異聞・ハイスクールD×D 辺境武宝惑星・地球 矛盾せし真実持つ英雄   作:グレン×グレン

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序章第二弾です。

まあ、この部分はオリキャラ同士のつながり的な部分と、原作の時系列の確認みたいなものです。


序章:2 イッセー「ダチに内緒のアドバンテージがあると思ってたら、一年近く前から追い越されてた。正直死にたくなったOTZ」

 

 駒王学園二年生。兵藤一誠にはある秘密がある。

 

 彼は今から数か月前、人間から悪魔へと変貌を遂げた存在である。そして、神であろうと一握りの傑物でなければ滅ぼせる伝説のドラゴン、赤龍帝ドライグを宿す存在である。

 

 彼を悪魔にしたのは、駒王学園三年生であるリアス・グレモリー。彼女はソロモンの七十二柱に由来する、上級悪魔元七十二柱が一柱、グレモリーの本家次期当主である。

 

 七十二柱に元の文字がついていることから推測できるが、悪魔という種族は滅びの危機に瀕したことがある。

 

 キリスト教に由来する三つの勢力。聖書の神が率いる天使。欲に負けた堕天使たちが集まった神の子を見張るもの。そして、四大魔王が率いる悪魔たち。

 

 その三つの勢力はかつて大きな戦争を繰り広げ、どの勢力も大きな被害を受けたことで事実上の冷戦状態に移行した。現在でも小競り合いは頻繁に起こるが、かつての全面戦争の域にまでエスカレートさせることはない。少なくとも、悪魔側にそのつもりは存在しなかった。

 

 理由は大きく分けて二つ。

 

 一つは、現悪魔政権の方針は種の存続と繁栄を重視しているため。

 

 かつての戦いにより、悪魔側は指導者である四大魔王を筆頭として多くの物を失った。七十二柱はその半数が断絶。それ以外の悪魔も上級から下級まで多くの命が失われ、文字通り種の存続すら危うかった。

 

 それに伴い、残存する悪魔側は穏健派が台頭。それまでに四大魔王の血族が行っていた圧制の影響もあり、戦争継続を試みようとした魔王血族とその賛同者は内乱の末、敗北し追放された。

 

 そして、称号という形で魔王の座を継承したリアスの兄たち現四大魔王は、種の存続を図るために悪魔の駒(イーヴィル・ピース)を開発。上級悪魔の血族に与えられるそれをもって、他種族を後天的に悪魔に変えることで、滅亡の回避を行うことを優先する。

 

 現四大魔王は全員が絶滅のリスクを背負ってまで戦争する気は全くなく、四人そろって三大勢力の覇権を握るような野心すらなかった。ことサーゼクスに限定すれば、彼は悪魔はもとより神や天使、それこそ人間に至るまで、滅びていい種族など一つもないという平和主義者にして共存共栄を求める精神性を有していた。

 

 第二に、他の勢力に漁夫の利を狙われるリスク。

 

 聖書の教えだけでなく、世界中には様々な勢力が存在する。北欧神話やギリシャ神話に始まり、世界各地に古くから伝わる神話は、そのほとんどが実在している。

 

 彼らの多くは神々が主力であり、中には聖書の神に匹敵する力を持つ強大な存在もいる。

 

 戦力の回復が完全ではない状態で再び全面戦争をすれば、更に消耗した隙をついてまとめて滅ぼされる可能性がある、それら先のリスクを考慮することができる現政権からすれば、そんな危険性を冒してまで戦争を続ける気にもならなかった。

 

 他にもう一つ隠された理由はあるが、それを知るものは三大勢力の重鎮のみ。戦争の大前提すら崩壊するこの事実は、限られたものにだけ教えることが三大勢力各重鎮の暗黙の了解となっている。そのため、七十二柱本家といっも当主の座を継いでないリアスも知らされていないので、ここでは割愛する。

 

 兵藤一誠という少年は、聖書の神が作り上げた人に宿りし異能である神器(セイクリッド・ギア)を保有する。それが先述した赤龍帝ドライグであり、厳密には彼の魂を宿した唯一無二の神器、赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)。それぞれ別種の能力であるが、しかし極めれば神や魔王すら倒しるとされる、神器の頂点に位置する13の神滅具(ロンギヌス)一つである。

 

 転生悪魔になったイッセーは、神器について多少の知識があるリアスのアドバイスによりその力を覚醒。そしてその力の助けを借りながら、これまでに大きく分けて二度のトラブルを乗り越えた。

 

 彼の実家にホームステイしているアーシア・アルジェント。悪魔を癒したことで教会から追放され、その癒しの力の正体である聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)を殺してでも手に入れようと上層部を出し抜いて暴走した堕天使レイナーレ一派との戦い。

 

 そしてアーシアを転生悪魔として迎え入れた後で起きた、リアスの婚約者であるライザー・フェニックスとの婚約解消をかけた戦い。

 

 そんな戦いを乗り越えたイッセーたち。しかし現在、彼らはその二つをはるかに上回るトラブルに巻き込まれていた。

 

 堕天使勢力統括組織である、神の子を見張るもの。その幹部である最上級堕天使コカビエルが、聖書の神に仕える教会が保有する、聖剣エクスカリバーを強奪してこの駒王町に潜伏したというのだ。

 

 かつての戦いで七つに砕け、そしてその数だけ仕立て直されたエクスカリバー。そして一本が行方知れずになるも、残りはすべて教会で運用されていた。単純計算で七分の一になりながら、それでも協会が誇る上位の装備として運用されるそれを、コカビエルは二分の一にあたる三本も強奪したのだ。

 

 その悪用を阻止するべく、教会からはエクスカリバー使いが二人派遣。悪魔を信用しない上層部の意向により、彼女らはリアスにエクスカリバー争奪戦への不干渉を要求する。

 

 魔王から駒王町の担当を任されたリアスはこれに立腹するも、次期当主としての教育もあってそれを不承不承了承。しかしここで二つのトラブルが発生する。

 

 一つは、エクスカリバー使いがアーシアの情報を知っていたことにより、アーシアに気づかれたこと。

 

 悪魔との殺し合い担当という、教会でも特に悪魔に対して敵意を抱きやすい彼女らは、更に年若いこともありアーシアの断罪を行うことも考える。

 

 元よりその一件から聖書の神や教会に対して悪印象を抱いていたイッセーは、良くも悪くも宗教観が緩くなりやすい日本人気質もあって彼女らと真っ向から対峙して聖書の神すら愚弄。収まりかけていた緊張感が再び高まる。

 

 イッセー本人は一度文句が言いたかったところに火種を注がれたことで燃え上がったが、言うだけ言って少しは気が晴れたので、主であるリアスがたしなめれば矛を収める気で、少々一神教に対する配慮が足りなかったとはいえ、自分から戦端を開く気はなかった。エクスカリバー使いであるゼノヴィアにしても、むしろ悪魔になりながら信仰心を持つアーシアに対して慈悲をかけたつもりだったのに絶対視する主まで愚弄されて敵意が強まったが、上層部の指示と優先順位を忘れていなかったので、イッセーが矛を収めれば収まっただろう。

 

 しかし、ここでもう一つのトラブルが発生する。

 

 イッセーが入ってくるまでに、リアスは四人の転生悪魔を下僕としていた。悪魔の駒はチェスの駒を模しており、駒の種類に合わせてそれぞれ異なる特性と価値を持ち、同種の駒なら複数使用することで一つではキャパシティを超えるものも転生させる。

 

 そしてイッセーが知っているリアスの眷属は三名。

 

 雷の巫女の異名を持つ、最強の駒である女王(クイーン)を与えられて全能力が強化された、駒王学園三年生にして二大お姉様としてリアスと並び称される姫島朱乃。

 

 未成熟な体と不釣り合いな格闘能力を誇る、攻防を強化する戦車(ルーク)の駒を与えられた、一年のマスコットとして人気を誇る塔城小猫。

 

 そしてイッセーと同学年であり、学園の女子人気をこれでもかと集める優男。速さを強化する騎士(ナイト)の駒を与えられ、更に所有者のイメージをもとに、様々な種類の魔剣を作り出す魔剣創造(ソード・バース)という神器を持つ、木場祐斗。

 

 なおであったことがないのは魔力や魔法の力を増大化する僧侶(ビショップ)であり、アーシアもこの駒で転生。イッセーは特定の条件を踏むことで他の駒の能力を得ることができる兵士(ポーン)を、神滅具の強大さから八駒全部使用している。

 

 そして問題を起こしたのは、木場祐斗。

 

 これには、彼がリアスの眷属になる前の過去が関係している。

 

 上述のエクスカリバーに代表される聖剣は、強力な武器である。

 

 ただでさえ優れた攻撃力を持つ剣である上に、悪魔や吸血鬼といった類に対しては切られた箇所が消滅するレベルの追加ダメージが発生する。これらは魔剣創造の姉妹品ともいえる神器で創造したり、無銘の物も含めて普通に物品として存在するものもあるが、エクスカリバーはその中でも上位に位置する。

 

 しかし、兵器として致命的なある欠点が存在していた。

 

 それは適正。聖剣の力を発揮できるものは非常に珍しく、数十年間誰も使えず死蔵する羽目になったこともある。

 

 いかに強力な武器であろうと、運用するものを見繕えないのでは意味がない。ゆえに当然のごとく、その才能を後天的に与えることができないかという研究が行われた。

 

 祐斗は教会の組織で行われていた研究の被験者だったのだが、その研究所は彼を含めた被験者を「失敗作」として毒ガスで処分しようと試みたのである。

 

 仲間意識を持っていたほかの被験者たちは、独の影響が一番低かった祐斗を逃がすために抵抗。そして施設から逃げ出したものの、ガスが回って無念のうちに生命を落としかけるその間際、たまたまその日特施設の近くにいたリアスに発見され、彼女の眷属として悪魔に転生することで生き永らえた。

 

 そして今の名前を与えられた祐斗は、しかしそれゆえに教会の関係者を嫌い、特にエクスカリバーに対しては自分の手で破壊することで、自分を逃がして死んだ同胞たちの無念を晴らそうとその機会をうかがっていたのだ。

 

 その憎悪の対象であるエクスカリバーが目の前に現れ、更に同胞であるアーシアの殺害をにおわせ、同じく同胞であるイッセーと一触即発になった。

 

 更に間の悪いことに、この一件の少し前に、イッセーが小学校に入る前に海外に行った幼馴染のクリスチャンが、リアスの前任者の死にかかわっていると思しき聖剣使い子供であることが発覚。それに気づいたことでもとより憎悪の炎が激しくなっていたこともあり、殺し合い一歩手前になる。

 

 かろうじてリアスの起点により、実力を確認することも兼ねた上に内緒の模擬戦という形で納めることができたものの、結果は惨敗。

 

 イッセーはくだんの幼馴染でもある擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)の使い手、紫藤イリナと戦闘。模擬戦にかこつけてセクハラをもくろんだことでスケベ根性で肉薄するも、聖剣エクスカリバーの対悪魔における凶悪さを読み違え敗北。ついでにイリナのとっさの回避したことで、アーシアと小猫が全裸にされるというトラブルが起き、イッセーは小猫の制裁も受けたが、これは余談。

 

 一方の祐斗は執念で怒涛の攻撃を仕掛けるも、それが魔剣創造による手札の数と、駒の特性による機動力の上昇という持ち味を殺す結果になる。さらに相対した相手であるゼノヴィアが、寄りにもよって攻撃力の高さを持ち味とする破壊の聖剣(エクスカリバー・ディストラクション)の使い手であったため、持ち味を殺したうえ格上の土俵で挑むという自滅同然の敗北を遂げる。

 

 模擬戦とはいえ勝ったことでイリナとゼノヴィアの気も晴れ、二人はイッセーに赤龍帝ドライグと対をなす白龍皇アルビオンを宿す神滅具保有者がすでに力に目覚めていることを告げ、その場を去る。

 

 そして祐斗はその敗北でさらにこじらせてしまい、リアスの制止を振り切って独断行動をとってしまう。

 

 事態を重く見たイッセーは、事態の早期解決を仲間の因縁の清算もかねて行動を開始。

 

 生徒会長支取蒼菜こと、七十二柱シトリー家次期当主であるソーナ・シトリーの眷属である、つい最近知り合った匙元士郎を呼び出す。そしてイッセーの暗躍に気づいた小猫とともに、エクスカリバー破壊に一枚かませてもらおうと、話を聞いて即座に逃げ出そうとした匙を無理やり引きずりながらイリナとゼノヴィアに接触を試みる。

 

 結論を言えば交渉はスムーズに成功。イリナが詐欺に引っかかって活動資金をすべて失って異教徒の恐喝まで考え始めていた二人に食事をおごって恩を売ったこと。ゼノヴィアが「上に内緒にしたうえで、ばれても悪魔の力じゃなくて赤龍帝というドラゴンの力を借りたことにする」という屁理屈を考案したこと。そして二人だけでの勝率は、二人がいまだ明かさない伏札を含めても四割と低かったこと。これらの要素が組み合わさったことが要因で成立する。

 

 そして祐斗もそれを不承不承ではあるが了承。そして情報を共有するうち、ある真実が明らかになる。

 

 聖剣計画による被験者の虐殺。これは研究主任の独断によるもので、その恩恵にあずかった協会からしても汚点であった。その結果、祐斗の真の仇ともいえるバルパー・ガリレイという首謀者は追放され、現在は堕天使側に身を寄せているというのだ。

 

 そして祐斗は二人が来訪する前に、エクスカリバーの保有者と戦っていたことも発覚。相手はレイナーレとの戦いにおいてイッセーたちと激突し、一派の中で唯一の生存者であるフリード・セルゼン。教会の戦士であるエクソシストでも特に高い才能の片りんを見せていたが、殺戮を好む精神性ゆえに追放され、堕天使の側についた危険人物でもある。

 

 バルパーがコカビエルと行動をともにしているかはわからないが、バルパーの技術をコカビエルが利用している可能性は高い。それもあり、祐斗も若干冷静さを取り戻す。

 

 その後、匙が祐斗の個人的事情を知って大いに同情し、主であるソーナとできちゃった結婚するというどうしようもない夢を「自分も個人的事情を語るべき」という理由で暴露。主の乳首を吸うことを当座の目標としているイッセーと、この上なく意気投合するがこれは余談である。

 

 そしてイッセーは彼らと協力して、リアスやソーナ達には秘密でフリード達をおびき寄せるため自分達をおとりにしていたが、結果は芳しくない。

 

 こと純真無垢なアーシアに黙っていることに、強い罪悪感を感じているイッセー。しかし彼女は嘘がつけない性分なので、言いたくともいえない。ついでに言うと同居してるリアスがそろそろ怪しんでいる節がある。

 

 そのためイッセーは、昼間の悪友たちとの日常にとても癒されていた。

 

 あと数日後には皆でカラオケに行く予定で、その時にはグレモリー眷属の学園での顔である、オカルト研究部員を誘うとイッセーは約束していた。

 

 それまでにエクスカリバー争奪戦を終わらせ、祐斗も誘いたいとイッセーは思っている。

 

 そして、犯罪組織との大立ち回りで二年生になってから今まで学園に行くことができなかった橋場アラタ。彼をオカルト研究部のみんなに紹介したいと心から思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その気持ちを裏切られたかのような錯覚を、イッセーは覚えていた。

 

 そんなイッセーの視線の先。というより松田や元浜、そして桐生の視線の先。空き教室の中にいる一組の男女。

 

 胡坐で教室の床に座っている、橋場アラタ。

 

 そのアラタに足まで使って絡みつくように抱き着いている、一橋瀧野。

 

 二人は想定外の事態に目を見開いているが、祖の顔から流れる汗は冷や汗だけでは断じてない。その証拠に、二人の息は少し荒れており、顔もわずかに赤い。

 

 そして、アラタのズボンのベルトは外されている。その上にまたがる瀧野の片足には、下着が引っかかっていた。ついでに言うと、空き教室内には、性欲旺盛な童貞のイッセーがかぎなれたにおいと、嗅いだことのないにおいがほのかに漂っていた。

 

 それらを脳の演算能力をフルに使って考え、思考停止から回復した直後に答えを導き出す。

 

 そして、彼は以心伝心という言葉の意味を強く察することができた。

 

「「「死ね」」」

 

「待て待て待てシャレにならん!!」

 

 松田や元浜とシンクロして放たれた、イッセーの死刑としか形容できない言葉。それに対してアラタの顔色が真っ青になる。

 

 こと殺し合いを経験したイッセーの声には殺意が強く籠っている。停学理由が殺し合い一歩手前だったこともあり、アラタはそこも悟っているらしい。冗談抜きで殺されかねないと判断したようだ。

 

「ちょ、ちょっと落ち着きなさいよ三人とも。さすがに高校生が自由恋愛するのは別に問題ないわよ?」

 

 さすがの桐生もこれはまずいと思ったのか、珍しく真剣みがこもった声で三人を制止する。

 

 そしてアラタはそれに便乗したのか、ブンブンと首を縦に振った。

 

「そうだ! お前らちょっと後ろ向け! とりあえず一橋にパンツ履かせろ!」

 

「橋場君、今それどころじゃないと思うよ?」

 

 微妙にずれたことを言うアラタに、瀧野のツッコミもどこかずれている印象を与える。

 

 しかし幸か不幸か、これによりイッセーたちは殺意を少し薄れさせた。

 

 そも、別に自分達の誰一人として瀧野と付き合っているわけではない。ましてや瀧野に対する抜け駆け禁止令をアラタと結んでいたわけではない。文武両道眉目秀麗、癖はあるが良識的なアラタは優良物件であることも認めよう。そして瀧野が女性として外見内面ともにハイスペックなのは周知の事実。

 

 だから、一橋瀧野という女性が橋場アラタという男性に告白し、それをアラタが受け入れるというのは想定できたはずなのだ。

 

 そして三か月近い停学期間の間、真面目な瀧野が合わなかったことも納得できる。そうなればいろいろともやもやがたまっていたことだろう。

 

 それが爆発した結果、こういうことになったとしても驚かない。

 

 実際イッセーたちがこの現場を目撃したのも、昼休みになった直後に二人の姿が消えたからだ。

 

 停学明けを祝して、学食で何か奢ってやろうという程度の考えだった。そしたら二人していなくなっていたので、他の友達に誘われていたアーシアを置いて、遠回りで学食に行きながらちょっとだけ探していただけなのだ。

 

 そしたら、学友二人がSE〇していたというのはなかなかインパクトがある。

 

「畜生! なんで言ってくれなかったんだ!」

 

 松田が涙を流して叫び、元浜もうんうんとうなづく。

 

「全くだ! 俺たちは友達ではないか! なぜ一言も告げてくれなかったんだ!」

 

 その言葉に、イッセーも強く同意する。

 

 そして、やるせなさとともに声を張り上げる。

 

「そうだぜ! 一回徹底的にボコボコにしたうえで、それとは直接関係ないデマを一回流すぐらいで、そのあとは妬みながらも祝福してやるってのに!!」

 

「いやだから隠してたんでしょ。ってか兵藤、その馬鹿二人に似たような事されてホモ疑惑までもたれてるのに、よく同じことできるわね」

 

「……お前ら、いろんな意味で友達やめたくなったぞ」

 

 その三人のいいように、桐生とアラタが呆れという感情をこの上なく体現した目でバッサリと冷徹な発言を返す。

 

 そしてそこに至って、瀧野の思考回路がようやく正しい意味で機能したらしい。

 

 四人が何かに誤解していることに気が付いて、慌てて首を横に振った。

 

「ち、違うよ! 私と橋場くんの関係を誤解しないで!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「橋場君には私の性欲処理をお願いしてるだけだから! っていうか、兵藤君たちにもお願いしようか結構真剣に考えてたから!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この発言のせいで状況はさらに混乱。結果、この六人は昼食を食べ損ねたうえ五時限目に遅刻する。

 

 ……長期停学を開けたばかりのアラタが悪目立ちし他のは言うまでもない。その後カラオケに参加することは決まったが、五人がアラタの分の金を折半して出費することが決まるまで、全員アラタに怒気を向けられたことも付け加えておく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……実は私、攻略済みの鬼畜ゲームヒロインみたいな経験があるんだ」

 

 その放課後、下見を兼ねて向かったカラオケボックスで瀧野が語った話は、いきなりヘビーだった。

 

「「「「……マジで?」」」」

 

「うん、マジだよ」

 

 異口同音で聞き返す四人に、瀧野は自嘲の笑みを浮かべてうなづいた。

 

 そして転校してきた初日、寄りにもよってその攻略してきた男たちの1人と出くわしたのだという。

 

 彼もまた同時期に転向し、その結果が駒王町にある底辺高校。当然不良たちのたまり場であり、彼はすでにそのうちの一グループと意気投合していた。

 

 そして過去の事実を餌に、その男は瀧野を新しいグループの慰み者にしようと目論んだのである。

 

「……転校することになったトラブルでちょっとは正気に戻ってたんだけどね。ひと月でかなりいろいろ限界が来てて、その時は受け入れようかと思ったんだけど―」

 

 そう告げる瀧野の脳裏に浮かぶのは、そう告げようとした瞬間に見た、凄惨な光景。

 

 いきなり目の前の男が顔面を地面にたたきつけられ、更に勢いよく何度も踏みつけられる。

 

 そしてその残虐ともいえる襲撃者に怖気づいてしまった不良たちは、喧嘩慣れしていた能力を発揮することなく叩きのめされる。

 

 それをしたのがアラタである。

 

 明らかに過剰防衛気味ではあるが、これはアラタの戦術的判断である。

 

 瀧野が廃墟に連れ込まれるところを見たアラタは、不安を覚えて裏口から侵入。そして会話の内容から相手がゲスであると判断。これは警察に通報するのもまずいと、いつものやり方を捨てた対処をとることにしたのである。

 

 英雄や偉人に敬意を払うアラタは、彼らをはじめとする過去の人たちが生きてきた人生の積み重ねでできている歴史に対して強い熱意を持つ。そのため世界史や日本史に関して、彼は常に学年十指に入る優秀な成績を誇っていた。

 

 そしてアラタはスタンスとして、歴史という他者の経験を人生の糧にして自分の人生に生かすことをモットーとし、それは荒事でも変わらない。

 

 その彼が歴史から学んだ対集団戦の教訓の一つに、こういうものがある。

 

 集団に対して先制攻撃を仕掛けるのなら、確実に倒せる相手がいるのなら必ずそれをターゲットに設定。そしてほかの敵が我に返って態勢を整えるまでに徹底的に倒した相手をいたぶることで、残りの敵に恐怖心を植え付け、相手の士気を低下させてから、持ち直すまでに短期決戦。

 

 警察が来るまでの時間稼ぎ目的ではさすがにしないが、下手に警察を動かすとリスクがあると判断した場合、彼はこの方法で制圧することを前もって決めていた。

 

 その後、不良たちは動けなくなっている間に全裸に迎え、学生証を上に乗せた状態でその姿を撮影される。

 

 流されたら赤っ恥確実な弱みを握られた結果、彼らは相互不干渉というアラタの要求を承諾。そのまますごすごと退散することとなる。

 

 そして、アラタは他言しないと誓約したうえで事情を聞きたいといい、瀧野もそれを承諾。そのまま自宅に招いて事情を話し―

 

「……正直、体が疼いて限界だったからね。顔がいいうえに正義感もあってぐっときて、つい食べちゃって」

 

「「誘ったどころか襲ったのかよ!?」」

 

 松田と元浜のツッコミに、イッセーも内心でうなづいた。

 

 アラタも男である。それも、駒王学園で知らぬ者がいないレベルの変態三人衆である、イッセーたちと普通に付き合えるぐらいにはその手のことに理解がある。更に目の前の瀧野は控えめに言って「グっとくる」タイプである。

 

 そして、彼女は代々自衛官を輩出する武士を起源とする武闘派一族の出身。さらに戦闘関係の英才教育まで受けた、三大勢力などの裏にかかわらない生徒の中では屈指の戦闘能力の持ち主。不良の喧嘩レベルのバトル漫画なら女ボスを張れそうな人物出る。

 

 本気で組み伏せようとすれば、荒事慣れしているアラタと言えど分が悪い。無意識レベルとはいえ性的にみている相手が、性交目的で襲い掛かってくるのならなおさら不利だろう。

 

「……で? そのまま「発散相手がいないと道を踏み外しちゃう!」とか言いくるめてズルズルとって感じ?」

 

「……はい」

 

 呆れ半分ながらいつもの調子を取り戻した桐生にニヤニヤされながら図星を突かれ、瀧野は視線を横にそらした。

 

 というより、前の高校で彼女を調教的な意味で攻略した者たちは、いったいどうやって最初の第一歩を踏んだのだろうか。

 

 親しき中にも礼儀ありの精神で聞かなかったが、イッセーの疑問はたぶん他の三人も思っていることだろう。

 

「本当は、兵藤君たちにも手伝ってもらった方がいいんじゃないかって思ってたんだよ? 基本的に多人数相手しか経験してなかったし、三人はそういうところは信頼できるって橋場君も言ってたし」

 

 なら、なんで誘ってくれなかったんだろう。

 

 馬鹿な男三人が声に出す気力すら失ってうなだれる中、桐生はうんうんとうなづいた。

 

「まあ、下手に童貞卒業したら銚子の理想だもんね、こいつら」

 

「うん。それで芋づる式にばれるのは……ちょっと抵抗があって」

 

 良くも悪くも三人を理解していたアラタの懸念が理由だったらしい。それを瀧野も悟った結果、一年近く長々と続いていたようだ。

 

「・・・・・・ ま、そういうことなら仕方ないか。誰にだって言いたくないことはあるもんな」

 

 イッセーはそう収めると、気持ちを切り替えて立ち上がる。

 

 悪魔になったことを皆に隠している自分が、偉そうに責める話でもない。そもそも、事情を知れば人に言いづらいことなのもよくわかる。

 

 そして、これ以上話を聞く余裕もなかった。

 

 なにせ今はフリード達をつり出すのに忙しい。リアスやアーシアに怪しまれ始めている以上、ばれて止められるのを防ぐためにも早く発見されたいところなのだ。

 

 それに、フリードという男は危険以外の何物でもない。

 

 悪魔としての仕事現場で遭遇した時に、彼の異常さは嫌というほど思い知った。

 

 依頼相手と思われる人を磔にし、そのうえで腹部を切り裂いて殺すという悪辣な手段。そんな真似を嬉々として語れる精神性。さらに事情も話さずアーシアを裏方として参加させ、とがめた彼女に強姦すら試みようとした邪悪さ。

 

 すべてにおいて危険人物だ。さらにエクスカリバーを持っていなかったその時期ですら、あの男はイッセーが祐斗や小猫の力をかりてようやく戦えた相手。此方も諸事情あってきたえているが、その時間があったのは相手も同じで、更にエクスカリバーという強大な武器まである。

 

 万が一あの男に自分と彼らとのつながりを悟られれば、遊び半分の報復にバラバラ殺人ぐらいはしかねない。あの男が相手では、身体能力抜群の松田や高等部一般生徒最強格の瀧野であろうと分が悪い。

 

「悪い、ちょっと他に予定があるから、俺はこの辺で」

 

「……いいの? いっそのこと、ここですることも考えてたんだけど」

 

 瀧野の爆弾発言に体感時間で十分ぐらい思慮するが、実時間三秒ですぐに思い直した。

 

 松田と元浜に先を越されるリスクもあるが、しかしまずは祐斗の問題解決だ。本当に先を越されたらショックで死にそうだが、祐斗を放っておくと先走った彼が物理的に死にかねない。

 

「いや、ちょっと木場の奴が立て込んでてさ。部活仲間としちゃ現在進行形の問題だからほっとけない」

 

「マジか。あのイケメン王子も悩みとかあるんだな」

 

「大丈夫か? 本番のカラオケには奴も誘っているのだろ?」

 

 松田と元浜がそう気遣いの言葉をかける。

 

 女性人気をはじめとしたあらゆるもので上回られている嫉妬の対象であるが、それでも同じ思いのイッセーが気遣うほどの事態と知って、二人は素直に気にしてくれた。

 

 こういうところがあるから友情が続いているのだと、イッセーは納得しながらうなづいた。

 

「大丈夫だって。問題解決して憂いなくカラオケに連れてかせるからよ。そこは安心しとけ!」

 

 そういって親指を立て、そしてイッセーは非日常に足を踏み入れる。

 

「っていうかー。魔界の悪魔からナイト様に助けられた感じだけど、それから一年近く体の付き合いしてて、何か特別な感情とか抱いたこととか一度もないのかしらん?」

 

「………も、黙秘権を行使します」

 

「「やっぱ、橋場殺すか」」

 

 ……匙もこの話を聞いたら、松田と元浜に協力してくれるだろうか。

 

 割と趣味があう同じ駒の転生悪魔仲間の力を借りたいと思いながら、イッセーは躊躇した足を今度こそ非日常に向けて踏み出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 踏み出したのである。

 




 瀧野の一件そのものは、この物語の大きな陰謀とは直接かかわりはありません。
 ただ、今後において少なからず掘り返したり因果があるので、詳細はその都度明かしていく形になります。









 そして次の話で事態は一気に動きます。具体的には、アラタ達がイッセーたちの裏事情に大きく深入りすることになります。
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