SCP-▇▇▇-jp 『鳥の王国』 作:COTOKITI JP
気が付くと、自分はいつの間にか暗闇の中にポツンと立っていた。
ここがどこか分からず、辺りを見渡しても先の見えない闇が続いているだけ。
施設が停電でも起こしたのかと思ったが、あまりにも広すぎる空間にいたので少なくともここは俺がブチ込まれていた房ではないらしい。
不安を募らせる中、出口を探して歩き続けていると、途端に右手に違和感を覚えた。
右手に何かが握られている。 何だろうか?
ゆっくりと視線を右手にやると、持っていたのは一丁の回転式拳銃だった。
トリガーに指が掛かっていたので直ぐに外し、念の為シリンダーを出して残弾を見る。
つまりこの拳銃は六発のうち三発は消費している。
どこでその三発を消費していたのかと疑問に思っていると今度は足音から何か、水音が聞こえてきた。
拳銃から目を離し、下を見るとそこには死体が仰向けに倒れていた。
女性の死体だった。
頭と胸から大量の血を流して血溜まりが俺の足元にまで達している。
その女性を俺は知っていた。
というより嘗て俺の愛人だった女だ。
死体を見た俺はこの非現実的な光景に一つの結論を見出す。
これは夢だ。
夢から覚める方法は知らないが今できる最善の手段を選んだ。
拳銃のハンマーを引き起こし、銃口をこめかみに当て、そして引き金を引く。
夢の中なので特に抵抗感は感じなかった。
そうすれば、いとも簡単に目を覚ます事ができ、いつもの狭い独房の壁と扉を目に収めた。
「……朝か」
ちょうど俺が起きたタイミングで起床の時間になり、独房の明かりが点いた。
自分の腹時計に拠ればあと30分で朝食が配られる筈だ。
それまで待つとしよう。
暫く待っていると、本当に自分の予想通りのタイミングでノック音と共に扉の下に付いている小さな穴から食事の乗ったトレーが入ってきた。
それを無言で受け取り、独房の一人用の机で食べる。
味は
正直窓の無い独房は中々辛いが、食事は毎回結構豪華なので特に不満は無い。
しかもデザートまで付いてくるというオマケ付きだ。
この閉鎖空間に慣れれば普通の刑務所より過ごしやすいかもしれない。
施設もかなり綺麗だし。
「今日はパンケーキか」
トレーの右端にあった一切れのパンケーキを手に取り、一緒に置かれていた市販の小さな袋に入ったブルーベリージャムを付けて食べる。
一切れなので直ぐに食べ終わってしまったが朝食としては満足だ。
食べ終わってからまた暫く待つと本日二度目のノック音が聞こえた。
トレーの回収に来たのだろう。
予想通り扉の下の穴が空いたのでそこにトレーを入れる。
すると向こう側から手が伸びて来てトレーを受け取り、ワゴンカーが去っていった。
食べ終わった俺は命令が来るまでベッドに寝そべり、時間を潰す事にした。
俺はまだここに来てから間も無い。
だからどんな仕事をさせられるのかは知らないし、そもそもSCP財団なんて組織は刑務所からここに入れられて初めて知った。
説明に拠ると財団から与えられた業務をこなせば死刑囚でも釈放されるんだとか。
財団とやらにそこまでの権利があるのかは疑わしいがそう言われてしまった以上、頑張るしかない。
ここに収容されている奴らは全員
しかもかなりの数のDクラスを財団は収容しているようだ。
それともう一つ、分かったことがある。
ここは明らかに異常な施設だという事だ。
前に俺がある朝今のように時間を潰していると突然外から悲鳴が聞こえて来た。
何事かと扉に耳を当てるとどうやらその悲鳴を上げたのはここからすぐ近くの独房にいるDクラスのようだった。
聞き耳を立てていると多分警備員とそのDクラスが揉めていた。
「嫌だ!!もうあんな所に行きたくない!!助けてくれぇ!!」
「チッ……面倒な奴だ」
その後、あのDクラスは逃げようとしたらしく、銃声が聞こえたので恐らく射殺されたのだろう。
あれ以来、独房の中での警戒心が強くなった。
俺もあの男のように発狂するのだろうか。
ここでの仕事とは一体何なのか。
それすら知らされずにここに閉じ込められているのだ。
警戒心も強くなる。
そもそも、SCPとは何なんだ……。
その時、扉が突然開き、二名の武装した警備員が独房に入ってきた。
「D-26283、仕事だ。 出ろ」
大人しく独房から出て警備員に着いていく。
警備員の後を追っていると、エレベーターの中に入り、上へ上がった。
ここの階層は地下にあるので上に上がるということは地上に行くという事だ。
警備員達の談笑を聞き流しながら、上の階で止まったエレベーターから降りると、かなり開けた場所に出た。
それから更にまっすぐ進むと小さな建物の前で止まった。
何をされるのかと考えていると先頭にいた警備員の一人が俺に一枚の紙を手渡した。
字がぎっしりと敷き詰められている。
何かの書類のようだ。
読もうとすると警備員がそれを止め、目の前にある建物を指さした。
「それはこの待機室に入ってから読め。 仕事の詳細はそこに書かれてる」
警備員が建物の扉を開け、そこに入ると扉が閉まり、鍵の閉まる音が聞こえた。
建物に入るなり、目に入ったのはかなりの数の人だ。
皆同じオレンジ色の服を着ているのでDクラスだろう。
ざっと四十人はいた。
「おう、やっと最後が来たか」
声の掛けられた方を見ると無精髭を生やした中年の男がこっちに手招きをしていた。
どうやらあそこの隣の席に座れということらしい。
その通りに座ると、唐突に自己紹介が始まった。
「英語は分かるか?」
「あぁ」
「なら大丈夫だな。 俺はヘンリー・ベルクス、元
「アルノフだ。 元ロシア航空宇宙軍所属のお前と同じ戦闘機パイロット。 階級は少佐 」
階級を口にした途端ヘンリーが目を見開いた。
「少佐かよ!かなり出世してんな〜。だけど苗字は?」
「無い。 産まれて直ぐに親に捨てられた孤児だったからな」
「あぁ……そりゃ悪い事を聞いちまったな」
「いいんだよ、別に。 今は別にそんな事気にしてないしな」
背もたれに背を預けながら机に放っていた紙を手に取り、中身を確認する。
書かれていることを脳内で簡単に纏めるとこうだ。
まず、支給された飛行服に着替え、今回の作戦で使用する
チームの指揮をする母艦の艦長はヘルフリート・レヴニールが務める。
その後、職員からの合図あるまで待機。
合図後、速やかに浮上し、発生した空間領域を通過する。
通過した後、その先の土地の調査、そして空間領域が発生する度に報告書を送れ。
……との事だ。
正直あまりにも長ったらしいので要点以外は大分省略している。
「お前もそれ見ててよく分からんだろ。 ここにいる全員似たような反応だったよ」
「あぁ、何が何だかサッパリだ」
「まぁ、ここにもうすぐ来る職員が説明してくれるそうだから……って噂をすればなんとやら、だな」
扉が開かれそこに入ってきた職員を見ながらヘンリーは呟くように言った。
「これより、本作戦の概要を説明する」
ふと、イジツにブライト博士ブチ込んだらどうなるのか気になってしまった……。