SCP-▇▇▇-jp 『鳥の王国』 作:COTOKITI JP
飛行船の下部にある艦橋。
そこに集められた俺達は改めて顔を合わせる事になった。
船体自体が大きいのもあってやはり艦橋もかなり広く造られていた。
艦長の席に操舵輪、対空レーダー探知機、艦の心臓部としての機能は粗方揃っていた。
「凄いな……」
「まるでSF映画だ」
スペックを見せてもらったが、こいつは最早飛行船などではない。
飛行船のガワを被った原子力空母とイージス艦をごちゃ混ぜにした何かだ。
飛行船の動力には核融合炉とかいうトンデモエンジンを積んでおり、素晴らしい航続距離と速度性能を両立していると仕様書には書かれている。
そして驚くべきはその速度である。
この飛行船は直線で最大まで加速した場合、なんと約130ノットで進む事が出来るのだ。
しかも戦闘機の搭載機数も凄まじく、俺達の分の40機だけでなく予備機に更に20機格納出来る。
その船体の大きさを活かし、飛行甲板は上下に二つずつ、計四つある。
それだけじゃない、武装もバケモノ級に仕上がっている。
主武装はこのような感じだ。
36cm三連装無反動砲×24
26cm30連装対艦ロケット×36
対空兵装に20mmと40mmの連装対空機銃×96
これだけ見れば如何にこの飛行船がイカれているか分かるだろう。
財団がヘッジホッグと名付けたのも頷ける。
こんなのどう足掻いても勝てそうにない。
第一回目の派遣では流石にここまでの物は用意せず、硬式飛行船を少し大きくしたような物で行かせたらしい。
そうしたらコテンパンにやられたからこうなったと……。
技術者と上層部の連中……少しムキになってないか?
というか
そうか、変態か!
紛うことなき変態だ!そうに違いない!!
◇◆◇◆◇◆◇
作戦開始早々、俺達はとんでもない爆音に耐えていた。
実際はオブジェクト起動による現実改変が原因だが、そんな事を知る由もない彼等は訳も分からぬ理不尽なEar rapeに苦しめられる。
「うごおおおおおおぉっ!!!耳がっ!耳がっ!!」
「鼓膜破れるぅぅ!!!」
「ンアーッ!!」
その後音が止んだが耳鳴りのせいで音が止んだのかも分からない俺達はは何とか立ち上がって窓際にもたれ掛かる。
すると外の様子を見たヘンリーが声を上げた。
「お、おい見ろ!」
「何だあれは!?」
「空に……穴!?」
空にぽっかりと開いた巨大な穴。
その大きさはこのヘッジホッグを軽く飲み込んでしまうほど。
パイロット達は忽ち大騒ぎしだし、俺も確かな危機感を感じていた。
この飛行船は事前に航路をコンピュータに打ち込んで設定してある。
そしてその進路は……あの穴のド真ん中だ。
「まさかあれが例の空間領域か?」
「そんな事言ってる場合か!このままじゃ突っ込んじまうぞ!」
「なんだ、英国人というのはただの黒い未知の物体を見ただけで怖気付くのか?」
言い合っている間にも穴との距離は近付き、遂に艦橋の窓は黒に覆い尽くされた。
既に船首は穴に沈み込んでいる。
艦橋が飲み込まれるのも時間の問題だ。
生涯で経験した事の無い異常に流石に冷や汗が出てきた。
穴はとうとうヘッジホッグの三分の一を飲み込み、遂に艦橋まで達した。
「うわぁぁッ!!」
艦橋の明かりを点けていなかったため、一瞬にして船内は暗闇に支配され、パニックを起こす奴らも現れた。
そしてそんな状況の中唐突に艦橋の扉が開き、誰かが入って来た。
黒と白で統一された軍服とトレンチコート、制帽という如何にも軍人らしい印象的な見た目をしていた。
顔的に四十代後半といった所だろうか。
皺の寄せた顔もあってか更に軍人らしさを醸し出している。
その男はズカズカと艦橋に歩み入り、堂々と艦長席の前に立ち、そして言い放った。
「私は艦長のヘルフリート・レヴニールである!貴様ら、さっさと艦橋の明かりを点けろ!」
次回には何とかイジツ編に持っていきたい所。
この飛行船、原子炉積んでるとか言ってるけど嘘付け絶対反重力装置とか積んでるゾ。