とっとこ(グラ)ハム太郎   作:zhk

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友達に見せられた謎コラから思い付きました。

後悔もなければ反省もありません


初めましてだな!少年!!

 唐突だが、本当に唐突だが俺はガンダムが好きだ。

 

 初めて見たのはまだ俺が小学生にも満たないような頃。生粋のガノタであった俺の父が、夜に一人で初代劇場版ガンダム三部作を見ているところにたまたま入ったのがきっかけだった。

 

 そこで俺は見た、何体と押し寄せてくる敵をものともしない白い機体、ガンダム。けれど無双、と呼ぶほどのものではない。けれど、そこに俺は強さとカッコよさを見た。垣間見てしまった。

 

 その日はそのまま父の隣にちょこんと座り、結局父が見ていた一本をまるまる見きってしまった。見終わった俺の興奮は尋常じゃなく、どったんばったん暴れまわったらしい。まぁ夜遅くだったのでしっかり父親からの拳骨と説教を食らうことになったが。

 

 俺にとっての転換期ともなったガンダムの初視聴からというもの、俺はひたすらガンダムにがっつりとのめり込んでいった。父が持つDVDは擦りきれる程までに見、家にないものは家から少し離れたレンタルショップまで行って借りてまで見る始末。

 

 新作が劇場でやると知れば公開初日に並んででも見に行き、どれだけマイナーな漫画であっても必死に探して買って読んだ。

 

 そんな生活をひたすら齢五歳程度からやっていれば、やはりというべきか当然というべきか、俺が完全なガンダムオタクになるのに長い時間を掛けることはなかった。

 

 逆に成長するにつれて物の見方の変化が俺に出始めて、それぞれの思想や機体の作り、使う武器などにまで手を出し始め、親父の知識すら越えるガノタになったのは、なんと俺が中学に入学する位の時。

 

 中学生ともなれば行動範囲もかけられる費用も増えたことで、俺のガンダム熱はさらに加速していく。

 

 好きな機体が使えると知ってゲームをするためにPS4を買ったり、なにかのイベントのチケットを必死でとろうとしたり、いやーまじで楽しいや。

 

 で、そんな中学生活をしていたある日、俺の元に新作の期間限定上映の情報が入ってきた。映像化されるのはなんと、あの映像化不可とまで言われた閃光のハサウェイ。

 

 こりゃ見るっきゃないと。これを公開日に見ない奴はガノタなんか名乗れねぇよと。そう息込んだ俺は公開初日、遠くの映画館へ足を運んだ。

 

 楽しみだ~楽しみだ~とアホ面かましながら上映を映画館内でポップコーン片手にニコニコしながら待ってた、そんな時だった。急に目蓋が重くなったのだ。

 

 確かに昨日楽しみすぎてほとんど寝れてないから、映画館という寝るには快適すぎる場所に来て眠くなってんだろうなと感じた俺だったが、やっぱり眠気よりも今からやる映画の方が何百倍も大切だ。

 

 なので閉じかかる目蓋を開けようとするも、何故か上がらない。むしろ目蓋はどんどん下がってきて、俺の視界をどんどん狭めてくる。

 

 えっ待ってなにこの謎現象?と思うよりも、いや今から始まるんだけど!?という焦りの方が俺は強かった。必死に、それこそ死ぬ気で目を見開こうと全力を尽くすけど、何故か知らんが目蓋が開かない。

 

 焦りに焦り、なんとかどうにかしようと試みるも虚しく、俺はそのまま完全に目を閉じてしまった。

 

 目が完全に閉じられてしまったら、どこからか来ていた目閉め強制力(俺命名)は完全に消え、俺はすぐさま目を開く。

 

 さぁ楽しみにしていた映画のスタートだ!いっしゅんたりとも見逃すつもりはない!!そう思って開いた目には、どこかのお茶の間が入ってきた。

 

 どこよここ…………ってな感じに、俺はぽっかりと口を開けてたと思う。誰だってそうなるでしょ映画館で謎の目閉め強制力に目を閉じられて開けたら、まったく見覚えのないお茶の間で俺正座してんだもん。

 

「おお、気づきよったか」

 

 と、困惑してる俺に対面に現れた老人が声をかけてきた。

 

 真っ白の髭はむっちゃ長くてダンブルドアみたいだ~とか小学生の感想のような者を感じさせるほど、まさにTHE老人って感じの人であった。

 

「えっ?起きとるよな?」

 

「あっ、はい!起きてます」

 

 俺がなんの反応も返さない事に困ったんだろう、眼前の老人は眉を少しだけ潜めて焦ったようにこっちに聞いてきた。いや焦ってんのはこっちなんだよジジイ。

 

「え、ここどこですか?俺ガンダム見に映画館へ居たはずなのに。てかあんた誰ですか??」

 

「まあ落ち着け。焦るのは仕方がないじゃろうな。なんせお主は…………」

 

 

 

 

「死んだんじゃから」

 

 ……………………は?

 

 何言ってんだこの髭ジジイ。

 

 俺が、死んだ?dead?俺が?

 

 ……………………は?(迫真)

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!?どゆことっすか!?ちょっと待ってください!!俺が死んだ!?何故!?」

 

「死因は心臓麻痺じゃ。そう決まっておったからの」

 

「決まってた?意味がわかんないんですが?」

 

「順を追って話すとするかの」

 

 そう言って白髭ジジイは、その無駄に長い髭をもさもさ触りながら話し始めた。

 

「人というのはな、生まれた時から寿命というのが決まっておるのじゃ。いつ、どのように死ぬのか。お主ら人間の言葉で言うなら、その人の運命という奴じゃな」

 

「人間って…………あなたは人間じゃないんですか!?」

 

「ん?ワシは神じゃよ」

 

「かっ!?神っ!?!?」

 

 神!?まさかの!?確かになんか神っぽい風貌だけど!!てか神ってホントに居たのかよ!!

 

「それで、ワシらは生まれ落ちた人間を観察し、その人の決まった時間が終わればその者に決められた死を与えるのが仕事なのだ。」

 

「嫌それ神じゃない!!もはや死神じゃないですか!!」

 

「死神はお主らが勝手に作ったものじゃ。神の仕事はこっちが本命なのじゃ。」

 

 えぇ…………まさかの神様全部死神でした。俺達すっげぇ物騒なのを崇めてたんだね…………死んでから知る衝撃の真実。

 

 あれ、待てよ。ちょっと待て。

 

「俺はどうなってんですか?じゃあ映画館の中で死んでるって事ですか!?ハサウェイ見れずに!?」

 

「そういうことになるの」

 

「嘘だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 そんな…………そんな!?

 

 むっちゃ楽しみにしてたのに!!公開初日にどうにか時間作ってきたのに!?それが今からやるってとこで俺の寿命の時間切れで見れなかった?

 

 運無さすぎるでしょ俺ぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!なんでこんなことに!!」

 

「仕方がなかろう。これがお主の運命なのじゃ、受け入れるしかない」

 

「あんたが手を下したんだろーが!!」

 

「悪いがワシは仕事なんでな」

 

 殺した本人がまったく悪びれないんですけど!!見る寸前で病死とかどんな嫌がらせだよ…………もう最悪だぁ…………

 

「打ちひしがれるのもわかるがの。そろそろ話を進めてよいか?」

 

「あーうん…………もう…………この際何でもいいですよ…………はい…………」

 

「面白いくらいに消沈しとるの」

 

 そりゃするっての。ここまで絶望したのも人生で一回あるかないかだよ…………俺が何したってんだよ…………この仕打ちは酷すぎる。

 

 哀しみの涙がポロポロと目から流れてきそうなのをどうにか堪えて神様を見る俺の背景には、きっと青い線が大量に縦に伸びている事だろう。

 

 ほら、あれだよ、ちび○子ちゃんとかで藤木君とかにある感じだよ。今なら藤木くんの気持ちがわかる気がする。そうか、俺は藤木君だったのか(意味不明)。

 

「それでじゃ、寿命を終えるとゆったりとした穏やかな天国へ行くか、記憶を全て消して現世で赤子から始めるかの二択が与えられる。さて、四崎香月(しさきかづき)君。お主はどちらを選ぶ?」

 

 天国行くか記憶リセットで赤子からリスタートの二択とかどこの素晴らしい世界の話なんだよ。なんかもうどーでもよくなってきた…………ハサウェイ見れなかった時点で天国もリスタートも変わら…………ん?

 

 四崎?四崎??

 

「あのー」

 

「ん?なんじゃ?」

 

「四崎?今四崎って言いました?」

 

「そうじゃ。人間界、特に日本をよく見てきたが、四に長崎の崎とはなかなか珍しい名字もいたもの━━━」

 

「違うんですけど…………」

 

「……え?」

 

 呆けたような顔で、白髭神様がこっちを見た。いやだって……

 

「俺の名前、四の四崎じゃなくてどこどこ市とかの市崎です。市崎香月です」

 

「えっ?ホントに?」

 

「ホントです」

 

「……ちょっと待って?」

 

 白髭神様はそう言うと、すっと俺に背中を向けてなんか分厚い本を開いて確認し始めた。

 

 なにこれ?俺すごい嫌な予感するんだけど。いやまさか、まさかな。だって相手は神様だぜ?そんなねぇ、死なせる人間違えたなんて事はないでしょう。ねえ?

 

 ぶつぶつと呟く白髭神様は、突然あっとなにかに気がついたような声を漏らしたかと思うと、額に汗を浮かべつつこっちを見てきた。

 

 そして、

 

「ごめん。間違えたわ、わし」

 

 あっさりと俺の嫌な予感を踏みやがった。

 

「…………間違えた?」

 

「……うむ」

 

「四崎香月さんと市崎香月()を間違えて殺しちゃったと。あんたはそう言ってるのか?」

 

「…………うむ」

 

 シーンと、冷たい沈黙が流れる。

 

 いつの間にか正座で座ってる白髭神様は、少し間をおいておもむろに頭を上げると、

 

「すまんな♪」

 

「ふんっ!!」

 

「うげぶっ!?」

 

 舌を出してふざけた謝罪をしてきやがったから顔面にパンチ一発。白髭ジジイは勢いのまま気持ちのいいぐらい飛んでいく。

 

「い、痛いなお主!神であるワシを殴るとは何事か!?」

 

「殴ってなぜ悪いか!!」

 

 今回はブライト艦長じゃなくても殴るわ、こんなポンコツ神。厳かなのは見た目だけかこの野郎。パッと見ダンブルドアだから完全に俺騙されてたわ。

 

「なんですか?お前は、勝手にミスで殺されて、大好きで楽しみにしてたもん見れなくなって、殴らずにいろってのか?あ"?」

 

「い、いやだから、すまんかったって。間違いだった━━━」

 

「間違いなら殺しても許されるってか?お前人間なめとんのか?命なんだと思ってんだ?お?」

 

「ひっ!?」

 

 胸ぐらがっちり掴んで持ち上げる。あんまりこういう暴力とかは好きじゃないけど、今回ばかりは堪忍袋の尾が完全に切れた。許しておけん!

 

「さっさと俺をあっちに帰して四崎とかいう変わった名字の奴連れてこいや。んで速く、一刻も速く俺にハサウェイ見せろ今日公開初日だったんだぞ!!」

 

「公開初日ならまだ日はあるからいいんじゃ…………」

 

「初日じゃなきゃ駄目なんだよてめぇにはわかんねぇだろーけどよー!!」

 

「ひぃ!?すみませんすみません!!」

 

 涙目になって謝っても許すかよこの無能ジジイ!!完全にキャラ崩壊してんだよ!!これがむっちゃ可愛い女神様とかなら許すことも考えてやったけど、こんなジジイにされてもなんも嬉しくねぇ。というより余計なんか腹立つ。

 

「謝罪はいいからさっさと戻せ!!一分一秒が惜しいんだよ!!」

 

「あの……その……蘇るのは無理です……」

 

「……は?」

 

 なんかよくわからん事をいい始めたから手にかける力を強める。このままポキっていいかな?俺このまま神殺ししちゃっていいかな?ガングニールのかけてきた二千年のコトバノチカラでぶっ飛ばすぞお前。

 

「ち、違うんです!!不可能なんです!!死んだ人間を蘇らせるのは!!」

 

 ジタバタしながらほざき始めた神様(笑)をぽいっと落とす。神様はそのまま背中からお茶の間畳に打ち付け、あががと苦悶の声を漏らす。ざまぁないぜ!!

 

「んで、不可能って?」

 

「ひ、人は死んだら蘇られないのです。神に与えられている力は、人を死に導き次の生を与える事のみでその逆は誰であっても出来ません。死と生は神にとっても不可逆なのです……」

 

「まじ……かよ……」

 

 つまりは、勝手に殺されて蘇ることも出来ない。

 ↓

 続きも見れない。

 ↓

 絶望!!

 

「どうしてくれんだこん野郎っ!!!」

 

「ひぃぃぃぃぃぃぃぃすみませんでしたぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「俺まだ未練たらったらなんだぞ!まだ見たい奴もあるし積みガンプラだって残ってるしなにより彼女だって出来てないんだぞ!!んで記憶なくして再スタートか天国行きか選べだぁ!!てめぇ何様のつもりだ!?」

 

「すみませんすみません神様ですすみません!!」

 

 完全に神と崇める人間の構図として完全におかしくなってるけど、そんな些細な事知ったこっちゃない。どうにか、どうにか向こうに戻る方法を考えねば!このくそ神を生け贄に捧げてでも!!

 

「あ、あの!一つだけ、一つだけなんとかなるかもしれません!!」

 

「え?」

 

 ブンブン躊躇なく神様振ってると、急に神様がそう言ってきた。ので、とりあえず振るのは止める。胸ぐら掴むのは離さないけど。

 

「なに?蘇れるの?」

 

「そ、それは無理ですが…………転生!転生というのはどうでしょうか!?」

 

「転生??」

 

 転生ってあれか?なろうとかである死んで神様にチートみたいな力を貰って別の世界に行くみたいなやつか?

 

「そ、それなら今の記憶を保持したままでいられます。あなたのいた世界線ではなく違うものにはなってしまいますが…………」

 

「う~ん」

 

 どうしたものか…………この神様がここまで言ってるんなら、本当に元の世界に戻るのは不可能な話なんだろう。であれば遺憾だけど、誠に遺憾だけどその転生する方法がベストかもしれない。

 

「転生するとしたら、そこはどんな世界なんだよ」

 

「は、はい!!ええっと…………」

 

 神様はさっき俺の名前を探してた本とは違う本を引っ張り出してきた。ほっそい指で文を伝いながら、神様は俺へ少しビビりつつ話し出す。

 

「ええっと…………お主がいたところより少し近未来のようです…………」

 

「ふーんなるほど。近未来ってどんくらい?」

 

「六十年ほどですね」

 

「六十年!?」

 

 むっちゃ未来じゃん!?六十年ったら色々普通に変われるレベルだぞ!?だって今から六十年前だったら…………なにがあってなにがないんだ?わからん。

 

「色々と違う点もありますが、生活する上で困ることはたいしてないですね。」

 

「んー。けどそれしかないんでしょ?それ以外だったらあれでしょ?天国か記憶ゼロでスタートなんでしょ?」

 

「そ、そうなりますね…………」

 

 最初のあの老人風な感じどこ行ったんだよ……完全にビビりな爺さんになってんじゃん…………

 

「あ、あの転生なさいますか?」

 

「あーうん。それでいいよ、てかそれしかないし」

 

「ありがとうございます!!これで失敗もなんとか隠蔽出来るぞ

 

 なんか今すげー聞き逃しちゃいけないような情報が流れた気がするけど、もうこの際無視だ。一々あのアホ神殴ってても意味ない。こっちが疲れるだけだ。だったら、

 

「で、神様。チートは?」

 

「…………へ?」

 

 搾取出来るだけ搾取して、後々楽してやろうではないか。

 

「いやほら、転生っていったら神様が転生者にチートくれるのが定番なんですよ。だからさ、ほら。なんかないんですか?」

 

「それはお前らの娯楽の話で…………」

 

「あ"?」

 

「あっはい!わ、ワシからあなた様に直接なにか力を与えるという事は出来ませんが、あなたのガイドというか、色々手助けしてくれる存在を送ります!!これでよろしいでしょうか!?」

 

「んーまぁいいやそれで。ガイドってどんな人なの?」

 

「それはこちらでなんとかしますので!はい!必ずあなた様の助けになると思うので!!」

 

「ならお願いします」

 

 よしっ、神様の使者みたいな奴を仲間にもつけれたし。とりあえずあっちでの人生はなんとかなりそうだ。えっ?やることがえげつないって?

 

 間違いで殺されて挙げ句の果てに天国行きか記憶を消せと言われれば、こうもなろう(カロッゾ風)

 

 大体、死にましたでへぇーとかでいられる現代ラノベの主人公の方がおかしいんだよ。死に無頓着過ぎるだろ、俺くらいあたふたして神様にキレるのが普通です。きっと、多分。

 

「それでは、こちらの道を進んでいただければ転生という事になります。」

 

 神様は自分の後ろに出てきた光の道を指差してそう言う。踏んだら足抜けそうだとか思ったけどそんな事はなく、きちんと足が地面を着いた感覚がある。どうなってるんだろうとか気になるけど、神様だから何でもありかで流そう。じゃなきゃ色んな事に突っ込まねばならんくなるし。

 

「今回は本当に迷惑をかけて申し訳ない…………」

 

 あっキャラ戻った。俺が居なくなるから余裕できたなこのジジイ。

 

「もういいですよ。今後絶対にないようにお願いしますがね。」

 

「は、はい……以後こんなことがないように気を付けます!!」

 

 まったく、間違いで罪のない人殺されたら可哀想で仕方ない。それもこんなアホ神のせいとか悔やんでも悔やみきれないからな。俺だってまだ悔やんでるんだもん。

 

「んじゃもう俺行きますね」

 

「お主の来世に、幸運あらんことを」

 

 誰のせいだと思っとんじゃ。元凶に幸運なんていのられたかないんだけど。あとキャラ固定しろよブレブレだぞお前。

 

 とは思ったけれどこんなんでも、こんなんでも(大事な事なので二回言いました)神様だ。加護を授けてくれたと考えれば、悪い気はしない。

 

 そんなこんなで、俺は目の前の道へ足を踏み出した。

 

 最後に見た白髭神の目が、やけに悪そうなのがすごく俺の中で印象に残っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなこんながあったのが大体六年前。俺、市崎香月(しさきかづき)は転生して第二の生を歩んでいた。

 

 現在六歳。すくすくと心優しい親の下で成長している真っ最中。

 

 勉学の方も何の問題もなく、まさに順風満帆の暮らしを過ごしていた。

 

 唐突に長い長い人生をしょうもないミスで終わらされたけれど、この生活もこれはこれで悪くないかもしれない。

 

 そう、ある一点を除けば…………

 

『少年!起きろ!起きるんだ!!そろそろ起きねば、母が作った朝食が食せなくなるぞ!?』

 

 けたたましく響くイケボが耳のすぐ近くから聞こえてくる。これが女子なら喜ぶべきシーンかもしれないけど俺にそっちの趣味はないし、こいつ(・・・)がいてそんな趣味を持つのは本当に危険だ。

 

 騒がしい声に叩きおこされるように布団からむくりと起き上がる、すると布団付近にいたんだろう。俺が起き上がると同時に布団がめくれ上がったため、そいつはころりころりと俺の眼下に転がっていった。

 

『やっと目を覚ましたか。相変わらず、君は朝が苦手なのだな。それは早々に解消するべきだと進言しておこう。』

 

 もっさりとした丸っこい体に短い手足。触れば気持ちの良さそうな茶色の毛。六歳の俺の手の平の上に乗りそうな小さな体躯。そして…………

 

 そんな体とは、明らかにアンバランスなヒトの顔。

 

 鮮やかな金髪に滲んだ緑みたいな瞳。かなり整った顔がついたそいつは、俺の方を振り向きながらニヤリと笑ってキメ顔をして。

 

『おはようカヅキ!この私、グラハム・エーカーが君に朝の到来を伝達しよう!!』

 

「ははは…………おはよーハム太郎…………」

 

 可愛らしいハムスターの体である事を一瞬でぶっ壊す顔面に、俺は今日渇いた笑みが溢れてくる。

 

 そう、彼こそが神が俺に送った転生生活のガイド。俺がこの世界に新しく生を受けた時からいる。名をグラハム・エーカー。

 

 体はハムスターで顔と精神はグラハム・エーカーである。さしずめグラハムスターと呼ぶべきか。

 

 いや、そんな事より…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 キモい。

 

 

 

 




プロッテ?

それならグラハムスターがぐちゃぐちゃにして食べました。

好評なら続くかもです。
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