[完結済み] この夜に祝福を。   作:Rabbit Queen

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 ⚠アフターストーリーはこのすば要素がほぼありません。
  完全にオリジナルのお話です。
  それでもよければ、お付き合いください。






 老いた兎がこの世を去った。
 
 その兎を、愛した人が二人居た。

 片方は自分の恋を諦め、
 
 片方は、未だに恋を追い続けている。


 これは、諦めた女性の物語。
 
 その想いは、別の形で現れ、そして女性を支えるのであった――。




アフターストーリー  そして、月は私を照らす。上

 

 ふと、昔の事を思い出していた。

 

 私がアクセルという街で過ごしていた日々の事を。

 最初は慣れなかった接客業に苦戦して。

 たまにお客さんにセクハラもされそうになって。

 挫けそうになったけど、それでも頑張って続けて。

 ようやく慣れ始めた頃に、私はあの人に出会った。

 

 

 ずっとずっと、この目で追い続けていた。

 最初は興味本位で。

 でも、時が経てば、それは恋に変わって。

 いつか、私の気持ちに気付いてくれるかもしれない、なんて淡い期待をして。

 

 

 私の想いは、あの人が月に抱く気持ちと同じように、儚くて、決して、届くものではなかった。

 

 

 

 結局、私は実家に帰ってきた。

 昔から仲の良かった幼馴染に告白されて、私は彼の言葉を受け入れた。

 最初はまだ振り切れない所もあったけれども、この人はずっと私を待っていてくれた。

 楽しくて、笑顔が素敵で。子供っぽいところもあって。

 あの人とは全然違うけれども、私は、この人を少しずつ好きになっていた。

 

 

 

 そうして、私達の間に子供が生まれた。

 

 可愛くて、一生懸命生きようとしてて。

 

 私も、彼も、嬉しくて、ずっと、ずっと支えてあげようと思った。

 

 この小さな、私達の王子様はどういう人生を歩むんだろうって。

 

 私達は、それが楽しみだった。

 

 

 

 

 

 

 あれから数年経って。

 この子も、だいぶ大きくなった。

 

 少し無口で、私や彼とは正反対の性格だけれど、私も、彼も、この子を変わらず愛していた。

 夫は仕事で休みの日以外居なくて、普段は私と一日を過ごしている。

 そんな小さな王子様には、少しだけ困った事があって……。

 

 

 

 「今日も遊びに行かないの?お友達が呼んでいたよ?」

 

 この子は、人付き合いが苦手だった。

 友達は出来ていたけれど、自分から誘って遊ぶことはなかった。

 ……そもそも、この子に趣味はほとんど無かった。

 何かやらせようとしても、興味を示さず、ごめんなさいと私と彼に謝る。

 別に怒っているわけではない。私も彼も、この子が望む事をやらせたかっただけだから。

 

 ……でも、そのやりたい事が、私達にはわからなかった。

 

 

 

 そんなある日、夫が仕事で王都に行き、無事帰ってきた時の事。

 彼は、一冊の本を買って、この子に渡した。

 それは、とある街でのお話だった。

 

 「なんでも、子供達だけじゃなく、大人にも人気の本なんだって」

 

 それは、どこか聞いたことのあるようなお話だった。

 

 その主人公も、登場する人達も、私には覚えがあって。

 でも、それはきっと私の勘違いだと思った。

 

 

 「……おしまい。良いお話だったね」

 

 そう言って、私は本を閉じようとして、この子がそれを止めた。

 まだ、続きがあると言って。

 私は不思議に思う。

 残ってるのはこの本を書いた人の名前と、感想だけだった。

 

 名前は謎仮面の男と書かれていて、どこかで聞いたことあるような気がした。

 感想は、何故この本を書くことになったのか。その想いが書かれていた。

 作者の想いを読んで、そうしてやっと、私は最後の文章で気付いた。

 

 

 

 

 ――これは、我輩の友、兎に送る本である。

 

 

 

 

 

 やっぱり。

 

 

 やっぱり、貴方だったんですね……夜兎さん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 すっかり暗くなった夜の下で、私は高く上がる月を家の庭で見ていた。

 隣に置いてあるテーブルの上には、

 私が働いていたあのお店から送られてきたお酒が置いてあった。

 小さなグラスに少しだけ注ぎ、お酒が入ったグラスを月に掲げる。

 

 「……ちょっと恥ずかしい。夜兎さんは、恥ずかしくなかったのかな」

 

 そう思いながら、この月に、私は乾杯をした。

 

 

 

 

 小さな足音が聞こえ、私は後ろを振り向く。

 そこには、小さな王子様が何かを言いたそうに立っていた。

 

 「どうしたの?眠れないの?」

 

 そう尋ねる私に、この子は小さく頷いて、私の元に駆け寄る。

 よしよし。と頭を撫でて、膝の上に小さな王子様を乗せる。

 

 「寝れるまでお母さんと月でも見よっか」

 

 そう言って、私は月を見る。

 この子も、同じように月を見た。

 

 

 

 

 

 

 ――今日も、綺麗ですね。

 

 

 

 

 

 

 「……え?」

 

 

 私はその声に驚き、周りを見渡す。

 でも、その人物は居ない。

 聞き慣れたその声を持つ人物は、居ない。

 

 幻聴かな……そう思い、ふと、膝に乗せてた小さな王子様を見た。

 

 

 

 

 

 「……あっ……」

 

 

 

 

 月を見るこの子の横顔は、あの人にそっくりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 どうしたの?と聞いてくるこの子に、私はなんでもないよ。と答える。

 夜はまだまだ続く。けれども、この寒さは子供にはまだ辛いはず。

 私は、小さな小さな、この王子様を抱きかかえた。

 

 

 

 「……戻ろっか。眠くなるまで、お母さんが一緒に居てあげるからね」

 

 

 

 そう言って、私は、夜兎と名付けたこの子を部屋まで連れて行った――。

 

 

 





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