この素晴らしい守り手に祝福を!   作:キッコ

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第2話

 魔法陣に吸い込まれた俺は気が付くと鬱蒼とした森の中にいた。

 あたりを見回しても、木、木、木。どうみても先ほど女神が言っていたアクセルの町とは思えない。

 あまり文化が進んでいないのだろうか?しかし女神は確実に「町」と言っていた。

 「町」というのなら家の一つでもあっていいものなのだが。

 そんなことを考えていた俺は最後に女神が発した言葉を思い出して肺のあたりがすぅっと冷たくなった感覚がした。

 あの女神、何か不穏なつぶやきをしたよな……。

 明らかに何か失敗したような感じの声を出していた。じんわりと冷たい汗が浮いてきた手のひらをジーパンで拭った。

 ここでじっとしていても埒があかない。

 俺はとりあえず歩き出すことにした。

 道なき道を行く、こんなのもありかもしれない。子供の頃、こんな風に冒険ごっこして遊んだっけな。

 手ごろな棒を拾うとぶんっ、振った。

 最近はスマホやパソコンでゲームばっかりして外で遊ぶこともなくなってたな。

 棒を適当に振り回しながら前へ進む。

 そういえば特典をもらっていたな。

 手元の棒を見つめる。今の俺はどんな武器も使いこなす達人。

 適当に振り回してるつもりでも実は目にも止まらぬ速さで速さで振っているのかもしれない。

 そこで俺は立ち止まり右足を前に出して棒を振りかぶった。

 

「燕返し!」

 

 振り下ろすとちょうど目の前にあった木に当たり棒がへし折れて明後日の方向に飛んで行った。

 ……。

 とても冷たい風がひゅるりと吹いたような錯覚を覚える。

 まあ、棒は武器じゃないしな……。

 何とも言えない気持ちになりながら棒を後ろに放り投げ歩き出そうとすると後ろから低い唸るような声が聞こえた。

 恐る恐る振り向くとそこには悪魔がいた。

 見上げるほどの大きさに蝙蝠のような羽、猛々しく生えた角、鋭く吊り上がった眼光は視線だけで俺を刺し殺してしまうのではないかというほどこちらを睨みつけていた。

 その大きな体はその大きさにふさわしいほどに筋肉が盛り上がっており俺など簡単に捻り潰ししまうだろう。

 その悪魔が鋭い歯の生えた口を開けた瞬間。

 

「うわああああああぁぁぁぁぁ!!!」

 

 前へ前へと全速力で俺は逃げ出したのだった。

 

ーーーーーーー

 

 

「なんだ?今のやつは……」

 

 物凄い速さで逃げていく人物の後ろ姿を見ながらその悪魔はつぶやいた。

 

「やっぱりこの辺はろくな人間がいねえな。黒髪だったし紅魔族か?にしては弱気な奴だったな」

 

 赤くはれた後頭部さすりながら逃げ去っていった方向を睨みつけた。

 

「見られたからには口封じが必要だが……」

 

 その悪魔は羽をはためかせ空へ飛びあがった。

 

()()()()()じゃ()()かっ()()し、大丈夫だろう」

 

 

ーーーーーーーー

 

 ここは異世界なんだ!

 あまりにも遅い自覚がオレの心の中を覆った。

 自分の世界にいるはずのない化け物を目の当たりにして、情けなく逃げ出した。

 可能な限り遠くへ逃げたいという気持ちが足を動かしている。

 どれほど走っただろうか。

 気が付くと森は抜けていた。そのことに気づくと同時に足から力が抜け無様に地面に転げていった。

 痛む体に活を入れ後ろを振り向いたが、悪魔は追ってきていなかった。

 危機が去ったことに安心したのかとてつもない疲労が体を襲ってきた。

 地面に背を預け寝転がると日はもう暮れていた。

 土だらけの自分とは裏腹に夜空はとてもきれいだった。

 しばらく空を見上げぼうっとしていると眠気が襲ってきた。

 ここで寝てしまったらさっきの悪魔に殺されているかもしれない……。

 そう思ったが次の瞬間には意識は闇へと消えた。

 その時夢を見た。家族とただたわいもない話をしているだけの夢。いつも通りの日常をただ過ごしていた。

 なのに夢の中の俺は何故だか楽しくて仕方なかった。ずっとここにいたいと思うほどに。

 目を開けると日差しが目に刺さり思わず目を細めた。

 

「……帰りたい。」

 

 何もする気が起きずずっと寝ころんでいた。

 腹の虫が鳴いたところでやっと起き上がった。

 そしてまた歩き始めた。

 歩いて、歩いて、歩き続けた。痛めた足を引きづるように歩いた。

 無性に母親が作ったオムライスが食べたくなった。

 そんなことを考えたせいかまた腹の虫が鳴った。

 夕日が俺を照らすころにはうつぶせに倒れてしまっていた。

 目の前が涙で滲む。

 なんで俺がこんな目に合わなきゃならないんだ。

 悪いことなんて、好きな子にちょっかい出したくらいで、他には何もしていない。

 そんなことを考えているとまた眠くなってきた。

 ぼやけていく意識の中でいろんなことを思ったけど結局最後に思ったことが。

 

「お腹、空いたなぁ……」

 

 涙交じりにつぶやいたこの声に、誰かが返事をしたような気がした。

 

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