この作品がランキングに乗りました!
まさか冗談半分で書いた作品が乗るとは思ってなかったのでビックリしてます。
それとお気に入りの伸びがスッゴい・・・
30人?皆グラハムハムスター好きすぎない?
あっ、感想とか送って頂ければ、作者は餌を貰った犬のように喜びます。感想も返します。
感想ほちぃ・・・・(乞食)
「はいそこまで!!」
遠くで立ってる女の人の掛け声をしり目に、手元の銃を下げる。ずっと上げっぱだったから腕が痛い…………
俺の周りには俺と同じような銃を持った同い年くらいの子達がいるけれど、皆マラソン大会後みたいな感じでその辺に横になったりゼーハー肩で息したりしてる。なんかそんな中で俺だけけろっと涼しい顔してるのが現状なんだけども…………浮いてる感がスッゴい。
「市崎君だっけ? 凄いね君!! 三十分もサイオン弾を撃ち続けるなんて!! サイオン保有量がとても多いのね!!」
「あ、はい…………そうなんですか…………」
にこやかに俺へと近づいてきた女の人が、俺を手放しに褒め称えてくる。むず痒いなーとか、照れるな~とか、俺ならこれくらい余裕っすよ!! とか、そんなほざける気分じゃない。
(後ろからの視線が半端じゃないんだよな…………早く帰りたいよぉ…………)
俺の背中に集まってくる、周りでへばる子達から向けられる明らかに好意的ではない視線の数々。所々からは舌打ちとかまで聞こえてくるし…………あっ今隣の子もした。
『さすがだなカヅキ! 周りの者達が君へ嫉妬の瞳をギラつかせるほどとは。やはりこういうものは、やってみなければわからないものだったのだ。』
頭の上に陣取ってるグラハムが自信満々になんか言ってるけど、それが俺は辛いって言ってんのよ? わかる? わからないか俺喋ってないんだから。全部心のなかでの独り言だから。
なぜだ…………なぜ、俺はこんな地獄にいるんだ…………
導入にちょうど良い感じの事を頭に浮かべつつ、遥か遠くを見るような視線で部屋の一角を眺めながら、俺は数日前の事をほわんほわんと思い出して見た。
━━━━
数日前
俺の始めての魔法発動(おおよそが事故と偶然によるもの)のお陰で、俺に魔法を使える才能が見つかりました。
もうそのあとはドンチャン騒ぎ。母さんはやったやったとはしゃぎ始めるわ、久々に帰って来た父さんも良かったなぁー! と俺を抱き抱えてぐるんぐるん回りだす始末。なんだこれは、どこかの祭りかなにかでしょうか?
話を聞いてみると、父さんも母さんも昔は魔法師になることを夢見ていたけれど、まず魔法を使うことすら出来ずに夢を叶えるスタートラインにすら立つことを許されなかった。
けれどそれでも諦めきれず、時折魔法を使う道具、CADって言うらしいけどそれを買っていたんだという。けれどそれも俺が生まれた事により、もう現実を見なければと二人して決意。買っていたCADをすべて棚の奥深くに直していたのだとか。
で、それを俺が全部偶々引っ張り出して、偶々俺が使ったら魔法が使えちゃったのがつい最近。自分達の叶わなかった夢を、自分の息子が体現してくれる可能性を秘めているということでここまで熱くなったようだ。もう二人とも途中泣き始めて、俺が混乱するというカオスになった。
わっちゃわっちゃと喜び合う両親を前に、俺はただただ圧倒されるのみ。時折相槌を打ったりはしたけれど、俺自身どうしていいかわからない。
確かに魔法が使えるってのは嬉しい。ホントに嬉しい。どれくらい嬉しいかっていうと、お祝いが終わったあと部屋で一人喜びの舞いを踊るくらいには嬉しかったりする。
いやでも本気で嬉しい!! だって神様から貰った転生特典があの
もしかしたら、さっきまでしてた妄想だって現実の物になるしれないし? 魔法師ってモテるだろうし? 引く手あまたなクールでカッコいい魔法師って事で黄色い歓声も浴びれるかもしれない!! (過剰妄想)
ひゃー! 来ましたわー!! ついに、俺の時代が来ましたわー!! 苦節何年、ついに俺の方に風が吹いてきましたたよー!!!
「それで香月。まだわからないことだらけだけどどうする?」
「父さん。家の近くに魔法を教えてくれる塾があるの! そこに香月を入れるっていうのはどうかしら?」
「そりゃあいい! 香月もそれでいいか?」
「ん? うん! それでいいよ!!」
「わかったわ。それじゃ今度一緒に行きましょ」
途中話聞いてなくてテキトーにうんって頷いて答えちゃったけどまぁいいよね? 大した事じゃなさそうだし。
これから楽しくなりそうだぞー!! 目指せ!! 最強の魔法師!! なんちって? アハハハ!!
回想、終わりっ!! 閉廷っ!!
━━━━
いやアハハじゃねぇよ!? なに楽観視してんの過去の俺!?
完璧に魔法使えて浮かれてきってたんだねはっきりわかんだね。周りの話なんかまともに聞かずにウンウンテキトーに返事するからだ。
結論。
こうなったのは百パーセント私が悪いです。まる。
『しかし、君にあれほどの熱意があるとは私も思っても見なかった。誰しも何かに情熱をぶつけるもの。例えば私も隠していたが、かの少年とフラッグ、そしてガンダムをこよなく愛している!!』
知ってる。てか衆知の事実です。逆にあれで隠してるつもりだったのならお前はもう少し本音を包み隠す練習をしてください。
結局俺がうんとあの時返事してしまったため、母さんはウキウキでこの魔法指導専門の塾へ連絡。そして俺はまず体験という形でここにやって来る事となったのだ。
そしてわかった新事実。俺は他の人よりも、サイオン保有量? とやらがとても多いらしい。
まずサイオンというのは、この世界で魔法を使うために必要不可欠な存在だ。起こった事とかを記録するのにそれが必要らしくて、魔法で色んな事を起こすにはこのサイオンを使ってその記録とやらを弄ることで発動出来るようです。
で、その魔法を使うためにサイオンを使用するんだけど、それらはすべて自分の体内にあるサイオンを使用することになる。この体内にあるサイオンの量というのが、サイオン保有量というのだ。
サイオン保有量が高いと、魔法を何度も使っても疲弊したりすることがない。つまり他のやつよりも持久力が高いわけだ。
『他の者の動きを見ていたが、早い者で最初の5分ほどでもう音をあげている者も見られた。それらから鑑みれば、やはりカヅキのサイオン保有量は他者と比較して頭一つ抜けているようだ。』
「やっぱあの女の人の言うとおりなんだ。体にダルさとか倦怠感が全然ないし」
『…………ダルさも倦怠感もどちらも同義語だぞ?』
「…………」
痛いところを突かれたので無言でグラハムの言葉を聞き流す。今は少し休憩の時間のため、全員が持ってきたタオルで汗拭いたり水筒の飲みもん飲んだりしてる中、俺はこの演習室の端っこでグラハムと会話中。
知り合いとかいないから仕方がないね。母さんはなんかこの後用事あるとかでどっか行っちゃったし。ここ家から結構近いから対して問題じゃないけど、やはり新参者って事で居ずらい…………
「ここではどうにかキチンとした友好関係を作りたい。魔法よりもそっちの方が優先度は高いわ」
『なら、また私が君の体を借りて━━━』
「絶対嫌だ」
『何故だ!? 上手くいって学校で他の者と仲良さげに会話出来ているではないか!?』
お前にはホモだの変人だのの弄りをされてる俺が楽しそうに見えてるの? 笑ってるけど心へのダメージ半端じゃないよ? まだ子供だから、弄りの刃キレッキレッなのよ。躊躇のない言葉が俺を襲ってるのよね。
「あとお前どうせ絶対ここでも性癖暴露スタートだろ。もう既にスタートからなんか不穏なんだから、お前はあんま目立つように動くな」
『それは、彼らの事を言っているのか?』
と、そこでグラハムは珍しく敵意を向けるような目で演習室の一部でたむろっている集団を見た。
そこにはさっき俺と同じように耐久練習みたいなのした男子のほとんどがおり、彼らはとある一人を中心に固まっている。
何を隠そう、中心にいるのはちょっと前俺の隣で全力舌打ちしてた奴である。時折彼らは俺の方を見ては、何やらゴニョゴニョと言ったりしてる。ナズェミテルンディス!!
「けどこうも注目されると緊張するんよなぁ…………疲れる、精神的に」
『まぁそう言うな。それだけカヅキが注目を集めるほど稀有な存在だということだろう? むしろ喜ばしい事じゃないか。』
「それが俺には疲れるって言ってんの」
きついよまじで。ここまで皆の注意を集めるなんて経験すら前世を入れてもなかったってのに。俺は端っこでこうやって静かに一人でモブに徹してるくらいがちょうどいいの。なろう小説よろしく無自覚チートなんてやれるたまじゃないんだし。
大体、ああいう自分を理解してないやつって俺本当に嫌いなの。なんか俺凄いことした? みたいな顔してえげつない事やる主人公とか特に。特にそれでハーレムとか作る奴はぶっ殺してやりたいくらい嫌いです!! (私怨)
「香月くん」
頭上から唐突に降り注いできた声にグラハム共々顔を上げてみる。
んだよこちとら静かにしてたいんじゃこれ以上注目浴びたくないんじゃよ誰だよ話しかけて来る奴!? なーんていうさっきまで友達作りたいとかほざいていた奴が考えないであろう事を思いつつ見てみると、そこにいたのはここのインストラクターの女の人。俺を褒め称えてた人だ。
「どう? まだ始まったばっかりだけど、魔法の演習は楽しんでる?」
「えっと…………はい…………楽しい…………です」
しさき かづき のとくせい! コミしょう!
初対面の人に明るく近づかれたりするとどもり目も合わせられなくなり、最終的にはただ相手の会話に相槌打つだけのbotになる。
「でもさっきのは本当に凄かったね! お母さんやお父さんから魔法を教わってたの?」
「いえ…………魔法が使えるって知ったのも…………つい最近だったのじぇ」
「へぇそうなんだ」
情けなく噛んだ俺に突っ込むことなく、インストラクターの女の人は真摯に話しかけてきてくれる。それが逆にキツい。
だってよぉ~この人どっからどう見ても陽の者だもん。明らかに相容れないって! この誰でも手をとって仲良くなれるよ! みたいな明るさはキツいですよ!? 加えて美人なのよ!?
あとあんたなんでそんな薄着なの!? 確かに最近暑くなってきてるのはわかるけどもう半袖着る? それで前屈みにならないで谷間が見えるから!? 視線がそっちに誘導されるから!! デカいのはわかったから!! (なにがとは言わない)
なに誘惑してるんですか? 美人でデカくてどうだって自慢してるんですか? こっちは未成年ですよ? 犯罪ですよ? わかってんのかこの女は? おぉ? (強気)
講師がそうやって一人でいる奴のとこに来るのはボッチを哀れむが故の行動なんだろ? 俺の尊敬してやまない伝説の千葉のボッチ様が言ってたぞ!!
それにあんたが来たから余計に注目浴びてんじゃん!! もう見てよあそこの例の集団の目!! 嫌悪感がかくしきれてないって!! 本音が胸から直接飛んできてるから!?
もうやだよこれ…………本当に帰りたい。やる気もほとんどなくなってるしさ。体調悪いって言ってもう帰ろうか━━━
「きっと凄い才能持ってるんだよ! 絶対に伸びるから、わからないことがあったらなんでも聞いてね!!」
パッと花の咲いたような笑顔で、インストラクターの人は俺にそう言った。
凄い才能持ってるんだよ!
凄い才能持ってるんだよ! (リピート)
凄い才能持ってるんだよ! (リピート)
カッコいいね! (妄想)
インストラクターさんはそれだけ告げると、そのまま俺の下から離れて次の演習の準備をしに行く。その間ずっと俺の頭の中でインストラクターの言葉がリピートアフターミーしてる。
才能あるって…………カッコいいって…………(言ってない)年が近かったら彼氏にしたいって…………(言ってない)
フッフッフッ…………アッハッハッハッ!!!
「グラハム!」
『む? どうした?』
「俺にはやっぱ、魔法の才があったみたいだ」
『なんだと!?』
ああそうさ! だってあんな美人の先生が凄い才能があるって言ったんだぞ? あの美人な先生が(超重要)
それに俺は腐っても転生者。どんな過程で転生しようと、どんな情けなく悲しき相棒と共に過ごしてきたと言っても、俺が天下無敵の転生者であることは揺るがない事実!!
「注目を浴びる? 上等! むしろ全員の目を俺に釘指しにして離さないようにしてやんよ!! キャッキャッウフフな黄色い歓声を! 俺がすべてかっさらってやらぁ!!」
━━━━
演習その二。移動系魔法による物体の移動。
「あれ? なんで? 先生! これなんか全然うごかないんですけど? 動いてる? ホンのちょっとずつ? 普通こんなもんなんですか? えっ? 皆数秒で終わる…………?」
演習その三。加重系統魔法による圧力量。
「先生~? 圧力計壊れてまーす。周りの人よりも位が一つ小さいんです。絶対壊れてますって。先生がやったって変わらないって━━━普通に起動しましたねはい…………」
演習その四。振動系統魔法による物体の振動。
「先生…………いや、振動はしてるはしてるんですけど…………これってもうただ横にブランブラン動いてるだけっす…………ブブブッて感じではないです。これって…………あっもういいです。なんとなく察しましたから」
━━━━━
結果はっぴょー。
一番最初のサイオン弾的当て。他を寄せ付けない圧倒的なサイオン保有量を見せつける市崎香月選手。
その他すべての演習、他を寄せ付けない圧倒的な惨憺たる結果を見せびらかした市崎香月選手でした。現場からは以上です。
はい雑魚~。俺ってば非常に雑魚~。言葉に出来ないくらい雑魚~。
なーにが俺は転生者だあっさり無双してやるぜ(出来うる限り最大のカッコつけ)! だ…………何一つまともに成功しとらんじゃないか。
もう最後の方なんて、あのインストラクターさんの諦めるような悟ったような表情は痛々しくて仕方がなかったわ。グラハムに切った啖呵が啖呵だったために、出来なかった時のダメージが尋常じゃねぇ…………死にたい…………
『カヅキ…………この間テレビで見たのだが…………今日カヅキが行った物はすべて基礎単一系統魔法と呼ぶらしい。それでだな…………』
「どしたの? 言いたいなら言っていいよ。もうこれ以上ダメージなんて食らわないから。今ここが底辺だから。落ちるとこまで落ちてるから。」
『…………魔法師の卵であれば、あの程度ならっていなくとも簡単にこなせるらしい』
さらに下があったー(涙目)
えっなに? 俺はもうこの時点で劣悪なの? 既に? スタートラインに立った時点でハンデ持ちなの? きっつ。いやきっつ。
始めての魔法教室で、まさかの基礎の基礎、出来て当たり前すらまともにこなせないなんて…………こんなの絶対おかしいよっ!! (まどマギ)
だって周りが量産ザクなら俺ボールくらいって事だろ? あのザクにサッカーボールよろしく蹴られて死ぬ連邦の動く棺の、いや下手したら砲台が俺にはないかも。…………考え始めたら泣きたくなってきた。
『だが安心しろカヅキ。一番下にいるということは、これ以上落ちるところはない。伸び代しかないということなのだ。なにも悲観し続ける必要はない。』
グラハムさんのありがたいお言葉が胸に染みるぅ~。
そうだよね! まだ俺達は小学生! 何もかもが始まったばっかりだ! であれば、ここからの伸びで挽回なんていくらでも出来るはず!! そうだよね!? (必死)
転生チートは無理でも成り上がりだっ!! 俺は貧弱クソ雑魚ボール君からせめてモビルスーツには成長してみせるぞ!!
「というわけで今日はもう終わったし帰ろう。母さんが家で美味しいご飯を作って待ってる。」
『帰れば少し今後の相談もしよう。魔法についての知識を私と君とで色々と共有しておいて方がなにかと役に立つし、その過程でなにかを覚えられれば御の字だ』
「グラハムナーイスっ!!」
やっべぇ今日グラハムがなんか相棒相棒してるっ!? どうしたんだ今日のお前!? なんか魔法に当たったせいで正常になったのか!? 頭の病院行くか? いや待て、正常になったら行かなくていいのか。
『…………カヅキ、今君は少し失礼な事を考えていないか?』
「思われてる自覚があるなら、全面的に失礼に思われるようなところを直せ」
変態趣味と男色趣味と変人的行動、加えて独断での俺の体の使用。挙げ出したら切りがないんですけど…………
「というかなんか変だぞ今日のお前。テンション上がってんの? いつもの変態行動が鳴りを潜めてるから逆に怖いんだけど」
『ふっ…………どうやらそのようだ。新しき物というのは、やはり心が惹かれ踊るもの。魔法という前いたあの世界では体験すらすることなかった事象が目の前で行われ、興が乗ったのやもしれん』
「…………ふーん。そか」
その気持ちは凄く理解できる。今まで見なかった目新しい物が現れたら、誰だって気分は高揚する。俺が始めてガンダムを映像で見たときがそうだったみたいに、今のグラハムも同じような気持ちなんだろう。
「とりま体を勝手に奪うのはNG。これは絶対、次やったらお前の目の前で刹那フィギュアを粉々にしてやる」
『なんとっ!? なんという残虐な!! やられる側の少年の気持ちを、君は考えているのか!!』
相手の了承無しにフィギュアを腕がとれるまでねぷねぷする輩に言われたかないんです(正論)
このまま会話してるといつまでも話してしまいかねない。グラハムがまだ耳元で美少年とはっ!! って感じで凄い気迫で語ってくるがど根性で無視する。相手してたら帰れない。というか腹が減ったから早く帰りたい。
「おい! あそこにサイオンしか持ってないむのーがいるぜ!!」
そんな時だった。俺とグラハムの背後から、明らかに俺へ向けての貶しが飛んできたのは。
入り口のドアのガラスから後ろを見てみると、俺のちょうど右斜め後ろのベンチにたむろする少年達。というかあの俺に熱い視線(悪い意味)を向けてた奴等じゃん。
「最初にチョーシ乗った癖に、その後はまともに発動も出来ないとか、才能ないんじゃないですかぁ?」
「言ってやんなって。可哀想だろ? あれでも頑張ってたんだからよ?」
「さっすが桃地君! こんなよわっちい奴にもやさしいねー!」
桃地、とか言う奴が中心なんだと横目で彼らを見てると、なんと桃地君、サイオン弾撃ち耐久の時俺の隣でやってた人だわ。舌打ちしてたもんねー君。
『貴様らっ!! 言わせておけば━━!!』
「グラハム、静かに」
煽り耐性ゼロなグラハム君をどうどうと諌めつつ、関わりたいとは微塵も思わないけれど俺は桃地とその取り巻き軍団の方向へと体を向き直した。
「…………なにかな? 俺は早く帰りたいんだけど…………」
「かぁー! 聞いたかお前ら! 無能様は、あんだけみっともないとこ見せといて自主練習もせずにさっさと帰るってよ!!」
「うわまじかよっ!?」
「意識低いなぁ?」
なんだこいつら(呆れ)
疲れるなぁこういう奴等ってまじで。テキトーにハイハイ言って帰るか…………
「お前、魔法をもっと上手くなりたいか? ん?」
「まぁ。なりたいな。」
唐突な桃地君の質問タイム。その間もニタニタと気持ち悪い笑みを消すことのない腰巾着AとB。まさかこんな古典的ないじめの形があるとは思わなんだ。時代が進んでもこういう類いの事はなくならないのね…………オニイサンカナシイ。
「なら俺が、お前に教えてやるよ。この魔法の名家、桃地家の俺様がなぁ!!」
自信満々に語る桃地君だったけど、
桃地家って何? 名家なの? 知らんわぁ。
なんかどっかで聞いた事あったっけなぁ? 魔法の名家とかなら時々ニュースとかで名前を聞くのもあるけど、七草とか、十文字とか。百地はないな、うん、知らない。
(グラハムなんか知ってる? 桃地って名家らしいんだけど)
『知らん。私も君同様それなりに色々な情報を積極的に集めようとはしているがテレビはもちろん、ラジオでもその名前を聞いたことがない。彼の嘘ではないのか?』
あー、その可能性は大いにあるかも。このお年頃でこんなお山の大将してるんでしょ? だとしたらちょっと自分を大きく見せたがるし、こんな見え見えの嘘を言うかもしれないし。
「あの、その話は凄くありがたいんだけど、俺はお断りさせてもらうわ」
「…………は?」
うわっ、何言ってんだみたいな顔しやがったよこいつ。多分断るなんて考えてもなかったんだろうな、どんだけ自信家なんだよ。
普通断るだろお前みたいな奴の話なんて。こんな嫌味ったらしい奴と誰が好き好んで関わるか。俺だって付き合う友人くらいは選ばせろっての。
「というわけで俺はこれで。演習の時とかは色々と教えてくれると助かるかな」
嘘だ近づいてくんなこの性根ひんまがり野郎。
魔法に関してはインストラクターさんに聞きますー他の優しそうな子に聞きますー少なくともお前には絶対に聞きませーん。
と、言いたいけれどその全部を俺は胸に留めて彼らに背を向ける。
まあ俺は大人だからね? 桃地君の若さゆえの過ちも俺は寛大に笑顔で流してあげようじゃないか。冷静な対応を見せるのが大人(精神年齢的に)だから。笑顔は完璧作り笑顔だけど。
本音を言えば面倒な波風を立てたくないってだけ。ここで色々と魔法に関して学んでいく日々が始まるのに、初日からこうも行く気も失せるような事はしたくないのだ。
だから俺はクールに去るぜ。例えグラハムが本物のハムスターが威嚇する時のようにグルルと肩で吠えていたとしても、相手からは見えてないので旗から見たらクールなんだぜ。
「へっ! これだから才能ない奴は! 向上心も生まれてくる時に落っことして来たのか?」
けど諦めない桃地君。そろそろ鬱陶しいな、あとこいつなんか無駄に語彙力あるから内容が腹立つ。
無視だ無視。こういう手の奴はもう相手をしないに限る。そうして俺が一歩踏み出した時、
「あの魔法の腕じゃ、よっぽど才能ない親なんだな!」
桃地は俺に、そう言ってきた。
「知ってるか? 魔法の技能って、ほとんど親のをまるまる受け継ぐんだって。ということは、お前の親はお前とおんなじで才能無しって事だ」
「うわー可哀想ー!」
「帰ったらママとパパに言っとけ! ママとパパのせいでみんなにバカにされたーってな!!」
ギャハハハハハと、あまりに下品な声が俺の耳にこだまする。同時にあの日、母さんと父さんが俺が魔法を使えたって事で祝ってくれた時の事を思い出した。
あの日、父さんと母さんはまるで自分の事のように俺に魔法の才があることを喜んでくれた。それこそ、涙を流してまで。
二人には夢があった。魔法師になるという夢が。けれど、それは無惨にも願うことすら烏滸がましい夢だった。
けれど、それでも諦められなかったからCADを買っていたんだ。それらが自分には使えないとわかっていたとしても。それほどまでに、俺の両親は自分の夢に真剣だったんだ。
それを、こいつらは簡単に踏みにじりやがった。無能だと、才能がないと。
お前らになにがわかる。お前らに、父さんと母さんの何がわかる!! お前らみたいな、他人を見下す事しか出来ない人間に!!!
俺の頭にそう浮かぶのと、握り拳を作ったのはほぼ同時だった。理性なんて関係ない。精神年齢が俺の方が大人だとか関係ない。
これだけは、これ以上は、
俺をここまで育ててきた尊敬する人達を侮辱されるのは許せなかった。
だから、俺は━━━
「その汚ならしい口を閉じろ。」
自分の声が自分の前から聞こえたことに驚きました。
えっ? と思った時には俺の体はふわふわと宙を漂い、眼前には俺の背中とポカンとした情けない顔を見せる桃地達。
なんだろう、ものすごいデジャブ。それと凄い嫌な予感がする…………
恐る恐る、目の前の俺の頭を見てみると、
乗ってました。グラハムスターの本体が白目を向いて。
「貴様達の雑言は彼に免じて聞き逃してやろうと思っていたが、堪忍部の尾が切れた。」
この芝居かかった口調、まるで演劇してるみたいな空気感。
間違いない…………
こいつこの状況で俺の体乗っ取りやがった!!
何してんの!? いや本当に何してんの!? そこは俺がこいつらに怒るとこだよね!? 掴みかかる準備満タンだったのに出鼻完全に挫かれたよお前に!!
「才能がなんだ。それはあくまでも本人に眠る潜在能力でしかない。そんなもの、たゆまぬ努力でどうとでもなる。引き出せる。才能とは、所詮その程度の物でしかないのだ」
おーい!! ちょっと!? 体返して!? 早急に!! 出来るだけ迅速に!! ほら、皆唐突の俺のキャラ変についてこれてないから、な? だから早く戻して!?
「な、んだよ。魔法は才能がすべてなんだよ! 生まれた時から、出来る奴と出来ない奴の区別がつけられてんだよ!! だからお前は、生まれた時から負け犬なんだよ!!」
なんで冷静になるんだよ桃地!? そのまま唖然としてれば戻ったらどうにかなったのに!? ああもうめちゃくちゃだよ。
「ふっ、なるほど。才能がすべて、君はあくまでもその考えを通すつもりのようだな」
なに両腕組んで納得してんの? とりあえず体返して? ね? お願いだから、グラハムさん? 聞こえてます? グラハムさーん?
駄目だこいつ完全に俺の声が耳に入ってない!! もうグラハムワールドになってらっしゃるよ!! どうしたらいいの? どうしようもねぇよ!! (自問自答)
グラハムのすぐ横でギャーギャー騒ぎ立てるもグラハムが聞こえてなければ他の誰にも聞こえないので完全に詰みの状態。そんな中、グラハムは桃地へこう言った。
「ならば、私は君に果たし合いを所望するっ!!」
「「「…………は?」」」
……………………は? (憤怒)
果たし合い? 俺と、桃地が?
何故? どうして?
「私は魔法に関して才能はゼロに等しい。が、君はちがう。その君に私が勝って見せれば、この私の考えの正しさが証明出来る。違うかね?」
そっか~。俺が桃地に勝てば、グラハム論がじっしょうされるんだね! やったねグラハム!!
てなると本気で思ったのか!? 勝てるわけねぇだろうがアホかこのホモ!!
相手は自称名家のイキリキッズでも、俺よか何倍も強いぞ!? だって俺の隣でやってたからわかるもん。俺が四苦八苦艱難辛苦してる演習、こいつ鼻歌歌いながらあっさりくりあしてるんだぞ!?
「アッハッハッハッ!! お、お前、桃地君に勝てると思ってんの!?」
「桃地君は、ここの一年生でもトップレベルなんだよ! 相手にもならないって!!」
ほら見ろ! 一年最強だぞ!! 成り上がりするぞって意気込んだけどこんな高跳びは駄目だって!! まずは返せ!! 体の使用権返せ!!
「問題ない。勝つのは私だ。」
問題大有りだよ!? なんでお前が自信満々なんだよ!! どっから来るんだよその自信は!?
「どれだけの実力差であろうとも!!」
「今日の私は、阿修羅すら凌駕する存在だっ!!」
広めの玄関口で、俺の声でグラハムがそう叫んだ。存在だっ!! のだっ!! をむっちゃ強調したから響く響く。
「お、お前…………なんなんだよ!!」
あまりの変人っぷりに、恐れ戦く桃地君以下腰巾着AとB。そんな彼らを尻目に、グラハムは不敵に笑って見せた。
「あえて言わせてもらおう!! 市崎香月であると!!」
中身別人なんだよなぁ…………(現実逃避)
悲報
主人公、この作品始めてのシリアスをグラハムに奪われシリアルになる。