異聞・ハイスクールD×D 辺境武宝惑星・地球 矛盾せし真実持つ英雄 作:グレン×グレン
その根幹はあの四本脚形態の固有能力。
あの状態のアユミは、足に特殊な液体の分泌機能と、その粘性を操作するための電流や振動を発生させる装置があります。それによって接地面とくっついたり摩擦係数を操作することで、慣性を操作したかのような曲がり方や滑り方やドリフト走行を可能とし、状況次第では壁を走ったりその場で止まったりできます。本来の目的は全力砲撃時の反作用で狙いがずれるのを止めるためのジャッキでしたが、この応用ができることに設計時に気づかれたことで、壁面からの射撃や、高速移動時に止まることなく精度の高い狙撃をするといった、足で走る陸戦型では普通出来ない射撃ができるようになりました。
エイセイはなまじ腕が立つため、相手の動きや速度から「どれぐらいの時間と距離を反転時に滑るか」ということまで予測して撃っていたため、この機能のせいで狙いがくるっていました。これが二人の戦いが千日手になってた最大の理由で、アユミがヴァーリより強かったからああなったわけではありません。
種がわかった以上エイセイもその辺を考慮しない形で狙いをつけるので、同じ条件で再選すれば十中八九エイセイが勝ちます。その時はその時でアユミにも策はありますが、素直にしゃべりそうになったのでアラタが止めた……ということですね。
……何だったんだ、あいつらは。
コカビエルとかいう奴がこの町ごとグレモリー先輩や生徒会長を吹き飛ばそうとして、それを止めに来たらしい白い鎧の奴を、俺や一橋に
しかも、俺や一橋が渡された物を使って敵対してきたのにも関わらず、あいつらはむしろ感動しやがった。
その後確かに一戦交えた。だが、あいつらはむしろ俺達の実力を確かめるのが目的で、明らかに手を抜いていた。
……ファイマー・ピカレスとかいう奴こそアユミが抑えていたけど、他の連中が総がかりで挑めば俺と一橋をどうにかする事はできただろうに。イッセー達が展開が変わりすぎてて動いていなかったとはいえ、こいつらを殺す気だったコカビエルを助けに来たのなら、ついでに殺すぐらいしても良かったんじゃないか?
つくづく頭のおかしな展開になってきやがった。くそ、D×D事件以来、俺の生活は急展開すぎないか?
リアルタイム・ドリーマーズ……か。
訳の分からない連中だ。D×D事件で俺達の前に現れたおっさんといい、一橋が前の学校で会った女といい、いったい何を考えてる?
それに、餞別ファミリアチェンジャーを渡された奴が俺達二人だけってこともないだろう。奴らの持ってた銃も似たような機能を持っていたんだ。銃タイプが一部隊の共通装備なら、餞別ファミリアチェンジャーもあの銃も、まだまだ作られているって考えるべきだ。
これは、奴らの仲間や奴自身がまた現れてちょっかいかけてくるって考えるべきだよな。
……俺は、明確に感じる頭痛とうっすら感じる高揚に、ため息をついた。
「……アラタ、アユミ。大丈夫ですか?」
と、背中に届いた声に気が付いて、俺は振り返った。
そこには生徒会長達に連れられて、ラミ姉がこっちに気づかわし気な表情を向けている。
軍隊すら無双する化け物をどうにかする力なんてないラミ姉には、心配させるだろうけど生徒会と一緒に残ってもらっていた。
生徒会の人達も結界が吹き飛んだ状態で一般市民に事が知られないように動いていたので、ついでにラミ姉の保護も頼んだのだ。
そして会長達が来たって事は、とりあえず安全という事でいいんだろうな。
ま、辺りを見渡せば動く敵はいない。血まみれで倒れている少年と中年がいるが、多分中年の方はもう死体で、少年の方は……ギリ瀕死ってところか?
D×D事件の所為で死体の山が誕生過程に至るまで嫌になるほど見たからか、その手の判断能力がある程度身についてしまった。基本戦争と無縁な日本国の一般人が習得していい能力じゃない。
せめて、自衛隊とか警察に就職してから習得したかった。こんな血生臭い技能、学生が持ってても何の自慢にもならねえ。
だがまあ、とりあえず今回はしのいだわけだ。
「ま、当座の問題は解決した……ってことでいいんですかね?」
俺がそう振り向きながら訪ねると、グレモリー先輩は肩をすくめた。
「……ええ。もっとも、私達は事後処理があるし、あなた方にも話を聞くべきでしょうけどね」
「……なら、俺も言われた事をできる限りでやる事にしよう」
先輩の言葉に応じるように、白い鎧の奴が立ち上がった。
まだだいぶふらついているようだが、瀕死の少年を肩に担ぐと、静かに首を振る。
「コカビエルを逃がした事でアザゼルに何か言われそうだが、だからこそこの男には聞く事があるんでね。……まあ、こちら側で把握できた情報は後でそちらの政府にも伝えられるだろう」
『ふぅ。赤いのの前で情けない姿を見せてしまった。雪辱の機会が訪れるといいのだがな』
何故か鎧からはそいつ以外の声も聞こえるが、まあその辺については後でグレモリー先輩に聞いてみるとしよう。
っていうか、赤いの? グレモリー先輩のことを指してるようでもないんだが―
『―気にするな。此方は見ての通りまだまだ未熟でな。既に至っているお前の宿主を馬鹿にする気はないさ、白いの』
と、思ったらイッセーの左腕からも声が聞こえてくる。
その時になってやっと気づいたが、イッセーの左腕、なんかごつい籠手がついてるな。
なんとなくだが、白い鎧と似ているな。だけど実戦で籠手だけ着けるってのもおかしな話だし、それ以外が破損したってわけでもない。アユミが言ってた
まあいいか。今は情報が足りなすぎる。後でグレモリー先輩から話を聞くか、アユミにデータベースとやらから情報を引き出してもらうとするか。
「……って、ちょっと待てよ?」
と、イッセーがふと何かに気づいたかのように目を見開いた。
なんだ? まさか他に敵が?
そう俺が身構えた時、イッセーは静かに崩れ落ちた。
「……コカビエルに逃げられたってことは、部長の乳首は吸えないってことじゃねえか!?」
俺は、五秒ほど考えて行動に移った。
具体的には、イッセーに跳び蹴りを叩き込んだ。
お前は駒王町が吹き飛びかねないって時に、何を考えて行動してるんだコラ。
五メートルぐらい吹っ飛んで転がるイッセーを無視して、俺はアユミにさっさと行動をとってもらうことにする。
「アユミ。とりあえずそこの赤い髪の女子高生が、うちの学校唯一のグレモリーって苗字の外国人だ。……親父が言ってた映像記録媒体を」
「了解です、アラタ」
と、そこにいるのは機械の獣じゃなく、少女の姿をしたいつものアユミだ。
いつの間にか獣と入れ替わって現れたアユミに、グレモリー先輩たちが身構える。
「……いつの間に」
「あらあら。どちら様かしら?」
一年の塔城と三年の姫島先輩が、それぞれ警戒してきてる。
いやちょっと待て。体術の構えが堂に入っている塔城はともかく、姫島先輩は何で全身からバチバチ電流がほとばしってんだ。
いや、この世界はどうやら異能バトルものらしいのはさっき薄々勘付いたが、その舞台がなんで俺の通っている高等部なんだ。
つい数か月前にテロリストに襲われる日本の人工島なんてラノベ展開をしのいだばかりだってのに、今度は日常生活の場が異能バトルものだったとか、別の意味でヘビーすぎる。
俺が割と本気で転校を考える中、それに気づいたラミ姉が、その手の機微に疎いアユミに代わって前に出た。
グレモリー先輩を庇う様に二年の木場が前に出て、イッセーの奴も復帰してなんとなくみたいな感じで一応グレモリー先輩の盾になれる位置に立つ。
それを興味深げに見る白い鎧の視線も浴びながら、ラミ姉はグレモリー先輩に向かって一礼します。
「初めまして、リアス・グレモリーさん。私はラミ・リスタート。先日倒産したピグマリオン社の、デイライトシティ支社で社長秘書見習いをしていました」
その発言内容に何人かがこっちに視線を向ける。
まあ、俺がD×D事件の生存者なのは知ってるやつもいるだろう。イッセーは確実に知ってるから、その流れで同居人のグレモリー先輩やアルジェントも話に聞いた事ぐらいあるだろうしな。
その視線に俺がむず痒いものを感じてる中、ラミ姉は一回咳払いすると、話を続けた。
「私とアラタは、D×D事件で行方不明者と発表された、ピグマリオン社のデイライトシティ支社長にしてアラタの血縁上の父である、ウィル・カンホワイトから、あなたかそちらの生徒会長さんに接触するよう言付かっておりました」
「……悪いけど、私もソーナも、ピグマリオン社の重役と直接の縁はないはずよ?」
ふむ、こっちもか。
ま、会長も特に心当たりはなさそうだったからな。望み薄なのはわかっていた。
ラミ姉もそこは予想済みだったのか、特にけげんな表情は浮かべなかった。
ま、親父の言っていた事の内容も色々奇抜だからな。これぐらいは予想の範疇ないだろう。
「……そこに関しては、おそらくアラタが接触できる範囲内で、最も用のある人物に近しいのがあなた方二人だったからだと思われます」
ラミ姉はそう推測してから、改めてグレモリー先輩と生徒会長と向き合う。
「ウィルから言付かった内容は「アラタの通っている高等部で、生徒会長を務めているはずのシトリー、もしくは三年に在学しているグレモリーに、私の隣にいるアユミ・インディペンデンスを連れて接触。そしてアユミが保有している映像記録媒体を渡し、貴女達の兄か姉に届けてくれるよう頼む」といった内容です」
「お兄様……魔王様に?」
グレモリー先輩が怪訝な表情を浮かべる。
ってか、今度は魔王かよ。世間一般の日本人の日常から乖離しすぎだろ。親父はどこから聞きつけた。
俺がなんというかげんなりしていると、生徒会長は何か納得した用だった。
「なるほど、橋場君と彼が接触できる範囲内の異形関係者に、異形の首脳陣へ届け物をする為の中継点としての役割を求めたわけですか」
「私は詳しくは知りませんが、お二人があなた方の所属する陣営において、首脳陣の肉親だというのなら……そういう事だと思います」
ラミ姉も詳細は聞かされてないからな。そう推測するしかない。
まあ、とりあえずやることやるか。
ラミ姉も俺と同じ考えなのか、アユミに振り替えると頷いた。
「アユミ。ウィル小父さんが言っていた映像記録媒体を、彼女達に渡してください」
「はい。此方に」
アユミがそう言いながら、いつの間にか手に持っていた結晶体を差し出した。
木場が警戒しながらそれを受け取り、少し確認してからグレモリー先輩に渡す。
「……魔法使いの社会で流通している、映像記録用のアイテムに似てます。特に呪いなどのトラップはなさそうですね」
「そうね。仮にも息子に、魔王様を害せるほどのトラップが付いた物を運ばせるとも思えないわ」
そう言うと、グレモリー先輩はそれをしっかりと持って頷いた。
「ご苦労様。貴女の上司が遺したこれは、私が責任をもって魔王様に届けるわ。ただ、内容は確認しないけど、一応危険な仕掛けがないか精査はさせてもらうわ」
「それは構いません。当然の警戒だと思います」
ラミ姉はそう言うと、少し肩の荷が下りたのか力を抜く。
そしてそれを見てから、白い鎧が肩をすくめた。
「かのD×D事件の犠牲者が魔王に託した物か。気にはなるが、まあ堕天使側が首を突っ込む事ではないようだ」
そういうと、奴は空に浮かぶ。
「では、俺は帰らせてもらう。そろそろアザゼルに報告しないといけないんでね」
そして、白い兜越しにイッセーに目を向けた。
何だろうか。そこには興味と、どこか失望のようなものが見える。
「強くなれ、俺の宿敵。あの戦いを見たのなら分かるだろうが、俺達の世界は強者である事を俺達に否応なく求めてくるし、俺も君に求めるんでな」
「え? ま、俺も上級悪魔になる為に頑張るつもりだけどさ。……あ、部長の乳首を吸えなくなったのはムカつくけど、一応助かったぜ」
そう戸惑いながら返すイッセー、そいつは何も返すことなく飛んで帰って行った。
予備知識が殆どないから、何が何だかさっぱり分からん。
とりあえず、これで親父からの頼みは果たした。
さて、俺はどうしたもんだろうか。
そんなことを思っていると、アユミが何故かイッセーの籠手をガン見してる事に気が付いた。
なんだ? 何かあるのか?
「ドライグ? なんかあの子、お前に心当たりがあるんじゃないか?」
『いや、奴に心当たりはないぞ? 相棒より幼いようだし、そうなると直接関わる機会もないんだが?』
……駄目だ。知識が足りなさ過ぎてさっぱり分からん。
そしてグレモリー先輩達も、アユミに心当たりがないから首を傾げている。
「あ、一応言っとくと、さっきトンボ野郎と戦ってたロボットはアユミです。詳しくは俺も知りませんが、ガチバトルの時は他の体に替わるみたいでして」
「ああ。だからあのロボットがいなくなったのね? 何かの神器を使った応用技かしら?」
俺がグレモリー先輩に補足説明していると、何かに納得して頷いているグレモリー先輩を無視し、アユミがイッセーに近づいた。
うん。アユミって割と出てるところは出てるから、イッセーに近づけるのは不安なんだが。
イッセーも何が何だか分からなさそうに首を傾げていると、アユミはイッセーの目の前で屈み込み―
「……おぉ~」
―目をキラキラさせてイッセーの籠手をつんつんとつついた。
俺とラミ姉は顔を見合わせて、アユミの意図を悟って苦笑する。
「悪いなイッセー。アユミはお前の
「少し前のこの学園を覆っていた結界に見惚れてましたから。できれば、もう少しそのままでいてくれませんか?」
なんだかねぇ。子供が職場の外人な同僚に目を輝かせてるような感じ……か?
こんなでかい子供を持つ年でもないんだがな。俺もラミ姉も。
ま、そんなこんなで空気が緩む中、俺は様子を見守っていた一橋に振り替える。
「悪いな。俺の都合にも巻き込む形になりそうだ」
「大丈夫だよ。私も、結構色々経験してるから……さ」
そう言って苦笑する一橋だが、少し視線をずらし、校庭の様子を見る。
なんていうか、大量のクレーターで埋め尽くされてるな。
生徒会の奴らが手を輝かせながら辺りを動き、それに合わせてクレーターが埋まっていくのはファンタジーそのものだ。
まさか、自分の通っている高校でこんなラノベみたいな裏事情があるなんてこと、考えてもみなかった。
しかもそれ絡みで街ごと吹っ飛びかねない羽目になるとはな。正直、D×D事件を経験してなきゃ現実逃避してそうだ。アユミの存在もいい慣らしになった。
……だが、これで終わりってわけにもいかないだろうな。
どうも今回の件、イッセー達が関わっている裏事情が絡んだ世界規模のややこしい事態みたいだ。その上、そいつらが知らない謎の凄腕集団が介入してきた。とどめにそいつらは俺と瀧野にスーパーヒーロー変身セットを押し付けてきてやがる。
間違いなく、これで俺達の役目が終わるって事にはならない。いやでもグレモリー先輩達と密接な繋がりを持つ羽目になるだろう。
何より、リアルタイム・ドリーマーズとかいったあいつらはちょっかいをかけてくる。
今回のスーパー超常大戦を考慮すりゃ、いっそ自分から踏み込んだ方がまだまし……かねぇ。
つっても、色々と勢力争いしてる業界に関わるんだ。下手に何も考えずどっかに所属するのは、ちょっと不用意すぎるよな。
敵を知り己を知ればなんとやら。判断するには情報が必須で、俺達にはそれがあまりに足りない。
となると、イッセーには悪いがいきなり先輩や会長の庇護下ってのも、今回のごたごた考えるとちょっとなぁ。
俺がそれを懸念していると、一橋も同じことを考えたのか、俺に近づいてきた。
「ねえ、橋場君。あのラミって人やアユミって人、今は橋場君と一緒に住んでるの?」
……凄い邪推された気がする。いや、一橋には事情話してないから、電話越しにアユミからの情報提供聞いてた事実と時間帯からそう勘違いするのも無理ないが。
「いや、ちょっとそれには抵抗あってな。……まあ、できる限りまとまって生活してた方が安心なんだが」
俺がそう言うと、一橋は一つ頷いた。
「橋場君、いきなり先輩達のお世話にならずに様子見したがってるよね」
「……ああ。判断材料がなさすぎる」
やっぱりすぐ分かるな。
イッセーは、個人としては信用も信頼もできる。それは一橋も分かっている。
だが、イッセーが今所属してる勢力までそうだと判断するのは早計ってやつだ。
どうも国家規模の組織らしいからな。時として、非道な事であっても組織全体を考えるとしないといけない事ってのはある。それはどこの国でもある事で、国家規模の組織ならそれも同じだろう。
その組織全体の方向性ってのが分からなければ、切られる判断がされるかどうかの判断ができない。
イッセー個人について詳しくても、イッセーが組織の在り方を決めるわけじゃない。むしろ俺達がうかつに深入りしたら、俺達が切られる時にイッセーにまで迷惑がかかる。それは避けたい。
そこを不安に思っていると、一橋は小さくつぶやいた。
「……会長の言っていたことを考えると、私の実家にはその事情に知識がある人がいるみたい何だよね。私はまずそこから調べようと思ってるんだけど……」
そこから続く一橋の提案に、俺はちょっと面食らった。
とりあえず、ラミ姉にはまた引っ越ししてもらう事になりそうだ。
地球の片隅。人里から遠く離れた場所にある、普通の人間が近くする事が出来ない建物。
そこに、一人の少女が腕立て伏せをしていた。
指先で体重を支えながらトレーニングをする彼女に、一人の少年が声をかける。
「アイレア。リアルタイム・ドリーマーズが白龍皇と一戦交えたそうだよ」
そう告げる白髪の少年に目を向けず、アイレアと呼ばれたその少女は、腕立て伏せを続けながら声を投げかける。
「確かコカビエルを勧誘するとか言ってたわね。ということは、もう開戦するの?」
「いや、どうやらコカビエルも独断で戦争を起こそうとしていたみたいでね。明日からすぐに仕掛けるとかそういうことにはならないそうだよ」
その行動に苦笑しながら、少年は肩をすくめる。
「サーゼクス・ルシファーとセラフォルー・レヴィアタンの妹をエクスカリバーで殺して魔王と枢機卿をキレさせるつもりだったらしい。結果的に三大勢力が共闘して対抗って言う、皮肉な結果になったらしいよ」
その内容に、アイレアと呼ばれた少女はため息をつく。
「……堕天使のトップじゃ唯一共闘できそうって話だけど、意外と考えなしなのね。これは、精々戦士長ってところが限界かしら?」
「かもね。まあ、僕達からすればシャルバみたいな馬鹿なトップが他の派閥を率いてくれた方が、色々と動きやすいからいいんだけどさ」
その返答に、アイレアはトレーニングを終えながら鼻で笑う。
「……まあ、戦士と政治家じゃあ必要な能力が違うのは当然だったわね。なら、その辺りは出来そうな連中に頼るべきだったわ」
そういうと、彼女はふと遠いところを見るかのような目つきとなる。
それにいぶかし気な表情を向ける少年を無視して、彼女は静かにかぶりを振った。
「まあ、私が言えた事じゃないけど。政治家ではなく戦士として価値を高めると決めたのだから、後は価値を証明できる場所を用意してくれればそれで十分」
その言葉に、少年は不敵な笑みを浮かべて頷いた。
「ああ。英雄シグルドの子孫として、この魔帝剣グラム
その少年の言葉に頷いて、アイレアは拳を握り締める。
そこに込められた力の強さを実感し、それだけの力を振るえるようになった己の修練に思いをはせる。
そして、静かに虚空を睨みつけた。
「ええ。神や魔王が相手だからこそ、彼ら強者に私は届く事が出来るのか試したい。だからこそ、私は道理を捨ててでもあなた方の誘いに乗ったんだからね、ジークフリート」
「ああ。僕ら英雄派は、君のような強い人間を歓迎するよ、アイレア・ハイエンド」
英雄の血を継ぐ者でありながら、英雄であろうとすることを否定する者。豊臣秀吉が末裔、橋場アラタ。
英雄の血を継ぐことなく、英雄であろうとする系譜達と共に戦う者。
相反する存在はお互いの存在を知らず、しかし運命に引き寄せられるかのように戦う事となる。
駒王町を襲う新たなる危機。後に駒王会談と呼ばれる、異形社会の歴史に名を遺す、三大勢力の争いの終わり。
その終わりを彩り、そして世界を揺るがす禍の団。その最初の戦いの場となった駒王学園。
二人がその場で出会うまで、後一月足らずだった。
第一章で顔出しさせるつもりでしたが、仲間外れは可哀そうだと思ったので、最後の第一部ヒロインをちょいだししました。
とりあえず序章はこれで終了。次からは第一章ですね。
一応現段階でも第二部といえるアザゼル杯のことは少しずつ考慮しています。すでに「アラタ達がアザゼル杯に参加したら」を考慮した新キャラは考えており、そのうち一人も登場する予定です。
では、次の章からアラタの物語は加速します。
ラブコメもバトルも白熱し、彼視点でのD×D事件も書く予定ですので、お楽しみください。