[完結済み] この夜に祝福を。   作:Rabbit Queen

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悪さをする者達よ!

このバニルと!!

こ、このゆんゆんと!!

――夜兎が……


「「月に代わってお仕置きだっ!!」」


――ここにまで現れるんですね……





月に代わって、お仕置きですよ……?

 

 機動要塞デストロイヤー、というものを、知っているだろうか?

 

 

 私がそれを知ったのは、

 それが丁度この街に向かっている事と同時に、初めて知った。

 

 

 外では既に街を離れようとしている人達の群れが出来ていた。

 私が務める花屋の店長も、各自今すぐ必要な物だけ持って逃げるべきだと話した。

 店の金庫からお金を取り出すと、私と、同じように働く者達にそれぞれ渡す。

 

 「これしか渡せないけど、皆ちゃんと生きるんだよ!」

 

 そう言って、店長は奥の部屋に行くとせっせと準備を始める。

 他の者達も店を離れ自分達の住む家に戻り始める。

 私は貰ったお金をひとまずポケットにしまうと、冒険者にギルドに向かい始めた。

 

 

 しばらく歩き始め、ギルドが見え始めたところで、立ち止まる。

 ……果たして、今の状況でギルドに入って良いのだろうか?

 街全体がパニックになってるこの状況。

 恐らく、ギルドも相当混乱しているはず。

 冒険者達が作戦を考えてるかもしれない。

 そんな所に一般人の私が行って、助けてくれ!と助けを求めるのはいいのだろうか。

 きっとそれも彼らの仕事だとは思う。

 こういう時こそ、彼らが前線に立って行動するものかもしれない。

 

 でも、彼らも同じ人間だ。

 そして、相手は敵うはずもない大きな機械だ。

 きっと彼らも、逃げる選択をするはずだ。

 

 

 なら私は、彼らに助けを求めるのではなく、

 同じように逃げようと考えている者達を1人でも安全な所まで誘導するべきではないだろうか。

 

 私は力を持たない。

 例え今それを持たされたとしても、振るうことはできないと思う。

 

 なら、

 

 なら、力を持たない私が、武器を持たなくてもいい私が出来ることを。

 逃げ遅れてる人が居るかもしれない。

 とりあえず、自分の行ける範囲まで行って声をかけよう。

 自分まで逃げ遅れたら元の子もない。

 冷静に、今出来ることを。

 

 非力な私は、それでもどうにかしてくれるかもしれない和真さん達に、

 ただただ願いながら走り出した。

 

 

 

 

 

 思っていたとおり、遊んでて逃げ遅れた子供達が居た。

 私は子供達を落ち着かせつつ、周りに親が居ないか確認しながら子供達を連れて歩く。

 既に周りに人影はなく、代わりに地面が揺れ、大きな大きな音が響いていた。

 私は音がする方を見る。何か、鉄の塊が少しだけ見えた。

 子供達は不思議と喜んでいた。

 機動要塞デストロイヤーとは、子供に人気があるらしい。

 とはいえ、この状況で喜ばれるのは少し困る。

 どうにか子供達を説得しつつ、私達はデストロイヤーから急いで離れようとした。

 

 

 

 

 その時だった。

 

 デストロイヤーが歩く音よりも。

 

 デストロイヤーが歩くことによって揺れる地面よりも。

 

 

 

 

 その、大きな大きな爆発は、今も私の頭の中に残っている――。

 

 

 

 

 

 

 

 あれからしばらく経って。

 

 

 私は、アクアさんと、ダクネスさん、そしてめぐみんさんと一つのテーブルを囲んでいた。

 いつものように酒をグビグビ飲むアクアさんと、

 力尽きてテーブルに頭を乗せてぐったりしてるめぐみんさんと、

 どうしたものかと悩んでいるダクネスさんが居て、

 

 彼女達のリーダー、佐藤和真さんは、ここには居なかった。

 

 機動要塞デストロイヤー、それを見事討伐した和真さん達一行は、

 感謝はされつつも、その時のとある問題によって……和真さんが連行されてしまった。

 そんな彼女達が、まぁ主にアクアさんがだが、愚痴を言いにここ最近訪れていた。

 

 「おかしいわよ!わたしたち頑張ったのよ!?褒められるべきでしょ!?女神なのにこの扱いってどういうことよ!!」

 

 いつもより酒酔いが酷いアクアさんが、空になったジョッキグラスに酒を注ぐ。

 溢れ出ても入れるのを止めないアクアさんに、私は彼女の手から酒瓶を奪い、

 代わりに水が入ったコップを渡す。

 

 「ゴクゴク……なんかこのお酒、味しないわねぇ」

 

 水を飲んで少し落ち着いたアクアさんは、そのままテーブルに頭を乗せると眠り始めた。

 二人の少女がテーブルの上に頭を乗せ寝ていたり、力尽きてぐったりとしてる中、

 ダクネスさんだけは今も1人腕を組んで悩んでいた。

 

 ずっと悩んでいても仕方ないですよ。

 そう言って、まだ中身が入っている酒瓶を彼女に向ける。

 ダクネスさんは私と酒瓶を見て悩み、そしてグラスを差し出した。

 

 「……そうだな。すまない、一杯もらえるだろうか?」

 

 私は彼女のグラスにお酒を注ぐと、一緒に乾杯をした。

 その後、すっかり寝てしまったアクアさんをおんぶして彼女達が住む屋敷に送り届けた。

 

 

 

 

 それから数日間、アクアさん達は私の元には訪れなかった。

 代わりにドカンドカンという音が毎夜響いていた。

 音がする方向には大きな花火が打ち上がっており、

 私はその音と花火を楽しみながら月に乾杯をした。

 

 後日、それがめぐみんさんの魔法だと聞かされ、私は苦笑するしかなかった。

 

 

 

 

 

 「うぅ……酒が美味い……外の空気が美味しい……」

 

 そうして、私の知らない間にいろいろあって、和真さんは釈放された。

 和真さんが釈放される事になった裁判の日。私は仕事で遅れて最初から見れなかった。

 どうにか時間を見つけて和真さんの元に行った私が見たのは、

 カズマコールをしている冒険者達の姿だった。

 どうにかなったか、そう思っていたところに、あの領主が認めず、

 事態は最悪な方向に向かおうとしていて――ダクネスさんが待ったをかけた。

 彼女は、実は有名な貴族の娘だったらしい。

 その彼女の言葉に、流石の領主も何も言えなかった。

 だが、代わりとしてダクネスさんが領主の元に行ってしまった。

 

 無事裁判を終え和真さんが釈放されたとはいえ、まだ一つ問題は残っている。

 それでも青年は、和真さんは、何とかすると言った。

 自分が逮捕され、閉じ込められ、そして裁判で釈放からの新たな問題。

 次から次へと訪れる問題に、それでも和真さんは前向きだった。

 

 凄いね、君は。私は、そう言った。

 

 「凄くないですよ。なんだかんだ、皆の力を借りてどうにかなってるだけです」

 

 青年は照れくさそうにそう言った。

 そうだとしても、自信を持ってそう言える和真さんが、本当に凄いなと思った。

 

 「あ、勿論、夜兎さんも含めてですよ?いつも、本当にありがとうございます!」

 

 そう笑顔で言った和真さんの不意打ちに、思わず私は顔を赤くしてしまう。

 恥ずかしいな。そう言って、和真さんと乾杯をした。

 

 もし、私に出来ることがあるのなら、私は和真さんに協力したい。

 そう、月に誓って。

 

 

 

 

 

 

 

 私は和真さん達に、自分が出来ることをやった。

 

 和真さんが疲れてる時は愚痴を聞き、

 ご飯に困ってる時は奢り、

 お金が必要な時はその分を渡した。

 

 これまで和真さん達は、私が思っている以上に、多くの事を成し遂げてきたはずだ。

 多くの人を救い、身を削らせ、前に進めば進むほど、問題は降り注ぐ。

 それでも和真さん達は止めない。戦うことを、守ることを。

 

 感謝してもしきれない。

 それでも、少しでも力になるのなら、

 私は和真さん達に出来ることをやり続けた。

 

 

 

 

 そうして、やっと、

 

 

 やっと――この素晴らしい冒険者達(和真さん達)の行動が認められた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日は、独りで飲んでいた。

 和真さん達が、二人目の魔王の幹部を倒した事で、

 今までの事が認められ、多くの感謝と、

 そして、私なら一生暮らしていける莫大なお金が、和真さん達の元に入った。

 和真さんはすぐに、仕事中の私の元を訪れた。

 カバンに入れていた大量のお金を私に見せ、返しに来ましたと。

 私は驚くも、仕事中だったことと、流石に周りの目が痛かったので、

 夜にまた会いましょうと言って一度帰ってもらった。

 

 夜に私は和真さんとその仲間さん達と、乾杯をした。

 二人目の幹部討伐と、無事、和真さん達の功績が認められた事について。

 その日は私も多く酒を飲んで、大いに酔った。

 楽しくて、和真さん達の功績が認められた事が嬉しくて、私も久しく騒いだ。

 

 

 

 

 

 あの日は本当に楽しかったなと思いつつ、グラスに口をつけ一口飲んだ。

 今頃、和真さん達は温泉に浸かっているだろうか、そう考えながら。

 功績を認められた和真さん達は身体を休める為に、とある街に向かったそうな。

 そこには大きな温泉があって、今までの冒険の疲れを癒やすらしい。

 温泉と聞いて羨ましいなと呟いた私に、和真さんは一緒にどうですか?と言ってくれた。

 私は嬉しかったが、今回は遠慮しておいた。

 今回の旅は、和真さん達の為の、旅行みたいなものだ。

 そんな大事な事に、私が入っては邪魔だろうと思った。

 それに、和真さん達にも仲間だけで居たい時間があると思ったからだ。

 

 私は、今頃温かい温泉に浸かっているかもしれない和真さん達に、乾杯をした。

 

 

 

 

 

 

 

 どうして、

 

 

 「さぁ!一緒に叫ぼうではないか!!」

 

 ――え、えっと……

 

 「我が名はバニル!!人間の期待を裏切られた時の顔が大好きな悪のヒーロー!」

 

 ――あの……

 

 「わ、我が名はゆんゆん!アークウィザードにして上級魔法を操る者。やがて紅魔族の長となる者!!」

 

 ――ノリノリだね、君も。

 

 「さぁ兎よ!お主も名乗るがいい!」

 

 ――いや、私は

 

 「や、夜兎さん!さぁ!」

 

 ――あ、あはは……はぁ

 

 

 ――わ……我が名は月花夜兎。花を愛し、夜を生き、月に導かれし者……。

 

 

 「愚かな人間よ!」

 

 

 「「月に代わって、お仕置きよ!!」

 

 

 ――お仕置き、ですよ……?

 

 

 どうしてこうなった……?

 

 

 

 

 

 

 

 それは、和真さん達が街を離れている時の出来事だった。

 いつもと変わらず、独り酒を飲んでいた私の元に、その人は現れた。

 

 

 「……ほぅ、聞いていたよりも随分と、不思議な男ではないか」

 

 黒のタキシードを着た男性は私の元まで来ると、普段アクアさんが座っている席に座ろうとし、

 何か嫌な感じがしたのか、そこに座るのはやめて、代わりに私の右側に座った。

 今はいない、彼が座っていた席だ。

 男性は店員さんに適当にお酒を頼むと、私をジロジロと見始める。

 私は、相談者かと思い、とりあえず最初から気になっていたそれに触れようとした。

 

 「何故私が仮面を付けているかだと?フハハハ!!!面白い男だ」

 

 私は驚いた。何故心で思っていた事がわかったのだろうか?

 

 「フハハハ!!残念だがそれは言えないな」

 

 「しかし、君があの青年の知り合いだということは知っている」

 

 あの青年?もしや、和真さんの事だろうか?

 

 「我輩は彼に頼まれたのだよ。留守の間、彼を頼むと」

 

 ……まさか、和真さんがそんな事を頼んでいたとは思わなかった。

 私なんかの為に、彼はそこまで考えて――

 

 「まぁ、嘘であるがな」

 

 ……騙された。

 

 「フハハハ!!その表情!!正に美味である……!」

 

 これはまた、なかなか個性のある人が現れたものだ……。

 私は苦笑いしつつ、とりあえず、この男性と乾杯を交わした。

 

 

 

 

 バニルと名乗った男性は、その後も私の元を訪れては、一緒に酒を飲んでいた。

 彼は毎回私を騙し笑い、私は騙され苦笑いし、

 それでも、和真さん達が居ない日々を楽しく過ごしていた。

 

 

 

 そして、これまた別の日に、新たな人物が私の元を訪れた。

 

 

 今日も数人の相談を受け、満足して帰っていく人達をこの席から見送っていた時だった。

 ……明らかに、こっちを見ている。

 私はチラリと、ある方向を見た。

 そこに居た人物はビクリと身体を震わせ、視線を逸らす。

 それが何度も繰り返されていた。

 その人物は、気付かれていないと思っているのかもしれない。

 現に私も、なるべく見すぎないように、本当にチラッと程度で見ていた。

 しかし、それでもその人物は目立っていた。

 

 

 幸か不幸か、月に照らされた彼女は、他の人達よりもずっと目立っていた。

 

 

 流石に気になって仕方ないので、私は一度じっくりと彼女を見た。

 彼女は驚き、視線をキョロキョロと逸らす。そしてまた目が合うと、また逸らした。

 それが何回か続いた後に、私は彼女に対し右手を上げてこっちにおいでと手を動かした。

 彼女はまた身体を震わせたが、恐る恐る、ゆっくりと私に近付いてきた。

 そうして、ようやく私の目の前まで来た彼女に、私は席に座るように言った。

 

 黒いローブを来た彼女、いや少女は、どこかめぐみんさんと似たような感じを漂わせた。

 席に座った少女に何か飲みますか?と尋ねると、あたふたと慌て始める。

 

 「だ、大丈夫です!ご迷惑になるので……!」

 

 ここ最近見ることのなかった遠慮する姿に、

 初めて和真さんと出会った時の事を思い出して小さく笑った。

 そして、遠慮する少女に、私はジュースを一杯奢った。

 

 

 「ほ、本当にいいんですか……?私なんかに奢ってもらっちゃって……」

 

 可愛い女の子に喜んで貰えるならこれくらい。

 私はそう言って、自分のグラスを持ち上げ少女に向ける。

 

 「か、かかか、可愛いなんてそんな……あ、あの、それじゃ……」

 

 少女は顔を真っ赤にさせつつ、目の前に置かれていたジュースが入ったコップを手に取り、

 同じように、私に向ける。

 私は、新たな出会いに。

 少女は、奢ってくれた私に。

 

 二人を照らす月の下で、乾杯をした。

 

 

 

 そうして、

 和真さんが居ない間に新しく出来た愉快な飲み仲間達と、

 今日も夜を共にしていた。

 一緒に過ごしていく内に、私は二人の事を少しずつ知った。

 バニルさんはウィズさんの元で働いていて、元々は違う街から来たという事を。

 この前出会った少女、ゆんゆんさんはめぐみんさんと同じ里の出身だということを。

 二人の話を聞いて、そしてこうして出会ったのも、

 元を辿れば和真さんのおかげだということを知った。

 私は二人に出会えた事を、そして、いつも中心に居る和真さんに、乾杯をした。

 

 

 

 

 それから、バニルさんが酔い初め、

 アルコールの匂いでなのか、同じように酔い始めたゆんゆんさんを見て、

 そろそろお開きにしましょうかと言った時だった。

 

 「てめぇ、やるのか!?」

 

 「上等だこらっ!!」

 

 

 向かい側の冒険者用の酒場で、騒ぎが起きていた。

 何が原因かはわからなかったが、

 喧嘩してる二人はお互いに酔っ払っているようだった。

 周りは様子を見ながら声をかけるだけで、誰も止めようとはしない。

 そうしてる間にも、二人はお互いを掴み合い暴れだす。

 テーブルや椅子にぶつかり、物が倒れる。

 流石にまずいと思ったのか、他の冒険者が止めようとして――

 

 

 

 「我輩の登場であるっ!!」

 

 

 同じく酔っ払ったバニルさんが、いつの間にか彼らの前に立ちそう叫んだ。

 二人の冒険者は唖然とするが、バニルさんは続けて言った。

 

 「無駄な争いはやめるがいい。せっかくの酒が台無しになるぞ?」

 

 フハハハ!と笑う彼に、ようやく状況を理解した二人はバニルさんに突っかかる。

 

 「んだこら!てめぇもやんのか!?」

 

 「まずはお前からだ変な仮面男!!」

 

 二人の敵意を受け、それでもバニルさんは冷静に、呆れていた。

 

 「……やれやれ、仕方ない」

 

 

 ビシッとポーズを決めたバニルさんは、そうして、名乗ったのだった――。

 

 

 

 

 

 「本当に、すみませんでした!!」

 

 二人の冒険者が頭を下げて私に謝る。

 私は、今後は気をつけてくださいね。と言って彼らに一杯奢った。

 ……内心、かなり緊張しながら。

 

 

 あの夜。

 酔ったバニルさんに便乗してゆんゆんさんも名乗り、

 そして二人に押され私も名乗ったあの恥ずかしい、あの夜。

 あの後、二人の冒険者がバニルさんに殴りかかろうとして、

 ようやく他の冒険者達がそれを止めた。

 覚えていろよ!そうセリフを残し去った二人なのだが……。

 

 翌日、彼らはこうして私に頭を下げて謝っていた。

 理由を聞いたのだが、なんでも、さっきまでギルドで昨日の話をしていたらしく、

 その話を聞いた他の冒険者や、受付のルナさんにこっぴどく怒られたらしい。

 バニルさんは知る人ぞ知る人物で、世話になってる人も居て。

 ゆんゆんさんも、冒険者達の中ではなかなか人気があるらしく。

 

 だがそれよりも……

 

 私に対しても暴力を振るおうとしたのが一番問題だったらしい。

 その場で話を聞いていた者達の多くが、私の夜の相談屋でお世話なっていたらしく、

 ただの一般人に何するつもりだー!あの人に手を出すなら黙ってねぇぞ!!と怒ったらしい。

 まさか自分も、そういう対象に入っているとは思っていなかった。

 恥ずかしい気持ちになりつつ、相談屋をやっててよかったなと小さく思い、

 反省してくれている二人と共に、乾杯を交わした。

 

 

 

 

 

 「ただまー。あー、疲れた」

 

 旅先から帰ってきたアクアさんが、私の正面の席に座り、

 いつものように酒を注文して、運ばれてくるのをワクワクして待つ。

 

 おかえりなさい。と返す私に、

 

 「ただまー。あ、ちょっと聞いてよ。カズマったらねまたわたしの事をね!」

 

 いつものように愚痴を言い始めるアクアさんを見て、

 変わらないなと思いつつ女神様の話を聞きながら微笑んだ。

 

 

 「そうそう、はい、これ」

 

 言いたいことを言いようやく落ち着いた頃になって、

 アクアさんは来た時に持っていた袋から、私に一つの瓶を差し出す。

 それを受け取り、なんですか?と訪ねた。

 

 「お酒よ。あっちに行った時にカズマがいつも世話になってるからお土産買っていけ―!ってうるさくてね。一応そこだけの限定品らしいわよ?」

 

 感謝しなさい♪と腕を組んでドヤ顔をするアクアさんに対し、

 私はお土産を貰えること事態想定していなくて、驚いてしばらく固まってしまった。

 そして、アクアさんにお礼を言いつつ、

 和真さんにもお礼を言わないといけないなと思った。

 

 「あ、せっかくだからそれ開けて飲みましょ!」

 

 アクアさんはそう言って、既に飲み干して空になったジョッキグラスを私に差し出す。

 わかりました。と苦笑しながら、私は蓋を開けて女神様のジョッキグラスに注ごうとして――

 

 

 「ほう、なかなか美味しそうではないか」

 

 急に現れたバニルさんがジョッキを差し出し、それに注いでしまう。

 そして、バニルさんはそれを一気に飲み干した。

 

 「……これは良い。兎よ。もう一杯くれるか?」

 

 そう言って席に座り、再度グラスを差し出すバニルさん。

 私は困惑しながらも、差し出されたジョッキグラスに注ぐ。

 注がれたそれをバニルさんはまた飲もうとして――アクアさんが奪い取った。

 

 

 「ちょっと!!わたしのお酒よ!!」

 

 「いいや、兎が我輩のグラスに注いだのだから我輩のである」

 

 「買ってきたのはわたしよ!!」

 

 「注いでしまえば我輩のものである!」

 

 

 お互い言い合いながら、一つのジョッキを奪い合う。

 そんな姿を見ながら、私はアクアさんのジョッキにひっそりと注ぎ、

 そして、自分のグラスにも注いで、乾杯をした。

 

 

 

 ――ふふ、美味しい。

 

 






明日も投稿予定なう。
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