とっとこ(グラ)ハム太郎   作:zhk

2 / 17
なんだかんだで書けました。

筆が動く動く!


友達を作るぞ!少年!!

 グラハム・エーカー。

 

 それは機動戦士ガンダム00に登場する人物で、ユニオンに所属しフラッグを駆るエースパイロット。

 

 最初の方は普通の軍人だったけれど、ガンダムの登場からその機体性能に惚れ込み、徐々に徐々に変人、そして変態へとなっていく。

 

 パイロットの腕は凄まじく、接近戦を最も得意としている。その実力は性能差が圧倒的であるガンダムに対し量産型のフラッグと呼ばれる機体で拮抗するほど。

 

 この作品の中では彼と同じようにガンダムに対してシーソーバトルを繰り広げていた者は何人もいるのはいるけれど、それらの人物は体が改造されてたり何らかのバックアップがあったり機体が良かったり。

 

 そのため技術だけでガンダムと互角に戦えたのは彼しかいない。作中で主人公側とは少し立場が違う者達のガンダムと戦った時には、たった一機で三機のガンダムと渡り合った。これの放映後、グラハムが乗るフラッグがバカ売れしたのは有名な話し。

 

 義理堅く、そして人格者ではあるため部下からの信頼も厚く、何人ものフラッグ乗りが彼へと付き従っている。

 

 が、こいつ、さっき言った通りガンダムが現れた事でどんどん変態と化していくのだ。

 

 例えば、通信が取れない状況下で通話が出来ないにも関わらずコックピット内でガヤガヤと一人で騒いだり、ガンダムに対して好意を抱いたり(パイロットにも。ガンダムにもである。)、最後主人公と戦っている最中唐突に告白したり(主人公へ、もちろん相手は男)。

 

 言ってても思う。変人だと。公式ホモと言われても仕方ないと。

 

 それでも戦闘技術や部下を思う気持ちは本物(ついでにガンダムへの愛)なので、この作品の中でも人気はかなり高く、ギャグとシリアスの両方をこなせる優秀な人間なのだ。

 

 確かに俺も好きなキャラクターだ。あのスローネアインの腕をオーバーフラッグカスタムがスローネアインのビームサーベルで切り裂くシーンは胸熱で、見たときはおおー!!と一人で叫んだもんだ。

 

 好きなキャラクターだ。好きなキャラクターではあるんだけど…………

 

『カヅキ、窓ばかり見ずに授業に集中しろ。これでは無為な時間を過ごすことになるぞ?』

 

 机の端でどっしりと座るグラハム顔のハムスターが、俺にそう注意してくる。

 

 いやホント、なんでこうなった?

 

 あのカッコいいグラハムがハムスターと混ざってんだよ。どういう神経してたらこんな化け物が出来上がるんだよ。

 

 俺もびっくりしたもん。転生して目を開いたらこいつがいて、

 

『初めましてだな!少年!!』

 

 とか言ってくるんだもん。ビビらねぇ方がおかしいわ。名言をその見た目で言われてもなんも嬉しくないんだけど。

 

 でもこんなんでも、このグラハムハムスターはあのクソ白髭神様が俺にもたらした転生人生を上手く進めるためのガイド役だ。

 

 あの神様やっぱ頭おかしかったんだよ。あと絶対俺の事恨んでんだよ。じゃないとこんなキメラ送ってこない。ただの善意でこれなんならあの神サイコパスかなんかだ。

 

『カヅキ!!授業に集中せんか!!』

 

「はいはいわかってますよ」

 

 ちっこい手をブンブン振りながら怒り始めたグラハムに俺はぞんざいな返事をしつつ、視線を窓から九十度右に回転。そろそろ聞いとかないとこいつが本気で騒ぎだしそうだから言うこと聞かないといけん。

 

 眼前では我らが担任が小さな画面の中で絶賛授業中。

 

 俺がいた時代とは全然違い、授業も全部タブレットでの映像授業。まぁ六十年も経ったらこうなってもおかしくないわな。技術の発展ってしゅごい。

 

 画面で先生が指示棒で指すホワイトボードには、足し算と引き算の説明がしっかり書かれており、先生はそれを真剣にわかりやすく説明してる。

 

 うん、暇だわ。

 

 だってまだ小学校低学年の教養授業だぞ?俺前世では一応中二までは普通に過ごしてたからね?聞かなくても全部答えれるし。

 

 それにあの先生の甘ったるい猫なで声が鬱陶しい。なーにがわかる人ーだ、仕事なんだと思うけど背筋に悪寒が走る。

 

『ふむ、今やっているのは初等の算数か。まさにこれは基本中の基本、これが出来ねば今後社会の荒波では生きてはいけん。気を引き締めて取りかかれ』

 

「気を締めなくてもわかるわ」

 

『さぁ、まずはあの女教師が書いた式から解くんだ。2-1だ。どれだけ難しくても諦める事は、この私が許さんぞ』

 

「あのグラハムさん?俺の事バカにしてます?」

 

 この式が難問になる中学二年ってどんな奴だよ。そいつはもう勉強が出来ないとかの次元じゃない。もっと根本的なとこに問題があると俺は思いますね。

 

 とりあえず担任がやれと言った問題を手早く解いて、端末を横にずらして居眠りの体勢へ移る。

 

 はっきり言って教師がこっちをしっかり見ていた前世の時と違い、今はそうやって監視してくる輩もいないので居眠りとかはし放題だ。本当に大丈夫なのかこの制度と思ってしまうけれど、俺以外の皆は誰一人寝ることなく真剣に問題に取り組んでるのでその心配は杞憂なんだろう。皆真面目だねぇ~

 

『また寝るつもりか、そうやって貴様はまた怠惰でいるつもりか?』

 

「やるべき事はやってるし。怠惰ってのは違うと思う」

 

『怠惰でないのなら、まずは体を起こせ!』

 

「痛い痛いっ!耳を引っ張るな耳を!!」

 

 どこにそんな力あるんだよと聞きたくなるパワーで俺の耳を千切らんばかりに引くグラハムへデコピン一発。ぐわっ!!という悲鳴と共にグラハムは転がっていった。

 

『拒絶するか、いいぞ。そうでなくてはやりがいがない。君の人生をより良い方向へ導くという、私の使命のな!!』

 

 そんなところで燃えないでください。

 

 現在このグラハムスター、長いからハム太郎でいいや。グラハムと他愛ない雑談と洒落こんでいる訳だが、それに周りがなにか言ってくる事はない。

 

 そう、このグラハム、俺以外には見ることも触ることも出来ないのだ。俺じゃない奴が触れようとしたら体をすり抜け、グラハムがなにかを持てば第三者からは物が勝手に浮いているように見えるのだ。

 

 分かりやすく言うと幽霊みたいな存在ということ。やだなーこんな幽霊。

 

 以下の理由から、今の俺は机にうつ伏せになりながらなにか独り言に興じる変な奴、という具合になってる。

 

 怪しい奴だな今よく考えると。

 

『君が暇なのも理解できる。しかし勉学というのは重要な事だ。またゼロからやってみることで新しい見解、見識な君の中で生まれるかもしれない。』

 

「うーん。例えば?」

 

『君がいた時代にはなかった物はどうだ?』

 

「あー、それは確かに」

 

 ここは完全に俺がいた場所とは違う世界だ。オタク風に言えば世界線が違う、とでも言うんだろうか。

 

 だから歴史の本とかを見てみても、俺が聞いたことないような事が過去に起こったりしてる。第三次世界大戦が起こったってのを知ったときはマジで度肝を抜かれたのをはっきり覚えてる。

 

 その差異というのは大きな事から小さな事まである。この違いを見つけるために、この勉強という事を一からするのは重要なのだというグラハムの意見は理解できる。

 

「けどやる気が起きないんだよ…………」

 

 そ、結局ここにたどり着く。

 

 重要性はしっかり理解してる。けど実際蓋を開けてみれば知ってることばっかりなんだ。この手の事は六十年程度では変わらないでしょ。知らんけどと思わざるを得ない。

 

『しかしだな…………先延ばしにし続けるにはあまりにもこの世界は━━━』

 

「なぁグラハム、今からフラッグ語りする?」

 

『いいだろう!私のフラッグファイターとしての知識を披露して見せようではないか!!』

 

 チョロい(ゲス顔)

 

 こいつは基本こう面倒臭い奴だけれど、こうやって自分の好物(exフラッグ、ガンダム等々)を吊るしてやればあっさり誘導出来る。

 

 もう既にグラハムは満面の笑みを浮かべながらフラッグについてつらりつらりと語り始めてる。それを聞くだけでもこのちょー暇な時間潰しにはなるんだ。

 

 さーて、授業の残り時間は大体20分ちょい。フラッグ関連で話してればあっさり終わるくらいだな。オタク談義と入りますか。

 

 そんな事を考えていた時、ツンツンと俺の肩を誰かがつついた。

 

 反応するようにそっちを見ると、俺の隣に座る女の子が迷惑そうに目を細めてこっちを見てくる。

 

「えっと…………なんすか?」

 

「市崎くん。うるさい」

 

 にべもなく、ばっさりと端的に隣の少女はそう言うやいなやすぐにぷいっと俺から視線を外して手元の端末から授業へ集中しちゃった。

 

『一人で騒ぐからだぞ、カヅキ』

 

「いやそれブーメラン」

 

 さっきまでフラッグについて語ってたのはテメーだろーがと言ってやりたかったが注意された手前また騒ぐ訳にもいかない。

 

 ので、再度端末を見ることになりました。

 

 数分経たずに夢の世界に旅立ちました。

 

 おもんないんだもん。仕方がないね。

 

 

 ━━━━

 

 昼食の時間。俺の中での小学校のこの時間と言えば、机と机をくっつけてなにか話しながら食べるのが俺の印象だ。実際そうだったし、俺はそれを経験してきた。

 

 けれど、今俺がいる学校ではそうはいかない。精密機器を大量に使うからだ。端末だのなんだのが机に置いてあるのに、そこで飯なんて食べてたら壊れるかもしれない訳だし。

 

 という訳で昼食は普通学校にある大きな食堂で食べる事となってる。ここでなにか頼むもよし、持ってきたお弁当を食すもよし。

 

 なので俺は両親が作ってくれた弁当を食堂で広げてる。

 

 一人で。

 

 おいコラそこ。空しいとか言うな。悲しくなるだろ。

 

 むっちゃ広い食堂の隅の方で、俺は一人で椅子に座って机に弁当を置いてるんだよ。対面に椅子はあるけどそこには誰も座ってない。いるのはグラハムだけ。どんな状況だよホントに。

 

『どうした?食べないのか?モグモグ…………』

 

「いやさ…………なんというかさ…………」

 

 声をかけてくるグラハムは弁当の卵焼きをむしゃむしゃと食べながらってなに勝手に食ってんだこいつ。

 

「こういう食事ってさ、もっと大人数で楽しくワイワイするもんじゃないの?ほら、あっこみたいにさ」

 

 俺が見る方向には、俺のクラスメイト達が集まってワイワイガヤガヤと楽しげに昼食をとっているのが目に入る。疎外感が半端じゃない。

 

「なんでこうなったんだろう…………」

 

『カヅキに友人と呼べる者がいないからだろう?』

 

「その原因は間接的にお前にあるんだけどな」

 

 俺に何も言わずにどんどん弁当に隙間を作ってくガイドさんへジト目を向け、深いため息を吐いた。

 

 考えてみよう。今は4月下旬。俺が入学したのが今月の上旬。期待を膨らませながら入学したらクラスの中に、なにもない所に向かってなんか喋ってる奴がいたら皆どう思うでしょーか?

 

 答えは簡単。

 

「なにあいつ?やベー奴じゃん。近づいたらやばそうだし避けとこ。」

 

 である。

 

 そうなりますね。うん、なんとなく察してた。でも聞いてよ、初ホームルームからギャンギャン喧しい見えない怪物ハムスターが俺の肩にいるんだぜ?無視しろって方が難しいでしょ。

 

 で、原因のハムスターはなに食わぬ顔で飯食ってるし。あーもう弁当半分ないじゃん。こいつマジで一回ぶっ殺してやろうかな真面目に。

 

『ふむ、友人がいないというのは少し問題だな。』

 

 俺にはお前が目下第一の問題だよ。

 

『カヅキが自分から周りに声をかけていくというのはどうだ?さっき君を注意した少女などな』

 

「あれはどう考えても注意されるべきはお前だっただろうが。」

 

『今重要なのはそこではない。それで、どうなんだ?』

 

 こいつ何事もなかったように流しやがった。後で覚えてろよ。

 

 でも隣のあの子か…………確か名前は……北山?だっけ?あの子俺苦手なんだよなぁ…………

 

 なんかずっーとむすっとした顔してるし、淡々としてるし、ちょっと怖い。席替えして初めてのお隣だったからなんとか声とかかけたけど、うんとかすんとかだけで終了。相手が返さないのでキャットボールにならんのだ。

 

 そんな北山さんもよく一緒にいる女の子がいるし。あの子はえっーと…………なんだっけな名前、なんか明るそうな名前だった気がするけど思い出せない。

 

 他のクラスメイトは俺の独り言(グラハムとの会話)を気味悪がって近寄ってこないし、俺は幽霊が見えてるとか噂すら流れ初めてるし。しかも他所のクラスにまで。

 

 間違っちゃない。間違っちゃないが見えるとしてもこんな幽霊はビビるビビらない以前に気持ちが悪い。誰かこの気持ちを共感できる奴が欲しい今日この頃。

 

 今のとこ飯を食べるのも一人だし、帰るのも一人だし、休み時間も一人だ…………グラハムを人として数えなければ。

 

 あれ?これってさ…………

 

「俺もう詰んでね?」

 

 うん。なんかそんな気がする。

 

 だって他のクラスの奴にまで変人として認知され初めてて、クラスメイトからは煙たがられてて。これもう俺友人とか作れないんじゃない?

 

 ヤバい。それはマジでヤバい。このまま六年間過ごすのは俺の精神的なダメージが大きすぎる。小学校から既にボッチスタートとか洒落にならないから。俺はあの千葉のボッチのように強くもなければ処世術もない。

 

 てことはダメじゃん。もうチェックメイトじゃん。ボッチの学校生活スタートなの?友人なしの?寂しい学校生活が?嘘だ…………嘘だと言ってよバーニィ!!

 

「あぁぁぁ…………どうしよ…………どうにかしないと色々と終わっちまう…………」

 

 ガックリと倒れ項垂れるようなぼやきを告げると、グラハムはちらっと大人数で集まるクラスメイトの集団の方向を見たかと思うと、

 

『カヅキ、ここは私が手を貸そう』

 

 まさかの救援宣言を下した。

 

「えっ?まじで!?」

 

『ああ、私は君を導く義務がある。君と私は運命共同体だ。であれば、助けるのは道理というものだろう?』

 

 すげぇ…………今この瞬間だけ、グラハムがむっちゃ心強く感じる!!この男からはなんだってやってのけて見せそうな、凄みがある!!

 

「でもどうするんだ?」

 

『簡単だ。あれをやる。頭を下げてくれ』

 

 グラハムがそう言った瞬間、俺の顔が喜びから不安の青色に染め変わった。

 

「嫌だ!それだけは俺嫌だぞ!!」

 

『諦めろカヅキ!私ならどうとでも上手くやって見せる!!君はいいのか!このまま虚しく一人で居続ける六年間になるとしても!?』

 

「それも嫌だ!けどそれを止めるための過程も嫌だ!!断固辞退する!!」

 

『それは私のセリフだっ!!』

 

 グラハムのやらんとしてることを理解したからこそ、俺は拒否の意を込めてブンブンも首を横に振りまくる。

 

 これだけは勘弁してください!あれはマジで気持ち悪くなるから!!

 

 あっ!おい!その仕方ないかみたいな顔をやめろ!!強行手段に出ようとするな!!

 

『問答無用!!これもすべて、カヅキ、君を思っての事なのだ。許せ!!』

 

 うおおおおおっという力強い叫びと共に四足で助走をつけたグラハムは四肢を曲げ、そのまま大きく飛び上がった。止めようとする俺の手を巧みに体を動かしすり抜け、体を丸め俺へと肉薄し、

 

 ペタッと俺の頭の上に大の字でダイブした。

 

 途端、俺の体に電流走る。

 

 比喩のように聞こえるが、体感本気で電流流されてる気分。視界がフラッシュして明滅してなんだかよくわからなくなってあばばばばばばばばば!!!

 

 そして視界に一際強い光りが入り、体を走る電流が強まったと思った次の瞬間!

 

『うぼぉ!?』

 

 まるで吹き飛ばされたように、俺の体が後ろに飛んだ。一気に反転する視界。それをどうにか前に戻すと、そこにはなんと、

 

 俺がいた。

 

 頭上のグラハムの顔は白目になっており、代わりに俺の目の前にいる俺はいつもの俺がしないような笑みを見せながら、

 

「どうやら、今回も無事に上手く言ったようだな」

 

 グラハム口調で俺に話しかけてきた。

 

 これが、神の使いとなってるグラハムが出来る技術。憑依。導かれる人、俺の体を借り一時的にグラハムの意識を俺の体にリンクさせるというもの。俺の体をグラハムに貸している形だ。体を貸してる間、俺が逆に浮遊霊のような存在になってしまう。この間は俺(本体の精神)は他者からは見えないのだ。

 

『お前力付くでこれをやるのはやめろって何度もいってるだろ!?元の体に戻るとき反動かなんか知らんけど気分悪くなるんだぞ!?』

 

「今回は友人が出来る必要経費だと思ってくれ。」

 

 いつもの芝居がかった口調を俺の体でやるからなおのこと違和感が凄い。というか頭のグラハムの本体白目向いてんだけど。本体不在でもぬけの殻だからか?どっちにしろ変人感が凄い。顔の上に顔を置いたゆっくりみたい。

 

『んで?これをしたからには良い案があるんだよな?』

 

「無論だ。この私が信じられないのか?カヅキ」

 

 50%50%(ヒフティヒフティ)ってとこですね。日頃の行いで考えてください。

 

「善は急げだ。この状態を維持するのは時間制限がある。手早く終わらせるとしよう」

 

 すっと椅子を後ろに下げ、グラハムはそのまま迷いなく談笑してるクラスメイトの集まりへと歩を進める。

 

 本当に大丈夫なんだろうか?今からでも遅くないから、無理矢理にでも体の主導権を引っ張り戻すか?

 

 いや、待て。グラハムはこれでも人格者だ。だからこそ原作であれだけの優秀な部下達が彼のもとに集まったんだ。

 

 今回は、その彼の人としてのカリスマにかけるべきかもしれない。

 

 そうだ、忘れていたが彼はグラハム・エーカー。不安なときこそあれど、彼は決めるときは決める男だ。原作の中でもそうだったじゃないか!!

 

 なら、俺は信じる。実直で芯の強い、グラハム・エーカーという男を!

 

「失礼」

 

「「「えっ…………」」」

 

 会話に花を咲かせていたクラスメイト達は、俺(中身グラハム)が入って来た瞬間、まるでお通夜の時のように静かになった。

 

 そんな急に?さっきまでお祭り騒ぎだったじゃん。そんなに俺が嫌か?そうなのか、泣きそう。

 

 だが、それを変えるためにグラハムは行ってくれたんだ。頼むグラハム!!すべてはお前に懸かっている!!

 

「えっと…………市崎?なんだよいきなり」

 

「失礼と言った」

 

 一人の疑問をばっさりと切る。グラハムが陣取ったのは大人数が座る長テーブルの誕生日席。注目が集まりやすい席に異物が入り込んだためか、全員の視線が今グラハムの元へ収束していく。

 

 少しの沈黙が流れる。その間、グラハムは両の手を噛み合わせ、そこに顎を乗せてる。碇ゲン○ウポーズだ。なんだか無性に後ろに立ちたくなってくるポーズだ。

 

「私は…………」

 

 長い長い沈黙を破り、グラハムは遂に口を開く。漂う謎の緊張感から固唾を飲んでる同級生達、そしてグラハムは言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「美少年を、こよなく愛している」

 

「「「…………は?」」」

 

 ………………は???

 

「私は美少年が嫌がりながらも、私に屈服していく状況を好むのだ。より強く、より反抗的ならばなおよし。それでこそ!それでこそ我が心は燃え上がるというもの!!」

 

 ぐっと握りこぶしを作り、真剣な表情、眼差しで、

 

 こいつは唐突に自分の性癖を暴露しやがった。それも皮は俺で。

 

 完全に全員がポカンとした顔でグラハムを見てる。外面俺だから実質は俺が見られてる。

 

 そうか…………そうだった…………

 

 カッコいいとか、人格者だとか、そんな事よりもまず。

 

 こいつは公式認定重症ホモだというのを完璧に忘れてたわ。

 

「以上だ。ご清聴感謝する」

 

 唖然とするクラスメイト達を無視し、グラハムは悠然と立ち上がって元々座っていた席へと戻り腰を下ろす。

 

 それと同時に、俺の精神が俺の体へと吸い寄せられ、気がついた頃には自分の体は自分の自由が効くようになっており、机の上でグラハムハムスターが堂々と胸を広げて立ってる。

 

『ふっ、上出来だろう。友人を作りたければまずは自分の事を明かすことが重要だ。だからこそ、私が己が内の欲を見せたのだ。これで私たちは人となる第一歩を踏み出せたと言ってもいいだろう』

 

 …………あー。うん…………

 

 とりあえず、まぁ…………

 

 

「なんて事してくれたんじゃこのクソキメラがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

 

「な、何故だぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 食堂の中に、悲しすぎる俺の慟哭が鳴り響いてった。最後の最後まで、グラハムは何故俺がここまでキレたかを理解する事はなかった。

 

 後日、あのグラハムの一件が俺の全力のギャグだと思われ、俺のクラスメイトからのあだ名が『変人ホモ』となり、弄られキャラとしてクラスに、そして学校に定着しなんだかんだで友人が出来る事となった。

 

 解せぬ…………

 

 

 

 

 

 

 




グラハムが何でもありになってるって?

挟まれて潰されて死なないんだからこれくらいするでしょ?(諦め)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。