異聞・ハイスクールD×D 辺境武宝惑星・地球 矛盾せし真実持つ英雄   作:グレン×グレン

5 / 8
はい、そういうわけでついに本作初のバトルシーンが入ります。









初戦から飛ばすぜ~?


序章:4 ヴァーリ「コカビエル以下扱いされたのは苛立ったが、超えがいのある難敵に出会えたので、実に有意義な戦いだった」

 

 状況が、二転三転しすぎている。

 

 今、イッセーの目の前で起こっていることを見たものは、そんな感想を抱くだろう。

 

 余波で駒王町を吹き飛ばすエネルギーを生み出すほどの、分割された聖剣エクスカリバーの統合。

 

 その方法を編み出した、バルパー・ガリレイによる狂気の研究。人間が多少は持ち合わせている、聖剣の適正を左右する因子を取り出し、それを移植することで成り立つ人工聖剣使いの至り方。そして取り出すだけで済むにもかかわらず、抜き取った後の祐斗達の殺処分をゴミ掃除感覚で行ったバルパーの、逆恨み染みたコカビエルへの協力理由。

 

 その時に結晶化した因子の残りを取り込み、持ち主の残留思念と思いを通じ合わせて至った、木場祐斗の禁手(バランス・ブレイカー)双覇の聖魔剣(ソード・オブ・ビトレイヤー)

 

 その聖魔剣及び、ゼノヴィアが生まれつき適性を持つ聖剣デュランダルの前に敗北する、七分の四の力を取り戻したエクスカリバーと、使い手である人工聖剣使いフリード・セルゼン。

 

 自分の研究で至れなかったデュランダルの適合者の存在や、本来七分の一のエクスカリバーにすら圧倒されるはずの祐斗の神器である魔剣創造(ソード・バース)。そんな彼らに研究成果の極みを任されたにもかかわらず。バルパーの衝撃はそちらに向かなかった。

 

 聖と魔の融合である聖魔剣。それは彼のような研究者からすれば、理論上あり得ない現象である。そして彼はその原因を推測することができた。

 

 そして用済みであったこともあるが、それに対する口封じとしてバルパーを始末したコカビエルは、そんな聖魔剣やデュランダルを扱う祐斗やゼノヴィアを「未熟」と圧倒し、あろうことはバルパーを口封じに殺したにもかかわらず、「戦争をするのなら隠す意味もなかった」とあっさりバルパーが思い至った事実を告げる。

 

 それは、キリスト教を含めたアブラハムの宗教における唯一神の死。初代四大魔王と相打ちで、聖書の神が死んだという事実。

 

 聖書の神は奇跡を行使するためのシステムを作り出していたため、それを生き残った天界をまとめるセラフが操作することで何とかごまかしているが、しかし神の不在によって、様々な不都合が起きている事実。そしてその物的証拠こそが、世界のバランスが取れているのならあり得るはずのない、聖と魔の融合を果たした祐斗の聖魔剣だと告げる。

 

 神によって作り出された天使は、神が死んだことで増えることはまずない。そして神の死が知れ渡れば、世界は大いなる混乱に包まれる。

 

 敵対する悪魔や堕天使すら上層部にしか伝えらることがない事実。その事実に、強い信仰心を持つアーシアとゼノヴィアは崩れ落ちる。リアス達もまた、もはや戦争をする理由がなくなっているとしか思えないのに戦争継続を望むコカビエルの狂気とその力に気圧される。

 

 しかし、こういう時馬鹿は強い。

 

 一神教における神の絶対性に対する理解が足りにくい日本というお国柄で育った精神性。

 

 そもアーシアを救わなかった件で根付いていた神に対する不信感を、逆にある程度払拭すらさせるその真実の思わぬ副産物。

 

 少し前まで一市民であったことと、友に対する誠実な人柄にって、まず目の前の大切な人々と生活を守りたいという考えを優先することができたこと。

 

 あと、ハーレム王になりたいという煩悩に忠実すぎる生きてかなえたい夢。

 

 何より、「リアスや仲間のためなら、たとえ神でもぶん殴る」という、彼自身が少し前に宣言した決意。

 

 そんな諸々が組み合わさった結果、目の前の圧倒的脅威に対して、兵藤一誠は屈しなかった。

 

 それに触発され、その場にいる者たちも立ち上がり、コカビエルもイッセーに興味を向ける。

 

 ……その後、堂々と断言していたイッセーの夢に対して「俺についてくれば女を見繕ってやる」とコカビエルが誘い文句で答えて思いっきり揺らぎ、いい意味でも悪い意味でも緊張感がほぐれた。

 

 そして呆れ半分でリアスが告げた、「コカビエルを倒したら乳首を吸ってもいい」という言葉に、馬鹿(イッセー)のやる気が急上昇。

 

 所有者の思いに応える神器に、出力を急激上昇させるような煩悩丸出しのその姿に、コカビエルもさすがに引き気味で、しかし警戒の色を見せる。

 

 そして、イッセーははっきりと己を宣言する。

 

「覚えとけ! 俺はリアス・グレモリーの兵士(ポーン)! エロと熱血で生きる、赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の宿主、兵藤一誠だ!!」

 

 目の前の男を倒せば、主の素敵なおっぱいを―乳首を吸うことができる。

 

 ただその一念でコカビエルが警戒するほどの出力向上を果たしたイッセーは、しかしその力を開放することはなかった。

 

「―悪いなコカビエル。おイタはその辺にしてもらおう」

 

 その言葉共に、シトリー眷属が総力を挙げて張っていた結界が砕け散る。

 

 現れたのは白の鎧。

 

 どこか龍の印象を与えるその存在の称号は、白龍皇。赤龍帝の籠手に宿る、赤き龍ドライグと対をなす存在。白き龍アルビオンを宿した神滅具、白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイデイング)を禁手に至らせた存在。堕天使側に存在し、その中でも五指に届く実力を持つとされる、イッセーと対をなす存在だった。

 

 堕天使総督であるアザゼルの命で、コカビエルの暴走の尻ぬぐいをしに来た白龍皇は、コカビエルを圧倒する。

 

 急展開からの不意打ちで流れをつかまれた上に、更にコカビエルはその神滅具の効果を受けてしまう。

 

 自分の力を倍加し続けて、他者に譲渡もできる赤龍帝。それと対をなす白龍皇の能力はまさにその逆。敵の力を半減し続け、奪った力で己を強化する。

 

 完全に流れをつかまれたコカビエルは見る影もなく弱体化し、そして白龍皇はつまらなさそうにため息をつき。

 

「―くだらない。その程度で魔王を相手に戦争だなんて、身の程知らずの三流のセリフだな」

 

 その言葉とともに、コカビエルに拳を放ち―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―弱らせておいてそのセリフは、三流の悪党がいうことだぜ?」

 

 そう小ばかにする声とともに、拳をコカビエルに受け止められた。

 

 その光景に、誰もが自分の目を疑った。

 

 拳を放った白龍皇も、その戦いぶりを見守るしかないイッセーたちも、そして受け止めたコカビエル自身も。

 

 彼は自分が受け止められるとは思っていなかった。ただ悪あがきでガードを試みただけだった。すでに半減されつくされたその力は、白龍候どころかその場にいる誰でも勝ち目が見いだせるほどだった。

 

 だが、その半減されつくされた力は突如として取り戻された。結果、現存する純血の堕天使でも上から数えて一桁には入る力が、堕天使陣営で五指に入る実力者の白龍皇にも単純なステータスなら対抗可能だと証明できた。言葉にすればたったそれだけ。

 

 そして、それはコカビエルが独力で成し遂げたことではない。

 

 何より、その言葉を放ったのはコカビエルではない。

 

 誰もが、声がした先に視線を向けた。

 

 駒王学園高等部校舎。その屋上に何人もの人影があつまっている。

 

 性別は統一されていない。人種も統一されていない。体格もそれぞれが異なっており、全員が私服でセンスもばらばらであり、外見から推測できる年齢も異なっている。

 

 だが、それでも彼らが一つのグループであることはわかっていた。

 

 男も、女も。老人も、子供も。白人も、黒人も、黄色人種も。

 

 彼らの瞳には強い輝きが宿り、そして表情には決意と覚悟があった。

 

 まるで先ほどのイッセーのように、己の夢をかなえるために、全力で壁に挑もうとする者たち気迫がみなぎっていた。

 

 そして、彼らの一歩前に出ている男が、先ほどの言葉を投げかけた張本人だ。

 

 三十代半ばの白人男性。がっちりとした体格は鍛えられており、そのたたずまいは余裕に満ち溢れ隙が無い。

 

 命がけの修羅場をくぐってきたと肌でわかる。それも、質を問わず数だけで考えれば、文字通り生きた年月が違うコカビエルの次を、白龍皇を抑えて君臨しそうな貫禄がある。

 

 彼は手に持ったアニメや特撮に出てきそうな拳銃をくるくると回し、白龍皇にため息をつく。

 

「いけねぇなぁ。相手を弱らせておきながら「俺はお前より強い」だなんて吠えるのは。本当にそいつより強いと吠えたいなら、相手の全力を引き出してこそだろ?」

 

「といっても、俺は白龍皇なんでね。そういう力なんだから仕方ないだろう?」

 

 そうこともなげに返す白龍皇に対し、男はしかし呆れた表情を変えることはない。

 

 そして、拳銃の銃身に手をやると、それを折り曲げた。

 

 中折れ式の拳銃だったらしく、更にそこにあるスリットにちょうど入りそうな、一本の棒状の物体を取り出すと、それを収めながら告げる。

 

「つまり生まれながらの卑怯者か。そんな奴にそこの俺史上最も素晴らしい、その堕天使さんを倒させるわけにはいかねえなぁ」

 

『メガネウラ』

 

 その言葉と、そして合成音声がやけに響く中。白龍皇帝から殺意が解き放たれる。

 

『……どうやら、私たちは愚弄されたらしい。……赤いのの目の前でもある。ただで返すな』

 

「分かっているさアルビオン。俺も、なめられたままでは終われない」

 

 その怒気とオーラは、間違いなく彼がコカビエルに匹敵する戦闘能力を持つことを示している。

 

 しかし、その脅威を前にしながら、男は一切動じない。

 

 静かに拳銃を元に戻しながら、その銃口をなぜか上に向ける。

 

 そして、悪びれずにこう言った。

 

「いやいや、ちゃんと評価したぜ? ……つまり俺と同類だろ?」

 

 そして、後ろの者たちもまた、彼が持っているの徒同様の拳銃を取り出し、それに続く。

 

『『『『『『『『『『コンデンサー』』』』』』』』』』

 

 そして彼とは別の、しかし誰もが同じ音声を響かせ、それぞれが異なる構えで銃の引き金を絞る。

 

 そして彼らを率いる男性は、静かに告げる。

 

 彼らは皆、その身から放たれる感情を新たに加えた。

 

卑怯者(アンタ)の相手は卑怯者()がする。狡すっからい卑怯なやり口で、輝く世界を作り上げる輝くそいつを守って見せる」

 

 そこにあるのは怒り。

 

 誰もが、コカビエルに半減を仕掛けたうえで圧倒し、彼をさげすんだ白龍皇に怒りを向けていた。

 

 そしてそんな白き龍の同じ卑怯者は。目の前の男は静かに告げた。

 

「俺は、リアルタイムドリーマーズが一人、エイセイ・キーリュラウ。またの名を―」

 

 そして、エイセイと名乗った男は仲間たちとともに引き金を引き―

 

『『『『『『『『『『『ファイマー・チェンジ』』』』』』』』』』』

 

 その鳴り響く合唱とともに、全身に力の具現をまとって見せる。

 

 後ろの者たちが細部は違えど、似通った姿に変わるなか、先頭に立つエイセイ・キーリュラウは独自の姿に変わっていた。

 

 後ろの者たちと共通するのは、まるでSFのような空想科学に基づいた、変身ヒーローのような全身プロテクターであること。

 

 そして、エイセイはさらにその上で、機械化したトンボを思わせる、どくどくなプロテクターに身を包んでいた。

 

 この場にいるほとんどのものが知らないことだが、それはプロテクターに身を包む前から分かり切ったいことだった。

 

 メガネウラとは、太古の昔に生息していた、人類が知る限り最も巨大なトンボの一種。

 

 その名を響かせる装置を使用した彼が、トンボを思わせる姿に変わるのは必然だった。

 

「―ファイマー・ピカレス。輝くために己を磨き、輝かせるため世界も磨く、世界という物語を彩る、名有りの戦士の称号さ!」

 

 

 ―その瞬間、エイセイは白龍皇の隣に移動していた。

 

 反応できたのはコカビエルと白龍皇のみ。それ以外には、彼がその場に空間跳躍したと錯覚するような高速移動。

 

 そして反射的に白龍皇が拳を振るう頃には、そのすぐ真下に瞬時に移動。

 

 そして手に持つ銃が白き鎧に突きつけられ、瞬く間に弾丸が放たれる。

 

 その直前に振るわれた白の拳は空を切り、そのあとにようやく、白龍皇は自分の鎧が傷ついていることに気が付いた。

 

「馬鹿な。この俺が……」

 

「だからあんたは三流の卑怯者なんだよ」

 

 唖然とする白龍皇の真後ろで声が響き、振り向きざまの裏拳が放たれるも、それが到達する前に側頭部に移動してから放たれた銃撃が叩き込まれる。

 

 その瞬間、白龍皇は激高した。

 

「……玩具風情がぁ!!」

 

 全方位から放たれたオーラに、信じがたい光景に誰もが反応を忘れ弾き飛ばされる。

 

 コカビエルもまたそれをもろにくらい、しかしエイセイの仲間たちが、受け止めそしてカバーする。

 

 そしてそのころには、一方的な戦いが繰り広げられていた。

 

 上空を変幻自在な軌道で移動するエイセイの銃撃を立て続けに食らいながら、白龍皇はオーラの嵐を乱れ撃ち、しかし一発も攻撃を当てることはできない。

 

 損傷こそ軽微だが、しかしどちらが戦いの流れをつかんでいるかは明白。

 

 神や魔王すら殺せる白き龍。その力を堕天使側で有数の戦力と呼ばれるまでに発揮している男が、文字通り一方的に攻撃を受けている。

 

『……馬鹿な』

 

 その光景を見て、イッセーに宿りし赤き龍ドライグが呆然とつぶやく。

 

『あの男、白いのを宿した連中のなかでも、すでに有数の力を発揮している。それを圧倒しているあの装備、俺は見たことも聞いたこともないぞ?』

 

 その言葉に、誰もが息を呑む。

 

 赤き龍ドライグと白き龍アルビオン。

 

 その二人は神器に姿を変えてなお、幾度となく戦いを繰り広げた。

 

 そのドライグをして有数の実力者である今代の白龍皇が、見たことも聞いたこともない力によって一方的に攻撃を喰らっている。

 

 放たれる攻撃の威力は明らかに白き龍が上。しかし、一発も当たらずに少しずつ装甲を削られているその光景は、だれがどう見ても白龍皇の敗北を予感させる。

 

「……まさか、あのヴァーリ相手にあそこまで戦えるのか?」

 

 その光景に驚くコカビエルをかばいながら、エイセイの仲間たちは彼を諭す。

 

「コカビエル殿。俺たちはあなたを迎えに来ました。ここは同志エイセイに任せて、貴方はあなたがいるべき場所に来てください」

 

 そう告げる同僚にうなづきながら、他の者たちも口々に告げる。

 

「アンタこそ最高の堕天使。ただ力を持っているだけの、くすんだ連中に邪魔されるべきじゃない」

 

「己を磨き、そして世界も磨いて輝かせようとしたアンタは、堕天使の世界を輝かせるために必須なんだ!」

 

「アンタと並び立ちたい奴らがいっぱいいる! そいつらのためにも、アンタは今は逃げるんだ!!」

 

「あ、ああ……」

 

 その熱意と尊敬に満ち溢れた視線と言葉に、コカビエルは思いっきり流された。

 

 メンバーの一人が展開する転移魔方陣に導かれ、コカビエルは遠くの場所へと転移していく。

 

 そしてそれに気づいて、白龍皇は舌打ちした。

 

「チィッ! 相手の誘いに乗っている暇はないか!!」

 

 その言葉とともに光翼が輝き、そしてエイセイの動きが見るからに遅くなる。

 

 その物理法則を無視したような軌道はそのままに、しかし速度は明確に下がる。

 

 同時に威力も低下した攻撃を強引に突っ切り、白き龍は拳を構える。

 

「貴様の言う卑怯者の力に敗れるがいい!!」

 

「いやぁ、俺は確かに卑怯者って言ったけどぁ―」

 

 その拳を前にエイセイはそう言葉を放ち―

 

「―()()()()()()()()()()()()?」

 

 その拳の鎧は、直撃と同時に砕け散った。

 

 ファイマー・ピカレスというプロテクターに叩きつけられた白龍皇の鎧は、その打撃の衝撃で見るも無残に砕け散った。

 

 その信じられないような光景の中、一人だけその現象を即座に理解したものいた。

 

 明らかに絶句しているイッセーたちではない。最初から仕組みを知っているエイセイ達でもない。拳を放ち、鎧が砕け、しかし()()()()()()()()()()()()ことから、白龍皇だけは何が起こったのかを理解した。

 

「……アルビオンの力が、削減された?」

 

「そ。だから言っただろ? 俺も卑怯者だって」

 

 そしてその瞬間、()()()()()()()()()()()()()()エイセイは引き金を引き絞る。

 

『メモリアル・オーバードライブ』

 

 その音声とともにプロテクターのオーラが増幅し、そして白龍皇のあらわになった腕を同時につかみ―

 

『テンカウント・メガネウラ・ブーストアップ!』

 

 その音声が鳴り響く中、文字通り十秒間《テンカウント》の間、ファイマー・ピカレスの力は絶大に跳ね上がる。

 

 白いジグザク軌道の線としか形容できない変速高速移動に、白龍皇一切の対応をすることができない。

 

 ただ揺り動かされ、地面に叩きつけられ、障害物と激突し、Gで体内を圧迫され、そして血反吐を吐いて空に投げられる。

 

 脳に回すべき血液が慣性の法則でバラバラに散り、ブラックアウトで意識すら定かではない。

 

 そして、コカビエルを先に転移させた仲間たちとともに、エイセイは銃口を彼に向ける。

 

「じゃ、自分を知らないおバカさんに折檻の時間だ。致命傷は避けて俺たちの治療所に運んでやるから、自分の居場所を知る前にちゃんと反省すること」

 

 その言葉とともに引き金が振り絞られ―

 

 

 

 

 

 

 

「いや、一応そいつにはダチが世話になったんでな」

 

「それに、ちょっと貴方たちに聞きたいことがあるんだよね」

 

 その言葉とともに、上空から弾幕が放たれる。

 

 エネルギー弾と思われるその掃射は、しかし悲しいことに、一発一発の破壊力は機関銃といったところだ。

 

 ただの人間相手なら軍隊にも通用するだろうが、封印前なら富士山すら一撃で消し飛ばすことも理論上可能であっただろう白龍皇を圧倒するファイマー・ピカレスを傷つけるには、戦車部隊の一斉射撃すら全く足りない。

 

 しかし、彼の仲間たちの気を引くにはそれで十分。一斉射撃を止めるには、それだけで足りていた。

 

 そしてその射撃の威力を瞬時に見切り、さらに照準を白龍皇に向けたまま、変速機道で射線からずれたエイセイは引き金を改めて引き絞り―

 

『―――本来の用途から外れますが、アラタから「借りは返したい」と言われましたので』

 

 逆に地上から放たれる輝く散弾の捕縛網に、初めて急所をかばう防御行動をとった。

 

 即死に繋がる急所を両手両足でカバーし、そしてもっとも被弾が少なくなるよう、最短距離で強引に突破。

 

 空に飛び散るその散弾は、しかし一発一発が彼の銃撃にも匹敵する威力。それは、この一連の流れで初めて生まれた、ファイマー・ピカレスというプロテクターの損傷が示している。

 

 そして、空からの弾幕を放った物体が、皆の視界に映り込む。

 

 舞い降りるのは同じ形をした、楕円形の飛翔物体。

 

 そしてそれは交差する軌道を描き、主のもとへと飛んでいく。

 

 それをかばうは、ファイマー・ピカレスに初めて有効打を与えた鋼の獣。

 

 獰猛な肉食獣を思わせるフォルム。しかし薄暗い夜空の下でなおわかる、三門の銃身を持ったロボットアニメに出てきそうな背中の砲台が、それを人工物だとはっきりと示している。

 

 そして、それがカバーする一組の少年少女が、飛翔物をつかみながら姿を現す。

 

 その姿を見て、兵藤一誠は眼を口をこれでもかと大きくする。

 

「……橋場に、一橋!?」

 

「無事だなイッセー。あとグレモリー先輩や、オカルト研究部の連中も大丈夫みたいだな」

 

 悪友とその主に致命傷がないのを見て取って、橋場アラタはほっと息を吐く。

 

「大丈夫、兵藤君? 状況は全然わからないけど、駒王町を吹き飛ばそうって人は……彼?」

 

 同じく安堵しながらも、しかしエイセイ達を見て警戒する瀧野。

 

 アラタもまた警戒の色を見せるが、だが少し勘違いをしている。

 

 そして、それにイッセーが答えるよりも早く、白龍皇が声を出した。

 

「いや、コカビエルはすでに逃げた。……奴らの仲間に助けられて……な」

 

 そしてふらつきながらも立ち上がり、白龍皇は吐いた血を鎧の隙間からこぼす。

 

 そして、震えながらエイセイを、ファイマー・ピカレスを見据える。

 

 そこには怒りではなく、喜びがあった。

 

「……いいね、実にいい。邪魔も愚弄もされたが、冷静に考えれば都合がいい」

 

 狂気すら感じさせるその喜の感情を浮かべ、白龍皇は膝をつく。

 

 その事実に悔しそうにこぶしを握りながら、しかし彼は喜んでいた。

 

「名も知らぬ俺以上の強者は最高だ、俺は俺より強い奴がいないつまらない世界で生きたくないから、その事実は素直に喜べる」

 

「……そいつはいい。つまらない物語に存在価値はねえもんな」

 

 そううなづきながら、エイセイは視線を彼には向けない。

 

 実にうれしそうな雰囲気を漂わせながら、アラタと瀧野を見据えて告げる。

 

「仕事は終わりだが使命がまだだ。輝かしい物語を始める勇者たちが現れたんだから、序章にふさわしい戦いをしなきゃな。ライトノベルだってつかみが肝心だろ?」

 

 そう言いながら指を鳴らすと、残っていた仲間のうち二人が、静かに前に出る。

 

 それに対して機械の獣が砲身を向けるが、橋場は獣の一歩前に出る。

 

「アユミ。お前はあのトンボ擬きを抑えててくれ。どうやら奴さん、俺と一橋にこいつを使わせたいらしい」

 

 そう言いながら、アラタは静かにエイセイ達をにらみつける。

 

 そしてイッセーは我に返り、その背中に声を飛ばす。

 

「ば、バカやめろ! そのトンボみたいなのめちゃくちゃ強いから、たぶんその取り巻きもやばい!!」

 

 そう、彼らは警戒に値する。

 

 自分達が束になっても、遊び半分であしらったコカビエル。それを不意打ちでペースをつかんだとはいえ、あっさりと追い詰めた白龍皇。その白龍皇を一方的になぶったファイマー・ピカレスことエイセイ・キーリュラウ。

 

 明らかに戦闘能力のインフレが加速しすぎている。イッセーが悪魔になってから経験した戦いの難易度が、たった数時間で大きく角度が変わってしまった。

 

 アラタも瀧野も戦闘能力は高い。だがそれは人間の範囲内であり、技術はともかく性能においては、神器を使ってない状態のイッセーの方が上だろう。よしんば神器を宿していたとしても、今使い方がわかってないのなら危険すぎる。

 

 だから前に出ようとするが、その肩に瀧野の手が乗せられる。

 

「大丈夫。兵藤君はちょっと休んでて」

 

 そして瀧野も前に出て、そしてアラタとともにつかんでいた飛翔物体を構える。

 

 その二人の姿に、エイセイ達は涙すら流しそうな狂喜を見せた。

 

「餞別ファミリアドライバー。ついに俺たちと戦う者たちまで出てくれたのか!」

 

「どの同士が渡したのかは分からねえが、目の付け所が違うぜ!」

 

「ああ、ついに我らが渡した魔法の剣を、振るって輝く勇者が来たのか!」

 

 歓喜の声を次々に挙げる、リアルタイムドリーマズを名乗る武装集団。

 

 それに対して警戒の色を見せながら、アラタと瀧野は足を止め、そして鋭い視線を突き付ける。

 

「……プレゼントまでした相手に敵対されて喜ぶとか、本気で何考えてるのかわからないな」

 

『キャノン』

 

「……正直少し気味が悪いけど、帰ってくれないならしかたないよね」

 

『アーミー』

 

 二人が同時に取り出すは、エイセイ達が使用したものと酷似した、しかし明らかに別種の構造体。

 

 それを、餞別ファミリアチェンジャーと呼ばれた飛翔体のスリットに挿入し、そしてそれを放り投げる。

 

 そして、それらは宙に浮かび、底面を二人に剥けると同時に、先ほどエイセイ達が響かせた音声を発音した。

 

『『ファイマー・チェンジ』』

 

 そして底面からプロテクターが形成され、二人の体に装着される。

 

 それは、エイセイ達と同様の技術で作られていることがわかり、しかし異なる設計であることもわかる、似て異なったプロテクター。

 

 その姿に感動すら覚えているエイセイは、歓喜に身を震わせながら声を張り上げた。

 

「最高だ! さあ、銘を付けてるなら教えてくれ!!」

 

 その言葉に―

 

「ファイマー・ノウブル。橋場アラタ」

 

 青の装甲をまとったアラタが左腕を彼らに突きつけ―

 

「ファイマー・ディアン。一橋瀧野」

 

 緑の装甲をまとった瀧野が、左腕を引き右手を前に出す、武道の構えをとる。

 

 そして、二人のプロテクターに共通して存在する、左腕のプラットフォームに、餞別ファミリアチェンジャーが接続される。

 

 それを見計らい、エイセイの前に立つ二人の戦士が腰を落とし。

 

「「さあ、初陣を勝利で飾って見せろ!!」」

 

 心からの歓喜と、魂からの願いを告げて、しかし全力で倒すと態度で示しながら、彼らは突撃を敢行した。

 




 はい、第一部メインオリ敵である「リアルタイム・ドリーマーズ」がいろんな意味でインパクトのある登場をしました。

 ネームド敵にフルボッコにされたヴァーリですが、リアルタイム・ドリーマーズのネームド全員が禁手状態のヴァーリをフルボッコにできるかというとそうでもありません。現段階で奴らのネームドは五人ほどいますが、ここまで一方的にボコボコにできるのは二人ぐらいです。そしてエイセイが上から二番目であるかというとそうでもなく、単純な戦闘能力なら同率三位ですね。

 これは人から指摘されたことのある自分のキャラ設定の傾向である「原作キャラに対するメタ能力」に由来します。
 エイセイ・キーリュラウは「精鋭」「龍キラー」をそれぞれアナグラムして作った名前で、リアルタイム・ドリーマーズの一番槍としてエクスカリバー編である序章用に設定したキャラです。リアルタイム・ドリーマーズの強敵ぶりを示すため、そして組織の思想から言って必ずコカビエルを助けにいくため、「ヴァーリをボコれる組織の精鋭」として作りました。
 彼はその名の通り対ドラゴンにおいてはリアルタイム・ドリーマーズでも最強格であり、そこに限定すれば別格である第一部ボスより上。ただしヴァーリはドラゴン以外にもチート染みた強みがあるので、対ヴァーリ戦ならボスの方が勝率が高いです。









 そしていいタイミングで登場したアラタ達。

 イッセー視点なので獣と表記しましたが、あれはアユミです。

 細かい説明はヴァンパイア編の時系列で当人に語らせますが、普段の彼女の姿は戦闘用ではなく、ガチ戦闘の時はこんな風にマジの異形になります。ジャンプ漫画「ワールドトリガー」の遊馬みたいなのがイメージとしては近いです。

 そして戦闘モードに入ったアラタと瀧野。

 名称を見て勘付いた方もいると思いますが、二人やリアルタイム・ドリーマーズが使用する「ファイマー・システム」は「仮面ライダーゼロワン」の変身システムからインスパイアしました。そのため変身用の道具も色々種類があり、それぞれ種類別に特色がある感じです。餞別ファミリアチェンジャーは基本的に禍の団以外の勢力が使用するものですが、作ったのも渡したのもリアルタイム・ドリーマーズです。









 リアルタイム・ドリーマーズは禍の団でも特別頭がいかれている連中とお考え下さい。

 最近の活動報告でなんどか話題に出しているLight作品風に言うなら「馬鹿と邪龍の悪魔合体」みたいな組織です。アラタや瀧野が餞別ファミリアチェンジャーを使って自分達と敵対したことを知れば、構成員の八割が「今夜は赤飯だー!」テンションで祝いの飲み会をするような連中です。

 詳細は話が進むごとにわかっていくようしたいですが、まあ個人的な持論をもって、彼らに対して読者側の視点で考えることを告げましょう。









「狂人は精神を理解するのではなく、生態を把握するように努めるべき」

 そんなスタンスで観察するのが、読む側の精神状態の健康につながると思います。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。