とっとこ(グラ)ハム太郎   作:zhk

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コロナで暇すぎて、最近ロスリックで刀振ってます。

敵強すぎィ!!死ぬぅ!!






絡まれたぞ!少年!!

 沖縄生活二日目。

 

 そのスタートは、俺が予想していたよりも遥かに早いものだった。

 

『起きろカヅキ! このグラハム・エーカーが、朝の5時の到来を伝達しよう!!』

 

「うーん…………」

 

 もう何億回と聞いたグラハム目覚ましだけれども、何度聞いても慣れない。というか慣れるわけない、こんな化け物が朝っぱらから目の前にいる光景なんて。

 

 いや、話したい事はそんな事じゃない。

 

「なんだよ、まだ朝の5時なんだろ? なぜに起こしたし。」

 

『何故、か。君もよくわからない質問を私にするものだ』

 

「いやよくわかんねぇのはお前の行動だよ。」

 

 今ちょうど夜明けくらいの時間なんだけど。日の出は綺麗だよ? さすがは沖縄って感じではあるけどさ。俺頼んでないよね? 

 

 まだ夜明けが見たいから起こしてって俺が頼んだんならわかるけど、お前唐突に叩き起こしてきたよ。それをお前はさもなんで起こされたかわかるだろみたいにされてもわかんねぇよ。

 

『よくわからないとはなんだ。いつも私はこの時間に君を起こしてるではないか?』

 

「いやまぁそうだけど、それは平日の普通の日であってな…………」

 

『そんな事はどうでもいい。すぐに着替えたまえ。走りに行くぞ』

 

 んーんーんー? (困惑)

 

「ちょっと待て、今お前なんて言った?」

 

『すぐに着替えて走りに行くと言ったのだ。天気も良好、これほどよい環境もなかなかないぞ?』

 

「いやいやいや、いやいやいや。」

 

 絶対に、嫌です。(確固たる意思)

 

 そらそうでしょうよ。せっかくのさ、沖縄旅行だよ? 楽しみたいのよ、ゆっくりしたいのよ。それなのにやる普通? なーんで沖縄に来てまで早朝長距離マラソンしなきゃならんのだ。

 

 俺は旅行に来てるんだ、決してスポーツ競技で体を痛め付けに来てるのではない。断じてない。

 

 と、言うわけなので、

 

「二度寝、としゃれこむか」

 

『ならんと言っているだろうっ!!』

 

「ふげぶっ!?」

 

 グラハムの体重を乗せたタックルの一撃が俺の頬に直撃。体が大きくなってきた事もあってなかなかの一撃だ、脳が震える(物理)

 

「痛ったいなお前っ!? 何すんだよ!!」

 

『君はわかってるのか!? ここまでの好条件なのだぞ? 鍛練を行わないなどあり得んだろう!? 古事記にもそう書いてあるはずだ!!』

 

「書いてねぇよんなこと!?」

 

 古事記:現存する日本最古の歴史書。内容は天地開闢 から推古天皇の記事であり、天候による鍛練についてなど書かれたトレーニング本などではない(←これ重要)

 

「とにかく嫌だ! 俺は出ないぞ! このホテルの布団が俺に居てほしいよぉって語りかけてくるから無理!!」

 

『またそうやって! 君の好みの口出ししたくはないが、何でもかんでも擬人化して心の安定剤にするのはよろしくない!! 体を動かすんだ!!』

 

「嫌でーす!! テコでも俺は動かないね!!」

 

『むむ、相も変わらず強情な!! あの少年のように素直にならぬか!!』

 

「俺は刹那がお前に素直になったとこなんて見たことないね!!」

 

『私の今日の夢では、そうだったのだ!!』

 

「いや知らーん!?」

 

 知るわけないだろお前の夢の話なんて!? てかそれ妄想だし、事実でもなんでもないんだけど。

 

「それに、俺運動用の服持ってきてないから。全部家のタンスの中で寝てるから、どっちみち無理だって。今回ばっかは諦めろグラハム」

 

 そう、そう! 俺はいつも修練(ほぼ強制)の時はジャージなどを着てやってるけれど、今はそれらは手元にない。あるのは完全に運動に向かないような服ばかり。

 

 どうだ! これなら、いくらお前でも反論出来まいて!! 

 

『その程度の問題、もう解決済みだ』

 

「…………ん?」

 

 解決、済み? 

 

 一体どゆことだ? 

 

 そんな俺の疑問を考えていると、その時、不思議な事が起こった。

 

 グラハムが口を開き、そこへ腕を突っ込んだ。そして次に腕を引っ張って戻して来ると、

 

 グラハムの腕には俺が着なれたウェアやズボンが握られていたからだ。

 

 ……………………は? 

 

『よし、これに早く着替えるんだ。これならば、君もすぐに動けるだろう?』

 

「う、うん…………」

 

 あ、あれ…………? なんかおかしいぞ? 今何が起きた? 

 

 グラハムが、自分の口に手を突っ込みました。

 

 そしたら、グラハムは口から俺の服を引っ張り出して来ました。

 

 つまり、グラハムは俺の服をずっと体の中に収納してたと。

 

 ほぉほぉ、なるほど。

 

「いややっぱ納得できんわ!?!?」

 

 どゆこと? どゆこと?? お前の体は四次元ポケットと化してるの!? 明らかに体が大きくなってるとは言っても体積にあってないぞ!? 

 

「色々聞きたいことあるけど、お前いつから俺の服を体に仕込んでやがった!?」

 

『沖縄に行く前日からだが?』

 

「昨日1日中ずっとジャージを腹に入れてたってのか!?」

 

 よくそれで私は生き物だって豪語出来たな(呆れ)

 

 リスとかビーバーでもこんなの無理だぞ。やっぱりグラハムって化け物なんだ、再度しっかり理解できたわ。

 

 てか今からこれ着るの? グラハムが口から出した奴を? やだよ、絶対やだよ!! 生理的に嫌だよ!! 

 

『さぁ、これを着て外に行くんだ。さぁ! さぁ!!』

 

「嫌だ! それとこれを着るのも嫌だ!! なんか所々光ってんのが余計に気持ち悪いから嫌だ!! 俺は二度寝するんだ!!」

 

『まだそのような事をっ!! そうするのであれば、君が二度寝したあとずっと枕元でシャゲダンしてやろう。私が夜のSGGKだ!!』

 

「やめろ!! あとお前は絶対に若林君に謝れ!!」

 

 なんだ夜のSGGKって!? なにをセーブし続けるんだよ!? 何を守護し続けるんだよ!? 童貞か? 童貞なのか!? お前ホモだから関係ないだろーが!! 

 

 あーもう話してたら埒が開かない。強行手段に出た方が絶対に早いわこれ。そう判断した俺はすぐさま布団を頭までかけ、外界のあらゆるものを遮断。そしてそのまま瞳を閉じた。

 

『…………そうか、それが君の答えなのか。ならば仕方あるまい』

 

 おっ? ついに諦めたか? やっとまた静かな眠りにつける。このまま俺は10時くらいまで寝てやるんだ。もう何人たりとも、俺を起こすことは出来ぬぅ!! (ブロリー)

 

『きっと昨日の黒髪の少女も、努力に励む人であれば尊敬するのであろうな。時を惜しまず、ひたすらに夢へと進んでいけるような、そんな人を。』(無自覚独り言)

 

「うしっ、走りに行くか」

 

 瞬間的手のひら返し、俺でなきゃ見逃しちゃうね。

 

 いやーね? こんなに天気もいいし、風も心地いいんだぜ? こんなの走るしかないじゃん。走る以外選択肢ある? ないよね(反語)

 

 グラハム様が出してくださった服一式を着るのに約10秒。着ていたパジャマを乱雑にベッドの上に投げ捨て、俺はキリッと、キッリッ! とグラハムの方へ視線を投げる。

 

「さぁ行くぞグラハム! 沖縄の海が、風が、太陽が、あの子が!! 黒髪ロングの清楚美少女が!! 俺を待っている!! グラハム、俺のあとに続け!!」

 

『ふっ! そうだ! それでこそだカヅキ!!!』

 

 安寧の眠りを捨て、俺はキャッキャウフフにあの子と過ごせるように!! 俺は彼女が好感を持てるような男になるのだ!! 

 

 待ってろリア充ライフぅ!! 

 

 グラハムが渡した服は、なんだか変な臭いがしたけれど俺は気にしなかった。気にしたくなかった。

 

 

 ━━━

 

 ぬわああああん疲れたもおおおおん(迫真)!! 

 

 勢いであんな事を言うんじゃなかった。本当にするんじゃなかった。

 

 あのせいでグラハムが俺に火がついたと勘違いして、ランメニューを増量、いつもは20キロなのに今日は30キロも走るはめに。それもこんっなくっそ暑いなか。

 

 何回死ぬかと思ったか、いや実際何回か死んでるのかもしれない。もしやここで俺は生きてると思い込んでいるけど実はまさか!?!? 

 

『何を下らない事をやっているんだ?』

 

「疲れて頭おかしくなってんの。ほっといてくれや」

 

『そうか、それは災難だったな』

 

 俺にとってはお前が災難ですわ。

 

 もう足が重いのなんの。重りのってんのかってレベルで足が重い。もう動けないし動きたくない。

 

 まったく、誰だよあんなグラハムの見え見えの甘言に乗ったバカなやつは! 俺がこの手でぶん殴ってやりたいね! (自分)

 

『しかし、せっかく海に来たのだ。横になってるだけでは楽しめないぞ?』

 

「楽しめない間接的な理由をお前が持ってると理解して? お願いだから」

 

 絶賛浜辺にシートをひき、パラソル刺して影を作って寝そべってるんだけどね? 俺だって泳ぎたいよ? けどもう朝の地獄の30キロランで足ボロボロなわけよ。だから無理なんだわ。行ったら多分沈んであいるびーばっくしちゃうわ。

 

「あとグラハム、泳ぎに行きたいなら一人で行ってきていいぞ。俺はここで寝てるから」

 

『ふむ、ならば仕方がない。私はこの美しい青の海を満喫してくるとしよう! さらばだっ!!』

 

 ヒョー!! と奇声を上げながら海へ飛び込むグラハムスター。もうノリが完全に学生じゃないあの子? 一応大人だよな? 

 

 というかハムスターって泳げるんだっけ? あれをハムスターと呼ぶべきかどうか物凄い悩むところではあるんだけど、一応図体はハムスターなんだし。

 

 けどまぁ大丈夫でしょ。グラハムだし。分裂したり体が四次元ポケット化してるグラハムだし。心配する方がおかしな話ってもんでしょ。

 

 あ~眠いぃ~…………1時寝5時起きはさすがに中学生にはきちぃてぇー。俺は昨日がっつり寝れて遅起きする気満々でモンハンってたのに…………下位から上がれなくてSwitchブン投げたけど。誰かキャリーしてください(悲痛)

 

 もうだめだ、眠気に勝てない。寝る、寝るしかない。右隣でパリピがワイワイやってるのがもうほとんど気にならないくらいに眠気が俺をボコりに来てる。寝るしかないよねそうだよね。

 

 なんかパリピの方を向いて寝るのはなんか癪なんで左を向こう。そうすると体に疲れがどっと来て眠気が一気に増した。よし、このまま寝るとします━━━━

 

 と、そこで俺は気がついた。

 

 俺が向いた左側の少し離れたところに、昨日の兄弟がいる事に。

 

 それも、あの黒髪ロング清楚美少女はなんと! なんとっ!! 水着っ!!! 

 

 眠気が飛んでった。いや、寝てる暇なんてありゃしねぇぜこれは!! 

 

 いざ見てみてるとやっぱ美人だわぁ、髪むっちゃ綺麗だし顔むっちゃ整ってるし。もう二次元から飛び出してきましたって感じだよな。周りと比べて不自然すぎるくらいに。寝てるみたいだけど寝顔が超かわゆす。

 

 それになんと言っても! なんと言っても! 水着の露出が多いっ!! あの水着選んだ人わかってるねぇ。ナイスチョイス!! 

 

 まさかこんなところで出会えるとは! センチメンタリズムな運命を感じずにはいられないっ!! (グラハムの声真似で)

 

 これはあれですね、俺とあの子が運命の赤い糸で結ばれてるって証拠ですね間違いない(妄想)

 

 話しかけに行くか? いや、いきなり話に行ったら『なにこいつ? キモッ』って思われるか? そう思われたり顔に出されたら俺このまま海に身投げする自信があるわ。

 

 待てよ、『昨日あんな事あったけど大丈夫だった?』と、心配する感じで行けばどうだ? これなら、あくまでもあの行動が善意によるもので、尚且つ俺は君達を心配してたよアピールが出来るのでは!? 

 

 俺、もしかして天才? (自信過剰)

 

 これは勝ったな間違いない※コミ症によるデバフの効果を鑑みない結果予想です。

 

 うしっ!! 思い立ったが吉日、話しかけに行くぜっと思ったけど、あの黒髪ロング清楚美少女の横に兄の方もすわってんだよね。

 

 なんか…………こう言っちゃ悪いけど、あの妹なのに兄の方はぱっとしない。

 

 いやイケメンなんだよ? 俺なんかより遥かにイケメンでクールな感じの絶対モテるだろお前○ねやって感じなんだけど、やっぱあの妹が黒髪ロング清楚美少女なだけあって釣り合ってない感が否めない。

 

 それになんかこう…………なんて言ったらいいんだろうなぁ。変な雰囲気を出してるって言ったらいいんだろうか? 

 

 俺の知ってる中学生とは何かが違うような、そんな空気。特殊な例の雫もちょっと違うっちゃ違うけどそれともまた違う。

 

 どっちかって言うと…………鍛練中に時折出すグラハムの雰囲気に似てるような、そんな気がするんだけどなぁ…………

 

 そんな事を考えてた次の瞬間、少し強めの風が俺の頬を撫でた。

 

 うひょ~冷たくて気持ちいい~。ここまで暑いとこういう海風がかなり心地いいんだな、沖縄に来て見つけた俺の発見だ。

 

 それに今はパラソルによる影もあるし、より快適度は増してるし。あれ、影なくなった。

 

 強風に煽られて傾いたのか。動きたくないけど、この快適さも捨てがたい。しゃーない、動くか。そう思ってぐだりながら体を起こすと、

 

 カツンと、俺の足がパラソルに当たった。

 

 瞬間、パラソルが揺らめき右に倒れた。そう右に。

 

 パリピがワイワイやってる、右隣に。

 

 あっやべ。そう思ったがもう遅い。

 

 パラソルは支えをなくし、重力と風に押される力に身を任せ、そのままパリピ軍団が騒いでいる中にパタンと倒れた。

 

 これだけなら、まだなんとかなったかもしれない。相手側のテリトリーに風のせいで入り込んでしまっただけだし、すみませんと一言謝れば済むだろう。これでも三下感を醸し出すことに感しては定評があるし。

 

 けど、俺をさらに不幸が襲う。

 

 パラソルはただ倒れるだけじゃ飽きたらず、ワイワイやってる中でなんか一番いかつそうな男の人の頭を勢いよく叩きやがった。

 

 ぶつかった途端、さっきまでのガヤガヤが嘘のように静かになり、陽キャ軍団の全員がパラソルがぶつかったイカつい男とパラソルの持ち主である俺とを視線を行き来させる。ちょやめろ、そんなんしたら俺が倒したみたいになるでしょーが! 

 

「あ、あのー、すみませんでした。大丈夫ですか?」

 

 恐る恐る当たった男の人の方に歩み寄りながら、上擦る声をどうにか抑えつつ尋ねてみる。ん? あれ? 

 

 この男の人、どっかで…………

 

「ったく、なにしやがんだって…………」

 

「「あっ」」

 

 男が完全にこちらを振り向いた事で、俺は思い出した。

 

 こいつ昨日のヤンキー軍人の一人じゃねぇか!? 

 

「これはこれは、昨日は世話になったなぁ? ああ?」

 

「えっと…………き、奇遇ですね!? 当ててすみませんでしたそれじゃ俺はこれで!!」

 

 まずいまずいまずいまずい!! 

 

 こんなとこで再会とかやめてくれってんだよ神様っ!? あの黒髪ロング清楚美少女との運命的は再会ならまだしも、この筋肉ゴリゴリヤンキー軍人との再会なんて誰が望むってんだよ!! 少なくとも俺はのぞまねぇよ!! 

 

 ここはすぐさま逃げるに限る! 相手にしてたらなにされるかわかったもんじゃないしなにより人数があっちの方が圧倒的に多いっ!! パラソルとシートを回収したら速攻で離脱っ!! 

 

「おいちょ待てよ」

 

 はい逃げられませんでした。俺が離れるより先にキ○タク風に言いながら腕を捕まれました。わーさすが軍人、動きが素早いですねー(現実逃避)

 

「おーい、お前ら、このガキが俺とジョーを動画で脅した張本人だぜ!!」

 

 はっ!? 急になに言い出すんだこの筋肉!? 

 

 筋肉ヤンキー軍人が周りの陽キャ軍団に言うと、なにまだ子供じゃんとか、あーあ目つけられたとか至るところから声が聞こえてくる。

 

 けど、ほとんどが哀れまれてる感じから、ほぼ確定でよくないことになるんでしょうねこの後。やめてよ、こんな幼気(いたいけ)な子供になにするってんですか!? 警察呼びますよ!! 意味ないらしいけど!! 

 

「さーてガキ、あの動画消してもらおうか? じゃないと、どうなるかわかってるよな??」

 

 ポキポキ指ならしながら脅すんじゃねぇ! 怖いだろうが!! 足すくんじゃうだろうが!! 

 

「ほら、さっさと出せやスマホ。」

 

「い、いや…………その、ですね…………」

 

「あ"?」

 

 ヒィィィィィィィィィィィィ!?!? 怖ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?!? 

 

 これ完全に怒ってらっしゃいますよね!? 激オコぷんぷん丸になっちゃってるよ!? もう物騒な気配しか感じないよ!? 

 

 言えない…………あれはぜーんぶ嘘で、動画なんて端から録ってませんでしたー(笑)なんてこの状況で言えるわけない!! 言ったら死ぬに決まってる!! 

 

 どうにか話を誤魔化せ! えーと…………なにか、なにか…………ないな! 挙げられる話題が何一つ思い浮かばん!! 

 

 そうだ! グラハム! こういうときのグラハムじゃないか!! あいつに助けを頼めばなんとか━━━

 

『この波は良いものだ!! 行くぞ! 我がフラッグボード!!』

 

 何やってだあいつ(呆然)

 

 どっからサーフィンボード持ってきたんだよてかなんでお前サイズのなんてあるんだよ。助けてくれよそんな浜辺から離れたところにいるんじゃなくてさ、お前が導く少年がピンチなんだよ? お前遊んでて言い訳? 

 

 駄目だ、もうあいつ完全に遊びモードに入っててこっちの声なんて聞こえそうにない。ほんとあいつ肝心な時しか使えないよな。今からでも神の使い変えてくれないかなぁ? 

 

「おいこらガキ! スマホ出せって言ってるだろーが!!」

 

「ヒィ!? い、いや、今は手元に無くて…………」

 

 これ事実。スマホは今頃ホテルの部屋の机の上で充電されてる頃だろう。あったらあの黒髪ロング清楚美少女の写真を一枚でも撮っとるわ(内心だけ強き)!! 

 

「そうか、それは仕方ないな」

 

「ですよね! しょうがないですよね!」

 

 なんか納得したっぽいぞ! これはなんとかなるかも「なら、代わりがいるよな?」…………ふぇ? 

 

「代わりだよ代わり。盗撮したんだ、一発や二発、殴られても文句は言えないよなぁ?」

 

 言えるわ!! あまりに理不尽すぎるだろそれは!? そんなんただお前が憂さ晴らしに俺をボコりたいだけじゃねぇか!? 

 

 さすがにこれはヤバイだろ! 陽キャ軍団も止めてくれないと…………

 

「やっちまえゲイル~」

 

「死なない程度にねぇ」

 

「可愛そうなガキ。ありゃ終わったな」

 

 ちょいちょいちょい、君らこれを見て見ぬふり? むしろ助長するの? ただの中学生だよ? このままじゃホントに殴り殺されるよ俺? だってよ、俺アーサーなんだぜ? (シーブック)

 

「それじゃ、景気よく一発行くか。ま、歯が折れないように祈っとけや!!」

 

 そう言って男は大きく腕を振り上げて俺へ振り下ろす。痛みと目の前の男への恐怖で顔を反らそうとしたその時、

 

 俺の体は反射的に飛んできた男の腕を掴んでいた。

 

 男の腕を掴むと体を反転し背を男に向け、もう片方の腕を曲げて肘を開ききった男の脇へ。そしてそのまま男が殴りかかってきた勢いを殺さず受け流すように横へ払う。

 

 するとなんと不思議、殴りかかってきたゲイルって呼ばれる男はいとも簡単には砂の地面にばたりと転げ落ちた。

 

 …………え? なに今の? 

 

 俺がやったんだよな? けどなんか、無意識的に体が動いたんだけど。それこそ、グラハムとやってる組み手みたいな感じで…………はっ! 

 

 もしかして、動きが体に染み付いてて勝手に動いたの? そんな事ホントにあるの!? でも、今目の前で同じような事起きたし…………

 

 俺、まさか結構強い? 

 

 それもそうだ、だって本物の軍人に一からみっちり毎日絞られてんだぞ? これくらい強くたっておかしくないんじゃないか? 

 

 だとしたら、もうこんなヤンキー野郎怖くないんじゃね? 

 

 ほう、ほうほう、ほうほうほう。

 

 だったら、少し痛い目みて貰いますかねぇ(ドヤ顔)

 

「さっさと立てよおっさん。一発や二発、俺に殴るんだろ?」

 

「てめぇ! 調子乗りやがってこのクソガキがぁ!!」

 

 男が拳を振るう、振るう。

 

 俺が避ける、避ける。

 

 見える…………見えるぞ! 動きが見える! (アムロ)グラハム憑き人間のパンチより遅いから回避出来る!! 

 

 ふっふっふっ! これで確信した!! 

 

 俺は! 強い!! 

 

 これまで調子に乗ってオラオラ利かせてたんだろうなヤンキー軍人さんよぉ!? どうよ、子供に弄ばれてるこの状況? 楽しいですか? 俺は楽しいですよぉ? (煽り性能高め)

 

 ひたすら殴ってきて、ひたすら避け続ける。さーてどこで反撃してやろーかなー? 出来ればあの顔に一発殴ってやりたいんだけど、こいつなんか無駄に顔イケメンだし。なんか腹立つし。

 

 うし、次殴ってきたのに対してカウンターで顔に一発入れてやろう。その顔面漫画みたいにぺしゃって凹ましてやんよ!! 

 

「このガキが!! 死ねや!!」

 

 ゲイルがそう言いつつ俺へ蹴りを放とうとしてくる。

 

 あーはいはいキックね? なーんの問題もありませんよ? だって私最強ですし? それくらいどうってこと…………ん? 

 

 足がなんか光って…………あれ加速魔法? もしやこいつ魔法師!? 

 

 ちょっと待てちょっと待て!? さすがにそれは捌けんって!! 魔法使えるなんて知らないっての!! 当たったら骨折とかじゃ済まないって!! 顔ぶっ飛ぶレベルの加速魔法かけてるって!! 

 

 ヤバいヤバいヤバいヤバい死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!! 

 

 咄嗟に顔を腕で防御したけど、絶対激痛が来るんだろうな。出来れば顔が不細工にならないようにはお願いしたいです…………なーんて思った瞬間、

 

 大きな何かが、俺の背後から吹き荒れた。

 

 それは、膨大すぎるサイオンの山。それらは俺を通りすぎ、ゲイルへとぶつかった。

 

 すると、ゲイルはまるで蹴り方がわからなくなったかのようにストンのその場に座り込み、呆然と俺の方を見た。

 

 なんだ…………なんだ今の。ゲイルのおっさんが使った魔法が、まるでさっきのサイオンの山に押し潰されたみたいに…………

 

「ここは、公共の浜辺だ。騒ぎすぎるのはやめてもらいたい」

 

 そこで聞こえたのは第三者の声。音源は俺の背後から。振り返りそっちを見てみると、俺のちょうど後ろに、昨日助けた兄弟の兄が仁王立ちみたいなかんじで立っていた。

 

「これ以上騒ぐというのなら、こちらもそれ相応の対応をとらせてもらうが…………それが嫌なら、少しは静かにしてくれるとありがたい」

 

 抑揚があまりなく、感情が感じられない声音。まるでそれは機械のよう。俺と同じくらいの年齢の子供が出すような声音じゃない。

 

 なんだ…………こいつ…………すげぇ(小並感)

 

「わ、わかった…………静かにしてるよ。悪いな…………」

 

 彼の言葉に対し、陽キャ軍団もなにかしら感じたのかそれを潔く受理し、そそくさと倒れるゲイルを引っ張って自分達の張るテントへと戻っていった。

 

「大丈夫か?」

 

「……へ!? あ、ああ!! 大丈夫大丈夫!! こっちにはダメージ全然なかったし!!」

 

 うわビックリした~、急に話しかけてくるんだもん。ビビるわ。

 

「危なかったな。あのまま蹴られていたら、恐らく頭にヒビが入っていただろう。まったく、一般人に対して魔法を使うとは…………」

 

 軽蔑するような視線を送ってる兄くん(香月命名)

 

「これで昨日の借りは返した。悪いが、妹を見てなくちゃいけない。それじゃ」

 

 兄くんはそう言うと、また何事もなかったみたいにスタスタと眠り続ける黒髪ロング清楚美少女の妹さんのところまで行き、その場に腰を下ろした。

 

 現場に残されたのは、俺ただ一人。

 

 その後、泳ぎに泳いで楽しみまくり、こちらで何かあったことにすら気がついてなかったグラハムに一発拳をぶちこみ、早々にビーチから撤退したけれど、それからもずっとあの謎の兄妹の事が頭から離れることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 





ちょっとずつシリアスに向かってると思いたい

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