隊による、制圧された地域の奪還作戦。
そして、それらは全て返り討ちにあった。
その理由は大きく分けて三つある。
一つ目は、ドクサリア・ネットワークは基本的に都市を制圧して拠点としていたこと。
都市には当然何万人もの人間が住んでいる。そして犯行声明を制圧してから行っている以上、その時都市の人間は避難などしてない。そして電撃作戦ゆえに、その大半はほぼ確実に生存している。
自国の救出すべき民間人がいるというのは難点だ。航空機による面制圧は巻き込む危険性があるし、核攻撃など以ての外。自走砲の類におる砲撃もしづらい。
結果として、空軍や海軍の戦力を当てにする事ができない。基本として陸軍だけで事に当たるしかなかった。
二つ目は、ドクサリア・ネットワークの武装だ。
第三世界、先進国、それどころかアメリカ合衆国ですら、彼らより洗練された武装を持っている兵力がいなかったのだ。
突撃銃、対物狙撃銃、多種多様な機関銃。果ては対戦車兵器から対空ミサイルまで。そして陸戦兵器から航空機兵器までも。
それら全てにおいて、ドクサリア・ネットワークは非常に高度な技術によって作り上げたものを使用していた。
以前、現代の戦争は兵器の質と数で決まるといったのを覚えてるだろうか。
その歴史が示す一人の真理を、ドクサリア・ネットワークは証明してのけた。
そして三つ目。これこそがもっとも衝撃的。
ドクサリア・ネットワークが使用する新機軸の兵器。その存在の有無は絶望的な差を生んでいた。
なんと人型兵器を現実に投入してのけた。そして現代戦で通用させてしまったのだ。
名をオオカ・ラダン。兵器の種類としてはデカカ・ラダンとか言っていたが、まあこれはどうでもいい。
全長三メートルに満たない全長。背中にはめ込むような形でコックピット。メインウェポンは歩兵用の装備を一回り大型化した程度の代物。
そんな、人が操縦するロボット兵器として多くの人が創造するのとはずれたそれは、しかし強大な存在だった。
昔日本で一つのロボットアニメを作る時に、スタッフが科学者の意見を参考にしたと聞いた子がある。
それによると、戦場で実用的なロボット兵器を作るのなら、全高は五メートル未満が限界であるとのことだ。
そしてその限界値よりだいぶ下に設計されたそれは、それゆえに強大な力を発揮した。
自然界において、人間は脆弱な存在だ。それより弱い存在が代わりに持つ繁殖力がない。それを喰らう側が持つ、優れた身体能力がない。そしてその差を是正する角や毒などの優位点もない。
しかし、人類はそれでも地球でもっとも繁栄している種族である。
その大きな理由の一つは武器や道具を開発したこと。そしてそれを最大限に活用できる柔軟性と汎用性に長けた体をしていることだ。
人間の骨格を模したフレーム構造を持つデカカ・ラダンという兵器は、その人間の利点を保ったまま、人間を遥かに超える身体能力を発揮する。
機体が小型である事が逆に幸いし、彼らは歩兵のできる事をスケールアップする形での運用が可能。それはこれまでの操縦するタイプの兵器が持つ、「人間にはできない凄い事をする」在り方とは真逆の、「人間にできる事を凄くする」在り方だ。その上で、予備武装として機体に武装を内蔵したり、手で使用しない形で固定するといった運用もできる。
これは、市街戦に代表される遮蔽物が多い環境で猛威を振るう事になる。
パルクールとかフリーランニングなどの移動術を駆使する事で、ビルからビルに飛び移る事も可能。そして多種多様な兵器を使い分ける事で、陸軍の兵器としては破格の戦闘能力を発揮した。
更にその動きや反応は人間がそのまま自分の体を動かしているそれに近いという意見があり、これにより不意打ちに対する迎撃が比較的できた事で強襲攻撃を仕掛けて返り討ちに遭う者が続出。まるでロボット兵器ではなくサイボーグか何かではないかというレベルの動きをとってくる。
とどめに、関節部に装甲がつけれないというロボットアニメですら突かれる事が多い弱点を狙った攻撃すら、何故か殆ど通用しない。
装甲がついてないところに当たったはずなので、対物ライフルやグレネードランチャー程度ではビクともしない。装甲の厚い部分に至っては、攻撃ヘリのロケット砲や戦車砲の直撃でも貫通しきれないといったことまである。
そんなオオカ・ラダンを主力とする戦闘によって、世界各国は連戦連敗。
ならば技術を解析して、自分達も開発すればいい。ロボットアニメでもよくある打開策が建てられたが、それもまたとん挫する。
地球全土を統一するとか言っていたくせに、何故かドクサリア・ネットワークは最初に都市部を制圧して以降、防衛に主眼を置いた戦略をとっているのだ。
結果として各国側が勢力図を押し返した事はなく、なので残骸を回収する事ができず、つまり解析する材料がない。
まあそんなわけで、アメリカ合衆国や中国といった国土を奪われた国以外は、比較的平穏を取り戻した国も多い。
特に、専守防衛でしか戦闘しないこの国に戦争を仕掛ける奴はいないだろう……などという楽観的にもほどがある意見が割とよくとおる、平和ボケが多いこの日本は、どこかで戦闘が勃発したというニュースでもない限り日常そのものだった。
そんな日本の学校は、制服があるなら夏服に切り替わる時期に入っていた。
そしてこの俺。駒王学園高等部二年生、橋場アラタ。麻薬や拳銃を売りさばきながらぼったくりバーまで経営するろくでなし相手に大立ち回りをした、学園史上類を見ない規模の警察沙汰の中心人物。
俺はその騒ぎのケジメとして言い渡された二か月以上の停学処分が漸く明け、ついに二年生になって初めて学園に入る事ができたわけだ。
「やっほー橋場。お勤めご苦労様ー」
「おい桐生。誰がいつ刑務所に入った。書類送検で終わったから少年院どころか裁判所にすら行ってねえよ」
教室に入って早々、真っ先にからかってきた女友達の桐生藍華にそう返しつつ、俺は中学一年の時にいやというほど味わった視線の集中攻撃をあえて無視する。
停学理由が「麻薬売買グループ相手に、未成年飲酒が切っ掛けで大立ち回り」という日本学生史上に前例がないだろう―っていうかあってたまるか―やらかしを仕出かした俺に、何とも言えない視線を向けられる。
お袋が通り魔に殺された時よりは、視線の種類はまあましだ。だが、別の意味で視線の温度が冷たい。
目が口ほどにものをいう。俺の狭い交友関係を知るがゆえに、視線の総意は分かりやすい。
……割れ鍋に綴じ蓋。変人の友達はまた別の変人何だなぁ。まともなのは一橋ぐらいか。
そんな視線をあえて無視して、俺はとりあえず席に座る。
そして、その目の前に一冊の雑誌が置かれた。
視線を上げると、眼鏡をキラリと光られた男―友人の一人である元浜―が、優しい笑顔を向けていた。
「言われた通りの出所祝いだ。俺達三人はもちろん、桐生だけじゃなく一橋までお前にぴったりなのは何か議論したんだぜ?」
そして坊主頭―こっちは松田だ―がそう言いながら、俺の肩に手を置いた。
俺は静かに、視線を電話した相手であるイッセーこと兵藤一誠に向ける。
天然物の金髪を伸ばした見覚えのない女と一緒にいるイッセーは視線に気づいた。そして、無言でサムズアップ。
……よし。
「アッパーかフックかストレートか好きな殴られ方を選べ。一人一発で勘弁してやる」
「うん。ちょっと待ってね?」
可及的速やかに一撃必倒の打撃を叩き込まんとしてた違った瞬間、その声とともに一瞬で組み伏せられそうになる。
とっさに地面に倒れこむように振り払い、転がって距離を取ってから立ち上がると、俺は取り押さえを敢行した女に半目を向ける。
「……なぁ一橋。アホの三馬鹿と悪乗りする桐生はともかく、お前はTPOってやつ弁えられるだろ? 前もって止めてくれよ」
「あはは……。これぐらいバカな事した方が、橋場君も気兼ねなく復帰できると思ったんだけどね。それに兵藤君達がこういうの躊躇しないのはいつもの事でしょ?」
そう朗らかに返すのは、割と伸びてる黒髪をツインテールにした、しかしどこかボーイッシュな少女。
戦国時代初期から江戸時代まで、それなりの家格を維持し続けてきた武士の家系。江戸幕府とともに侍の世が終わり、世界が変わっていく事を痛感しつつも、代々軍事に関わりのある職業を選択。現代においても一族の九割が自衛隊そのものか深く関わる職業を選択するという、平和国家日本にあるまじき生粋の武闘派一族。
荒事慣れしてる俺を取り押さえかけたさっきの手腕でわかるだろうが、当人も幼少期から自衛隊式の戦闘技術を仕込まれていてかなり強い。高校に入ってからはやってないそうだが、それ以前は長期休暇の際に海外の射撃場で銃に触れた事もあるとか。
自分にも他人にもやるべき事をやる事を良しとするが、肉体的にも精神的にも人には向き不向きがある事を理解しているところがあるからか、癖の強い変人だらけの俺らと普通につるめるできた人物。しかし面倒見がいいからこそ、何かしら俺らが騒ぎを起こしかけるのを見た瞬間に鎮圧を図るので油断できない。
……こいつが俺らのグループに属してるのは、ある意味で俺の自業自得ではある。転校初日にトラブルに巻き込まれたのを助けてから、俺を足掛かりに人間関係作ろうとしたのが原因だろう。
イッセー達がド級の変態さえ除けば好漢揃いなのを分かっているいいやつだ。同時に、裏を返せばその一点特化型の欠点が常人受けしない事も分かっているから、あほやらかした時は容赦しないのも難点だが。
「それより大変だったね。あの後芋づる式に売買ルートが摘発されたけど、日本じゃ珍しく銃撃戦になった時もあったらしいよ?」
「平凡な日常生活の裏で、犯罪組織の報復を返り討ちにする毎日が待ってそうねー。ドラマか映画の主役でも目指してんの?」
一橋の言葉を利用してからかってくる桐生に、俺はため息で返答する。
誰がそんなこと望むか。この現代に至る大きな段階の一つを作り出した先祖に敬意を持つ身として、彼らが切り開いた先である現代社会を荒らす気はない。より良い方向に進めるべく微力ながら力を振るうべきだ。
「んなわけねえだろ。物語の主役を張りたいなら、俺は帰宅部じゃなくて演劇部に入ってるっての」
そうぼやきながら、俺はエロ本をつまむとしげしげと眺める。
……さすがエロに一家言ある連中が雁首揃えて餞別した逸品だ。
帰ったら熟読するとしよう。ラミ姉はそういうのに理解があるから、いないときに読むぐらいの気遣いで十分だ。本棚には普通に入れれる。
そしてとりあえずエロ本をカバンに入れようとすると、それに視線を向けて真っ赤にしてるさっきの金髪美少女がいた。
「は、はぅ~。イッセーさんはまたそんな本を持ってきてるんですかぁ!」
そう言って恥ずかしそうに顔を赤らめながら、同時にちょっと怒りながらイッセーに涙目を向けてきた。
「部長さんも私もいるんですから、ひ、必要ないと思いますよ!」
「……アーシア。男にとってエロ本は別腹なんだ。それとは別に必要不可欠なんだ………っ」
そして何を真剣極まりない表情をしている。両手を相手の肩において諭すな。
俺がそうツッコミを入れるべきか、それともまずそのアーシア?……とかいう子について聞くべきか考えた時、ある意味もっとやばい事に気づいた。
今、このアーシアって子はイッセーになんて言った?
部長と私がいる? 必要ない? それも、エロ本を指して言ったんだよ……な?
俺は、動悸と冷や汗に見舞われ、周りに視線を向ける。
そして、さっきまである意味冷ややかな視線を向けていたクラスの連中は、今は逆に生暖かい視線を向けていた。
だよなぁ……とかそう言った感じの視線だ。
そして、俺は震える指先でイッセーを指し示し、数少ない友人達を見る。
一橋は困ったように微笑んでいる。桐生は面白そうにニヤニヤ笑っている。そして松田と元浜は、長年の友人にするものではない、嫉妬の視線を血涙を流しそうな表情で嘆きの感情を全身からほとばしらせていた。
そして、二人は俺の肩に手を置き、首を左右に振る。
「あの子はアーシア・アルジェントっていう転校生だ。そして、イッセーの家にホームステイしてるのだ」
元浜が、まるで長い間追い求めていた夢を、突然の事故による後遺症で諦めるしかなくなった敗北者の表情で、転校生のことを教えてくれる。
そして全身を悲しみで震わせながら、松田が唇から言葉を紡ぐために必死になっていた。
「そして、あろうとことか、我らがリアス・グレモリー先輩までもがあいつの家に下宿してるんだ。……寄りにもよって何でイッセーの家なんだ!?」
最後が絶叫になったのは仕方ねえな。
あいつの親父さん、海外の企業と提供してたりとかしてない筈だろ? なんで外人二人を下宿させてんだよ。
って言うか、なんでグレモリー先輩が下宿してんだ!?
あの人一年の時からいたはずだろ? 何で今更、ただのサラリーマンが建てた平凡な一戸建てにホームステイするんだよ? しかも、既にホームステイしてる家に? しかも、高等部はおろか駒王学園全学部全土を探しても、変態性で五指に入るイッセーの家だと?
……って言うか、なんで寄りにもよって
親父が遺言で接触するように言ってたけど、どう接触すればいいのか分からなかったグレモリー先輩が? これまで何度か告白してきた連中を「よく知らない相手とのファッション感覚の恋愛をする気はない」という理由で断ってるから、学内での接触が困難すぎるグレモリー先輩が? 何とか住所と郵便番号を割り出して、身の危険を感じさせないような場所に呼び出すぐらいしか思いつかなかったグレモリー先輩が?
俺の停学中に、俺の中学時代からの友人の家で、別ベクトルで高水準の美少女と、ホームステイしているだと!?
俺はもう一度、教室中を見渡す。
その全員が、「気持ちは分かる」と無言で断言していた。
「………イッセー」
とりあえず俺は、イッセーにこれだけは言っておこうと思った。
そして振り返るイッセーが何か言うよりも早く、俺は言うべきことをいう。
「我慢できなくなっても風呂場に突入するんじゃないぞ。その時は、友としてお前を本気で殺す」
いや、確かに言うべきところだけどそうじゃない。
それよりも、今日中にでもイッセーの家に遊びに行く算段を整えるべきだ。
それでグレモリー先輩と接点を作れば、そこから一気にアユミと引き合わせ、親父の遺言を果たす事ができる。
そう思って、俺はすぐにそっちに話を変えようとする。
とりあえず何を言うべきか考えて―
「と、突入する必要なんてありません!」
アーシアが、俺が何か言うよりも先に声を上げた。
そして、顔を真っ赤にしながらもしっかりとした意識をもって―
「……つい先日も、部長さんやイッセーさんと一緒にお風呂に入りましたから!」
そしてホームルームが終わるまで、イッセーはクラスメイトのほぼ全員から袋叩きにされる可能性に振るえる事になる。
そして、そんな大騒ぎの所為で俺は話を切り出すタイミングを完全になくしてしまった。
松田と元浜が無言でシャドウボクシングをし、桐生は周囲でイッセーに詰め寄るクラスメイトにやんややんやとやじをとばす。
その光景に俺が頬を引きつらせてると、一橋が俺の肩に手を置いた。
……その手が少し震えているのが分かった。
恐怖じゃない。緊張じゃない。そして怒りの類でもない。
それは、耐えている何かが決壊寸前になっている者が見せる現象。焦燥という感情だった。
……俺は、何が限界なのかを察して、少し反省した。
俺の今までの人生どころか、ここ数十年間の日本において、全く経験した事のない大規模な惨劇の現場に巻き込まれてた。そして、父親を失った。更に、よく分からない運命の渦に引きずり込まれた。
その所為でいっぱいいっぱいで、俺は三か月以上もの間、あの時約束した「約束」をほったらかしていた事に気が付いた。
「……悪い。大丈夫か?」
「ゴメン。なんか久しぶりに会ったら気が抜けちゃって。……学校終わるまで我慢できないかも……っ」
……授業間の休み時間は十分。それだとちょっとばかし足りない。
となると、タイミングとしては昼休みか。
「……昼まで耐えれるか? それまでに場所を見繕っとく」
「……うん、待ってる」
こりゃ、グレモリー先輩との接触は後回し……だな。
因みに時期としては、この日の夜にイッセーたちはフリードと激突します。
つまりコカビエルが暴れだすまで秒読み段階。……アラタの明日はどっちだ!!