Fate/stay night KUR NU GI A 作:夜はねこ
「……。」
生徒会室では花瓶に入った花が一輪飾られている。そういえばどの教室にも必ず花が一輪あるな、と思いだす。
「ん?どうした、衛宮。花を見つめて。」
生徒会室で無心に花を見つめている衛宮士郎に柳洞一成は問いかけた。
「え?いや…意識したことなかったけど、この花って誰が置いてるんだろうって。この校舎の全教室に必ず花を置いてるだろ?大変じゃないのかなって。」
「なんだ、知らんのか。」
「え?」
意外そうに呟く柳洞に衛宮は驚いた。
「知ってるのか?」
「割と有名な話だぞ。それに知ってるもなにも、遠坂は生徒会の書記だからな。花についてもわざわざ置いてもいいか聞きに来たぐらいだ。」
「遠坂?」
衛宮の疑問に柳洞は顔をしかめた。
「おい、衛宮。間違ってもあの女狐のことではないぞ、遠坂凛じゃない。似ているが本質が違う。その双子の姉のーーーーーー」
そのとき生徒会室の扉が開いた。金色の髪の彼女は何故か、スコップやら手袋やら長靴やら、肥料までを片手に抱えて立っていた。
「ええと、取り込み中だったかしら?」
遠坂恵麗。件の遠坂凛の双子姉である。彼女は柳洞と衛宮を見て首をかしげていた。
「いや、平気だが、それは?」
「花壇に花を植えようと思って…。その許可をもらいに来たのだわ。」
何やら気恥ずかしそうに、視線を彷徨わせている。衛宮は遠坂凛とも遠坂恵麗とも今までまともに会話をしたことはなかったが、確かに双子であろうと、本質は違うのかもしれない。
「別に、構わんぞ。」
「……何の花を植えるんだ?」
「へ!?」
いきなりほぼ初対面の衛宮に話しかけられて驚いたのだろう。彼女は手に持っていた荷物を全て落としてしまった。
「あ、悪い」
驚かせたせいだと自負し、拾うのを手伝う。
「…… ブーゲンビリア?」
種の袋に書いてあった名前を読み上げる。いかんせん、衛宮は花の知識に乏しく、その花がどういうものか理解できなかった。
「魂の花、とも呼ばれるな?」
「ええ、柳洞は知ってるのね。」
「どんな花なんだ?」
「それは咲いてからのお楽しみなのだわ、ええと、衛宮!」
そういえば、名乗っていなかった気がする。
「ああ、うん。衛宮だ。衛宮士郎。」
「そう、私は遠坂恵麗。…それじゃあ、私はこれで。」
「ああ。」
嵐のようだったが、彼女はよほどブーゲンビリアという花が好きらしい。優しい微笑みだった。
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衛宮士郎主人公との初会合が生徒会室にて園芸セットを持った状態で、というのは些かどうなのだろうか。
それはそれとして、凛には未だ自分がデミ・サーヴァントになったことを伝えられていなかった。普段は人間なのだ。あの時は殺されそうになって必死にあの状態になったという感じだった。簡単にいえば、どうやってあの姿になるのかがわからなかった。伝えられたとしても、その証拠がないのだ。どうしようもない。
あれこれ考えて花壇に向かっていると、見慣れた自分の半身がこっちに向かって歩いており、思わずかけよった。
「凛?珍しいわね、いつもより早いじゃない。」
「家の時計、一時間ズレてたみたいなのよ。そういう、エレは……また花いじり?」
昔、私はいつも自分より早く出て行く私に何をしているのか凛に問い詰められたことがある。花のことを言えば呆れたようだった。
「は、花いじりという言い方はやめてほしいのだわ‼︎」
「はいはい、頑張ってね。」
これではどちらが姉かわからない。だが仲が悪い訳ではない。
しかし、時計の時間がずれていたーーーーということは今日は凛がアーチャーを召喚する日なのだ。そのことを頭の片隅に残して私達はわかれた。