サムライ・デッドマンズ・パーティー/或いは貴衛残花の<Infinite Dendrogram>   作:クーボー

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今話投稿に際し過去に挙げた話の一部を改変しております。


第六話 生まれながらの——

 □<刀野林> 【武士(サムライ)】斬花

 

 イツキが光に粒子になる。

 それは僕の左手に集まり、収束して、一振りの刀を創り上げた。

 

「……すごい」

 

 思わず、感嘆の声が漏れる。それほどまでにその刀は美しい。

 まず目を引くのは純白の刀身。白い着物を着ていた彼女を、その美しさもそのままで、刀に写し取ったかのようだった。手の方へと遡っていくと、純白に紛れて「縊鬼丸」と銘が切られていた。

 

 そして少し驚いたのが、鍔が普通の鍔ではなく、唐鍔という儀礼用に用いられた鍔であること。あるいはそれが、僕への戒めなのかもしれないが……少し気をつけねば。イツキの刀を僕の血で汚したくはない。

 

 また、柄には白い柄糸が巻かれており、隙間から覗く目貫は、彼女の角や着物に似た赤色だった。

 

 総じて儀礼用——飾太刀に似ているものの、細部は異なる……しかし極めて美しい一品と言える。

 

「……僕の蒐集品(コレクション)にも、これほどの刀はない。綺麗だ、イツキ」

 

『そ、そう言っていただけて嬉しい、です……。ですが、ほら、固まっていた賊どもが動き出しますよ?』

 

「ああ、それもそうだね」

 

 ならば手早く済ませよう。

 僕が刀を構えると、ワンテンポ遅れて彼らが各々の武器を構える。それは斧だったり、刀だったり、短刀だったり……バリエーション豊かで品質もバラバラだが、ひとつ断言できることがある。

 

 イツキよりも優れた武器は、そこには存在しない、と。

 

「疾ッ」

 

 空気を肺に取り込んで、左足で大きく踏み込んで加速。

 両手持ちしたイツキは随分軽いので、本来無手用の踏み込みができる。思わぬ僥倖だが素晴らしい。

 

 まずは加減込みで——腕! 

 

 下段からイツキを振り上げる。

 それは斧を構えた男の腕に、寸分の狂いもなく入り込んで、そして一瞬の抵抗も感じずに断ち切った。

 

 一瞬惚ける賊。しかし浸透する痛みでようやく認識したのか、汚い唾を撒き散らしながら絶叫する。別に人を嬲る趣味はないので、喉に刀を向けて突き殺した。

 しかし、切れ味が良いだけじゃなく……何か作用してるな、これ。

 

『さすがにこの魂はいりませんね……』

 

「イツキ、説明頼む」

 

『ん、わかりました。というか、これを見たほうが早いですね』

 

 目の前に表示されたウィンドウ、『保有スキル一覧』と書かれたソレの、一番上に表記されたものに目が止まる。

 

 

生まれながらの殺人鬼(ナチュラルボーン・スレイヤー)》Lv1

 対人間範疇生物(<マスター>・ティアン)特効。イツキ使用時のみ発動する。

 Lv1の場合、対人間範疇生物に対し、ダメージが50%上昇する。

 パッシブスキル

 

「……なるほど」

 

 そりゃ殺しやすいわけだ。他にもスキルはあるようだけど、今は関係ないようなのでウィンドウを閉じる。

 あとでまたゆっくりと見るとして——

 

「浄」

 

「ん、なに?」

 

「危ないから下がってて。もしかしたら間違えて切っちゃうかもしれない。……それと」

 

 

「ありがとう、こんな僕の友達でいてくれて」

 

 

「……馬鹿だなあ、きみは、そんなこと感謝せずとも当たり前のことだろうに。

 なら、さっさと終わらせてね。あとでたくさん問い詰めてやるから」

 

 メイデンとか聞いたことないし、とゲーマー魂が刺激されたのか、浄はふんすと息を吐く。それに口元に笑みが浮かぶのを隠しきれず、結局、照れ隠しみたいに前を向くしかなかった。

 

『……良い友人ですね』

 

「うん。本当に、僕にはもったいないくらいのね」

 

 さて、友達からせっつかれちゃった以上、手早く終わらせようか。

 

「あは」

 

 なに、どうとでもなる、ってな。

 

 僕は刀を構えて、一呼吸。

 一足に大地に踏み込んで、残りの賊どもへと突っ込んだ——! 

 

 その後数分で賊どもは死に、母なる大地へと無残な死体を捧ぐ。それを成したる僕の刀の眩く光る刀身は、血に塗れてもなお、歯止めを知らないかのように貪欲に輝いていた。

 

 

 /

 

 

「ひどい残虐ファイトを見た」

 

「失敬な、すぐに殺してあげたじゃないか」

 

「そこでそう返すからこそ残虐ファイトって言うんだよぼくは」

 

 そうかな? 嬲ってないから人としては上等だと思うんだけど。

 

 僕の気持ちを読み取ったらしい浄に呆れた目を向けられる。それを誤魔化す意味も込めて、傍のイツキを撫でた。

 

「それにしても……メイデン、かぁ。ねぇ、自分から可愛い女の子生まれて今どんな気持ち?」

 

「そっちで煽るのかよおまえ」

 

「勘違いしないでよね、あとで今回のセリフ抜粋して弄ってやるから」

 

「この畜生め……!」

 

 にゃはは、とまるで少女のように浄は笑う。少し苛ついたので、頭を軽く殴った。

 

 そういえばこいつの<エンブリオ>はどうなるんだろうな……なんか拗れた奴が出る気がするぞ。

 

「<エンブリオ>は千差万別にございます。私のようにメイデンが出る可能性は、あまり高くないでしょうね」

 

「っていうか、そもそもメイデンって何さ。チュートリアルでも聴かされなかったよ?」

 

 イツキは唇に細く嫋やかな指を当てて微笑した。

 

「メイデンは、いわゆるレアカテゴリーに分類されるのですよ。発現する人はあまり多くないので、そのチュートリアルでも説明されなかった、と思われます」

 

「なるほどねぇ……予想以上にこのゲーム、ガチャ要素が強いな」

 

「いえ、ガチャ、というわけではありません。個々人のパーソナル……深層心理や表層心理、トラウマや趣向に合わせて<エンブリオ>は発現するのです。ですので、最初からどんな<エンブリオ>になるかは決まっていると見て良いと思いますよ」

 

「それってやっぱり、クソみたいな性根だったらクソみたいな<エンブリオ>が出るってことだよね」

 

「斬花、それわりとブーメランだってわかってる?」

 

「うんまあ、わりと」

 

 こんな対人特化のスキルを持つ<エンブリオ>なんて、そんな多くはないだろう。希望通りも希望通り、僕にとっては理想そのままと言えるけど。

 

「こ、心の中であろうと褒め殺されるのは、その、嬉しいのですが……」

 

「……かわいい」

 

「わ、斬花が女の子にかわいいって言ってるの初めてだ」

 

 立場上勘違いされると困るからね、ってそうじゃなく。

 

 ——白い肌を持つめちゃくちゃかわいい女の子が、頬染めて俯くのは、大変眼福だと思う。

 

「コントラスト……!」

 

「ねえきみキャラ変わってない?」

 

「おまえはさっさと遮那裡(しゃなうら)ちゃんデンドロに誘ってこい」

 

「ちょっ、リアル方面から刺すのは反則だろ……!? あとぼくは年下趣味じゃないってばぁ! いつも言ってるだろぉ!?」

 

「見た目お似合いだぞ」

 

 まあ中学生で天真爛漫だから見た目だけ、なんだけど。でもあっちからだいぶせっつかれてるのに曖昧な笑みで押し通すのはお兄さんダメだと思うんだ。

 

「ぼくはロリコンじゃないんだ……!」

 

「大丈夫、僕は君が一回り年下の美少女に手を出しても笑って付き合える男さ」

 

「くそ、じゃあイツキちゃんはどうなんだ! 明らかにちっちゃいじゃないか! きみ一八〇近いから犯罪臭すごいぞ!!」

 

「ちっちゃい!?」

 

 イツキが結構なショックを受けてるのを尻目に、僕はわざとらしく屈んで、浄の肩に手を置いた。

 

「僕はね、好きな子がちっちゃかったらロリコンに堕ちるのも致し方ないと思っているんだ」

 

「きみはそれでいいのか、成人迎えた男のくせにそれでいいのか!!」

 

「正直ダメだとは思ってる……でもほら、イツキは身体は成人しているんだ。幼い美少女特有の……わかるだろ? それがない」

 

 だから合法オールオッケー。

 

「あと彼女は成人迎えた僕から生まれたので成人だ、つまり僕は真性ではない」

 

「じゃあなんだ、きみ自分は嫌なくせにぼくのことを真性扱いしようとしてたのか……!?」

 

「いいから、っていうか彼女学校で人気あるんだろ。純朴な好意を無碍にするのは度し難い下衆の行為だぞ」

 

「話をすり替えやがって……ったく。はいはい、彼女にデンドロ買ってあげますよーだ」

 

 筆頭株主である清浄の、しかも御曹司たる禊なら、向こう側も断れないだろうからね。というか利害は一致してるんだからさっさとロリコンに堕ちろ。

 

「……あの、つまり私と貴方様の関係は……?」

 

「あー……うん」

 

 素面に戻ると恥ずかしいな。

 

「わりと一目惚れだったから……婚約者、妻、みたいな?」

 

「は、はい! ふ、不束者ですが、よろしくお願いいたします。……幼い身体でも興奮してくれるでしょうか」

 

 あっ、これ先に僕が堕ちるかもしれない。

 




生まれながらのロリコン(

ひっどいオチだけど作者はロリコンじゃないです。ええ。現実では興奮しません絶対に。

—情報開示—
殺生刀后(せっしょうとうごう) イツキ】
TYPE:メイデンwithテリトリー・アームズ
紋章:刀を抱いて眠る少女
能力特性:対人特化・怨魂殺収
モチーフ:人を通り魔のように殺す妖怪・縊鬼(いつき)
食癖:新鮮な食べ物しか食べない(野菜などにも当てはまる)
ジャイアントキリングの形:たとえ相手が格上でも、人であるなら殺してみせる
備考:
白髪に白い着物に白い肌、そして和紙の目隠しをした白づくめ大和撫子風鬼娘。属性特盛。
性格もお淑やかで大和撫子的だが秘めたるスケベな一面を持つ。ただ怒らせると斬花が相手であろうと問答無用で正座させるとかさせないとか。
武器としての姿は飾太刀のような真剣。刀身には「縊鬼丸」と銘が切られている。芸術品かなにかと見紛うような美しさを誇るが、その性質は妖刀か何か。

“デンドロ世界の命をリアルと同じように感じている”にも関わらず、現実からずっと抱え込んできた殺人衝動を持つ斬花の、“どうか自分の衝動を律することができるように”との願いを受け発現した<エンブリオ>。
なので衝動から目を逸らす意味を込めて目隠しをつけているが、斬花のガバガバな倫理に対応してかわりとひらひらして中の目を覗かせる。目は美しい緋色で斬花とお揃い。

しかし抑制のパーソナルも見ているため、斬花が衝動で暴走しそうになると嗜める役割を持つ、総じてイエスマンではない<エンブリオ>と言えよう。おそらくアポストルとの性格的相性は悪い。
ステータス補正はオールG。いっそ清々しいほどのスキル特化型。

スキル:
生まれながらの殺人鬼(ナチュラルボーン・スレイヤー)》Lv1
人間範疇生物(<マスター>・ティアン)特効。イツキ使用時のみ発動する。
Lv1の場合、対人間範疇生物に対し、ダメージが50%上昇する。
イツキ運用における要とも言えるスキル。
パッシブスキル

《殺生統合》Lv1
“相手が人間範疇生物で(スレイヤーと同じく双方の意識に左右される)”“自分より合計ステータスが上”である相手を殺害した時、相手の魂を刀身に蓄積して保護する。Lv1では三個まで。
この保護状態は怨念などによる凶化を防ぎ、Lvに応じて蓄積できる魂が増えていく。初っ端でイツキが「この魂はいらない」と言ったのはこのスキルで保存するか否かを決めたためである。
アクティブスキル

《怨念統合》Lv1
怨念を引き寄せて吸収する。この怨念は刀身と柄の狭間に蓄積され、必要に応じて出すことが可能。
Lvに応じて吸収できる量が決まる。
ON/OF不可。
(強力にも思えるスキルだが、もちろんというか表記されていないマスクデータ的デメリットも存在する。
それは怨念とともにアンデッドを自動的に誘引すること)
パッシブスキル 
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