「うーん、にしても中々似合ってるな……」
「どうしたんですか?久保さん」
「ん?ああ、慧大のあの格好が中々に似合ってるなーって思ってな」
「なるほど……確かに様になってますね〜」
「だろー?」
と、他愛ない話をしながら進む慧大一行。
慧大達は、香霖堂で武器を手に入れた後、すぐ隣にある森に入って探索をしている所だった。
しかし、初めこそ探検気分で森に入った慧大だったが、しばらく進む内に後悔していた。
何故なら、今現在、かなりの数の敵に囲まれているからだ。
久保と海斗の2人は全然気付いていないようだが、慧大は持ち前の気配察知能力でとっくの前から気付いていた。
(クソ……気付いたらかなりの数に囲まれてれるな……後ろの2人は気付いてないし……数は……9、10体ってところか……どうすっかな)
と、慧大が作戦をまとめようと頭を回転させていると、慧大の横から猛烈な殺気が飛んできた。
慧大は咄嗟に横に飛び、体勢を整えた。
すると、先程まで慧大が居た場所を片手用の斧が横薙に振るわれた。
「チッ……おい、久保!海斗!囲まれてるぞ!数は10体!そのうち8体が近接メインで残り2体が遠距離だ!久保は遠距離の2体を、海斗は8体のうち3体だけの素手とダガーの奴らを!俺は残りの5体を相手する!頼んだぞ!戦闘、開始!」
と、慧大が瞬時に状況を把握し指示を出すと、久保と海斗の2人も直ぐに戦闘態勢に入った。
久保はオートマチックの拳銃2丁、海斗は2本のサバイバルナイフが武器だった。
里で初めて2人の武器を見せてもらった時、慧大が
(いや、一介の大学生に持たせる武器ですかね?)
と、心の中で紫に訪ねたのは言うまでもない。
そして、先に仕掛けたのは久保だった。
「りょーかいだ!」
と、慧大の作戦に了解の意を送りつつ発砲した。
しかし海斗は動かない。
「海斗……?って、まさか……」
慧大が嫌な予感を覚え、海斗の元へ行こうとした時だった。
「ヒャッハァー!!やってやるぜぇぇ!!」
海斗が普段の大人しい彼からは想像出来ない奇声を上げながら敵の方へ突っ込んでいったのだ。
そう、海斗は生粋の戦闘狂である。
「はぁ……ま、やる事はやるだろうし俺も自分の敵と向かい合いますかね」
そう言い、慧大は5体の妖怪と対峙たいじした。
5体のうち、2体は片手斧、2体は短刀、1体は曲刀、という武器構成だった。
(片手斧が下っ端、短刀が割と上の位、曲刀がリーダーって感じか……)
慧大が敵の関係性について考察をしていると片手斧の2体が慧大に突撃を始めた。
(下っ端故の特攻ってか?残念だが下っ端だからといって特攻させる奴は嫌いなんだぜ?)
片手斧の2体は、それぞれ右側と左側から斜めに攻撃を仕掛けた。
慧大は、左手の雨叢雲剣で左側の片手斧を流し、右側の片手斧を大上段に振りかぶった妖怪を右手の純時雨で、一瞬の煌きと共に斬り払った。
そして、慧大に片手斧を流され体勢を崩しいている妖怪を左回りに回りながら純時雨で斬った。
血飛沫を上げながら倒れ込む妖怪を余所に、慧大は前を向いた。
その慧大の眼前には短刀持ちの2体が得物えものを振り下ろそうとしている所だった。
「なっ!?クッ……ソ……」
慧大は咄嗟の判断で、相手の攻撃を受け止める事が出来た。
しかし短刀持ちは直ぐに連撃を開始した。
「チッ……はぁ!」
慧大も何とか受け止める。
しかし、防戦一方で、このままではいずれ殺られるのは明白であった。
(クソ……久保と海斗に援護を頼みたいが、アイツ等もまだ戦闘中だし……このままじゃ確実に殺られるっ……)
と、慧大が死を覚悟で攻撃を仕掛けようと考えたその時、
「スペルカード!一点集中「マスタースパーク」!!」
と、必殺技名のようなものを叫ぶ声と共に、一筋の光の線が飛翔ひしょうし、短刀持ち2体を纏まとめて貫いた。
頭を貫かれた妖怪はその場にくずおれた。
「ふぅ〜、試作段階だったから不安だったんだが、今回は上手くいったぜ」
そう言いながら横の茂みから出てきたのは、金髪黒目でメイド服のような、白黒の魔女服を着ていた。
ついでに左手に箒ほうき、右手には薄く煙を出す小さな八角形の物体を持っていた。
「ん?あぁ、大丈夫だったぜ?」
「あ、はい……助けていただきありがとうございます」
「いいってもんだぜ。あ、私の名前は……って、悠長に話してる場合じゃないのぜ……」
突然の少女の登場により、慧大は敵の事をすっかり忘れていた。
「私が後ろから援護するから、さっさと倒すんだぜ」
「……ありがとうございます」
少女が援護してくれるというので慧大は前を向き、雨叢雲剣を体の前に斜めにして構え、純時雨を体の横側に横向きにして構えた。
慧大が昔、齧かじった程度だが習っていた剣道の型に、独自の構えを合わせたオリジナルの構えだ。
そうして、慧大が戦闘態勢に入ると同時に、妖怪が口を開いた。
「グガ……ニンゲンゴトキ、ソレモソトノニンゲンガ……ワレワレニタイコウスルナドアッテハナラナイコトナノダ……」
妖夢から、それなりの強さの妖怪は人の言葉を話す事を聞いていたので、慧大は大して驚きもせずに返答した。
「うるせぇよ、そんなのお前らの勝手な考えだろうが。俺達は生きたいから生きる、それに負けるって事はお前らが弱いだけだろうが」
「………フハハハ………イイダロウ、ウシロノマホウツカイモコロシテオキタイトコロダッタノダ……マズハキサマカラコロシテヤロウ!」
「来いよ」
そう言うと、妖怪は曲刀を振りかぶり、慧大目掛けて走り出した。
(……剣筋が単純すぎる、これなら後ろの女の子にも負けるだろうな……)
そう慧大が思い、攻撃を避けてカウンターを食らわせようとしたその時、妖怪の左手が煌めいた。
「んなっ!……クッ」
そう、妖怪は左手の爪を使って攻撃してきたのだ。
「クッソ……爪も強えよ…」
そこから先は慧大の防戦一方だった。
妖怪が爪と曲刀を巧みに使い、慧大に攻撃を仕掛ける。
そして、慧大はそれを防ぎ続ける。
後ろの少女も光の玉などで援護をしてくれているが、妖怪は慧大に攻撃しながらも周囲の状況を見ているようで、ことごとく避けていた。
そんな状態が続き、しばらく経った時、慧大の後ろから弾丸が飛翔した。
妖怪は突然の攻撃を避ける為、後ろに下がり横にずれた。
慧大が後ろを見ると久保が拳銃を構えていた。
その横には海斗がいる。
どうやら、2人共無事に戦闘が終わったようだ。
安堵し、慧大が正面に視線を戻そうとすると、海斗が走り出した。
慧大は驚いたが、直ぐにその意図を察して妖怪の方へと走り出した。
妖怪は曲刀を右上から慧大の方へ斬り下ろした。
慧大はそれを右下から斜めに振り上げた純時雨で打ち上げた。
「スイッチ!」
そう言うと、慧大は後ろに飛び、海斗と場所を交代した。
スイッチとは、相手の武器などを自分の武器で弾き(これをパリィと言う)、後衛の人間位置を代わるという技術だ。
本来ゲームの世界で使うが、今回はそれを現実世界で代用したのだ。
海斗が妖怪の懐へ一瞬にして入り込み、切り刻んで、顎を蹴り上げ、上にふっ飛ばした。
「慧大!」
海斗の言葉に応えるようにして慧大が飛び上がり、空中で妖怪を
「あばよ」
の一言と共に真っ二つに斬り裂いた。
「ぐぁぁ………疲れた……」
そう言いながら、慧大はフラフラと久保達の元へ帰っていった。
「皆お疲れさまー……って、何やってんだ……」
慧大が久保達の元へ戻ると、海斗が久保を押さえ、先程助けてくれた少女が八角形の物体を構えていた。
「慧大さん、止めないでください!」
「そうだぜ、止めるんじゃあない!」
「いや、親友が殺されかけてるんだから止めるよ……」
と、抗議する2人を余所に慧大は久保を助けた。
「サンキューな、やっぱ慧大だわ」
「大方おおかたお前が何かしでかしたんだろ?」
「うっ……何故分かった……」
「そりゃあ分かるわ」
少ししょんぼりする久保を置いて、慧大は少女に話しかけた。
「さっきはありがとうございます」
「いやいや、私も新しいスペカの練習ができてよかったんだぜ。あと、お前らも探していたしな。……名乗ってなかったな、私は霧雨 魔理沙、見ての通り普通の魔法使いだ」
「俺は遠山慧大です。……魔理沙さん、で良いですか?」
「幻想郷の住民は堅苦しいのは苦手だから基本タメ口、呼び捨てでいいぜ」
「りょーかい。じゃあ改めてよろしく、魔理沙」
「おう……ああ、いまからお前らについて来てほしいんだがいいのぜ?」
「ん?ん〜、今から神社に行こうとしてたんだが……」
「その神社にだぜ。因みに紫からある程度話は聞いてるんだぜ」
「なるほどな……分かった、じゃあ案内頼むよ」
「りょーかいだぜ」
そう言うと、魔理沙は箒に跨り浮かび上がった。
「それじゃ、全速力で行くぜ!」
そして、高速で飛び始めた。
「久保、海斗!遅れるなよ!」
慧大はそう叫ぶと魔理沙に追いつくべく、高速飛行を始めた。
慧大は何故か神社で待つ巫女の姿が想像できた。
まるで、一度会った事があるかのように――――――――――――――