[完結済み] この夜に祝福を。   作:Rabbit Queen

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悩み事はありませんか?

不安を抱えていませんか?

もしよければ、お話を聞きますよ。


私と、この素敵な夜と、あの綺麗な月が、貴方の悩みをお聞きします――。


月夜の下の相談屋

 

 「ぷはーっ!生き返ったわ!」

 

 青い綺麗な髪を持つその少女は口の横に白い泡を残しながら喜び叫ぶ。

 私はその姿を見ながら、彼女の手前に置かれている瓶の数をチラリと見た。

 ……これで3本目だ。なんて、早いスピードで呑んでいるのだろうか。

 全く酔う姿を見せない少女に驚きつつ、私はふと思い出した。

 果たして、お酒を呑んでもいい年齢なのか?と。

 私の疑問に対し少女は呆れたように私に言った。

 

 「はぁー?アンタ何言ってるの?わたし女神よ?お酒くらい普通に呑めるわよ。むしろ止めたら叩くわよ」

 

 女神だから呑んでもいいという謎の自信に不安を抱きながら、まぁ彼女は特別なのだろうと思うことにした。初めて出会った時も嘘泣きをした後にお酒を呑んでいたから、きっと天界でも変わった女神なのだろうと。気付けば3本目を飲み終えた女神様に四本目も頼みますかと聞き、もちろんよ!と返す言葉を聞きながら再度同じものを店員さんに頼んだ私は、ふと気になった事を聞いた。何故ここに居るのか。

 

 「わたしだって別に来たくて来たわけじゃないわよ?佐藤和真っていうクズマに無理矢理連れられて仕方なくよ!」

 

 彼女は最初愚痴のようにぶつぶつと話し始めるも、徐々に怒りへと変わり怒ったり泣いたり駄々をこねたりと、1人忙しくその表情と感情を変化させていく。そんな女神様の話を聞きながら、困った様子でお酒を持ってきてくれた店員さんに感謝しつつ、私が面倒見ておきますのでと伝え下がらせ、彼女の空いていたジョッキグラスにお酒を注ぐ。ひとしきり話し終えた女神様は注がれたジョッキグラスを片手で持ち上げ、腰に手を当てると一気に飲み干していった。そんな姿を見ながら、楽しいお人だと1人感じる。

 

 空いたジョッキグラスに再びお酒を注いであげると、女神様は悪いわね!と言って再び飲み始めた。今度は一気飲みせず、しかし飲むスピードは早かった。私はその様子をただ黙って見守る。彼女は私に気付くと、ジョッキグラスから口を離し言った。

 

 「なによ?貴方も飲みなさいよ。女神である私が注いであげるんだから光栄に思いなさい!」

 

 そう言って、私の手前に置かれていた、中身が入っていない透明なグラスにお酒を注ぐ。少し溢れたお酒を私は拭き取ると、グラスを持ち上げ女神様に乾杯をした。

 

 「ふふん♪それでいいのよ!貴方、なかなかわかってるじゃない!」

 

 嬉しそうにそう言って、彼女は再びジョッキグラスに口をつけ一気にお酒を飲み干した。元々は私が払っているお酒なのだが、口には出さなかった。こういう夜は、慣れている。ホスト時代にもこういう女王様タイプの人は居た。まぁ、あれは仕事だったから気にせず応じていた。だが、今回はそうじゃない。プライベートで呑んでいる以上、流石の私も駄目なものは駄目とちゃんと言う。しかし、この女神様に関しては、何故か悪い気はしなかった。奢らされているとは言え、どこか憎めない女神様に微笑み、彼女の空いているジョッキグラスに五本目のお酒を注ぐのだった。

 

 

 

 

 「貴方、結局冒険者にならなかったのね」

 

 目の前の女神様、アクアさんがお皿の上の肉をフォークで刺しながら言った。刺した肉を口に運び、何度か噛むと、置いていたジョッキグラスに口をつけ入っていたお酒を一気に飲み込む。ぶはー!と喜びを表現し、再び肉を食べてはお酒を呑んでいった。そんな生活が、一週間経った頃、彼女はそう呟いた。

 

 あれからずっと、毎夜アクアさんは私の元に訪れてはお酒を飲みに来ていた。無論、私の奢りだ。彼女は遠慮という物をあまり知らない。最初はお酒だけを飲みに来ていたが、段々と頼む物は増えていき、今ではこうして肉とお酒をセットで頼むようになった。無論……私の奢りだ。

 

 たまに、奢ってくれる事に感謝してなのか、アクアさんは私にお酒を注いでくれる事がある。普段は私が彼女の分も注ぐのだが、気分がいい日はそうしてくれる。お金は随分かかっているが、美女に注いでもらえるのならこれくらいどうってことはない。元々、使う予定のないお金なんだ。喜んでくれるのなら、奢ってもいいさ。

 

 「ふーん?花屋なんてやってるのねぇ。でも偉いわ!ちゃんと仕事を見つけてお金を稼いでいることは良いことよ!ついでに私にもっと奢ってくれると更に良いことよ!!」

 

 彼女は私を褒めつつ、もう一杯頼んでもいいかしら?という目で訴えてくる。私は笑って、店員さんを呼び、一本、追加で頼んだ。新しくお酒の瓶が届くと、彼女は喜び、鼻歌を歌いながらジョッキグラスを私に差し出した。私はそれにお酒を注ぐ。これが、私とアクアさんの日常だ。

 

 「んぐ……んぐ……ぶはー!!でもあれね、花屋だけじゃそんなにお金も貯まらないんじゃない?」

 

 まぁ、確かにそうだ。元々趣味もなく、こうしてお酒を呑んでるだけなら全然問題ないのだが、今はアクアさんの分も払わないといけない。まだまだ余裕はあるとはいえ、いずれそういう事も考えないといけないとは思っていた。内職か、それとも掛け持ちで何か始めようか考えてはいた。

 

 「わたしね、思ったんだけど、貴方、聞き上手だと思うのよ」

 

 「愚痴を聞いてお金を貰えばいいじゃない。ついでに相談にも乗ってあげれば利用者は増えるわね。いっそのこと、夜の相談屋にでもなりなさいよ」

 

 既に中身が無くなっていたジョッキグラスの底を寂しそうに眺めながらアクアさんは言った。相談か……そういえば、昔はよく人の愚痴を聞いたりアドバイスをしたりしたな。ただまぁ、あんたみたいな若者に何がわかるのよ!って怒られて以来、そういうのはやっていなかったが……ふむ、アリかもしれないな。私は考え込みながら、月を見つめた。月は、優しく私を照らす。

 

 ……そうだな。やってみるか。

 

 「……んぅ?なによ、そのニヤニヤした顔はー」

 

 ジョッキグラスの縁の部分を人差し指でなぞるアクアさんに対し、私はなんでもないと言って、店員さんを呼んだ。感謝を込めて、彼女にもう一本追加で頼んだ。

 

 

 

 

 そして、私は愚痴と相談を引き受ける夜の仕事を始めたのだが……まぁ、上手くはいかないわけで。始めてから二時間、今の所誰も寄っては来ない。わさわざマスターさんに許可を頂いたのだが、これではお店に申し訳ない。せめて、1人でも来てくれればいいのだが……こんな時、気の利いた人は友人を連れてくるのだろうが、アクアさんがそれをやるとは思えない。更にアクアさん以外に友人が居ない。つまり、そういうことだ。まぁ、気長に待つとしよう。

 

 

 「……あの、よろしいでしょうか?」

 

 

 気付けば、1人の女性が私の前に立っていた。さっきまで居なかったはずなのだが、私は少しだけ寝ていたのか?そんな事を思いつつ、どうぞと言って女性を席に座らせた。女性はそのまま私の正面の席に座った。髪が長く、黒っぽい服を来たその女性は、魅力のある大人なのだがどこか暗い印象があった。女性は自分の胸の前で両手をもじもじさせ、そして少しずつ話し始めた。

 

 「実は、お店の事で悩みがありまして……」

 

 彼女は、この街にお店を持っている経営者なのだが、どうも上手く経営出来ていないらしい。魔道具という物を扱っているようなのだが、思ったより売れず、赤字続きであると恥ずかしそうに言った。他にもな様々な悩みを相談してきた。私は相槌をうちながら話を聞き、一通り話し終えた女性に対し、ひとまず落ち着かせることにした。ふぅふぅと息を整える彼女に、私は様子を見てから、何か飲み物を頼みましょうか。と言って無難にお茶を店員さんに頼んだ。運ばれてきたお茶を彼女の手前に置き、どうぞと言って彼女に飲ませる。一口、二口と飲んだところで、私は答えた。

 

 話を聞くと、どうもその魔道具に問題があると思った。私は彼女に、商品の見直しをしてみてはと伝えた。彼女は驚いていたが、多分自分の商品に問題はないと思っていたのだろう。もう少し、売れそうな内容の物を選んでおけば、多少なりとも変わるのではと伝えた。後は、この店ならではの商品を作るとか。私の言葉に、彼女は商品を作るのは苦手で……と言った。私は一度月を見た。

 

 そしてふと、呟いた。大丈夫、貴方を助けてくれる人が現れます。と。

 何故そう言ったのかはわからないが、なんとなく、確信はあった。

 ただ本当にそうなるかはわからない。もしそうならなかったら、それは嘘になってしまう。

 別の事を言うべきだろうと考え、言葉を選ぼうと考える私に、彼女は言った。

 

 「……ありがとうございます。なんだか、頑張れそうな気がします」

 

 

 ……こうして、私の初めてのお客様は無事相談を話し終え、帰っていった。

 適当な事を言ってしまったのでは?とその日は反省した。

 やはり、私には向いていないのかもしれない。

 

 

 

 それから数日後、彼女から手紙が届いた。

 

 

 

 

 

 あの時はお世話になりました。おかげで、お店は順調です。

 

 常連さんも出来て、これでも結構、人気があるんですよ?

 

 お店が落ち着いたら、またお話しましょう。

 

 今度は相談者としてではなく、お茶飲み友達として。

 

 

                      ――ウィズ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 温泉に浸かった私は、今日もあの店に向かう。

 相談屋を始めてから一週間、あれから、相談する人は増えていった。

 初めてのお客様であるウィズさんが、どうやら私の事を周りに話したらしい。

 噂を聞いてやってきた人々の愚痴や相談を聞いて、時にはアドバイスをして。

 そんな事を続けて、気付けば、月夜の下の相談屋 などというあだ名が出来ていた。

 とても光栄なのだが、なんだか恥ずかしい気持ちでいっぱいだった。

 顔を少し赤くしながら、ゆっくりといつものお店に向かう。

 

 今日もきっと、誰かが、夜と月の下で私を待っているだろう――。

 

 

 

 

 

 いつものお店、そして、いつもの席。

 

 そこには、見知らぬ男性が、座っていた。

 

 

 




お疲れさまでした。

お知らせです。

この夜に祝福を。 ですが、短編ではなく12話構成にします。

当初の予定では5話程度で適当に終わらせようと思ったのですが、話を考えれば考えるほど書きたい内容が出てしまって、12話で収まるかなという感じになりました。

最近は12話構成にしてますが、アニメとかを意識してですね。
少ない話数でどれだけ話を広げられるか、ちゃんと終わるのか。
最初に決めていれば話も書きやすいですし、変な方向に話も行きづらいので。


で、一応先に伝えておきますと、後半は結構オリジナル設定になります。
ぶっちゃけアニメしか見てないので、wikiとか頼りに話を作っています。
既に最終話までの話はある程度メモ帳に書いているのですが、結構内容違うと思います。まぁでも、二次小説ってそういうものでもいいかなと思ってるので、一つの作品として見ていただけたら嬉しいです。

設定は出来たので、後は話を書くだけになりますが、他の作品と違い一話が結構短いので、これも早めに完結すると思います。という感じで、12話構成の完結させる感じになりましたが、よかったら付き合ってくださいな。


余談だけど、あらすじ考えるのめっちゃ楽しいです。
あとタイトル。

ではでは。
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