SCP-▇▇▇-jp 『鳥の王国』   作:COTOKITI JP

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レッドランド

艦橋に鳴り響いた一人の男の声によってパニックは収まったが、代わりにここにいる全員が奇異の視線をこれでもかと彼に向けて浴びせていた。

彼は自分の名をヘルフリート・レヴニールと名乗った。

確かヘッジホッグの艦長の名前も同じ。

 

「何をしている、早く明かりを点けろ。 こうも暗くてはまともに話も出来ん」

 

つまりこの人がヘッジホッグの艦長であり、俺達の指揮官だ。

ヘルフリートの催促に誰かが艦橋の照明のスイッチを押しに行った。

今はそれが最善そうなのでありがたい。

 

漸く艦橋が照明で明るくなり、俺達もある程度落ち着きを取り戻した。

そしてヘルフリートに目を移すと彼は艦長席から離れ、階段を降りて俺達の目の前まで来た。

 

いきなり目の前に歩みよってきたのでそれに圧倒されて後ずさる奴が何人かいた。

軍人然とした風格に皆が緊張を抱く中、ヘルフリートは一呼吸置いて話し始めた。

 

「改めて自己紹介といこう。 私はヘルフリート・レヴニール。 元ドイツ連邦空軍所属のパイロットで階級は大佐だ」

 

俺達にお構いなくヘルフリートはそのまま話を続ける。

 

「主な任務とその他の情報については財団の連中から既に教わっている。 貴様らは職員の話で既に知っているだろうがここにいるのは私とお前達とあの忌々しい陸戦隊共だけではない」

 

それに関しては確かに職員から話があった。

俺達はあくまで戦闘任務に駆り出される兵士だ。

ここにいる全員が世界各国から集められた戦闘機パイロットだというのもそれが理由だ。

 

俺達以外に搭乗しているDクラスは多分レーダー観測や火器の操作、無線通信に後は食堂やその他の雑用係だろう。

戦闘機に乗らずに安全な船内で働けるのだから羨ましい限りだ。

 

「皮肉な事に、元とはいえ軍人であるはずの我々はこんな状況で軍隊ごっこをせねばならんらしい」

 

淡々と話し続けるヘルフリート。

その顔には僅かに怒りが浮かび上がっているような気がした。

彼はきっと本当の軍人としての立場が欲しかったのだろう。

こんな仮初の肩書と権力を与えられて喜べる者などいない。

 

「私は艦長としての権限があるとはいえそれは財団の制御下にある……実質我々は財団の傀儡という訳だ」

 

もし、ヘルフリートやその他の誰かが財団の制御下を離れて独断で行動を始めればきっとこの船にいる数百人の陸戦隊全員を敵に回す事となる。

本当の敵はいつも背後にいる、ということらしい。

 

「……間も無く穴を抜ける。 その後、貴様らから二人抜擢し、周辺の偵察飛行に向かわせる」

 

穴に入ってから既に十分以上は経過していたようだ。

入ったら早速そこに繋がっている訳では無いということか。

 

「穴を抜けるぞ、照明を消せ」

 

「は、はい」

 

照明が再び消え、束の間の暗闇がやってくる。

そして十秒としない間に穴を抜けたのか、窓の外に青空が見えた。

 

「おぉ!やっと抜けれたぜ!」

 

高度が徐々に下がり、ヘッジホッグは雲の中を抜け、地上が見える高度まで降りた。

その地上の様子を見た全員が表情を驚愕に染めた。

 

「何がどうなってるんだ……」

 

「核戦争でも起きたのかよ?」

 

赤き荒野は地平線のずっと先まで広がっていた。

 




ヘルフリート・レヴニールの脳内モデルは機動戦士ガンダム MS IGLOOに登場するヘルベルト・フォン・カスペン大佐です。

宇宙世紀にあんな人がいるんだし、現代にもこういう人がいてもおかしくないよね?(謎理論)

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