恋愛階段   作:音槌和史

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五歩目~何故?な誘い~

 告白から二週間。僕は少しでも“自分磨き”をしようと筋トレに励んでいた。そう元々が筋肉質なわけではないから、ちょっとやっただけで疲れるのだけれども。でもこうして少しずつ努力を重ねていくことに意味があるのだ。何年後でもいい、いつか報われさえすれば。そう思いながら平和な日々を過ごしていた。

 

 しかし、そんな平和な日々は突然終わりを迎えた。

 ある日の掃除時間。ほとんど自らの持ち場の掃除を終えた僕と瞬太は教室の端で日に当たって光合成をしていた。もうすぐチャイムが鳴るか鳴らないか、といったところで僕ら二人がその場から離れようとしたとき、音色と目が合った。

 僕は首を傾げた。すると、音色とその隣にいた梅葉がこちらに向かってきたのだ。僕は首をさらに大きく傾ける。

「今度の土曜か日曜、空いてる?」

 僕と瞬太が口を開く間もなく、前置きも無しに音色がそう、聞いてきた。一瞬、瞬太と顔を見合わせ、頷く。

「まあ、たぶん両方空いてると思うけど……?」

「あー俺は日曜しか空いてないな」

「じゃあ日曜だね。日曜の一時半に図書館の前って来れる?」

「来れると思うよ」

 僕は戸惑いながらそう答える。

「俺も行けると思う」

「じゃあ、よろしくね~」

 音色がそう言って梅葉と自分の席に戻っていった。

 僕はもう一度瞬太と顔を見合わせ、首を傾げる。

「なんでだろう……」

「さっぱり分からねえな」

 この時の僕には『何故?』という気持ちしか無かった。

 

 

 当日。僕と瞬太は一足先に着き、他愛もない話をしていた。そして話は、何故二人が僕らを誘ったのか、というテーマになった。

「俺の予想としては、フラれたかわいそうな寺末を憐れんで、呼んだんだと思うんだよ」

「かわいそうで悪かったな!!」

「まあそう怒るなって。で、さすがに男子一人だと気まずいだろうからと思って、俺もセットで呼んだ、と」

「さすがにそれは無くない?」

 ラブコメならきっと、そこから僕と梅葉の距離がどんどん縮まり──という展開になるのだろうが、これは小説でも漫画でもアニメでもない。

「もしくは……本当は好意があったんだけど恥ずかしくてフったとか?」

「それは創作物の見すぎです」

 そんな創作物があるかどうか知らないけど。

 そう思ったところで、二台の自転車の影が見えた。

「お、来たっぽい」

「マジ?あぁなんか影見えるな。目悪いから見えんわ」

 音色が自転車に乗りながら手を振ってきたので振り返す。僕は、片手運転をするな、と言える立場ではない。

「ういっす」

「やっほ~。はい、これ」

「あ、私からも」

 !?

「わを」

 あまりの驚きにそう、小さく漏らす。

「義理チョコだけど」

「そう!義理だからね!!」

「本命だったら俺、明日死ぬわ」

 そう、瞬太が言うと音色がさも残念そうな顔をした。

「じゃあ本命、って言えば良かった~」

『殺す気!?』

 思わず音色以外の三人のツッコミが重なる。

「もう音色にはお返ししないわ」

 瞬太が拗ねたように言うと、音色は慌てて前言を撤回した。

「ごめんって~。お返し期待してるから~」

 お返し目的かい!そう思ったけど黙っておいた。

 

 

 戸惑いはあるし、なんで?という気持ちもあるが、舞い上がっているのもまた事実。今はこの浮わついた気分に乗っておこう。

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