サムライ・デッドマンズ・パーティー/或いは貴衛残花の<Infinite Dendrogram>   作:クーボー

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いつのまにかたくさん評価がきていた……。
ありがとうございます!


第二話 【死霊術師】斬花

 □<刀野林> 【死霊術師(ネクロマンサー)】斬花

 

 目の前の、殺されてから数時間経った後の腐敗したような状態の死体……アンデッド祭りの時に偶然落ちた【完全遺骸】を前に、僕はイツキの刀身から怨念を引き出した。

 途端、紫色の瘴気にあたりが包まれる。浄のスキルで怨念耐性を得ているけども、さすがにちょっと気持ち悪くて、思わず眉を潜めてしまった。

 

「……まあ、我慢我慢」

 

 僕がそういう道を選んだんだし仕方ないと納得させて、刀の切っ先を遺骸に向ける。

 

 側に控える浄に目星する。

 もしも暴走したら、その時は今も構えてもらってる浄に矢を叩き込んでもらうことになっている。

 お互いに準備はできていると確認し、頷きあって深呼吸した。

 

 僕には《死霊術》のノウハウはない。

 僕が持つ【死霊術師】としてのアドバンテージは、この怨念の量だけ。

 

 だから僕にできるのは、

 

「《死霊術(ネクロマンシー)》、発動」

 

 怨念に任せたゴリ押しだけだ。

 

 周囲の怨念が切っ先を伝って完全遺骸に流れ込む。ビクリと遺骸が痙攣する。もう死んでいるのにも関わらず、だ。それほどまでに濃い怨念は、当然術者である僕にもそれなりの影響を及ぼす。

 怨念が寒気をもたらし、不自然に背筋が震える。それを唇を噛み締めることで抑え付け、怨念をひたすらに注ぎ込む。

 

 この後どうなるかなんて二の次だ。

 周囲から新たに寄ってくる怨念は、イツキが選別して吸収していく。まず処分するのは今回だけだ、寄って来る側から使っていたらいつまで経っても終わらない。

 

「化け物が生まれそう……」

 

 言うな浄、僕も薄々感じてるんだから……! 

 

 ビクビクと不気味に痙攣していた遺骸から、一気に力が抜ける。そしてぐじゅりと白濁した目が辺りを見渡し、おぼつかない動作で起き上がった。

 

 知らず、汗がたらりと流れて。

 

 ——僕に跪いたのを見て、はっと安堵の息が漏れた。

 

「暴走しなくてよかった……」

 

 膨大な量の怨念を使ったから、半分暴走するもんだと思ってた。

 一度イツキを通したから、少し大人しくなったのかもしれない。何にしても僥倖だった。

 

「ぼくも無駄に戦闘しなくてよかったよ……だってそのアンデッド、絶対めちゃくちゃ強いじゃん」

 

 浄も僕と同じように安心しながら、しかし油断なくアンデッドに目線を向けながら言う。アンデッドの方も反応はしているが敵対行動をするような素振りはない。今すぐ戦闘になることはなさそうだ。

 それはともかく、陽毬さんからもらった片眼鏡を装備して、と。

 

「えーっと……【ハイ・ウーンド・ソンビ】、か」

 

 本で読んだところによると、通常のゾンビの上位種。……死霊術師成り立ての僕が作ったと言えば凄まじいけど、あれだけの量の怨念を使ったことを思えば素直に喜べない。

 率直に言えば少し損をしたような気分だ。

 

「うーん、もっとレベルが上がれば怨念を効率良く活かせるのかな……」

 

 今でもそこら辺の土から染み出して刀身に呼び寄せられているとはいえ、さすがに無限ってわけじゃないだろうし、いずれ底を突くだろう。

 その時に、この時無駄に使ったことを後悔はしたくない。

 

「デメリットがあるだけあって、怨念の貯蔵量はめちゃくちゃ多そうだもんね」

 

『はい。しばらく使わずとも、ある程度余裕がある……と思います。私でも正確な量はわからないので、半分以上推測になりますが……』

 

「まあ、イツキが人間形態の時は呼び寄せられないみたいだし、あんまり武器形態のままでいるのはやめておこう」

 

 これで街までアンデッドを呼び寄せて指名手配されたらたまったもんじゃないし。

 

 でもイツキを使う時には、自ずと怨念が引き寄せられるから、どうにかして消費しなきゃいけない。でもそのためには、《死霊術》のスキルレベルを上げなきゃいけないわけで。

 

 結構、道は遠いな。

 

「怨念処理か……あ、なら斬花、ならあのアイテム作ってみたら?」

 

「あの……ああ、本で見たアレね」

 

 なんだっけか、そう……【怨霊のクリスタル】。【清浄のクリスタル】に怨念を吸わせることで製造できるらしいけど、天地だと不吉だとされているからか、あんまり詳しい製法は書かれていなかった。

 

「アレ、結構上等なアイテムみたいだから、とりあえず怨念ぶちこんで作っといたらいいんじゃない? 【死霊術師】のきみなら無駄にはならないでしょ」

 

「んー、確かにね」

 

 それも一応想定して、【清浄のクリスタル】を購入してある。わりと高かったけど、アンデッド祭りでルーキーながらそれなりにお金を稼いだからそこまで懐は痛まなかった。

 

「じゃあ……」

 

 ……今更だけど、このアンデッドを街に持ち帰るの嫌だな。【ジェム】は一応買ってるけど、こんな汚いのをずっと入れてるのは、なんだかテロリストになったみたいで良い気分にはならない。

 

 かわいそうだとは思うけど、ついでだし処分しておこうか。

 

「はい、これ食べて」

 

「GAU——!?」

 

「ちょ、斬花!? もったいなくない!?」

 

 いいのいいのと手を振って、【清浄のクリスタル】を呑み込んで(正確には僕が口に突っ込んだ)、まるで太陽に当たった吸血鬼のように悶えるアンデッドの身体に刀身を突き刺す。

 

「よし、寄ってきてるのもまとめて入れちゃおう」

 

『え、えーと……ごめんなさい』

 

 ズオオ、と重苦しい音とともにアンデッドに怨念が流れ込んでいく。

 

 正直、元のなった人物のいない自然発生のアンデッドなんて、ただのモンスターと同じだろう。ただ造形がヒトに近いだけだ。さっきのアンデッド祭りの時もそうだけど、僕は正直そこに価値は感じない。

 

 大事なのは命を自覚しているか、ヒトとしての心を持っているかだ。そこから外れているのだから、僕はそれを資源として使い潰すことに、躊躇はない。

 ……我ながら歪んでいるとは思うけどね。

 

「G、GA——」

 

 やがてアンデッドの身体が解けるように消えていく。あるいは濃すぎる怨念で身体が溶けているのだろうか。

 僕にそれは推測することしかできないけれど、残った結果はただ一つ。

 

 黒々とした、先ほどまでの清らかな光ではない、汚濁の如く汚らしい色を放つ結晶が一つ、地面に落ちていた。

 

 それは間違いなく、本で見た【怨霊のクリスタ——

 

 

【清浄のクリスタル(汚染度:中)】

 

 

『「「いやなってないの(です)!?」」』

 

 

 結局、そこから追加で膨大な量の怨念を注ぎ込んでも【怨霊のクリスタル】は完成しなかった。

 あの流れで完成してなかったとか、ちょっと色々台無しだよもう……。




待って、石を投げないで、説明しますから!!

まず、普通【清浄のクリスタル】を怨霊のクリスタルにするには、膨大な怨念が必要だというのは、メイズが原作でやってたことから理解しました。
ですが、メイズは5000年分の命のアンデッド化と並行して……つまるところ100人くらいの子供で条件を達成し、そこからさらに作っているうちにクリスタルの作成に成功したと書いています。

で、原作の被害規模からして、200人までは行ってないと思うんです。ゴゥズの残虐性も加味すると、普通よりも速く完成したと思われます。

で、天地はご存知の通り修羅の国。それもフラグマンの時代からそうだったらしいので、累積した怨念は膨大なものでしょう。死んだ数は1000じゃ効かないと思います。
一回戦争でも起これば手足欠損して死んだりする相手は腐るほどいそうですし、高レベルティアンは野試合で悔いなく死ぬこともあると吟味しても絶対怨念がやばいくらいたまってます。
その上天地だと怨念利用系は忌まれますし……怨念だまりは地下に大量にあるでしょう。

で、イツキのスキル効果で地下から周辺から問答無用で怨念を吸収する(デメリット付きなのでさらにドン)ので、結構な量の怨念を食ってます。

なのでそれを全ツッパした結果汚染度中の中途半端な怨霊のクリスタルができ上がった……とお考えください。

さすがに初っ端から怨霊のクリスタルを作れちゃうとバランスブレイクとかそれ以前の問題なので、色々と調整しました。
でも怨念を各地から収集できるイツキがあるので、近いうちに完成はすると思われます。そもそもそれ使うようなクソ強いアンデッドを作れるような素材、今はありませんけどね。

面白かったから感想もよろしくお願いします。
感想をくれると豚みたいに喜ぶのだ……作者が。
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