サムライ・デッドマンズ・パーティー/或いは貴衛残花の<Infinite Dendrogram>   作:クーボー

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第一章 アンデッド・サムライ/あるいは色物系<マスター>への道行
第一話 怨念の利用法


 □<刀野林> 【武士(サムライ)】斬花

 

 イツキが目覚めてから、デンドロ内時間で数日のこと。

 僕らは、刀都から出てすぐの<刀野平原>ではなく、そこから少し歩いた以前賊を殺した<刀野林>で狩りをしている。

 デンドロが本物の夢のゲームだと知った連中が大勢訪れて、狩場が箱詰め状態になっているために、僕らがあまり人気のない狩場を使わざる終えなかった。

 

 その弊害がこれだ。

 

「あーっ、もうっ! アンデッド多すぎっ!」

 

『うう、私のせいで、申し訳ありません……』

 

「いや、イツキのせいじゃない。強いて言えば僕とシステムのせいだね」

 

 グロテスクで醜悪な化け物……ゾンビと呼ばれるアンデッドの首を断ち切って蹴り飛ばす。直後光の粒子となって消えていくが、後ろを見ればまだまだ湧き出るようにゾンビやスケルトン、レイスがいる。

 同時に奥から紫色の気色悪い力が、イツキの刀身と柄の狭間に流れ込んでいる。これがイツキの第三スキル、《怨念統合》の効果にして弊害だ。

 

 天地は修羅の国である。ここが安全地帯である刀都の近くであっても、古くから累積された怨念はいくらでも存在する。

《怨念統合》は、それらの累積された、地中深くの怨念すらも引き寄せて吸収する。それは第一形態の、それも三つあるスキルとしては強力にすぎる。

 

 だから、表記されない効果も設けられた。

 そう、怨念とともに、アンデッドをも引き寄せるという、今僕らが苦しんでいるデメリットを。

 

「でもデメリットと言ってもっ!」

 

「自動的に経験値が寄ってくるんだから、まだマシだよねっ!」

 

 浄が弓を、彼に発現した<エンブリオ>である【浄桃神弓 オオカムヅミ】を構えて矢を放つ。オオカムヅミの第三スキルである《破魔の弓矢》の効果で弓矢を媒介とした攻撃に聖属性が付与されているので、まとめて二、三体ほどアンデッドを爆散させていた。

 

 僕の方はイツキの特効が働かないので、地道に一体ずつ仕留めている。さすがにレイスとかの物理無効持ちはどうにもならないから、浄に任せているけども。

 

「そういえばわりとグロテスクな肉片付いてるけど気にしないの?」

 

『殺すことは私の本望ですので……むしろ少し気持ちいいくらいですよ、貴方様』

 

「それならよかった」

 

 全部ポリゴンになって消滅するとはいえ、気にされると斬りにくいからね。イツキが気にしないタチでよかった。

 

「……あっ」

 

 矢筒に手を入れて固まるな、めちゃくちゃ嫌な予感がするぞ……! 

 

「聞きたくないけどどうした」

 

「矢が切れた! ちょっと置物化しちゃうかもー!」

 

「なら前もって言っといてよ!!」

 

 その後は、随分な泥仕合となった。

 

 正直こんな連戦、浄なしじゃもう二度とやりたくないな……。その甲斐あってかレベル50になったし、レベリングには最適だけども。

 

 

 /

 

 

 □刀都 冒険者ギルド 【武士(サムライ)

 

<マスター>が増えたことで活気が増した冒険者ギルドの一席の中で、妙に寒気のする視線を感じながらカタログをペラペラとめくる。

 

「むぅ……」

 

「何悩んでるのさ」

 

「いや、次のジョブがさ、いいのが見つからないから」

 

 色々とジョブについての解説が書かれたカタログを貸してもらったのはいいものの、ジョブプランがほとんど決まってないからあれこれと目移りした挙句にこれじゃないと落胆する。

 

「ぼくは【弓武者(ボウ・サムライ)】にする予定。せっかく弓の<エンブリオ>が出たんだし、それを活かせる方向にシフトしないとね」

 

「イツキの怨念がな……どうにかして活かしたいんだけど」

 

 あとは魂に関してどうにかできるなら最高だけど、そこまでは高望みしない。ただあの怨念の貯蔵量がどれほどなのかわからない以上、怨念を消費する手段を考えなくちゃいけない。

 明らかにヤバイ色だから、吸収できずに引き寄せるために悪影響が起こることもあり得るかもしれないし。

 

「私もジョブについては、知識がありませんから……元は私のせいなのに、力になれず申し訳ありません……」

 

「君は僕の<エンブリオ>だ。つまり君の力は僕の力、君の責任は僕の責任だよ。謝る必要はない」

 

 イツキの頭を撫でる。恥ずかしそうだけど逃げる様子はない。

 まあ、弟の頭は散々撫でてきたからね。それなりには慣れてるとも。

 

 ……兄としては、落第も落第だろうけどさ。

 

「何かお困りですか?」

 

「あ、陽毬さん」

 

 僕らに親切にしてくれてる受付嬢の陽毬さんが、僕らの隣の席に座る。こら、威嚇しないの。

 

「あの、この子は……」

 

「ああ、僕の<エンブリオ>。可愛いだろ?」

 

「そ、そうですね」

 

「男から女の子が生まれるって恥ずかしくないのかな」

 

「聴こえてるぞ浄」

 

 あとでなます切りにでもしてやろうか。

 そう視線に込めて睨むが、べーと舌を出して挑発してくる。それでも似合っているのだから余計腹立たしい。

 

「ま、まあそれはともかく、ジョブに迷っているならこれを貸し出しましょうか?」

 

「んん……【適職診断カタログ】?」

 

 え、これお高いやつでは? 

 

「いくつか在庫はあるので、一つくらいならしばらくお貸ししますよ?」

 

「ありがたいですが……」

 

 少し声のボリュームを下げる。

 

「……これ、わりと公私混同に当たるんじゃ……」

 

「あはは、まあ、そうなんですけどね」

 

 陽毬さんは困ったように笑う。しかし、それに僕らが何か言おうとすると、人差し指を唇に当ててウィンクした。

 

「わたしも一人の人間ですので……少しくらいの贔屓は、ね?」

 

「……あは」

 

 本当に、どこまで時代を先取りしているんだろうな、このゲームは。

 

「ま、ぼくも経験あるしね……」

 

「他言無用でお願いしますよ?」

 

「もちろん。さすがにそこまで恩知らずじゃない」

 

 せっかくだし、この好意に甘えよう。イツキが陽毬さんに軽く会釈するのを見ながら、僕は【適職診断カタログ】を開く。

 

 そして行われた、5分間に及ぶ質疑応答の時間を終え、提示されたジョブは……。

 

 

「……【死霊術師(ネクロマンサー)】?」

 

 

「……あっちゃー」

 

 陽毬さんの口から、「わたしのせいかもしれないけどでもそれ選ぶ普通?」みたいな、色々な感情のこもったあっちゃーが漏れた瞬間、僕と浄、そしてイツキは、目を見合わせたのだった。




多分陽毬さんはちょうどいい年齢でいい感じの恋愛してしれっといい男捕まえていい感じの年齢で皆にいい感じに惜しまれつつ寿退社する……みたいなデキるタイプのキャリアウーマンです。ただし天然。
脳味噌腐ってるからそこだけがちょっとアレですけど。

感想たくさんくだちい……(強欲の塊)(人の姿をした家畜)(恵んでもらう感想は嬉しいか?→うれちい!!!!)

ここからタイトルの通りアンデッド祭りになっていきます。
天地で忌まれるジョブに就いた斬花君はどうなってしまうのか?乞うご期待!
(なお作者はアンデッド嫁大好きです。ハーレムって入れたほうがいいのかな?)
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