恋愛階段   作:音槌和史

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四歩目~告白~

 

 冬休みと年が明けた。“好き”という気持ちはより強まった。でも躊躇する気持ちの方が上回っている。これまで、そう仲が良かったわけでもない、クラスの男子から突然告白されて頷けるだろうか。だが、断ることにもやや罪悪感を感じてしまうのではないか。それに告白という行為は少なからず相手の時間を奪うわけで。

 そう考えると、告白なんてものはただただ自己中心的で利己的な行為でしかないのではないだろうか。もし両想いだったらそんなことはないのだろうが、両想いなんて可能性1%にも満たないだろう。前にテレビでだったか、ネットでだったか見たものによると初恋が叶う確率は1%なんだそうだ。恐らく1%というのは平均値だろうが、僕は何一つ長所の無い、冴えない男子。僕のような人間が確率を下げるのだ。

 

 と、いうようなことを瞬太に言ったら頭をはたかれた。

「じゃあ告白しないんだな」

 う……。

「……」

 夕方の住宅街を静寂が包む。

「──ってことは告白はしたい、という解釈であってるか?」

 ……。

「可能性が0じゃないうちは……」

 すると瞬太は「そうだな」と言って一呼吸おいた。

「べつに、告白ってのはその1つのプロセスだけで付き合うためにあるわけじゃないと思うんだよな。告白して、最初はフラれて。で、そこから相手に意識してもらってそれからもう1回告白するんだよ」

 ……。

「神か?」

「何がだよ」

「瞬太がそんないい事言うなんて思わなかった」

「ナメてるだろ」

 僕らの笑い声が住宅街にこだました。

「あ、笑った」

「え?」

 瞬太が唐突にそう言った。

「3学期始まって1週間くらい経つけど、ほとんど寺末が笑ってる姿を見なかったからな。気づいていなかったかもしれないが」

 おっしゃるとおり気づいておりませんでした。

「マジ?」

「ああ、大マジだ。そんなわけでいつ告る?」

「脱線を許さない感じなのね」

「じゃなきゃ寺末の愚痴なぞ聞かないわ」

「ひどっ」

「はい、脱線しないでください」

 この人……ドSだ。

「……来週のはじめでもいい?」

「今週末、雪の予報だが、別に来週の月曜でもなんら問題は無いと思うぜ?」

「ロケーションが良すぎると萎縮しちゃう」

「まあ、頑張ろうとしてる人間に言うのもあれだが、頑張れよ」

「ありがとう」

 どこからか犬の遠吠えが聞こえてきた。号砲のようだ。

 

 

 そして週が明けた。大好きな社会の授業も頭に入らず、ただ曇天を見つめつづけた。いつの間にか夕方になっていた。ボーッとしながらランドセルに荷物を詰め、教室を出る。

「私は梅ちゃんと一緒に来るから、瞬太は文也と一緒に来て!」

 音色がそう叫び、瞬太の「おう!」という声が聞こえる。

 相も変わらずボーッとしたまま階段を下り、昇降口にやってきたわけだが梅葉を見た瞬間、急に頭が冴えた。周りにいるのは梅葉と瞬太と音色だけ……。

「文也から話があるんだって~」

「そうなの?」

「ほら、今だぞ」

 僕は静かに深呼吸をする。

「……好き……です……」

「だから?」

「……つ、付き合ってください……!!」

 静寂。

「……友達が……いい……」

 ……。

「友達がいい、って」

 小さく言った梅葉の言葉を音色が繰り返す。

 ……だよね。さすがに。

「ごめん……」

 僕はとっさに頭を下げる。

「よし!解散!」

 また静寂がかえってくる前に瞬太が手を叩いた。

「帰ろっか」

 音色が梅葉を連れてその場を離れていった。2人が遠ざかっていったのを見計らって、瞬太が僕の肩を叩いた。

「お疲れさん。まあ、これからだぜ。しっかり自分磨きをしていかないと」

 自分磨き……か……。

 いつの間にか、空には宵の明星が輝いていた。いつかあんな風に僕も輝けるだろうか……。

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